おかしなふたり 連載01〜10

第1回(2002.9.2.)
「うーん」
 女子高生の制服姿で寝返りを打つ少女。その健康的な肢体が悩ましい。
 布団の脇で両手で顔を支えながらそれを微笑ましく見ている少女。こちらはパジャマ姿である。ニコニコと非常に期限が良さそうだ。こちらは若干若く、ショートカットだった。
 相変わらずすやすやと寝息を立てる制服少女。
 また寝返りをうつと、今度は短いスカートがめくれてパンティが露出してしまう。
「あらあら」
 パジャマ少女は嬉しそうにスカートでパンティを隠し、タオルケットを引き寄せて身体に被せる。
「う、うーん」
 制服少女が目覚めたようだ。そろそろ外も明るくなっている
「・・・?・・・!?!?!」
 がばり!と突然跳ね起きる制服少女。その長い髪が上半身を覆い隠して波打つ。
 目をぱちくりさせて自分の身体を見下ろしている。


第2回(2002.9.3.)
 制服少女の目に飛び込んでくるのは自らの身体・・・それだけである。
 だが、何やら複雑な表情を浮かべてスカートの中の脚をすりすりしてしまう。
 脚はいつのまにか「とんび座り」になっている。
「おはよー」
 びくっ!とする制服少女。そしてはぁ、と溜め息をつく。
「またお前か」
「うん。まあね」
「で?・・・これは?」
 自らのひらひらのスカートをつまんで言う制服少女。
「ん?いや、“寝乱れる女子高生”が見たくって」
「何だよそれ・・・」
 あきれる制服少女。
「もう朝だから戻しといてくれよ」
「うん、分かった。お兄ちゃん」
 ぱちりとウィンクするパジャマ少女。


第3回(2002.9.4.)
 とてとてと出て行くパジャマ少女。
 バタン、とドアが閉まったのを確認してはあ、とまた溜め息をつく制服少女。
 しばらく何やら考えていたが、その場ですっくと立ち上がる。
 背中まである長い髪がふわりとゆらぐ。
 不自然なほど短いスカートから健康的な素足がすらりと伸びている。ちょっとでも前かがみをしたら見えてしまいそうだ。
 自分の身体であるはずなのに何やら珍しい物を見るような神妙な態度の制服少女。
 ちょっときゅうっと身体をねじって背中からお尻を見下ろす。
 そこには男の身体つきとは明らかに異なった、ぽっこり膨らんだ臀部がある。
 かぁっと赤くなる制服少女。
 寝ている時には邪魔で仕方ない靴下で少し歩き、上半身が辛うじて映る鏡の前に来る。
 そこには首元に可愛らしい真っ赤なリボンを花開かせた女子高生が覗き返している。


第4回(2002.9.5.)
 きょろきょろとあたりを見回す制服少女。
 そろそろ薄明るくなってくる時間帯。自室に誰もいるはずが無い。
 ごくりと唾を飲み込む。
 目の前には見慣れぬ小高い丘が呼吸に合わせてかすかに上下している。
 折れそうな細い指をゆっくりと伸ばしてその胸にそうっと抑え・・・
「お兄ちゃん!」
「わわわっ!」
 ビックリして飛び上がる制服少女。
 ふわりと髪が空中に広がって、そして降ってくる。
 自分で突然飛び込んできておきながらポカンとしているパジャマ少女。
「・・・どしたの?」
「い、いやその・・・」
 まさか事実をそのまま告げる訳にもいかずにドギマギしてしまう制服少女。
 悪戯っぽい表情になるパジャマ少女。
「はは〜ん・・・お兄ちゃん、なにかやらしーことしようとしてたでしょ!」
 あさっての方向にあった両手を隠す様に背中側に隠す制服少女。
「べ、別に・・・」


