TS関係のオススメ本03-01


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真城 悠


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神変武闘女賊伝(水沢龍樹・1996年・ワニブックス)

 「
性転換させられるのを見るのが最も萌える」のはどんなキャラでしょうか?
 見目麗しい美少年?う〜ん、残念。そうは思えませんよね。何しろ最初から「美しい」という属性が入っています。その意味では「似合い」はするけども「ギャップを楽しむ」という訳にはいかないですね。
 もう結論を申し上げましょう。
 「性転換させ、か弱く凛々しい女性の身体にしてしまうことで最も萌えるのは
“おっさん”である」と。
 そしてその「おっさんを美少女に性転換させる」小説がこの神変武闘女賊伝です。
 要するに主人公の
荒くれ者であるおっさん(一応あらすじでは「若武者」となってますが)は、母親である魔物に「こらしめ」られ、罰を与えられます。
 その罰とは
若い娘の姿に変えられるという過酷なものだったのです…。
 どうです?すれっからしのTSファンでも久しく経験していなかった「寒気」が背筋を走り抜けませんでしたか?

 …って誰ですか!
「そんなの罰にならない。うらやましい」とか言ってるのは!
 確かに現代日本ならばある程度その論理は通用するでしょう。女子高生楽しそうですもんね(爆)。美人OLとか人生に苦労していなさそうじゃないですか(何だこの偏見)。
 しかし、まるで「三国志」の世界の様な
蛮族の跋扈する果てしない戦乱の続く荒涼とした世界に「若い美人の娘」にされて放り出された(!!)としたらどうでしょう!?
 それは余りにも過酷な運命ではありませんか!
 …というのがこの物語のあらまし。面白そうでしょ?

 というか、何より屈強なおっさんが美少女の姿に変えられるというシチュエーションにはTSファンであるからこそ味わえる快感があるではありませんか!…て随分ヒドイこと書いてますね…orz。


こんなのが上の表紙の美少女になっちゃうんですよ!
本文の該当部分もクド過ぎず軽すぎずいい感じです(^^

 女性には申し訳ないんですけど、男性がメジャーセックスで女性がマイナーセックスであるという偏見は根強くありまして、それは恐らく永遠に解決する事の無い問題だと思います。それは生物学的に性器の形状から逃れようの無い問題です。
 「男性が女性になる」というのは「女性になる」以前に「男性でなくなる」ことを意味し、実は男性が常に
潜在的に抱く恐怖なのですね。
 私はこうも「TSもの」が流行るのはその「恐怖の疑似体験」の側面もあると考えています。実際に失うのはたまったものではないので、ならばそれを想像して楽しむ…みたいな。
 それこそジェットコースターで恐怖の疑似体験をしたり、オバケ屋敷やスプラッタ・ホラーを見て
「わざわざ」怖い思いをするのに似ています。その時に出るアドレナリンを「快楽物質」として消費するのです。

 こうした「TSもの」の醍醐味は「マイナーセックスへの転落」「男性で無くなるという“喪失感”」という潜在的な恐怖を疑似体験するという側面もありながら、それでいて
「美しい存在となる」という「甘い果実」も同時に手にする「快感」でもあるんですね。
 周囲の男が自分の美しさに目を留め、傅(かしず)いてくれる…ある意味これほどの快感はありますまい。

とあるきっかけで無理矢理メイクとかされています。素晴らしい

 ま、とはいえ基本は「憧れてはいけないこと」です。昔はこんなジャンルの作品が好きだなんてのはまず公表することなど出来ず、まるで「隠れキリシタン」みたいに
こそこそ隠れて買っていたもんです。実際、真城なんてまだ周囲の人間にこのサイト運営してるって告白して無いもん(爆)。

 ともあれ、こういうのは
「耽美と退廃」がポイント。後味がいい作品ってのも勿論いいんですけど、読み終わったあと「ああ、こんなになっちゃって…」みたいな感覚に酔うのもまた一興です。

 ちなみにこの作品みたいな「不可逆」(戻れない設定)の場合、その後どの様に振舞うのかはかなり大事な要素です。
 入れ替わりでかつカップルだった場合はかなりの高確率で
そのままゴールインします。まあ、順当な落としどころなのでしょう。
 では「変身」ものである場合は?

 不可逆の変身ものですと、私の乏しいこちらジャンルの消費経験ではハッピーエンドの場合は
適当な男を見つけてくっついちゃうことが多い気がします。何も「女の幸せは結婚」と思っている訳でもありますまいに、何だかんだで「女として幸せになりました」とやりたい願望が透けて見えそうです。
 その時に、「男から女に変身させられた」事情を知っている男といい関係になるのと、
「男から女に変身させられた」という事情を知らない男といい関係になるのでは天地の差があります。

 ぶっちゃけ
「もてる」ってのは悪い気はしないもんでしょ(*^^*?

 そう!実はこの神変武闘女賊伝は女に変身しているという事情を知らないイケメンと
プラトニック・ラブの関係になるという純愛小説でもあったのです!
 これはかなり理想的な展開ですよ。何しろ物理的な性交渉となりますと、相手の意思も何も関係なくやってやれなくは無いけど、心理的に「恋愛関係」になるってのはそれこそ「めぐり合わせ」ですからね。

 状況を考えてみて下さい。
屈強なおっさんであった主人公が若く美しい娘に変えられ、挙句の果てには若い男と恋愛感情を営むに至るのです!

こんな風に男の胸に飛び込んで泣いてみたりするまでになっちゃいました。うう〜ん乙女ぇ!

 この「話の流れの中で自然と女心を育(はぐく)まざるを得なくなる」というのは、ある意味一番過酷な運命かもしれません。TS小説の中では一種の「洗脳」によって精神を女性的に変えられる話なんてのも散見されるのですが、ある意味
それよりもずっと過酷です。
 しかし、そういう逆境(???)を疑似体験して楽しむのがTS小説の醍醐味であるとするならば、正に理想であり、究極のTS小説ということも出来るのではありますまいか!
 しかも、ある意味
卑怯なことに(非難してませんからね(^^;;)プラトニックなのでいざとなったら引き返すことも出来ます。う〜ん。

 先ほど発行年月日を見てビックリしたんですが、二冊とも1996年に発売されているんですね。恐らくこの続きも構想されていたのでしょうがそれ以降発売された形跡はありません。
 擬音のセンスが一種独特だったり(しゃっ!)、形状はそうなんだろうけどちょっと雰囲気の合わない「スカート」という単語を多用するなど気になるところは幾つかあるものの、かなり想像力を刺激してくれる良書です(*^^*。
 特に一巻目の冒頭の強制変身させられる辺りはかなりの読み応えがあります。

 恐らく「面白さ」というよりは「希少価値」でマーケットプレイスの値段が
えらいことになってます(2006.11.25(土)の時点で3,459円。上巻も826円。どっちも定価は790円なのですが…)。
 流石にこの値段ですと「値段分の面白さは保障します!」とか言いにくいんですが(上巻の方がTS的に読み応えがある上に安いのでオススメはしやすいですが)、キックアウト・ラヴァーズほどでは無いにしろ入手困難であるのは間違いない一品。この機会に如何でしょう(*^^*? 2006.11.25.Sat.
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