TS関係のオススメ本04-05


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真城 悠


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ローゼンクロイツ―仮面の貴婦人
(2001年〜2004年・志麻友紀・角川ビーンズ文庫)

 今回は
本当にオススメの逸品です(^^。
 めたもる伊介なんかもこの連載が始まってから「絶対に紹介したい」作品でしたが、今回はもう
本命に近いです。それがローゼンクロイツ―仮面の貴婦人に始まるローゼン・シリーズです!
 中国語で言うなら
「神的作品ですよ!(何故中国語?)勿論TSのね!
 TSファンでもしもこの作品を読んでいない方がいたらすぐに読んで欲しい!!
 そう言い切れる
大傑作です!

 この表紙を見て思い浮かべる一般的イメージとしては恐らく「ベルサイユのばら」などの中世ヨーロッパを舞台にした華麗な宮廷ロマンでしょう。

 主人公のセシル(男)は「怪盗ローゼンクロイツ」を名乗ってお金持ちばかりを狙う義賊として活躍しているのですが、ある時なんと妹が暗殺され、王の愛人として納まっている横暴な母の差し金で何と
「花嫁として」他国に嫁ぐ羽目になってしまいますΣ(゜Д゜)!。

貴婦人として舞踏会に出ても全く違和感の無いセシルさん(男)。勿論奥の方ね

 
余りにも無茶な展開です。普通に考えても「ちょっとセレモニーに女装して顔を出す」程度ならばともかく、「嫁に行く」のですから。

 この小説の世界は架空の世界ではありますが、魔法も無ければ怪物も出て来ません。一夜にして性転換などありえるはずもなく、
自力でどうにかしなくてはならないのです。

 恐らく結婚式だけ何とか乗り切って初夜の夜に逃げ出そうとしていたのでしょうが、そうは上手く行かず、何と前夜に押し倒されて「秘密」を暴かれてしまいます。


 この辺りは所謂(いわゆる)「ボーイズラブ」の系譜を引いた展開になっていて、実は「近親憎悪」では無いのですが
TSファンが最も苦手とする展開だったりします。
 特に純粋なボーイズラブってのは
女装も性転換も無く、ごく普通の外観の男同士が…という男性読者にとって最もキツい展開。
 
ところが!
 この志麻友紀さんは本当にその辺りがお上手で、肉体的に征服させられることで
精神的に篭絡する瞬間を本当に見事に描いていらっしゃるのですね。

 冷静に考えれば、「疑似体験」としての読書に決まっているのですからこういう展開はありでしょう。そりゃ「パタリロ!」辺りではバンコラン少佐がひっとらえた少年スパイをしょっちゅう同じ目に遭わせているのですが(爆)、そういう時には「気色悪い」としか思わなかった同展開が本当に魅力的に読めるんですよ!
 ああ、なるほど
女性読者がボーイズラブ小説に求めてるのはこういうテイストなのか!と合点した次第。

セシルを背後から押し倒すオスカー。このナルシシズムが分かってもらえるでしょうか?

 私が思い出したのが、真城の数少ない有名人の知人である竹熊健太郎氏の少年時代のエピソードとして教えてもらった話。
 その当時マン研こと「漫画研究会」に所属してしこしこ漫画描いていたような女子達のカリスマといえば萩尾望都先生。ところが彼女たちが描く人間の顔は、
殆ど全員一緒の妙な鼻の形の影のついたそっくりな顔ばかり。
 竹熊氏が「何これ?」と当然の疑問を呈したところ、大変怒られたそうです。

 その後竹熊氏が「本物」を読んで「あ、これのことだったのか!」と納得した、というのですね。
 ぶっちゃけた話、
劣化コピーばかり見せられていてジャンルそのものに幻滅していたけども、「元祖」「本当に凄い物」を目の当たりにすることでその魅力に気付いたということなんです!
 真城は決してやおいジャンルに詳しい訳では無いんですが、このローゼンクロイツ―仮面の貴婦人が、門外漢にもその魅力を余すところ無く伝える力作であるのは疑いようがありません!

 「やおい」「ボーイズラブ」「耽美」「JUNE」等々、
恐竜の進化系図みたいな細々とした分類についてはよく知らないんですが、要するに「女性読者が主に熱狂する男性同士のカップルを描くラブストーリー」があります。

 彼女たちがラブストーリーに求めることは何か?
 それは
「障害のある恋」!これですよ!
 古今東西このテーマでどれだけの小説・映画が書かれ、作られてきたことか!
 実は「やおい」ジャンルが何故ここまで受け入れられるかと言えばそれが
「障害のある恋」だから、という説があります。
 そりゃそうでしょう。何せ
「男同士」なんだから、これ以上の障害はありますまい
 正に
「そうか!そういうことだったのか!」状態です。

冒頭に必ずついている登場人物紹介ページ。セシルの紹介文を拡大してみます


Σ(゜Д゜)!!この美しいドレスの美丈夫は間違いなく男性です
向かって右の黒髪の男がオスカー

 このオスカーってのがとても魅力的な副主人公なのですが、男と知った上で尚…というのは明らかに別の目的。特に
男色家という訳ではなくて純粋にセシルのみというのもポイント。
 
「男の格好のままではやめて!」とかセシルが言うんですよこれが!きゃー!

