おかしなふたり 連載1201〜1220

第1201回(2007年03月13日(火))

 視点変わって聡(さとり)視点。

 スクール水着姿となっていた兄が布団に飛び込むのと兄の部屋のドアが無遠慮に開けられるのは殆ど同時だった。
「ちゅーす…って、やっぱりこっちか。さっちゃん」
「あ…あはは…」
 流石の聡(さとり)も笑いが引きつっている。


第1202回(2007年03月14日(水))
「結構ノックしたんだけどなぁ…聞こえなかった?」
 これは本当に聞こえなかった。夢中になりすぎていたのだろう。
「そうね…ごめんちゃい」
 必死におどける聡(さとり)。


第1203回(2007年03月15日(木))
「いや急にいなくなるからさあ…しかもお兄ちゃんの部屋でごにょごにょ声するし…」
 恭子視点ならば確かにそうなるだろう。
「よし!」
 勢い良く立ち上がる聡(さとり)。


第1204回(2007年03月16日(金))
「じゃーあたしの部屋行こうか!」
 少々強引に見えても仕方が無い。何とか兄の部屋から恭子を引き離さなくてはならない。しかも性急に。
「うん…そうね。それにしてもお兄ちゃん忙しいよねー。彼女と自宅を行ったりきたり…さっちゃん教えてくれればいいのに」
「あはは…そーね。うん。あたしも知ったのは最近だし」
 事実には違いない。


第1205回(2007年03月17日(土))
「ふーん。…どうよお兄ちゃんに彼女がいるってのは?」
 恭子ちゃんは一人っ子なのでしょっちゅうこういう質問をして来る。幼稚園の頃から一緒だ。
 ま、自慢のお兄ちゃんだから悪い気はしないけど。
「う〜ん、やーそりゃ嬉しいよ」
 一生懸命イメージしながら答える。


第1206回(2007年03月18日(日))
「ま、相手によるけどね」
「じゃあ、女の子のあゆみちゃんならいいのね。確かに可愛いもんね」
 うん。可愛い。あたしが可愛くしてるし…とは言えないなあやっぱり。
 もうめぐさんにはバレてるし、きょーこちゃんにならいい気もするけどお兄ちゃんに相談も無しにそれはマズイから。


第1207回(2007年03月19日(月))
「へー、本当に沢崎あゆみが好きなのね」
 くるりと見渡してポスターを認めた恭子が感心した様に言う。
 小学校に入る前に別れ別れになったのでその間のことは余り知らないのである。


第1208回(2007年03月20日(火))
 その時、ピンポーン!と玄関の呼び出し音が鳴った。
「…誰か来たみたい」
 これは渡りに船だ。何とか恭子ちゃんをお兄ちゃんの部屋から出すことが出来るだろう。
 そうすれば…何とかなる。多分。


第1209回(2007年03月21日(水))
「ま、留守のお兄ちゃんの部屋にいつまでもいるのも何だし、あたしの部屋にいてよ。帰ってきたら質問攻めってことで」
 我ながらヒドイ引きだと思ったけど、この場を乗り切るためなので仕方が無い。


第1210回(2007年03月22日(木))
 色々あって、無事に恭子は聡(さとり)の部屋に戻って行った。

 かなりの時間を持って布団を上げて部屋の中をうかがう。
 どうやらいなくなったらしい。
 スクール水着の格好であるのは変わらない。


第1211回(2007年03月23日(金))
 慌ててドアのところまで飛んで行って内側から鍵をかける。
 今また来られたら誰もいない部屋の内側から勝手に鍵が掛かったことになってしまうが、構うものか。


第1212回(2007年03月24日(土))
 歩(あゆみ)は少し考えた。
 こうなったらもう聡(さとり)の操作を待っていられない。
 今来ているスクール水着は変化後のものだから、もしもあいつの操作で戻った場合、最初の普段着に“戻る”ことになる。


第1213回(2007年03月25日(日))
 ここは機転を利かすしかない。
 今この瞬間に戻る事は期待できない。
 歩(あゆみ)はスクール水着の美少女姿で腕組みをしながら部屋の中を歩き回った。
 足の裏が直接床に当たる。
 泳ぐには相応しくない腰まである髪がいちいちなびく。


第1214回(2007年03月26日(月))
 腕組みをした腕の内側に小さくない胸がむちむちと当たる。
「…」
 正直、もっとじっくり味わいたいところだが状況が恐ろしくややこしいことになっているのでそういうわけにもいかない。


第1215回(2007年03月27日(火))
 もし今この瞬間聡(さとり)の操作で戻してもらったとするならば、このスクール水着が“元に戻る”。
 そしてそれは戻る瞬間に「着ている」かどうかには関係ない。
 そうか!
 「水泳の授業」女子高生となっている歩(あゆみ)は思いついた。


第1216回(2007年03月28日(水))
 スクール水着を脱いで今の自分の普段着を着ればいいのだ。
 そうすれば戻った時に身体だけが元に戻ることになる。
 部屋に置き去りにしてあるスクール水着も元に戻る。


第1217回(2007年03月29日(木))
 …仕方が無い。覚悟を決めよう。
 部屋に設置されている箪笥から当たり障りの無い服を引っ張り出す。
 …これって一回全裸にならないといけないんだよな…。


第1218回(2007年03月30日(金))
 幾ら考えてもその事実は変わらない。
 このスクール水着はいつもの普段着が変化した姿なのである。
 もしもスクール水着の上から普段着を着てしまうと、全ての服を二回着たのと同じ状況になる。
 質量保存の法則もクソもあったもんじゃない。
 …今更考えても仕方が無いことだ。


第1219回(2007年03月31日(土))
 …とにかく急がなくてはならない。
 律儀にベッドの上に着るべき服を並べる。
「よしっ!」
 何故か気合を入れて肩ひもの部分を引っ張って腕を抜こうとする。
「…!?」
 何しろワンピース形式の女性の水着なんて着たことが無い。同じ様な構造、構成の服そのものを着たことが無い。


第1220回(2007年04月01日(日))
 着た事が無いのに脱いだことはある…というか現に今その真っ最中なのだが…というのも理不尽な話だが、目の前で起こっていることなのだから仕方が無い。
 う〜ん、何がどうなっているのやら良く分からん…。
 ええ〜い!もう目をつぶって身体を引き抜くしかない。