「華代ちゃんシリーズ」28


「子供の日」

作・真城 悠

*「華代ちゃん」の公式設定については

http://geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan00.html を参照して下さい



 こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。

 最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

 さて、今回のお客様は…。



「うーん、何がいいかしら」
 思わず独り言を言ってしまうその女の子。
 周囲の女の子たちも何やら夢見がちな表情でいそいそと書き込みをしている。
 そこにはクラスの子供が集められていた。
 しかし、その中に1人沈んでいる少年がいた・・・。


「はーあ・・・」
 誰もいない教室に座り込んでいる少年。何をするでもなく、ぼーっとしている。
「そんなこと言われてもなあ・・・」
 誰に聞かせるでもないだろうに妙にハッキリした口調で独り言を言っている。
「はい、ぼく!」
「うわわっ!!」
 突然声を掛けられて飛び上がる少年。
「なーにしてんの?こんなところで!」
 そこにははちきれそうな笑顔の少女がいた。年の頃は自分と同じ・・・つまり小学3〜4年生・・・くらいに見える。
 少年はとっさにクラスにこんな女の子いたっけか?と考えた。あるいは学年に?・・・駄目だ。すぐには出てこない。
「はいこれ!」
 と、得意げに何か紙片を差し出してくる少女。
「あ・・・はあ」
 余りに堂堂としたその態度に思わず受け取ってしまう。
「ええ・・・と」
 そこには「ココロとカラダの悩み、お受けいたします」と書いてあった。続く名前は・・・難しくてよく分からない。
「で・・・?」
 少年は同年代の女の子たちの気の強いところが苦手だった。正直早く済ませて欲しいと思っていた。
「『で?』じゃないわよ。こんなところで何してんの?」
「・・・いいよどうでも・・・いいからあっちいけよ!」
 珍しく自分に声を掛けてくれた女の子であったにも関わらず邪険な態度を取ってしまった。
「どうでもいいってことないでしょう・・・」


 その女の子はなかなか離れなかった。
 しかしクラスの気が強いばかりで「イケてない」彼など全く歯牙にもかけない同級生たちとは違ってきちんと相手をしてくれた。その内、今の時間はクラス全員が運動場に出てドッジボールをしている時間にも関わらず抜け出して教室でのんびりしていることまで分かってしまった。
「ふーん、で日常が面白くないんだ」
「いや別に・・・特にいじめられてるとかって訳じゃないし・・・」
「うーん・・・」
 何やら腕組みして考え始める女の子。
「よし分かった。じゃあ今回は出欠大サービスだわ」
「へ?」
 感じのいい娘なんだけど、1人で勝手に納得して次々話を進めてしまうのが困り物だった。
 ひょい、と椅子から飛び降りると教室の前のほうにとてとて歩いていく。
 そして紙製の箱にうずたかく積まれている紙の束を手にする。
「これね。えーと、政治家に公務員に・・・あ、あるねプロ野球選手にサッカー選手。へーえ、最近の子ってスレてるのかと思ったら意外にまともじゃん。ラッパーに・・・えーと」
「で・・・それが何なの?」
 と、その時廊下の方が騒がしくなってきた。運動場で遊んでいたクラスメートが帰ってきたのである。
「あー!もう困ったなあ・・・ねえ、これ貸してね!」
 と、紙の束を掴んで走り出してしまう。
「あ・・・あの・・・」
 全く人の話を聞かないその女の子は、一言二言耳元で囁くと風の様に消えてしまった。


