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TS関係のオススメ本06-06


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真城 悠


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僕を殺した女(1998年・北川歩実・新潮文庫)

 私が最初に就職した職場ってのはまあとにかく鬼の様に忙しくて、折角ドリームキャストというインターネットへの扉を開くアイテムを手に入れて、むさぼるように「少年少女文庫」とか「八重洲メディアリサーチ」とかを読み倒していたのに、注文した本を本屋に取りに行くことが出来ないという有様でした。
 それほどに忙しかったんですよね。

 日曜日は朝から渋谷DCIジャパン・トーナメントセンターに入り浸っているし、本当に今思い出しても辛かった日々です。
 そんな中、なんと職場の新聞広告で発見したのがこの僕を殺した女でした。
 ストーリーをご紹介しますとこうなります(改行・文字強調引用者)。

*******
 ある朝目覚めると、大学生で「篠井有一」だった僕は、
見知らぬ部屋で若い女になっていた
 しかも昨日から
5年後にタイムスリップして…。
 異性の肉体を持て余しながら、昔の記憶とわずかな所持品を頼りに僕は
自分探しを始めるが、今度はこの世界にもう一人「篠井有一」が存在していることがわかる。
 次々と浮かび上がる謎の数々―。

 気鋭の新進作家がおくる超絶技巧ミステリー長編。
*******

 …面白そうでしょ(^^?

 忙しくて本屋にも行けなかった当時の私は、余りにも貴重すぎる昼休みの時間に抜け出して近所の場末の(失礼!)小さな本屋に入って遂に発見!飛んで帰りましたよ。


 設定そのものは「朝起きたら」(アウェイクニング・キャプサイズ)なので珍しくも無いのですが、オレの愛するアタシ」の様な凡庸な展開ではありません(あれはあれで味がある訳ですが)。
 
見知らぬ女になっているのみならず、5年の年月が経過していて、しかも自分がちゃんといる世界…自分の身にもしもこんな事態が降りかかったらと思うだけで気が狂いそうです。


 ここでちょっとトリビア。
 「ゴジラ」を始めとした怪獣映画で、現実の世界と一番違うところが何だか知っています?
 え?自衛隊が国会決議も経ずに出動している?まあ、そこも違うけどそうじゃなくて
「怪獣映画が存在していない」ってこと…なんです。
 何故かというと、もしも現実にゴジラみたいな怪獣が出現したとしたらまずこう言うと思うんですよ。「わあっ!
ゴジラみたいな怪獣だっ!」ってね。
 ところが映画ではそんな台詞は全く出てこないばかりか、「怪獣」という概念そのものに初めて出会ったみたいなリアクションを取ります。
 確かに現実にゴジラはいませんが、「ゴジラ映画」はある訳です。この辺りのリアリティをあんまり考えてしまうとドツボに嵌(はま)るのは間違いないのですが。

 そしてこの僕を殺した女は実はその点をクリアしている稀有な作品だったりします。
 というのは、いざ自分の身に降りかかった異常事態を見開き2ページ以上の文字数を使って一生懸命描写なさっているんですが、そこで
『大林宣彦監督の映画転校生みたいな…』といった説明の下りがあるんですよ。
 恐らく現実にこの様なシチュエーションが現出したならば間違いなく既存の作品を使ってそれを説明しようとすると思うんですよ。
 この状況は「入れ替わり」であると断定出来るものではないので、ここで転校生を引き合いに出すのは適当ではないのですが、この“似ていないこともない”
メジャー作品を引っ張り出して必死に状況を理解しようとする主人公のモノローグの説得力かなりのものです。

 そもそも、非TS作家の皆さんは
「いざ自分がTSしていることに気が付いた瞬間」とかを描写することに掛ける意気込みが不足している場合が少なくありません。
 神変武闘女賊伝の様に巧みに避けるなどの方法もありますが、
出来るならば真正面から格闘して欲しいんです。
 その意味でこの作品の描写はかなり頑張っていらっしゃいます。

 さて、肝心のストーリーなのですが、これはラストに明かされる「真相」のからくりに
納得できるかどうかが最大のポイントになるでしょう。
 転校生」とかならば「とりあえず入れ替わりだよ。そこに理屈なんか無い」で済むんですけど、この作品はミステリの体裁をとっていますし、正にそこが一番知りたいところなのですから、出来る限り読者の納得の行くからくりを用意する必要があります。

 個人的には…何とも評価が難しいことになってしまいました。ファイナルジェンダー―神々の翼に乗って」はSFなので「まあ、これでもいいかな」と思ったのですが、僕を殺した女
微妙です。
 恐らくミステリだったものをSFかファンタジーにせずに解決するにはこうするしかなかったと思うのですけど、後味云々ではなくて
「現実問題それが可能なのか?」という「TSによる性転換の大前提が大いに揺らぐ」ものだったのが問題。
 現実に可能ならば私は大いに推奨しますよ。
 ただ、この結論に大いに納得されている方もいらっしゃいますし、結末が明かされるまで余りにも刺激的なシチュエーションに
大興奮して読み進めたことは間違いありません。

 ちなみに著者の北川歩実さんは名前以外が一切不明の謎の覆面作家で、性別すら不明です。作品内容が内容なので男性であろうと辺りをつけてはいるのですが(爆)。

 ともあれ、この作品もレビューを始めて以来是非紹介したかった一冊。在庫はまだあるみたいなのでチャンスのある方は是非! 2007.01.03.Wed.
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