TS関係のオススメ本04-06


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真城 悠


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けんぷファー@」(2006年・築地俊彦・MF文庫J)

 この頃発売されたTS要素を含むライトノベルでは間違いなく
ぶっちぎりの人気(「真城の城」調べ)である「けんぷファー」を遂に入手いたしました。いやあ、本当に長かった…。公式発売日から実に17日…もう「新作情報」とは言い難いものがあります。
 (;´Д⊂…ダカライナカナンテキライダ…。

 私も経験があるんですけど、こういう時に必要な情報ってのは大まかなストーリーとかも勿論大事なんですけど「
結局のところどうなのよ?TS的に萌えるの?萌えないの!?」という一点に尽きると思うんですよね。
 その一助になることを祈念してご紹介。

 まずいきなり主人公のナツルくんは女の子になった状態で目覚めます。
 来ましたねお馴染み「アウェイクニング・キャプサイズ」(目が覚めてびっくり)展開。ちなみにこの用語を使っているのは多分世界広しと言えども私くらいだと思いますのでそこんとこよろしく(?)。
 掲示板に書き込んでくださった方がいらっしゃいましたが、この場面の書き込みはお見事。
 その内紹介しようと思っている「僕を殺した女」なんかでもそうだったんですが、ここをギャグで逃げたりせずにしっかり書き込もうとして頂いているのは本当にポイントが高いです。

冒頭いきなり鏡のイラストから!わかっていらっしゃる(*^^*

 何故彼が
女の子の姿になってしかもセーラー服まで着ているのか?
 これは
「選ばれた戦士」系のお話で、古代より続く戦いにおいて「素質のあるもの」としてピックアップされたというんですね。
 何故性転換しているのかというと、「戦士(ケンプファー)」は
女性である必要があるから。
 だったら女の子を捜せば良さそうなもんですが、そこは
「素質」が優先されるんだそう。身体がたまたま(!)男なら女にしちゃえば問題なし!という無茶な論理
 
私はこういうの好きですね(^^。
 何故なら強引だけど一応筋の通った論理があるから。華代ちゃんの論理なんて無茶苦茶だけど一応彼女なりに納得してるでしょ?っていうか「不条理劇場」なんてこれ以下のデタラメなのばっかりですよ!(まあ、敢えてやってんですが)

 アウェイクニング・キャプサイズものにあって、起きた時にいきなり女の子になっているのは良くあるんですが、これは
「男の時」とのギャップを演出するには不向きなんです。
 が、まずは
とにかく物語を走らせてからしばらくしてから遡(さかのぼ)って初期設定を説明する…というのは実は物語りにスピード感を持たせるための常套手段なんですね。
 このハイスピードアクション小説においては冒頭から読者の興味を引きつけて離さないいい導入でした。
 ちなみに「アシモフ自伝」においてアイザック・アシモフが師匠のジョン・キャンベル・ジュニアにこの方法を伝授される下りがあります。古くから伝えられている有効な手段。皆さんも小説を書くときには覚えておいた方がいいかも?

 それにしても舌を巻いたのがその叩きつける様な饒舌かつ痛快な筆致!
 小気味のいい言い回しを次々に繰り出す様は翻訳小説みたいです。
 っていうかこれは凄いですな。
ブラック・ラグーン」読んでるかと思った。「ハルヒ」はひたすらSFネタをちりばめてましたがこちらは政治や宗教などの文化ネタですな。まさかライトノベル読んでて「デスメタル」なんて用語が読めるとは。最近のライトノベルってみんなこうなんでしょうか…。レベル高けえ…
 小道具のブラックさ加減なんかのセンスがかなり図抜けています。…こりゃこの方この先更にヒットメーカーになりそうな予感!
 …ま、流石に延々この調子なんで終盤にもなると食傷気味になるんですが。
 細々書きませんけど、味方になる女の子と最初に邂逅した時にはいきなり襲撃されるんですが、後に和解。そして敵味方の区別を説明されるなど、
無駄なエピソードが全く無く、無理なく設定を一つ一つ読者に染み込ませていきます。全くもってお見事

 ちなみに「ケンプファー」はドイツ語ですが、
何故かこの世界の用語はドイツ語に準拠しているみたいで、「銃(ゲヴエアー)」「魔法(ツアウバー)」「剣(シュヴェアト)」とこんな用語がバンバン飛び交います。
 格好いいっ(^∀^)ノ!
 こういうフェティッシュなコダワリって大好きです!
意味なんてどうでもよろしい。それがエンターテインメントってことじゃ?

 更に、可逆でありながらケンプファー(女の姿)になるのも戻るのも
不随意で、必ず何かをしている時に起こります。
 つまりこの事態を有機的に物語に絡ませており、
しかもストーリー展開は全く立ち止まることがありません

ナツル君が(女の子に変身させられているまま)能力が発現する場面。
炎を操る能力の模様

 最後まで読んだのですが、…
こりゃ偉いことになってますな。
 正直ライトノベル読んでいて
ここまで嫉妬を覚えたのは久しぶりですわ。余りにも上手い!そして凄い!
 実は以前から考えていたことを…多分偶然だと思うんですが…やられちゃってるんですよ。
 それは、女の身体に変身したのは良いけども戦闘だなんだと
「落ち着く暇が全く無い」状態にすることで、当然その後に発生するであろう自らの身体への興味津々状態を“必然的に”回避する方法。

 最初から続き物を意識していることと、ライトノベルなんだからもっと大胆にイラストを配しても良さそうなのに8枚のみ。
戦闘場面に至ってはゼロというのはちょっと残念ですが、それ以外はTSものとしてもエンターテインメントとしても抜群の逸品。

 真城は今仕事が忙しいところに持ってきて来年の夏の資格試験(まだやってるんです…すみません)に備えて一日3〜4時間の勉強をしている関係で、小説読むのはちょっと久しぶりなのですが、全く後悔のない拾い物でした。

 「けんぷファー」(この設定で変身する戦士たち。二つの系統に分かれて争っている)は固まって発生する可能性が高く、これからも周囲にはこんなのが続々と集まってきていつ果てるともない戦いが始まることであろう…というところで第一巻は終わります。
 主人公はどうにか自らの能力の種類を把握した程度で戦闘経験は皆無に近い有様。
 今回のラスボスの謎に満ちた思わせぶりな台詞も大いに気になります。
 うお〜っ!燃えるぜ!

 これ読んで人生を学ぶのは多分無理ですが(爆)、刺激的な娯楽活劇を求めている方はどうぞ。TSものとしての印象は結局強くは残らないんだけど、間違いなく力作。
 犠牲者が少ない割には
殺伐としているので(読めば分かります)、読後感がいいとは言い難いのですが、「続きを読まずにいられない」気分にさせてくれます。
 こりゃ売れるのも納得。
 来月発売の次巻が楽しみです! 2006.12.10.Sun.

*政治・経済・文化・社会情勢その他の膨大な知識を駆使したウィットに富んだ台詞の応酬に真城が“やられた”可能性が高く、それが評価を押し上げている可能性もありますので一応その点だけはお含みおきくださいm(_ _)m。
 一応知らない知識は無かったものの、「自分で使える」レベルにはなっていない知識も多かったので今かなりの敗北感に打ちのめされています…orz。私も頑張らねば…
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