 正直第一巻を読んでいた時に
「これってどういう風にエンディングになるんだろう?」と不安でした。
 オスカーとセシルの間には間違いなく恋愛感情が芽生えてはいるものの、男同士では結ばれるはずもなくそんな話がばれればお互い王家の血筋ですから
外交問題に発展しかねません。つまり、物理的にも政治的にも(ここ大事!テストに出ます)二人が結ばれるのは不可能なんです。

 ところが…これはネタバレ(?)ですけども、一人でも多くこの作品の魅力を知ってもらいたいので第一巻だけは書いてしまいましょう…何とちょっと考えれば当たり前だけれども、私の様に常識に縛られていた人間にはまず出てこない
解決方法があったんです!

 …ここで一旦枠線を区切りますので、皆さんもよく考えてみて下さい。
 この状況を打破するには一体どうしたらいいでしょう?



 では正解の発表です。それは…
そのまま夫婦として過ごしちゃえばいいじゃん!というものだったのです! 

 …え?当たり前じゃないかって?
 いや、私は
「そうか!そうすれば良かったのか!」と膝を打ちました。何というかコロンブスが卵を叩き割って立てたのを見せられた思いだったんです。

 どうしても「収まるところに全てが丸く収まった綺麗なハッピーエンド」ばかり思い描いていた私には、
常識的に考えればバッドエンドであるこの方式で押し切ることは全く考慮の外でした。

 ラストで、アキテーヌ(旦那であるオスカーの国ね)のお家騒動も一段落し、この狂言も終わったということで国に帰ったセシルを迎えに来るオスカーの下りは、もう
キメキメの名台詞の応酬で全てのセンテンスが名場面!

 ん?
「子供はどうするのか」って?
 忘れちゃいけない。オスカーはまだ幼少の王子様をお守りする役割があるんですよ!
 まだまだ無邪気…というか無茶苦茶可愛い王子様を「擬似夫婦」の二人で子供を育てる様に見守っていこう…ということになることで万事解決。

アキテーヌ国王ルネ陛下。ご覧の通りまだ子供です…ってΣ(゜Д゜*)カワイイ…

 ハッピーエンドというのは本当に読んでいて
「ああ良かった」とハッピーになるものです。
 その意味ではこの「ローゼンクロイツ」は
正に100点満点!
 いざこざも色々あったけども…いや、あったからこそ…、最後にはお互いの愛を確認し、文句の無い形で終わります。

第一巻ラストで遂に相思相愛となるセシルとオスカー。大感動(;´Д⊂…

 元々志麻先生が「角川ルビー小説賞」に投稿した小説が元になっていますので、最初はこの一冊のみで完結の予定でした。ですから完成度は最高。いかにも「続きますよ」という風には終わっていません。


 とにかくロードス島戦記に勝るとも劣らない
「登場人物と関係者が王侯貴族ばっかり」の展開。しかも全員が美男美女!しかも性格的にも素敵な人ばっかり!
 それでいてみんな
腕っ節も滅法強いので、暴漢風情なんぞは軽くクールに叩きのめします。うっとりして憧れるには十分のタレントばかりずらりですよ!

 本当に夢みたいに豪華絢爛。
私が女子中学生とかだったらもう本当に二十四時間この作品のことばかり考えていることでしょう(^^。

 余りの面白さに実に4年にも渡って断続的に文庫が発売され続け、番外編の短編集まで含めて実に12冊が刊行され、2004年に完結いたしました。

 敵方にも美男美女で、かつ人格的にも優れた
魅力的な人物がつるべ打ちの様に毎回登場。特に「アルビオンの騎士」に登場したヴァンダリスや「スルタン」二部作に登場したファルザードとか魅力的だったなあ…っていうか、ファルザードなんて明らかに作者の寵愛を受けまくっており(^^;;、志麻先生もあとがきでそれを吐露しておいでです。

 その王様たちがみんなセシルを男性だと知っても尚
恋焦がれて奪い合うんですね!
 もうこの辺まで来るとセシルが
男か女かなんてどうでもよくなっていて、普通に面白いラブストーリーです。