第5回(2002.9.6.)
「ほんとーお?」
 いたずらっぽい表情で迫る。背の高さは大体同じくらいであろうか。


第6回(2002.9.7.)
「い、いいからあっちいけよ」
 何とも可愛らしい声で顔をそむける制服少女。照れているのかほんおり頬が染まっている。
「あたしがいない間にあんなことやこんなことしてたんじゃないの〜?」
「し、してねえよ」
 無理な男言葉が更に可愛い。
「おっぱいもんじゃうぞ!うりうり!」
 間髪入れずにパジャマ少女の乳房をもみほごす。
「うわっ!や、ややややめろっ!」
「とりゃっ!」
 ぶわり!と広がるスカート。
「きゃあっ!」
 ぶわりと広がったスカートを押さえつけるために自然と内股になり、可愛らしい仕草になってしまう制服少女。
「可愛い〜っ!」
 黄色い声をあげるパジャマ少女。
 こいつう、とスカートをめくり返そうとしてはっ!と気が付く制服少女。そう、スカートを履いているのはこちらだけで、ズボン状のパジャマが相手では不可能なのだ。ず、ずるい!
 けらけらと笑いこけるパジャマ少女。完全に楽しんでいる。箸が転んでもおかしい年頃とは言え性質が悪い。
「ごめんごめん。もうこれまで」
「全く・・・」
 安心しかけたその瞬間だった。
 パジャマ少女は瞬時に制服少女の背中側に回りこんで背中の真中のゴツゴツした突起に指を伸ばした。
「あっ!」
 ぷちっ!と言う音と共に乳房を押さえつける感触が緩くなった。
「さ、さとりぃっ!」
 顔を真っ赤にして怒る制服少女。
 自然と両手で胸を抱え込んでしまう制服少女。
「きゃー!」
 相変わらず爆笑している「さとり」と呼ばれた少女。
 そう、これこそがこの妹の得意技、「服の上からブラジャーのホックを外す」という「必殺ブラ外し」である。
「ごめんごめん。きゃー!」
 今度こそ部屋を飛び出していくパジャマ少女こと聡(さとり)。
「まったく・・・」
 外されてしまったことで余計にその存在を意識せざるを得ないブラジャー・・・背中にホックの金属部分が当たってちょっと痛い。あいつはクラスメートの女の子にもしょっちゅうこれをかましているというが・・・全く。


第7回(2002.9.8.)
 そうなのだ。妹の聡(さとり)は兄である歩(あゆみ)を性転換し、女の子にしてしまえる能力を持っているのだ。
 とても信じられない話だが、事実である。現にこうして制服姿も可愛らしい姿に変えられてしまっているのが動かぬ証拠である。
 また一人になった歩はじいっと自らの身体を見詰める。
 短すぎるスカートから瑞々しいふとももがほぼ100%露出している。
 ごくり、と唾を飲む。
 ゆっくりとずり落ちるブラジャーを支えている手を離して片手をスカートに伸ばす歩。
 さきほどめくられたにも関わらずその裾を持つ。
 ぞくぞくっ!と刺激が背筋を走りぬける。
 思わず両足をすりすりと擦り合わせてしまう。
 きちんと服を着ているにも関わらず裸同士の脚の内側が触れ合い、複雑な快感が襲ってくる。
 ゆっくりとスカートを持ち上げる。
 そこにはぺたんこのパンティがあった。
 こ、これが・・・これが今の自分の身体だなんて・・・
「・・・あ・・・」
 と、声が出そうになったその時、何かに気が付いたかの様にはらりとスカートから手を離し、すたすたと入り口のドアに向かって歩いていく。
 ぎい、とドアを開ける歩。
「・・・何してる」
「あ・・・バレた?」
 そこには聞き耳を立てている聡がしゃがみこんでいたのだ。


