おかしなふたり 連載231〜240

第231回(2003.4.20.(日))
「あーたが飲み残して行ったんじゃん」
「あ、そうね・・・あはは」
 あのアホが・・・、と歩(あゆみ)は思った。
 ずぼらな性格というか、細かい事にこだわらないタイプの性格であることは知っていたが、飲みかけのジュースを教室に置きっ放しにしてあちこち行くとかちょっと信じられない。
 一歳違いの兄妹で、背格好こそ少し差がついたものの顔立ちなどはよく似ているが、性格はかなり違う。
 聡(さとり)になってしまっている歩(あゆみ)は有り難く手にとってストローでちゅーちゅーやり始めた。
 確かに「間接キス」状態にはなっているが、小さい頃から普通にジュースの回し飲みとかして来たので今さら気にしない。
「ねーねーところでさあ」
 むにゅ!とアケミの胸が聡(さとり)・・・じゃなくて歩(あゆみ)の腕に押し付けられた!


第232回(2003.4.21.(月))
「・・・!?」
 目を白黒させているのに、更に追い討ちを掛ける様に腕を絡めてくるアケミ。
「さっちんさあ、どうだったの?」
「え?・・・あ、あの・・・」
 何だこのスキンシップの濃密さは?
 と歩(あゆみ)は思った。
 生粋(?)の男子校生である歩(あゆみ)は、当然ながら初体験の出来事だった。
 普通に話しているだけなのに手を繋ぎっ放しなのである。
 男同士では幾ら仲がいいからってここまで身体を接触させる事は無い。



第233回(2003.4.22.(火))
 ・・・てゆーか腕に胸が当たってるんだけど・・・。
 全然落ち着けない歩(あゆみ)。
「あ!あれ何だ!?」
 といってあらぬ方向を指差すアケミ。
「ん!?」
 反射的にそっちを向いてしまう人のいい歩(あゆみ)。
 その瞬間、
「そりゃっ!」
 といってむにゅむにゅっ!ともみほごされる乳房。
「わりゃあっ!?」
 ヘンな声が出てしまう歩(あゆみ)。


第234回(2003.4.23.(水))
 けらけら笑っている3人娘。
 その中で真っ赤になってうつむいている歩(あゆみ)。
「あーははははー!なーんちゃって冗談冗談!」
 といって笑っているアケミ。
 といいつつ用心深く自らの胸の部分をガードしていたりする。
 どうやらこの仲良し3人娘の間では、日々お互いの胸をもみもみ合戦が繰り広げられているみたいだった。
 そんなところにノーガードで座っていたのではまさに“餌食”であった。
 しかも、今の歩(あゆみ)はその女の身体やらブラジャーの締め付けそのものに慣れていなかったのだ。
 全く構えていない所に強烈な打撃を喰らったみたいなものである。


第235回(2003.4.24.(木))
 だが、女同士の連携技を舐めてはいけない。
 慌てて自らの胸を覆い隠した歩(あゆみ)に更なる攻撃が加えられようとしていた!
 それは予想もしていなかった背中側からだった!
 活発な印象のあるアケミにはその程度やれれてもなんとなくイメージなのだが、反対側に座っていた敬子によって背中の・・・そ、ちょうどブラジャーのホックのあたりがいじくられていたのだ!


第236回(2003.4.25.(金))
 ぷち、と音がした。
「・・・え?」
「やったあ〜!」
 大喜びで手を叩きあっているアケミと敬子。
「ひゅ〜ひゅ〜!!」
「え?え?」
 状況がさっぱり掴めていない歩(あゆみ)。
 ・・・と、なにやら胸元が頼りない感じである。
 こ、これは・・・ひょ、ひょっとしてええっ!!
 恥ずかしいけども胸元を探ってみる歩(あゆみ)。
「ああああっ!」
 なんてことだ!
 ブラジャーがゆるゆるになっている!というか背中のホックが外されているではないか!
 だらしなくずるずると密着していたブラがぷらぷらする。
「きゃあっ!」
 何とも可憐に真っ赤になって胸を押さえてしまう聡(さとり)の姿になってしまっている歩(あゆみ)。
 こ、これは・・・聡(さとり)の得意技である「服の上からブラのホックを外す」じゃないか!


第237回(2003.4.26.(土))
 自らの胸を抱きしめたまま硬直してしまう歩(あゆみ)。
 背中には頼りなく離れたブラジャーのホックの金属部分が当たる感触がしている。


第238回(2003.5.11.(日))
 混乱した。
 もう一杯一杯だった。
 溢れそうになっているコップのミルクに、少しミルクを足すどころか、横から体当たりをかましたみたいなもんである。
 こ、こんな所でブラジャーを外されてはどうしようも無い。しかも服の中でである。
 ひょ、ひょっとしてこのままトイレにでも行って一旦上着を脱いでから着直さないと・・・。
 そこにもう一段階上を行く悪夢がやってきた。
 ガラガラと引き戸を開けて入ってきた生徒の顔がたまたま目に入って凍りつく歩(あゆみ)。
「あ・・・ああ・・・」
 殆ど同時に机を蹴って飛び出していく歩(あゆみ)。
「あ、あの・・・」
 その声を背中に蹴飛ばして走り出るショートカットの美少女。勿論、すぐそばに仲良し二人組が追走している。
「じゃーねー!」
 呆然として取り残されたのは・・・先ほど体育館裏でフラれたばかりの青年だった。


第239回(2003.5.12.(月))
 さーてどーしたものかなー。
 相変わらずスマイリーマークみたいな笑顔の聡(さとり)が歩いている。
 いつもと違うのは、その姿が男子生徒の制服に身を包んだ好青年であったことであろう。そう、現在の聡(さとり)は男の子になっているのだ!


第240回(2003.5.13.(火))
 兄貴の教室ならしょっちゅう遊びに行っているので、場所は簡単に分かった。
「ういっすー!」
 何だかよく分かっていないのだけど、とりあえず元気よく挨拶をしてみる。
 ・・・いまいち反応が良くない。
 そりゃそうだ。いちいちこんなドリフみたいな挨拶をする男子高生はいない。いるのかも知れないが、歩(あゆみ)はそういうキャラでは無いのだった。
 いつも観察しているであろうに、聡(さとり)はそういうことは余り気にしない性格だったので、そのあたりはまるきりマイペースであった。
 あ、そうそう確かあの辺、きょーこちゃんの隣だったよね。
「やっほー!きょーこちゃん!」
 にこにこで危うく飛びつくところだった。
「あ、・・・うん。うん」
 恭子は少なからず驚いていた。
 休み時間を境に人間が変わった様だった。
 ・・・実際変わっているのだが。