 あのアンケート用紙は何でも「子供の日」に合わせた一種の意識調査で、「将来の夢」を記したものだった。
 教室内はドッジボールの授業を「さぼった」少年のことなど忘れたかの様にいつもの活気を取り戻していた。
 もう次の授業が始まろうとしていたが少年は幻の様に現われ、そして消えた少女のことで頭が一杯だった。
 あの子は確かに言った。「夢を叶えてあげる」と・・・。
 ・・・あれは一体何だったのだろう?本当に夢だったのだろうか?
 あと、もう一つ気になることも言っていた。
「これって偶数が男の子よね?」
 と。
 最近は出席番号を男女交互にカウントするのだが・・・咄嗟に頷いてしまった気がするけど・・・どうだったかな?自分の出席番号は5番だけど・・・
 ・・・その時だった。
 最初の異変が教室内を襲ったのである。
「・・・ん?」
 まだまだ小学生ながら端正な顔立ちで人気者の少年が突如脂汗を流して苦しみ始めたのである。
「・・・あ、あああ・・・」
「ん?キョウくん?どうしたの?」
 まだ若い女性の担任はそう言って、次の瞬間凍りついた。
「ああ・・・うわあああっ!」
 少年の身長は見る見るうちに伸び始めた。
「きゃああああ〜っ!」
 クラスの女子の絹を引き裂くような悲鳴が響き渡った。
 むくむくむく・・・と伸びて行く身長。不思議な事に着ている服はそれに合わせるかのように伸縮していった。
「うわあああっ!か、カラダが・・・カラダがあっ!」
 パニックを起こして半泣きの表情になっている彼。
 子供っぽかったその顔立ちは面長になり、緑なす黒髪が艶やかに輝く。
「あっ・・・あっ・・・お、おっぱいが・・・あああっ!」
 直接的過ぎる表現がそのまま進行しつつある現象を描写していた。
 細くスレンダーに整ったその肢体の胸部に、ツンと上を向いた形のいい乳房がむくむくと隆起していく。
 ウェストのくびれを強調するかの様に何かが乗せられそうなほどヒップが突き出、盛り上がる。
 その肉体は今や成熟した女性のものであった。
 クラスメートは男女ともパニック状態であった。ついさっきまで同い年だった友達が1人大人になってしまったのだ!
 しかし、変化はそれだけに留まらなかった。
 大人の女性がつんつるてんの少年ルックに身を包んでいる情景も、見る者に何やら倒錯した感情を抱かせるが、その衣装が見る見るうちに白く染まっていくのだった。
 上履きはピンク色のサンダルになり、艶かしい脚線美は純白のストッキングで覆われていく。
「あ・・・ああ・・・」
 全身が清潔感を漂わせる白衣へと変わり、うなじを露出させて髪がひとりでにまとまっていく。
 暖かそうな紺色のカーディガンが上半身を覆い、どこから現われたのかその手にはクリップボードが握られていた。
「か、看護婦・・・さん?」
 そう言ったのは「将来の夢」欄に「看護婦さん」と書き込んだ子だった。
 冷静に事態を分析できたのはここまでだった。
「うわああっ!オ○ン○ンがああああ〜っっっ!!」
 その悲鳴と共に次々に大人の女性へと変貌を遂げていく少年たち。その中には勿論、先ほど謎の少女と遭遇した少年もいた。
 便りにならないことに、担任の若い女性教師はこの天変地異の出来事を前に腰を抜かしてへたり込んでしまっていた。
「あ、おまえ・・・お・・・女に・・・」
「お前・・・こそ・・・」
 乳房が大きなテントを張り、お腹が露出したピチピチのTシャツに張り詰めた半ズボンから脚線美を総露出させた美女軍団はまさしく異様な光景としか言い様が無かった。
 突如高くなった視線に戸惑う少年たち・・・いや女性たち。
「あ・・・、あっ・・・ああっ!」
 慣れない女体の感触に戸惑って頬を赤らめる、女性の肉体に押し込められた少年たち。余りの出来事に既に現実感は喪失している。
 そしてその衣装が次々に変貌を遂げていく。
 ある者はシックな紺色のストライプ模様の入ったスーツに身を包んでいく。膝上までのミニスカートから出たその脚には漆黒のストッキングはかぶさっていく。
 自然とその仕草も女性的なものになる元・少年はその顔にも抑え目のメイクを忍ばせていく・・・
 首回りにスカーフをなびかせ、キャップが頭の上に出現する。
「あ・・・いや・・・いやあっ!」
 何時の間にか悲鳴まで女性のものになってしまっている。
 震えながらこのパノラマを眺めていたクラスメートの女子は、その姿が自分の将来の夢であることに気がついていた。
「あ・・・スチュワーデスさん・・・だ」
 クラスの男子生徒たちは今や大人の女性になり、カモシカの様な脚線美もまぶしいプロテニスプレイヤーや豪奢な衣装に身を包んだモデル風の女性などに姿を変えていく。
「こ、これってまさか・・・」
 声に出した元・少年はその声が聞き慣れないものになっていることまで意識は回らなかった。ただただ、倍近くにも感じられる視点から見下ろす変わり果てた自らの身体に呆然としていた。
「お、お前・・・まさか・・・」
 見た事も無いお姉さんがこちらに向かって声を掛けてくる。いや、この女の人もきっとさっきまで小学生の『男子』だった少年、クラスメートの1人に違いない。余りの変わり様に元は誰だったのかすら分からない。
「あ・・・、ふ、服が・・・服が・・・あ」
 メリハリのある体形を彩っていた少年ルックもゲル状に溶解し、全身を覆い尽くすかのように広がっていく。
 見えないパーツの一つが形のいい乳房をぎゅっ!と締め上げた。
「あっ!・・・」
 軽い喘ぎ声をあげて背筋をのけぞらせる。
 まだ彼には女の肉体のその仕組みを理解する世間知は無かった。だが、何よりもまず身をもってその感触を知ることとなったのである・・・。
 思わず周囲からわあ〜っ!と声があがる。
 “彼女”の肉体を包んでいた物質は、艶やかな光沢を放つ純白のウェディング・ドレスへと生まれ変わっていた。その姿はクラスメートの女子の多くの“将来の夢”そのものであった。
「あ・・・ああ・・・」
 少年はもう震える指で目の前に出現した“お嫁さん”を指差すしかなかった。
 ・・・だが何やら肌寒く感じる。
「な、何だあ!?」
 少年の両肩と、そして細いその腕は全て剥き出しになっていた。
 重いまつげに苦労しつつ身体を見下ろすと、上半身しか見ることが出来なかった。
 腰から真横に広がったスカートに視界を遮られていたのである。
「きゃあっ!」
 反射的に嬌声をあげてしまう。そしてふわりと空中に身を躍らせていた。
 可憐なバレリーナとなってしまった彼はクラスの女子の視線をまた一身に集めていたのだった。