第8回(2002.9.9.)
「えへへ・・・」
 頭をかきかき退散・・・自分の部屋へと帰っていく聡(さとり)。
 流石にもう大丈夫だろう、と部屋にまた入り、背中でドアを閉める歩(あゆみ)。
 客観的に見れば歩は年頃の男子高校生が持つには余りにも大胆な特質を持っていることになる。いや、ありとあらゆる人類がこんな能力なんかもっていない。
 ふう、と溜め息をつく。
 この騒動の間に空はすっかり明るくなっている。
 下半身に何も身につけていないかの様な頼りないスカートの感触は相変わらずだ。
 そう、性に興味の出てくる男の子が喉から手が出るほど欲しい女性の身体が、すぐ手が届くところにあるのである。
 恐らく「自由に女の子になって、自由に戻れる能力」が欲しいか、と聞いたら半数・・・或いはそれ以上が「欲しい!」と言うだろう。
 「戻れない」というのなら話は別だ。でも「戻れる」というのが効いている。
 そしていま歩(あゆみ)はその状態なのである。
 しかし、ただ一点、非常に重大な問題があった。

 壁についていた背中をひょい、と離す。
 もしも外れたブラジャーのホックをつけようと思ったら・・・女子高生若葉マークの歩(あゆみ)では下着姿にならないと無理だろう。
 そのことを想像してかあっと赤くなる歩(あゆみ)。

 その時だった。


第9回(2002.9.10.)
 幻影でも見るようだった。
 可愛らしい制服は見る見るその形を変え、あっという間に元の何の変哲も無いパジャマになってしまう。
 またまたふう、と溜め息をつく歩(あゆみ)。
 そうなのである。
 この少年は確かに性転換する“変身能力”を持っている。持っているんだが、コントロール能力は持っていないのである。妹である聡(さとり)の意思次第、という訳だ。
 その上妹は女の子に変身してしまってドギマギしている兄の姿を見て楽しんでいる様なところがある。決してサドッ気があったりはしないが・・・いや、ちょっとあるかもしれない。

 そんなこんなで、歩は女の子となった自分の身体を思う存分触ったりあんなことやこんなことをした事が無い!無いったら無いのだ。
 何しろ自分の意志で変身出来ない。常に妹頼りである。もしもなにか「やらしい」ことまでしようと思ったらそれはあれに「見られる」ことを覚悟しなくてはならないのだ。
 それは出来ない。幾らなんでも。
 大体女装・・・みたいなもんだ・・・姿を他人に見られるだけでも恥ずかしくて顔から火が出そうなのにその上・・・
 うー!やだやだ!考えただけで寒気がする。
 でも・・・
 明らかに聡(さとり)の奴はそれを狙ってるよな・・・さっきだって興味津々だったし・・・

 見えそうなミニスカートから普通のパジャマになったことで、下半身は遥かに多くカバーされるようになった。
 安心してぺたんと座り込み、ばふん!と布団に顔を埋める。
 ・・・実は今日は日曜日なのだった。
 もう少し寝てようかな・・・特にやることも無いし・・・部屋でゴロゴロしてるのもいいし。

 ・・・兄を性転換する能力を持つ妹。
 これだけでも充分異常なのだが、実はこれだけでは無い。もう1つ能力があるのだ。


第10回(2002.9.10.)
 目の前にはチャーハンが湯気を上げている。
 冷凍のものを暖めてそのまま食べられるもので、軽い朝食には最適である。
 今日は両親とも出かけている。非常に珍しいことだ。
 ということは・・・
「おーっす!お兄ちゃん!」
 非常にラフな格好で飛び出してくる聡(さとり)。
「ああ」
 気乗りのしない歩(あゆみ)。
 薄着に無地のTシャツ。短パンである。若々しい素足が殆ど剥き出し状態。
 冷蔵庫を物色して何やら取り出す聡。
「今日さあ、お兄ちゃん」
 ゲル状の栄養ゼリーを加えて目の前に座り込む聡。それで朝食の積りなだろう。
「何だ?」
「ゲーセン行こうと思うんだけど」
「行けば?」
「お願いしていいかな?」
「いいけど・・・」