バグは終わらない

作・真城 悠
























シーン0:宇宙空間


 字幕テロップ:「時は
2045年。

          人類は巨大宇宙船を建造し、恒常的な宇宙航海を可能にしていた。」

シーン1:艦内廊下(その1)

乗務員A「よう、元気か」

乗務員B
「ああ、最高だぜ。ある意味な」

乗務員A「はは…どうしようもねえよ」

シーン2:大広間

   バニーガール姿のクルーの多くが集まっている。

乗務員C:
「…」

乗務員D:
「オレは足が痛てえよ」

乗務員C:「お前だけだと思ってるのか?」


乗務員D:
「…まあ、しかし案外寒くないな」

乗務員C:「脚がだろ?肩が寒いちゅーんだ」


シーン3:データ室(その1)


リュウスケ・アサダ主任:「結局、元のデータは破壊されているのか?」

ケン・コヤマ副主任:「良く分からないんですよ」

 コーヒーのカップを机に置く主任。
 その淵が口紅で真っ赤に染まっている。


シーン4:艦橋(ブリッジ)(その2)

艦長:「…」

副長:「艦長!本部より入電」


艦長:「そうか」

 バニーガールからバニーガールに情報が伝達される。

艦長:「読みなさい」

副長:「それがその…」

艦長:「何だね」

副長:「付近の空域に遭難船を確認。本艦に救助して欲しいとのことです」

 バニーガール達は顔を見合わせた。


シーン5:データ室(その2)


ケン・コヤマ副主任:「…だ、そうです」

リュウスケ・アサダ主任:「ランデブー予定時刻は?」

 渋い表情で決め様とするバニー姿の主任。

ケン・コヤマ副主任:「あと2時間だそうです」

リュウスケ・アサダ主任:「ラストチャンスだな」

ケン・コヤマ副主任:「はい」

リュウスケ・アサダ主任:「分かってるなお前ら」

 熱気が蘇るバニーたち。

リュウスケ・アサダ主任:「見事何も無い状態でその時を迎えるか…それともハロウィンが続くか…この2時間に掛かってるぞ」



シーン6:ミカ・リクドウの部屋(その1)

ミカ・リクドウ:
「…ふ〜ん」

 モニターを眺めているバニー。こちらは本物の女性である。良く似合っている。

ハヤト・タカハシ:「どうした?」

 覗きこんでいるバニー。こちらは男である。…似合ってるのが悔しい。

ミカ・リクドウ:「何だか救難船が来るみたいね」

ハヤト・タカハシ:「げげっ!冗談じゃねえぞ。この有様を見せるんか?」

ミカ・リクドウ:「それもいいんじゃないかなあ」

ハヤト・タカハシ:「よせって!」

ミカ・リクドウ:「でもまあ、チャンスだわ」

ハヤト・タカハシ:「そうか」

ミカ・リクドウ:「うん。どうせデータ室も別の仕事が入るでしょ?その隙を縫って侵入して今度こそ復旧…っていう段取りかな」


ハヤト・タカハシ:「でもさあ、向こうだって復旧し様としてるんだろ?」

ミカ・リクドウ:「それが問題なんだよねえ…余計なことすんなってのに…」

ハヤト・タカハシ:「基本的にデータ室に任せてこっちは手助けするだけにしたらどうかな?」

ミカ・リクドウ:「う〜ん…そうもいかないんだよね」

ハヤト・タカハシ:「どうして?」

ミカ・リクドウ:「だって紛れ込んだデータ見られちゃったらアシがつくじゃん」

ハヤト・タカハシ:「そんなこと言ってる場合か!」


シーン7:艦橋(ブリッジ)(その3)

