TS関係のオススメ本05-09


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真城 悠


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革命の日(1999年・つだみきよ・新書館)
続・革命の日(2001年・つだみきよ・新書館)

 結論を先に言ってしまいますと、私・TSファンとしての真城悠にとっての
「究極のTS作品」の一つがこの革命の日続・革命の日」です。
 先日から予告していた「ランキング第二位」がこの作品ということになります。ただ、「第二位」とは言っていますが、甲乙付けがたくカレーとラーメンの美味しさを点数化しろと言われて困り果てて五十音順で並べたみたいな解釈であるとお考え下さい。
 そして、これから先「上位二傑」に関しては
まず動くことは無いと考えられるほど惚れこんでおります。

 比較的新しい作品であることもあり、TSファンには広く知られています。ウチのサイトにいらっしゃるお客さんで「作品名すら初めて聞いた」と言う方はあまりいらっしゃらないでしょう。
 つだ先生は近年TSものの傑作「プリンセス・プリンセス」を世に放ったこともあり、そこから遡(さかのぼ)ってこの作品をご存知の方もいらっしゃるでしょう(登場人物も被ってるしね)。
 そして同時に「何故これを?」と思われる方も多いのではないでしょうか。
 「確かにTSは出てくるけど、
“究極”というほどか?」という感想が多いのではないでしょうか。

 確かに、純粋な意味での「萌え描写」とか、そうしたものでこの世にこの作品しかなくても我慢できるのか?と言われればそれは違います。
 ただ、私にとって「TSものを読んでいてどうしても納得がいかなかった問題に関して、
究極的な解決方法を与えた作品」がこの革命の日」と「続・革命の日だったんです。
 
ドラマCDのジャケットです。amazonリンクでは商品の存在が確認出来ませんでした。
男の姿と女の姿のペアになったジャケットが印象的。同種の構図は「らんま」を始めとしたTS作品では
よく見るんですが、その中でも屈指の美しさを誇ります。
左は初回購入特典の携帯電話ポーチ。これは純粋に自慢です(爆)

 健全な男子高生であった吉川 恵(よしかわ・けい)君は謎の体調不良に襲われて医者に担ぎこまれますが、そこで衝撃の告知をされることになります。
 そう、TS作品の中でも「半陰陽もの」と呼ばれる作品なのですよ!
 
左が男性時の姿。この漫画とにかく文字が小さいのでサイズ設定に本当に困ります(;´Д⊂…。

 昨日問題ないねヒデユキ君をご紹介したのは「典型的な『半陰陽もの』というのはこういう感じになることが多いですよ」と示したかったから。
 こういう書き方をするってことはこの革命の日」と「続・革命の日」は「典型的な半陰陽ものではないってことなんです。

お、お母さん暴走しすぎですよ!

 突如息子を襲った一大事に父親との人間関係も逆に修復できたのですが、医者から
「こういう場合には多くの場合、そのまんまの性を押し通して生きて行く」という衝撃の事実を聞かされます。
 上記で引用したコマは「じゃあやっぱり男で」と言った時のママの反応。
 …これって
普通の超自然的なTS現象のギャグ漫画と変わらないノリなんですけど…。
 要するにそういうことなんです。
 つだ先生は別ペンネームにて所謂(いわゆる)「ボーイズラブ」系作品の描き手さんだったのですが、「男を女に変換する」手段として「半陰陽ってのがあるらしい」と
半ばフィクションの積もりで道具として使ったみたいなんですね。要するに「性転換薬」とか「階段落ち」と認識が余り変わらないんです(核爆)。
 これはTSを描きなれている男性作家ならば絶対にありえません。
 とにかく「半陰陽」は問題が多すぎるんです。そもそもTSものってのは現実逃避ですから、「現実にありえる」トリガーを使うのはその意味でも上手くありません。「性転換薬」なんてのは存在しないのですからその時点で医学的なツッコミも何もありませんからね。
 何しろ手塚治虫先生は漫画「ブラック・ジャック」を描いている時にも親類縁者(お医者さんが多いそうです)に「こんなデタラメばかり書くなら漫画家やめちまえ!」と怒鳴られたそうですし、その他にも数々のクレームを受けたそうです(この辺の下りは「封印作品の謎」で読むことが出来ます)。

