TS関係のオススメ本08-03


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真城 悠


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ランジェリー・パブリシティ
(1999年〜2000年・なかはら桃太・集英社)

 この漫画には忘れられない思い出があるんですよ。
 1999年に単行本第一巻発売ですから実際の連載はもう少し前。
 実は「何だか凄いのが連載されているらしい」ということは情報は掴んでいたんです。当時はもう「少年少女文庫」にも出入りしていたので情報だけはあったんですが…何しろ
田舎なので掲載雑誌そのものが見当たらないんです。

 それでもどうにかして読みたいので本屋の店員さんに聞いてみると
「注文になります」とのお答え。
 こちとら立ち読みで中身を確かめたいだけなので
そんな大きな話になってもらっては困ります
 そもそも沢山ある連載の内の一つだけを目当てに雑誌そのものを買うと言う行為がどれだけコストパフォーマンスが悪いかは言うまでも無いでしょう。値段だけで言えば単行本の10倍とかになりかねません。

 日々の生活も忙しく、そういう
「なんとなく該当作」に外れが多いことも経験上分かっていたのですっかりその存在を忘れておりました。
 ところがいつの間にか連載終了していた全2巻を手にとって見たら…
こ、これは凄いじゃないですか!ということでご紹介です。

 主人公の遠野紺太(とおの・こんた)は母子家庭、大人のランジェリーショップを開いている母の美厘(みり)と二人で暮らしています。
 ところが突然の家事でランジェリーショップは焼失、母は焼死してしまいます。もっとも、死体は発見されていないのですが…

ごく普通の美少年主人公が特に関西弁なまりでもないのに「おかん!」というのは結構珍しい?

 焼け跡からは売り物の下着が一部焼け残り、紺太くんはそのダンボール箱一杯の女性ものの、しかもかなりアダルトでセクシーな下着を「母の形見」として持ち続けています。

年頃の男の子がダンボール箱一杯のセクシーランジェリーを宝物にしているのは
事情を知らないお巡りさんに捕まりそう(核爆)

 …この辺りの設定が実に絶妙。だってれっきとした男の子が単なる女性ものの下着というだけではなくて、専門店にしか売っていなさそうなセクシーランジェリーを大事にしているんですから。
 普通に考えたら立派な変態なのですが、「母の形見」とか言われてしまうと反論は不可能。
 ところがある日、形見の下着をいじっていた同居家族の赤ちゃんが謎の変身をする現象に邂逅してしまいます!

例え相手が赤ちゃんでも着た途端に美少女に変身!

 原因は一つしか考えられません。
 そう、母が売っていた
これらの下着は着たものを魅力的な美少女に変身させるのです。
 ならば…?
 そりゃあ
自分で着てみるしか無いじゃないですか!

完全に変態少年の図…基本的にはいい話なんだけどなあ…orz。

 …う〜ん、何と言うかとてもいい話なのにも関わらずモチーフがモチーフだけにどうやっても変態的になってしまうという…。

ちなみに変身後は母親にそっくりという設定

 これは
ありそうで無かった設定ですよ。

 というのは「変身」と「女装」ってのは似て非なるもの。女装しても女体化するわけではなく、女体化したからといって女装するかどうかは物語次第。
 しかし、この場合「特定の女性下着を身に付けることによる変身」ですので
女性に変身するからには必然的に女装していることになるんですよ!
 同種の設定は全く無い訳ではないのですが、この場合
「セクシーランジェリー」というのが個人的なツボ。

 実は
女性下着ならば全て男性の煩悩を突き抜ける物件だと思うのは大間違い。特に女子中学生のしてるブラジャーなんて私は最初に観たときはプラモデルの部品かと思いました。
 意味が分からんかもしれませんが、それくらい純粋な「もの」にしか思えなかったんですよ。ちなみにこの風情は「僕と彼女のXXX」(下から2番目)の着替えシーンで見ることが出来ます。あれですよ!
あの即物的なシマシマ模様の色気ゼロのブラジャー!あのリアルさ!

 ところが、この場合
「変身アイテムがセクシーランジェリー」ですよ!
 つまり、彼の場合は必然的に
変身と同時に「セクシーランジェリー女装」をすることになってしまう訳です。この辺りの設定は非常に上手いなと。

 最初の内は有効に活用する方法も分からず、
クラスの怖そうな男子から身を隠して移動するのに使ったりします…が、その都度読者は健全(?)な男子高生のセクシー下着女装シチュエーションを見せられる訳です。
 …なんとも罪作りな漫画だなあ(えー。

 予想通り美少女に変身してしまう紺太くん!

途中から「せめて読者サービス」ということで変身時の掛け声とポーズを追加




Σ(゜Д゜)!!か、可愛いっ!!

 この時の女子高生への制服女装は必然性があってよかった。

 
必然性があればいいんですよ。必然性があれば。この場合性転換する必然性もあるし、外見をどう見ても女の子にするために制服を借りるのも合理的。
 そして…
いい感じに可愛いっ!上手いなあ。
 恐らくあの短いスカートだと普通に考えればあの下着ははみ出しちゃうと思うけど、そこはいいでしょう。別に。

 日常生活の中でのエピソードが一段落すると同時に、今度は
「母探し」の展開が始まります。

 死体が発見されなかった以上、必ず生きているはず!

 そんな時、母の形見で不思議な力を秘めていると思われる下着を展示する謎のランジェリーショップを発見。
 そこに肉薄しようとするも、変身後の姿が
余りにも可愛らしいためにスカウトされて芸能界入りする羽目に…。

別人とごまかしてクラスメートと女の時に出会ったりも。

 そうなんです。この「ランパブ」もまた「女装(女性化)アイドルもの」の一種だったんですねえ。

全てを知っているらしい新キャラの登場から物語急展開!

 その過程で母と同類に遭遇。なんと紺太くんは
魔法使いの一族で、女性化によって異常に魅力的になるのもそれが理由だった…そうなのです。

 何だか、
物凄い勢いで設定を後付けしているのではないか?という疑念が湧いてこないことも無いんですが、不思議と気になりません。
 その辺りの統合性を細かく気にするタイプの漫画ではないという自然な流れが出来ているからでしょうね。
 これが「デスノート」みたいに厳密さが求められるのならば「そもそもどの程度を“着た状態”と判定するのか」だけで延々議論が続きそうだし(爆)。

 徐々に
変身体質が定着してきた紺太くんは、何と下着を着けなくても起きたら変身しているという事態まで!

女性化時点では常に下着で隠されている乳房をこの時初めて“見る”ことが出来て照れる紺太くん

 そして隠し切れずに周囲バレし、芸能界に敷かれたレールをも巻き込んで怒涛(どとう)のクライマックスに向けて物語は展開していきます。

美少女のまま親友に真実を告げる紺太くん。母探しは?彼の運命は?

 敢えて書いてしまいますが全てが解決しての
ハッピーエンド不幸になるキャラが誰もいない幸せな結末が待っています。

 今回のレビューでは余り触れて上げられなかったのですが、幼馴染の女友達、実果(みか)のエピソードも魅力的。登場人物に真の意味での悪人が誰もいないという、とても心温まるコミックです。

 道具立てもとても魅力的。全2巻とコンパクトであることなどかなりポイントが高いですね。ま、普遍性はあるものの、読者を選ぶ漫画だったのか現在はマーケットプレイスでしか手に入らないみたいですが女装漫画ファンにもTSファンにもアピール度満点の佳作です。
 オススメ。
2007.01.21.Sun.
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