TS関係のオススメ本05-05


*アップロードする際に在庫を確認してから行ってはいますが、なにぶん古い本が多い為、時間が経過することで在庫切れになる場合もございますのでご了承下さい。
真城 悠


・スポンサーサイトもご覧ください。

星くず英雄伝(1996年〜2001年・新木 伸・メディアワークス)


在庫はあるのに参考画像が殆ど全滅のamazon…orz。該当の2巻と7巻の表紙だけ張っときます

 まっこと作品との出会いというのは「縁」だと思います。
 長年探し続け、採集し続けているお陰でそこそこの数のTS漫画・小説を所持している訳ですが、その中には「偶然発見していた」から手に出来ている作品も多いのです。
 また、「楽に手に入っていたならばそれほどの思いいれも無かったけども、入手に壮絶な苦労があったからこそ思いいれの強い作品」などもあり、本当に千差万別です。

 今回紹介するのも本当に「偶然」手に入ったもの。星くず英雄伝です。
 レーベルが「電撃文庫」で、発行が1996年ですから、この頃には「ライトノベル」という通称は無くても「本屋の一角を占める漫画・アニメみたいな絵柄の表紙を持つローティーン向けの小説」は確固たる地位を築いていました。
 比較問題ですが、内容も純粋な(?)小説などに比べれば漫画・アニメ寄りとなっており、
当然女装・性転換への親和性が高くなります
 熱狂的なロードス島戦記ブームからこっち、本屋に行けば必ず「該当作が無いか?」というチェックを怠らなかった私は「これならあるかも?」という「嗅覚」とか「野生の勘」ならぬ
「TSの勘」がこの第二巻の表紙を見て「これだ!」と思わせたのです。

 果たしてビンゴ!見事な該当作でした。
 最終的には全 巻刊行されることになる星くず英雄伝ですが、
要は「ハーレムもの」で、一見頼り無さそうな主人公の周囲に美少女キャラがわんさといて、その一行が宇宙を股に掛けた冒険をする…という筋立て。

第一巻に折り込まれているキャラ紹介イラスト。小さくて文字読めんけど雰囲気を察してね

 最初にTSが登場するのが第二巻。
 …実はアフェリエイトなんぞやってますとどの作品のリンクが最もクリックされたのか?といったデータが日々入ります。それによって人気のありなしがはっきり分かるんです。
 小説が人気が無く、漫画やライトノベルが人気があるのは分かるんですが、それ以上に大きな要素がやっぱり全体の巻数。
 特に厳しかったのが銀河嫁取物語
 
強制女装ライトノベル(スゴいジャンル名だ…)としては抜群なんですが、何故あそこまで人気が無いかといえばやっぱり巻数の問題ですよね。
 膨大な巻数を誇る「本シリーズ」の続編のしかも最終巻となると流石にハードルが高すぎますね(汗。アニメのタイラーも小説のタイラーもご存知ではない方がいきなり「無責任キッズ」のしかも最終巻読んでも確かに分かりにくいですから。
 ぶっちゃけこの一冊だけ読んだって大丈夫だと思うんですけど、そこはオタクの皆さん(?)ですから几帳面なのでしょう。

 その意味で言えば「星くず」はハードルが低いです。
 完全オリジナルシリーズですし、TSが登場するのが第二巻。

 面白いのが最初は「ファニージュエル」を名乗る「女装」だったんですが、
毛生え薬の副作用なのか、気付くと女性の身体に変わっていたんです!

女装して颯爽(さっそう)と活躍するファニージュエルさん

 この下りはかなり興味深いんでそのままキャプチャしますんでご覧になって下さい(^^。

 変身してからの身繕いとか一緒にお買い物の下りとかは
TS的なお約束を網羅していて大変ポイントが高いです(^^。
 特に素晴らしいのがふんだんに「ファニージュエル」のイラストを配してイメージを助けてくれること。こういうエンターテインメントで
気取って格好つけてもしょうがありません。バンバン行きましょう。しかし、こうして見ますとイラストのレベルはかなり高いですね。

女性の身体になってしまったので部下と下着選びに借り出されるファニージュエルさん。
ライダースーツみたいなのでおっぱい半出しなのはかなりセクシー( ;´Д`)ハァハァ

 女性の身体になっているからこその「貞操の危機」もしっかりと乗り越えて最後には無事解決で万々歳。
 勿論18禁描写なんぞあるわけも無く、実に後味よく終わります。
 歴史に残る作品という訳ではありませんが、TS的には佳作以上の水準。決して状況に溺れずにお約束をこなしきった力量と手腕には敬服します。残念ながら新品は品切れの様ですが値段分の価値はあると言っていいでしょう。

 ただ、最初に読んだ時も読み返した時にもちょっと考え込んでしまったことがあります。
 あ、それは別にこの作品そのものについてではなくてTSそのものについて。計らずしもその問題点を浮き彫りにしてしまう展開を含んでいたので考えざるを得なかったんです。

