不条理劇場 10 「今日から交代」 作・真城 悠
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突然その教師は入ってきた。 「あー、静かに!静まれ」 担任の鈴木花子先生だった。 「えーと、分かってると思うけども。今日からお前らは女子と交代ね」 ???。 教室に冷たい空気が吹きぬけた。出し抜けに一体何を言い出すのだろう。この先生は。 前の授業の関係から女子はまだ帰ってきていない。私立TS高校2年4組には現在男子生徒しかいなかった。 「じゃあ、始めるから」 全く構わずに鈴木先生は言葉を発した。 その時だった。 「・・・!?」 何やら胸に違和感を感じる。 「ああっ!お、お前!」 隣の生徒が大声を上げた。 「あああっ!」 僕の胸は生き物の様にむくむくと膨らみ始めていたのだ。 「な、何だぁ!?」 が、しかしその異常事態はすぐにクラス全員に波及した。 「あああっ!」「こ、これは・・・」「お、おっぱいがあぁっ!」 クラスの男子全員が豊かなバストに成長してしまったのである! 「なーにを騒いどるんだ全く・・・いいから次行くぞ次」 「う・・あっ!」「あああっ!」 阿鼻叫喚の声と共に、男子全員の脚が細く、美しく、そして内股に変わっていく。 「でもって・・・」 「あああっ!」「や、やめてぇっ!」 男子全員が股間の間の物体の消滅を自覚した。同時にウェストも細くくびれていく・・・ 「更に・・・」 ぐんぐんぐんっ!と伸びていく髪。ショートカットの生徒もいたが、中には緑なす黒髪を背中まで垂らしている生徒もいた。 そう、クラスの男子全員が、男子の制服に身を包んだ美少女の女子高生へと変貌を遂げてしまったのだ! 「あ・・お、お前・・・」「お前・・・こそ・・・」 何とも言えない初々しい、そして艶かしい雰囲気が充満する。 「えーと、ブレザーだから上はそのまんまでいいな。じゃあ中身から」 教壇の上から鈴木先生がまた何かを語りかけてくる。 その時だった。むぎゅう!と何かが生まれたばかりの乳房を締め付けた。 「ああっ!」 それはブラジャーに間違いなかった。すぐにガラパンもパンティへ、シャツはスリップへと置き換わっていく・・・。 「でもって仕上げ・・・」 すうっ!と足元が涼しくなった。ズボンがチェックの柄のミニのプリーツスカートになったのだ。 もうクラスには女子生徒しかいなかった・・・。 「女子の方は男子に交代させといたから。それじゃ」 何事も無かったかのように教室を出る鈴木先生。 ぴしゃり、と後ろ手で引き戸を閉める。 「何だか様子がおかしかったな・・まあいい」 と、何かに気が付いた様子である。 「あ・・・しまった。次元を間違え。ここって3次元だっけ・・・いいや別に」 しゅっ!とその場からかき消す様にいなくなる鈴木先生。直後にもう1人の鈴木花子先生がやってきていた・・・。 謎の性転換現象に見舞われた男子生徒たちはそのまま一生「女」として生きなくてはならなくなったのは言うまでも無い・・・ |