TS関係のオススメ本05-08


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真城 悠


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問題ないねヒデユキ君(1995年・滝沢ひろゆき・松文館)

*分類上アダルト商品になっているみたいですが、一番最後のおまけページにそう取れないこともない表現がある程度ですし、医学的な解説のページにおいてヌードが登場するだけですので真城個人の判断でご紹介します。
てゆーかどう考えてもこれをアダルトカテゴリに入れるのはおかしいと思います(怒

 今日はかなりの異色作になります問題ないねヒデユキ君のご紹介です。もっと前に出た印象があったんですが、1995年の発行。11年前ですけど「Windows95」が初登場し、何よりこの年の10月には「新世紀エヴァンゲリオン」が放送開始です。私なんかからみるとつい最近ですね。

 何故異色作かというと、これまで紹介してきた作品はいずれもTSの原因がファンタジーやSFで、要するに「現実にはまずありえないこと」だった訳です。入れ替わりとか憑依とか。
 ところがこの漫画は、一応フィクションではあるのですが
現実にありえるTSを扱っているからです。

主人公の頸城(くびき)ヒデユキくんはラグビー部で活躍するスポーツマン
小さな頃から華奢な体型にコンプレックスを抱いています

 この頃謎の体調不良で悩んでいたヒデユキくんですが、遂にデート当日に倒れて病院に担ぎ込まれます。



衝撃の告知


 そう、「半陰陽もの」と呼ばれるジャンルで、「元々肉体的には女の子だったのに、男として育てられていた」というものです。
 男性の意識だったものが、女性としての立場を得るというところだけを見れば立場としては「男→女」への性転換と言っていえないことも無いんだけど、実はTSファンにとってこのカテゴリは結構扱いが難しかったりします。

 理由は簡単で、
シャレになっていないから。
 何しろこういう立場の方は現実に存在していて、きっと普通の人間には分からない苦労を今この瞬間もしているに違いないのです。そういうフィクションを読んで萌えるの萌えないのというのは
流石に不謹慎なのではあるまいかと。

「女性仮性半陰陽が一番ポピュラー」とか知らんかったなあ

 ですからこの問題ないねヒデユキ君」は女の子になっちゃったヒデユキくんを読者が愛でて萌え萌えする漫画ではなく、人生観を一変させるトラブルに巻き込まれた主人公がそれにぶち当たって乗り越えていく漫画なのですね。

中性脳な人とかどう判定するんでしょう?

 ヒデユキくんは熱心なラグビー部員なのですが、こんな身体になってしまってはそのまま続けることなど出来ません。普通なら。
 しかし彼は、自らの身体の秘密を隠し続けて選手を続けます。
 学校でも評判の女傑がマネージャーとして新たに入部してくるのですが、なんと彼女も同じ立場だったのです。
 ヒデユキくんを憎からず思ってくれている女子もいたのですが、合宿中の水浴びを目撃されて遂に身体の秘密が公になってしまいます。

 これをきっかけに全校に彼の身体の秘密が知れ渡ってしまうのですが、当然好意的に受け止められるどころか好奇の目で見られる運命が待っています。



この漫画そのものはフィクションですがかなりの取材に支えられています。
実際にはこんな感じなんだろうなあ…

 表現が難しいんですけど、不思議の国の少年アリスの破滅編を
現実世界でちゃんとやったみたいなお話です。
 正直、萌えるどころか読んでいて辛くなります。特に私みたいな運動部にはやたらに所属していたけど別にプロ志望とかまったく無かった人間ならばともかくも、彼はラグビー部員として頑張っていましたからそれと決別しなくてはならないことを受け入れる瞬間は
読んでいて泣きそうになります

遂に現実を受け入れたヒデユキくん。何故こんな目に遭わなくてはならないのか…

 しかし、決して救いの全く無い絶望的な漫画という訳ではありません。
 全てをさらけ出した彼(女)には逆に運が開けてきます。

 最初は抵抗があったらしい女子も途端に協力的になってきます。団結した時の女子って強いですからね〜。
 そして、物語は再び前向きに転がり始めます。

ラグビーはルール上、女子を混ぜるのは禁止されてはいないそうです

 この問題ないねヒデユキ君はTSものであると同時にスポーツ漫画でもあります。
 元々素質があったヒデユキくんはそのひたむきな姿勢が認められて徐々に再び受け入れられていきます。
 劇中でキャラも言っていますが、結局
「ヒデユキはヒデユキ」であって、性別が男だったり女だったりというのは二の次である、というところに落ち着くという、とてもポジティブなメッセージ性に溢れた佳作です。
 女性半陰陽である主人公が違うのは「女性機能」がちゃんとあるってこと。決して道のりは平坦では無いだろうけども、誰もがヒデユキくんに幸多かれと願わずにはいられない幕切れとなります。
 ラストの描き下ろしカットも紹介しようかと悩んだのですが、ここは秘密といたしましょう。

 ヒデユキくんは劇中「女装」にあたることも何度もしますが、何度も書いた通り
素直に萌えられないんですよねえ…何だか申し訳なくて
 ですから、恐らくラストカットとかもこれまでのTSファン的な視点で言えば
ヒデユキくんの純白のウェディングドレス姿が見たい…とか言っていたのでしょうが、もっともっと非常に地味なラストです。趣旨は殆ど一緒なのですけども。

 この作品は真城みたいなオタク第二世代以上のTSファンなら殆ど存在は知っています。これまで紹介した作品の様に純粋に萌え萌え言うためにTS漫画を読む方にはまずオススメしません。
 どちらかというとこうした症状に取材したルポルタージュみたいな漫画です。
 ただ、何度も書きますけどとっくに絶版・品切れのこの作品であってもマーケットプレイスでなら手に入るんですよ。
 いやー、こうしてみますと私の十数年間のTS作品漁りは何だったのかと思っちゃいますね(^^;;。この頃はネット上で情報が手に入るのを越えて
実物が手に入るのですから。本当に若い方が羨ましい。ま、苦心惨憺して探すのもこれはこれで楽しいのですが。

 所謂(いわゆる)「半陰陽もの」はこれが正に典型的な作品と言えるでしょうね。
 とりあえずちょっと感動したい方にはオススメということで。 2006.12.22.Fri.

*さて、どうして本日この作品を紹介したかといいますと、まず「前提」としてこの作品を紹介しておかないと明日の作品の紹介に入れないからなんですね(*^^*。
 明日は約束どおり真城のTS作品の第二位が登場いたします。TS作品としてとてもメジャーなので知らない方はいらっしゃらないでしょう「あの」作品になりますのでお楽しみに!
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