 ですので、「半陰陽もの」にありがちな現実の影を引きずった「笑っていられない」雰囲気は皆無。偶然とは言えこの展開は貴重です。読者としては目くじら立てずに
雷が落ちて性転換した、位の認識で読みましょう(爆)。

キャラ造形に関して言えばこの「線の細さ」はセクシーさに欠けるのは事実。これは好みの問題でしょうね(^^;;

 この作品はある種展開が「マンガ」です。カタカナの「マンガ」。
 高校には音に聞こえた美男子軍団が君臨しており(どっかで聞いた様な設定だな…)、かつてつるんでいたこの集団に絡まれて正体を隠しきれず、仕方なく真相を告白しなくてはならない展開に追い詰められます。

女性化した恵をかばってくれる真琴。こういう「世話焼きキャラ」は不可欠


遂に開き直る恵。「半陰陽もの」はそこまで肉体が急激に変化する訳では無いので、どう考えてもバレると思います。

 えらく褒めましたが、実は「本編」にあたる革命の日に関して言えば「女性作家的な作風のごく平凡なTS作品」程度の評価なんですね。

 
「究極のTS作品」としての真骨頂を発揮するのは続・革命の日においてです。
 ちなみにこれだけキャラが立ちまくっていて、その気になれば「終わらない日常」系のドタバタTSコメディとして続けられそうなこの作品の続編のタイトルを「革命の日 第2巻」とせず「続」にしたのは
「この先を絶対に書けないようにするため」だそうです。

 革命の日は結局「周囲にバレるまで」のドタバタなのですが、続・革命の日ではその後の人間関係が綺麗に収束するまでを丁寧に描きます。

真琴の弟の実琴。はい、「プリンセス・プリンセス」で『姫』として強制女装させられていた彼です。
作品としてはこっちが先で、キャラを貸し出す形で連載が開始されました。
同作がつだ先生の作品の中でも最大のヒットになったのは説明するまでも無いですね(^^;;

 私はこれまでのTS作品を読んでいて非常に不満に思っていたことがありました。
 これは同人誌なんかでも書いたんですけど、
TSした後の男性が決まって「女性的」な社会的立場に何の躊躇(ためら)いも無く自己を持っていこうとすることに、とにかく納得がいかないんです。

 だって今時は女性であっても「スカートは一枚も持っていない」と公言する方も珍しくないんですよ(別に普通の女性です)?。
 何しろ「元・男性」というこれ以上無いハンディキャップを抱えている女性が、
何故女性らしく男性と恋をしなくてはならんのか?
 別にそんな必要無いじゃないですか。
 そりゃ好きになっちゃえば構わないけど、生粋の女性であっても非婚化・晩婚化が進んでいる昨今、元・男性が男との結婚を希求するというのは
余程の説得力がなくては到底納得が出来るものではありません

 私がこの漫画で膝を打って納得した場面にこんな場面があります。
 
 これですよこれ!
 十数年男として生きてきたのに、突如感受性とか趣味まで女性的になる訳無いでしょ!?
 ですから恵は肉体的には完全に女性ですが、
思考は完全に男性
 恐らくここを読んでいらっしゃる男性読者の大半は
「実際に性転換したらこういう少女になる」と思うんですけど…そうでしょ?ね?
 これを描いて来れなかったのは
これまでのTS作品は何をしていたのかと。

 そして…もう結論まで書いちゃいますが、
「男性としての価値観を最大限に生かしたままで男性を恋愛対象として無理なく描くことが出来ている」のがこの作品の最大のポイント。

 それは正に発想の転換というかコロンブスの卵というか…
こんな価値観があったのか!とひっくり返って驚きました。



 そう!
年下の可愛い男の子を(年上の女性として)愛玩するという価値観なんですね。

 嗚呼、これだよ!と思いました。
 これまでも性転換した状態で異性との恋愛関係になる漫画・小説は沢山あったのですが、それらはどうしても
「従来の性的役割の逆転」を描こうとすることに目が行く余りに「恋愛では受身の立場になる」というビジョンしか描けていなかったんです。

