こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。
最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。
報酬ですか?いえ、お金は頂いておりません。お客様が満足頂ければ、それが何よりの報酬でございます。
さて、今回のお客様は…。
黄昏時の公園。
美しい夕焼けの中、見かけ小学校低学年程度の少女がブランコの方をじっと見ている。
細身の女性が二人の男に挟まれておろおろしているのが少女の瞳に写った。
その内容までははっきりと聞き取れないが、激しく罵りあっているのが分かる。
少女のそばを自転車が走り抜ける。夕食時になろうかという時間帯である。家路に急ぐ人々が目立つ。その内の一人がその喧嘩に興味を持ったのか、しばし立ち止まるも、すぐに離れていく。
が、その少女は依然として喧噪を観察し続けていた。
「おねーちゃん」
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はっと顔を上げる細身の女性。
ブランコに腰を下ろし、考え込んでいる所に突然声を掛けられたのである。とっさに声がした方向を向く。
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目に入ったのは女の子だった。子供である。せいぜい小学生、といった風情。
「あたし?」
「うん」
彼女の狼狽が周囲の空気にも伝播する。が、数瞬の後、気を取り直す。
「どうしたの?迷子?」
「ん?違うよ」
妙な娘だな、と思った。
「… もうこんな時間よ。家族の人が心配してるよ」
「いいの。そーゆーのは」
その余りに屈託のない笑顔に思わず警戒心を解く女性。
「どうしてよ?そんなことないでしょ?」
「そんなことよりさ、おねーちゃん」
ちょこん、と隣のブランコに座る少女。と、ポシェットをごそごそと探り始める。
「あたし、こーゆー者なんです」
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なんと名刺を取り出してくるではないか。苦笑して受け取る。
簡素な表記の名刺だった。
「ココロとカラダの悩み、お受け致します。
真城 華代」
「困ってる事があったら何でも言って。力になるから」
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余りのことに破顔する女性。
「サラリーマンなの?」
「セールスレディよ」
「ああ、ごめんごめん。セールスマンね」
「だあからセールスレディだって」
ひとしきり笑う二人。
しばし沈黙。その整った顔に幽かにあざが出来ているのが少女の目に入る。女性が口を開く。
「依頼していいかしら?」
「もちろん!」
「どんなことができるの?」
「そりゃもう何でも!…と言いたいところだけど、そうねえ、基本的にはココロとカラダに関することかな」
「ココロねえ…うん。じゃあ頼めそう」
「何?」
「料金は取ってるのかしら」
「いいえ。無料奉仕です」
「そうなの?どうして」
「そりゃもう、お客様にご満足頂けることが何よりの報酬ですから」
「自分の腕を安売りしない方がいいわよ」
「ありゃりゃ、こりゃ一本とられたなあ(笑)。うん。でもやっぱり初めてのお客様にはサービスってことじゃあ駄目かな?」
「あたしは構わないわ。華代…ちゃんだっけ」
「うん。華代」
「華代ちゃんさえよければ」
「はい!承りました!で?依頼は何でしょう」
しばらくあらぬ方向を向いて考え込む。
「お友達がいるのね。私」
「うん」
「その二人ってとっても仲が悪いの」
「そうなんだ」
「…うん。それでね。出来たらその二人を仲直りさせて欲しいの」
「ふんふんなるほど」
「出来そう?」
「おやすい御用よ!まかせて!その二人をとっても仲良しにしてあげるわ!」
「よろしくね」
その言葉を聞くやいなや少女は脱兎の如く駆け出して行ってしまった。
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朝。一人の男が歩いている。
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背の高いさわやかな感じの男である。と、一方から青年が歩いてくるのが目に入る。
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青年も色白で細身、美しい女性の様に整った顔立ちの好青年である。
突如、男が青年に掴みかかる。
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「テメエ!」
負けじと青年も男の胸ぐらを掴んで振り回す。
「何を!」
「人の女に手を出してよく平気で街を歩けるなこのスケコマシがあ!」
乱闘は続き、強烈な打撃が二発、三発とお互いの急所を捕らえていく。髪を、振り乱し、服の所々は破れ、血が滲んでいる。
「ちょっと待ったあ!」
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一瞬視線をそちらに向ける二人。そこには小学生にしか見えない小柄な少女がいる。
「うるせえ!引っ込んでろ!」
青年が怒りにまかせて華代を突き飛ばす。
「きゃあ!」
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尻餅をつく華代。
その隙を衝いて青年を羽交い締めにする男。
「いったあー…。もお!」
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尻餅を付いていた華代がさすりさすり立ち上がる。
「悪いけど引っ込んでる訳には行かないのよね。依頼はばっちり承っちゃったし…って聞いてるの?」
喧嘩に夢中の二人が聞いているはずもない。青年は男の羽交い締めから逃れ、男の腹部に強烈な蹴りを見舞う。
「うおっ!」
これまでになく効いたらしい。男は腹部を押さえて倒れ込んでしまう。
「もう!じゃあ勝手にやらしてもらうわよ。仲良しになあーれ!」
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「(激しい息づかい)はあ、どうだ…。はあ、…この…くそったれが!」
「貴様あ…人の女を…」
「何言ってるんだ!俺は…ちょっと相談を受けただけだ!」
「口からでまかせ言いやがって…」
「実際お前は彼女に暴力を振るってたじゃねえか!」
「やかましい!お前に何が分かるんだ!」
と、突然青年が黙り込む。その表情から一切の余裕が消え、滝のように脂汗を流し始める。
「う…ああ…」
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よろけ、両手で自分の胸を覆い隠す青年。
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男までが不振に思い、声を掛ける。
「…おい。どうした?」
「…か、身体が…」
「何?何だって?」
「身体が…あ。お、おかしい…」
両腕を離す青年。豊かな乳房がぷるん!とはじける。
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「ああああああああー!」
見る間に青年の脚が内股になっていく。きゅきゅきゅっと腰がくびれていき、臀部が膨張する。筋肉質の身体が柔らかく、女性的なフォルムに変化していく。
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「こ、これは…これは一体…」
その声も既に女性のそれだった。碧なす美しい黒髪は肩まで伸び、その顔は美女のそれとなっていた。
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ゆっくりと立ち上がる男。それには目もくれず、変わり果てた自分の身体に呆然としている青年。いや、もう「青年」ではないのだが。
「…しい」
「え?」
混乱しながらも、動物的な危機感覚がかつての青年の視線を目の前の男に向けさせる。
男は恍惚とした表情でかつての青年を見つめ、迫ってくる。その目には狂気の光が宿る。
「美しい…」
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「…は!?」
「なんて美しいんだ」
かつての青年から血の気が引いていく。後ずさるかつての青年。
「な、何言ってんだ…」
「実は俺は…前からお前のことを…」
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「や、やめろお!」
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抵抗するまもなく組み敷かれ、唇を奪われる。その目からは一筋の光沢が尾を引いていた…。
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今回の依頼は以外と簡単でした。もうあの二人はすっかり仲良しになっているそうです。
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聞いた話では同じ部屋に住んで毎日にゃんにゃんしているとか。羨ましい限りです。いやあ、いいことをするって本当に気持ちのいいもんですね。
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困ったことなどありましたらなんなりと私に相談して下さい。私に出来る範囲でお力になりますので…とは言っても風来坊ですのでそうそう都合よくはいかないのが辛いところです。今度あなたの街に訪れる機会などありましたら、その時は宜しくお願いいたします。
それでは…。
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