 クラスの担任がそのまま意識を失った後にも変貌劇は続いた。
 幼さを残していた少女たちの肉体は、かつてのクラスメートの男子を見下ろすほどに成長していた。
 そしてまた“彼ら”も「プロ野球選手」、や「公務員」、そして「政治家」などへと変化していったのだった・・・






 えーと、暦的にはまだ連休の始まる前だったみたいだけど、今回はとってもサービスしてあげちゃいました。えへ。
 クラス全員の願いを一気にかなえてあげたんですからもうみんな大満足!でしょうね。
 いやー、いい事をした日はとっても気分がいいですね!出席番号をあんまりちゃんと確認しなかったんだけど・・・まあ、大丈夫ですよね!
 それでは!


































 あとがき

 あー、どうも。あんまり活動しないので色んな人にお叱りを受けてしまった真城です。
 今回は「子供の日」に引っかかると自分で宣言してしまったので、こういう内容になりました。
 まあ、我ながら途中からオチが読めてしまいますが「そこがいい」と開き直ってやっております。はい。

 今考えているのが、やっぱりこういう風に肉体的に性転換してしまうと精神も変わるのか?という課題。
 まあ性転換したこと無いので何とも分からないんですけど、やっぱり変わるんでしょうかねえ。水谷さんの「みづほの駒音」みたいに、少女化したせいで余計に挙動が“少年ぽく”なるという現象は説得力ある感じでしたけどね。
 色んなシチュエーションで「集団性転換」をかましているんですけど、やっぱ「その後」とか考えてみますよね。
 それこそ集団性転換後の混乱は色々あるでしょう。社会的にとか色々。戸籍の改定は認められないとか私の足りない頭で考えても星の数ほど障害はあると思うんですが、まあそれでも一応決着して全員が「女として」生活を始めたとしましょう。
 こういう時ってみんな友達のまんまだとして、会話って男のアイデンティティを残したままなのかな?ということ。
「なあ、ブラって何使ってる?」
「ああ、俺は○○社の××だぜ。寄せて上げられるのがいい感じさ」
 とか、
「なあ、お前の彼氏どうなんだよ?」
「駄目だな。浮気ばっかりで。俺以外の女に振り向くなってんだ」
 とか会話してるのかなあ?という・・・。最もこんなに男の自我が残ってるんだったら男と付き合ってるのか怪しいもんですが。
 10年後に開いた同窓会とかみんなマダムになって子供を抱いて集まったりするのかなあ。とか。
 授乳させながら男の子の青春アイテムの女性アイドルの話題とか、もしも集団性転換パニックが起こったのが高校生とかだったらAV女優とかグラビアアイドルとかの話とかするのかなあ、なんて思いますね。そうじゃなくてもゲームとかアニメの話とかするでしょ。

 集団性転換から数年以上を経ていっぱしの“女”として成長した面々が再開する、というストーリーは非常に興味を惹かれるんですけど、残念ながら私の力量ではキチンと描写できる自信がありません。何日かに一度想像しながら寝たりして楽しんでいるところであります。
 自信がある方はお書きになってみては如何でしょう?キチンと書けば純文学みたいな叙情的なお話が出来そうな感じがしますが・・・

 正直行って以前の様に量産こそ出来ません。ですが、2箇月も何もしないでというのは流石に申し訳ないのでなるべく時間を作ってやっていきたいと思います。
 叱咤激励してくださった皆さん、有難うございました。
 これからもよろしくお願い致します。2002.5.6.