 しかし、よく考えたら男女関係において
女性の方が主導権を握る展開なんて別に珍しくありません。
 ましてや
姉さん女房関係ならば尚更です。

 つまり、
肉体は女になっていて、恋愛対象も男の子なんだけど、恋愛の主導権を握っているのは自分という斬新過ぎる価値観を示して見せたんですね。

 私はこのてのTS漫画を読んでいて男性読者の立場として初めて
「ああ、これなら自分でも出来る」と思いました。きっとこれを読んでいる男性読者の皆さんもそうでしょう。
 女になったのみならず、男に傅(かしず)くなんてそんな屈辱的なこと出来るか!とは思っても、可愛い男の子を弄(いじ)るんなら出来るでしょ?
 …だって、対象が男の子ってだけで、その相手への見方は「女の子を可愛がる」のと変わらんもん。

 「
彼氏にしたら、コレ、オレのもの?」…って思考が完全に男性のものです。
 でも、間違いなく男女関係。

 …私が「究極のTS作品」と言ってしまった理由がお分かりになるでしょうか?
 これほど無理なく「女性として」その後の人生を歩みだすことが出来た作品は稀有でしょう。

 正直、従来のTS作品が
どうしてこれが出来なかったのか!?と忸怩たる思いです。

 これはつだ先生が
ボーイズラブを描いてこられていたことと無縁ではないでしょう。元々男性が男性を愛するストーリーは描きなれていたんですね。
 
これだからやおいは要注意なんですよ。
 真城はコミケに行っても必ずやおい系はチェックします。この頃は「女の子本」や、やおいの一変種である「女体化」もかなり数を増やしてきたのですが、こういうお化けが潜んでいるので本当に油断がなりません。

 ちなみにタイトルの「革命の日」の「革命」というのは「男性の意識から女性の意識への革命」という意味です。恵も終幕に至って遂に実琴から告白されます。
 ここはこの作品中
最も美しいシーンの一つであると断言してしまいましょう。



真正面からの告白に生まれて初めて“女性として”胸を高鳴らせる恵くん
女性化した主人公をこれほど無理なく「うらやましい」と思える場面はそう無いでしょう

 以上が私が「究極のTS作品」と認定する革命の日」と「続・革命の日のレビューになります。
 「なるほど」と思われる方もいらっしゃるでしょうし、「別にそうは感じないなあ」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
 しかし、究極的に男性読者の立場として
「自分がその立場になれるか?」という意味では間違いなく一級品です。

 未読の方がいらっしゃったら物凄くオススメ。
 私が評価するのはこの
「価値観の提示」にあるので、非現実的なギャグセンスとか女性的過ぎるその他の論理展開(読めば分かります)にまで全面的にプッシュする訳ではありませんが、本当に素敵な作品です。

 後日紹介しますプリンセス・プリンセスにおいても恵は番外編で登場し、「その後」を匂わせる場面を垣間見せてくれます(*^^*。「続編は無い」ことをつだ先生が明言なさっているので正式な続編が描かれることは無いでしょうが、「プリ・プリ」はまだ続いているので「続報」を読むことは出来るでしょう。作品世界が今も描き継がれているという意味でも貴重。
 「プリ・プリ」の大ヒットによってつだ先生の既刊には軒並み大増刷が掛かったみたいで、入手は容易。この機会に是非!

 では最後に、キスにおいても(照れながらも)ちゃんと主導権を握って…
年上の女として立派にリードして…やっちゃう場面を紹介してお別れです。これはいいよなあ。胸の奥がぽかぽか暖まってきます( *´∀`)。
 やらしい場面なんて一切無いけど限りなくTSファンを幸せにしてくれる究極の作品の一つです。
 2005.12.23.Sat.

この照れている恵は本当に可愛い( *´∀`)。二人ともお幸せにね

*これが個人ランキング第二位ということは『これを越える一位がある』ってことです(^^;;。TSファンならばきっと知っている作品ですので紹介をお楽しみに!
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