副長:「救難船から映像、来ます」

 息を飲む一同。

艦長:「分かってるな?」

 通信兵に念を押すバニー姿の副長。

副長:「はい。こちらの映像装置は故障中ということで…」

 モニターに相手艦の艦長が映し出される。初老にさしかかろうという貫禄ある軍人である。

救難艦の艦長:「もうしわけない。貴艦の助けを借りたい」



 一方、こちらの艦長と言えば濃い化粧を施されたバニーガールである。

艦長:「喜んで。しかし…」

 クルーは皆、脂汗を流していた。

艦長:「申し訳ないがもう少し時間を頂きたい」

 初老艦長の戸惑った表情が伝わってくる。

救難艦の艦長:「“もう少し”というのはどの程度なのか。…あと、こちらには貴艦内の映像が届いていないが…」

艦長:「そ、それはですな…」

 艦長の苦しいいいわけが始まった。


シーン8:ミカ・リクドウの部屋(その2)

 次々に映し出される映像。

ハヤト・タカハシ:「しかし…いい趣味してるぜ」

ミカ・リクドウ:「でしょ?」

ハヤト・タカハシ:「誉めてねえよ。…
大体これなんか一体何に使うんだよ」

ミカ・リクドウ:「…まあ、“使い道”とかは無いけど可愛いじゃん」

ハヤト・タカハシ:「“可愛い”ねえ…俺には滑稽にしか見えないんだが…」

ミカ・リクドウ:そう?あたしも小さい頃には憧れたわよ」

 その時…ふいに画面がフリーズした。

ミカ・リクドウ:「…え?」



シーン9:データ室(その4)

ケン・コヤマ副主任:「また来ましたね」

リュウスケ・アサダ主任:「あせって追いかけるなよ」

ケン・コヤマ副主任:「はい」

リュウスケ・アサダ主任:「いいからしばらく泳がせとけ」

ケン・コヤマ副主任:「このハッカーってこちらに見られているのは気付いているんしょうか?」

リュウスケ・アサダ主任:「間違いなくな。この間は尻尾を掴ませなかったし」

ケン・コヤマ副主任:「色々いじくってますね」

「チャン・イシヅカ:何だこりゃ?マスターにこんなデータが流入してるのか?」

リュウスケ・アサダ主任:「相当悪質だな…」



シーン10:艦橋(ブリッジ)(その4)

副長:「救難船から映像、来ます」


救難艦の艦長:「そろそろ時間だが…よろしいか?」

艦長:「いやその…出来ればもう少し」

救難艦の艦長:「こちらの艦はあと1時間で酸素が尽きてしまう。兵の人数、移動時間を考えると一刻の猶予も無い。すぐに頼みたいのだが」

艦長:「はあ…」

 冷や汗と脂汗で艦長の化粧は滲んでいた。


シーン11:データ室(その5)

ケン・コヤマ副主任:「そろそろランデブープランを実行しないと…」

チャン・イシヅカ:「それがその…こいつなんだかデータをフリーズさせやがったんだ」

ケン・コヤマ副主任:「へ?」

 渋い表情で固まっているバニー主任。

ケン・コヤマ副主任:「急いで主導権を取り戻します…いいですか?」

サヤカ・ハミルトン:「ブリッジより火の様な打電です!」

 眉間に皺をよせて考えている主任。

リュウスケ・アサダ主任:「向こうの人数は?」

ケン・コヤマ副主任:「およそ200人だそうです」

 リュウスケ・アサダ主任がフリーズした映像を見つめている。

リュウスケ・アサダ主任:
次はこれってことか…」

ケン・コヤマ副主任:「はあ…間違い無く」

サヤカ・ハミルトン:「主任!早く決断して下さい!」

リュウスケ・アサダ主任:「200人の命とは引き換えられん。連中には気の毒だがな」


シーン12:艦橋(ブリッジ)(その5)


救難艦の艦長:「…こちらがランデブープランを受信したらしい。それでは移動を開始させてもらう」

艦長:「ちょ、ちょっと!」

救難艦の艦長:「一刻の猶予も無い。ではまた後で」

 切れる通信。

艦長:「…なんてこった…」

副長:「この有様を見られてしまいますね」

艦長:「それだけならいい。あちらの乗員も同じ目に遭うことになる…大失態だ」

オペレーター1:「あの…データ室から」

艦長:「何だ?」


シーン13:ミカ・リクドウの部屋(その3)