 主人公のジークは敵の目を欺く為一時的とはいえ女性へと性転換した状況を利用して、女装をし、仕草まで女性を模して女性になりきることを余儀なくされます。
 こうした状況を作るのは作者ですから、作者本人が「こうなりたい」とは思っていなくても、「こうしたシチュエーションに興味がある」のは間違いありません。
 私がそうだったんですけど、作品として制作したりあまつさえ発表する機会の無いTSファンって
煩悩で頭がパンパンになりがちなんですよね。
 ここだけの話、自分の境遇がそうでないから無闇に「隣の芝生は青い」とばかりに女性に無邪気に憧れてますけど、
全ての女性がそんなばら色の人生を送っている訳がありません
 かといって気軽に体験出来る様なものでもないので、それこそ妄想を逞しくして疑似体験する位しかありません。

 ファニージュエルとなったジークには「いやいやながらも」服のショッピングを楽しみ、下着を選び、女装をし…といった「女の楽しそうな事」を軒並み体験させられる展開が待ち構えています。
 ところがいざ色仕掛けで敵の大将を引っ掛ける段になると、当然ですけど必死になって嫌がり、どうにかその危機を乗り越えんと奮戦することになります。
 これって精神的な基本の軸足を「生まれたままの状態」つまり物語が始まった状態の位置に置くという「大前提」によって成り立っている状況なんですよね。
 要するに主人公はどれだけ女性を装っていても(肉体的には遺伝子まで女のものになっていようとも!)「男」なのであるということです。
 これは一見すると当たり前の様に見えますが、例えば仮にこの主人公が最初から女だとしたら成り立たなくなるお話です。

 勿論「望まない性交渉」を回避するのは当然です。それはそれでいいんですが、この「星くず」の場合は
「女っぽいことなんて幾らでもやっちゃうよ!…でも、女の身体になって男とセックスまでしちゃったらそれは男としておしまい!」という潜在意識が透けて見えるんです。
 もっとはっきり言えば
「女になるなんて嫌だ!」と言ってる訳ですよ。でも女の肉体になってみるのは非常に楽しんでいたと。
 となると、結局
「女の肉体になって最終的、究極的には何がしたいの?」という問いがここで成り立ってしまうんです。

 これを考え始めてしまうと、それこそ「人間とは何故生まれ、どこに行くのか?」というところまで行ってしまいます。
 では多くのTSものではそうした疑問を
どの様に解決しているのでしょうか?
 …恐らく解決なんてしていないでしょう。とにかく「女になっちゃう」とか「女装させられる」という“刺激”を追い求めているってことなんでしょうね。
 勿論、それはそれで構わないのですが、女になった際の“お約束”を全て堪能していながら(望まないという状況はあるものの)男性との性交渉だけは断固拒否する男の主人公の行動原理を見るにつけ、「本来義務と抱き合わせで享受できるはずの権利を無償で享受し、“女としての責任”を果たさざるを得ない状況になると逃げ出す都合のいい男」と言う風に見えてしまったので…。何度も書きますが、これをもってこの作品をけなしている訳では無いのでそこんとこよろしく(^^;;。
 でも、男性読者諸氏はTS漫画とか読んで「いいなあ、女とかなってみたいよなあ」と思っても
「男と結婚したい」とは思わないでしょ?それは別の話になっちゃいますもん。
 だから「女になるのはいいけど、それで最終的にはどうなりたいの?」という疑問には答えが出ないんですよね。
 「いや別に…
とりあえず目一杯楽しんだら(?)男に戻るよ。以上」というところじゃないでしょうか。
 普通はこういう問いって成り立ちません。
 だってその問いを発する大前提である
「女になる」ことが現代の科学では不可能だから。
 ですから「なったらどうする?」「なったらどうなる?」でいつまでも考察がストップしたままで煩悩だけが膨らみ続けます。

 ごく稀に「なっちゃったけど…これからどうすんの?」という
疑似体験が出来る方がいらっしゃいます。
 それが
TS作品の作者さんたち
 結局は「女になってみること」がどうしてもゴールなもんだから、
その先は「迷走」しか待ってないんですよね(例:「ふたば君ちぇんじ」)。
 どれだけ「自爆」とか「強制女装シチュエーション」とかを組んでも、いざ終わってみると虚しくなるばかり…なんてのは良くあること。

 …なんてことを読んで感じてしまったのでした。ま、
そこまで深く考える様な深遠タイプの作品ではないので素直にファニージュエルの可愛さと格好よさに酔うのが正しい読み方でしょう(^^。

 ちなみに第7巻でこの「ファニージュエル」はもう一度登場します。つまり主人公のジークはまたもや一時的に性転換しなくてはならなくなる…と。
 何というか私の主観では「あの2巻の性転換エピソードって書いてて楽しかったよなあ…もう一回くらいやっとくか」と言う風に感じてしまいました(^^。
 この時主人公は「あれをやると肉体に精神が引きずられてやめられなくなるっぽくて嫌なんだよなあ」(大意)ってなことを思ったりもするんです。…自覚あるじゃん。
 …というかすいません。読んだはずなんですが余り覚えていないんです…orz。

 別に全巻読み通さなくても最初の2巻だけで十分美味しいTSは堪能できるので是非どうぞ。七巻は個人的には…。最初の一回で瑞々しい刺激は全部絞っちゃったかなと。
 ですから2巻までをオススメしておきましょう。 2006.12.19.Tue.
こちら←前の作品へ     次の作品へ→こちら

本家:「真城の城」 http://kayochan.com


ブログ「真城の居間
http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/