 このシリーズを読んでいると柄にもなく「愛し合うって素晴らしい」とか「好きな人がいるってことは素敵だ」と思えてしまいますね(*^^*。いや、読めば分かります。
 セシルとオスカーは夫婦喧嘩(?)もしょっちゅうするんですが、いざピンチになると自らの危険を顧みずに助けに来ます。

 これが本当に
「嗚呼、こんな時にオスカーがいてくれたら…」というところに来るんですよ!
 今はシリーズ全てが出揃っていますけど、セシル達は本当に毎回毎回かなりのピンチにさらされます。
 っていうか、この波乱万丈ぶりは少年向け(?)ライトノベルから一線を画しているんじゃないかと思うくらい。

 「え?
こんなムチャやっちゃって本当に助かるの?」と読者が本気で心配してしまうような大ピンチがバンバン襲い来るんですよ!

 もう作者に胸倉を掴まれてあっちにこっちに振り回される
読者冥利に尽きる至高の体験!リーダビリティなんて言葉が陳腐に感じるエンターテインメントですよ!

 活字マニアがあまりにしょっちゅう言うもんで半ば信用をなくしているんですが(爆)、人に本をオススメする時によくこういう表現をします。
「これから読む人がうらやましい」
と。

 本当にそんな気分ですね。
 今回紹介するにあたって一部をざっと読み返したんですけど、やっぱりいいわ〜(*^^*。
 CDドラマ化もされており、アニメ化…は難しいかも知れないけど、絶対その内何らかの展開があるのは間違いない作品です。今のうちにツバをつけときましょう(^^。

 流石にちと巻数が多いので、これから読む方はまず「完結記念」ということで刊行された「Grand Amour―ローゼンクロイツ・プレザン」と第一巻のローゼンクロイツ―仮面の貴婦人をまず手にとって見るのがいいのでは無いでしょうか(^^。
 こういう小説って巻数表示が無いので、どれをどういう順番で買って読めばいいのか
とても分かりにくいのが欠点なのですが、Grand Amour―ローゼンクロイツ・プレザンにガイドが載っていますので全て解決です。

本当にうっとりするほど美しい表紙。でもこのドレスの美女は男性なのですね(*^^*

 また、この世界の案内として、挿絵を担当なさっているさいとうちほ先生の漫画が掲載されており、ぶっちゃけ活字が苦手な方はこの漫画
を読むだけでも間違いなく値段分の価値はあります!

結婚式の場面が遂に漫画化!…って心の中でトンでもない悪態をついている花嫁(男)。
「くそっ体が痛い」…Σ(゜Д゜*)!!ユウベハドンナメニアッタンダロウ(←白々しい)

 シリーズ全体のガイドはこれで終わりですけども、更に細かいTS的見せ場があります(*^^*ので、最後にそれを紹介しましょう。
 シリーズ初の続編となった「アルビオンの騎士」(上下巻)にジュール君という少年が登場します。
 身寄りの無い下級騎士階級の彼は国家のスパイとして引き抜かれて潜入工作を担当することになるんですが…なんと女装してその役目を果たすことになるんですね。

この男に言い寄られている可愛らしいドレスの美少女がジュール君(男)

 いやあ、
脇役にまで女装キャラを配するというのは流石(*^^*。

 この少年が引き抜かれ、
女装や身繕いを覚えさせられたりする訓練の下りはお見事。私にはそういう属性は無いのですけど、好きな人にはたまらない場面かも知れません。何しろムチでしばきながらの厳しい訓練ですから。

 そして、オスカーと共に女装したまま門を通ろうとする場面がこれ。

オスカーのうしろでもじもじしているのがジュール君(男)。きょ、凶悪なほどカワイイですな…。

 とにもかくにも胸を張ってオススメ出来るシリーズ!あなたもこの絢爛豪華な世界に酔いしれましょう!
2006.12.09.Sat.


CDドラマです。皆川純子さん演じるセシルの一瞬にして男女の声色の演じ分けは鳥肌が立つほど素晴らしい(^∀^)ノ!
カドカワ・サウンドシネマ・シリーズ ローゼンクロイツ 第一幕
カドカワ・サウンドシネマ・シリーズ  ローゼンクロイツ 第二幕
カドカワ・サウンドシネマ・シリーズ  ローゼンクロイツ 第三幕
カドカワ・サウンドシネマ・シリーズ ローゼンクロイツ アルビオンの騎士 第I幕
カドカワ・サウンドシネマ・シリーズ ローゼンクロイツ アルビオンの騎士 第II幕
カドカワ・サウンドシネマ・シリーズ ローゼンクロイツ アルビオンの騎士 第III幕
カドカワ・サウンドシネマ・シリーズ ローゼンクロイツ アルビオンの騎士 第IV幕
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