ハヤト・タカハシ:「マジかよ?」

ミカ・リクドウ:「逃げたいわ」

 がっくりと肩を落とすバニー男。

ミカ・リクドウ:「でも、いい知らせもあるわ」

ハヤト・タカハシ:「何だよ?」

ミカ・リクドウ:「アシつかなかったから。まだバレて無いわ」


シーン14:艦外から艦内に入るエレベーター内(その1)


救難艦の副長:「それにしてもおかしかったですね。様子が」

救難艦の艦長:「ふむ…まだ若い艦長らしいがの」

 頬をさすっている初老艦長。

シーン15:データ室(その6)

リュウスケ・アサダ主任:「この増員には対応できそうか?」

ケン・コヤマ副主任:「もともと今回の様な短期間の航海でしたら補給物資は余裕を持っていますし…それ自体は問題ではありません」

リュウスケ・アサダ主任:「まあ、あとはいいわけの捻出かな?」

 自嘲的に真紅の唇を歪めるバニー主任。

 

シーン16:艦外から艦内に入るエレベーター内(その2)

救難艦の副長:「到着しましたね」

救難艦の艦長:「ふむ」

救難艦の副長:「現在エア調整中です」

 低く響いていた音が止む。

救難艦の副長:「では入りましょう」

救難艦の艦長:「うむ」

救難艦の副長:「さて…と」

救難艦の艦長:「ん?」


救難艦の副長:「な、何だ?…こ、これ…は?」

救難艦の艦長:「う…おおおぉ!?」


救難艦の副長:「ど、どうしたんだぁ!?…一体何が起こったんだ!?」

救難艦の艦長:「な、何事だ!?これは!」

救難艦の副長:「こ、これって…踊り子の…服!?」


シーン17:艦外から艦内に入るエレベーター外(その1)

 ドアが開く。

救難艦の艦長:「艦長殿!!…これは一体どういうことかね!!…っ!!!」


艦長:「これは…その…」

 恐縮しているバニーガール姿のおっさん二人の姿がそこにはあったのだった。


シーン18:ミカ・リクドウの部屋(その4)

ミカ・リクドウ「似合ってるよぉ。今までで一番」

 にこにこ微笑んでいる女。

ハヤト・タカハシ「うるせえよ」


 バレリーナがぶすくれて返す。

ミカ・リクドウ:「でもまあ、ハイヒールから開放されてよかったじゃん」


シーン19:データ室(その7)

サヤカ・ハミルトン:「主任。見つかりました」

リュウスケ・アサダ主任:「何が?」

「いえ。用語集ですけど」


サヤカ・ハミルトン:「お前は何か?それで何をしろってんだ?」

 ばっちり決まった舞台メイクですっかり美しいバレリーナとなった主任が言う。


マーク・シュナイダー:「わ〜いわ〜い。バレリーナさんだぁ!」


シーン20:艦内廊下

乗務員A「おう、お前もか」

乗務員B「まあな。とりあえず動きやすいのは助かるぜ」

乗務員A「激しく踊るための衣装だから、ホステスやら花嫁とは違うぜ」

乗務員B「全部自分で体験する予定は無かったけどな!」

乗務員C「何でも、舞台裏ではこうやって腰に手を当てて移動するらしいぞ。確かに普通にしてると手が当たって邪魔だからな」

乗務員A「そんな豆知識は一生必要ない予定だったんだがな」

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 すっかりコスプレ艦と化したその艦は、約200人を増員しつつ、バレリーナづくしで航行を続けるのだった…

































































「バグ」製作スタッフ



企画・監督・演出・脚本

真城 悠



真城の城:http://kayochan.com



キャラクターデザイン・メカデザイン・美術・背景・
その他作画全般

岩澄



B.D.O:http://www.geocities.co.jp/poteto1213/