TS関係のオススメ本08-07


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真城 悠


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働く少女(1995年・常磐 易成・光風社出版)

 この連載を始めてから頂いた反応の中でも嬉しかったのが「(挙げられている諸作品の)名前も聞いたことが無い」「こんなのがあったのか」と驚いて呆れてもらったことでした。
 何度も書く様に私はコレクターとしてはまだまだ下っ端です。何しろ上の方が凄すぎるので全く追いつけないのですよ。
 ただ、それでもTS作品と見れば目の色を変えて蒐集し続けた為にそうしたものに縁も所縁(ゆかり)も無かった方から見れば
「よくそんな(しょーもないものを)持ってますね」ということになるみたいです。

 反面、結構メジャーな作品がぬけていたりもするんですけどね。
 例えば世代的に直撃ではないために漫画・アニメ問わず「らんま」の評価がそれほどでもなかったり、「タルる〜と」なども同様。何しろ
小学生の身空(みそら)で「原生動物」とか見ちゃってるしなあ。

 本日ご紹介する働く少女
「そんなのがあったんだ」物件。
 恐らく大多数
の方が「聞いた事も無い」と仰ることでしょう。知ってたからって自慢になるものでもないんですが。

…なんともコメントし辛いスタートですな。アジア友好万歳!(意味不明)

 著者は常盤易成(ときは・かねなり)さん。女性です。
 この他にもチアノーゼ小泉、Time is money、菊池まみ、松永也槻など用途によって様々なペンネームがあり、一定していません。
 この連載も世にも不思議な経緯を経て成立したものです。

 わが国の「4コマ漫画」史上に革命を起こしたのがいしいひさいち氏で、単発の起承転結ものでしかなかった「4コマ漫画」を共通の設定を使いまわしてあたかも大河ドラマを紡ぐような「長編」とも違う「連作短編」にも似たスタイルを確立させました。
 以降の4コマ漫画はほぼその影響下にあると言ってよく、当然の様にこの働く少女もそんな作品です。

 主人公はタイからの不法就労者(おい…)のチャムナットという少女。「働く少女」というタイトルも彼女に由来するものでしょう。
 当然の様に未成年ですが、
レズバーで働いています。

 この漫画の連載された舞台がなんとレズ雑誌なので、
レズバーを舞台にしたソフトレズ4コマ漫画という、ニッチ市場狙いの作品なんですね〜。

 これだけでもややこしいのですが、更にこれを連載していた雑誌が廃刊となり、今度は
ホモ雑誌に舞台を移して連載が続く事になります。
 そこでチャムナットの
兄をゲイバーに勤めているという設定にして、この2つの店とそこに通うお客さんたちを描くごった煮漫画になってしまいました。

そういえばウォンロムの少年姿ってこれくらいだな…

 
いきなり水商売かよ!しかも未成年!

 と言う感じですが、それこそ未成年が読んでも何の問題も無いソフトな漫画です。兄がゲイバー、妹がレズバーで働いているという設定ですが
ドロドロしたところは一切ありません

 何しろゲイバーと言っても
全員が完全に単なるアルバイト感覚。牛丼屋やコンビニで働くのと意識が全く変わらないんですね。
 そういう性的なひっかかりをひきつった笑いに変えつつも、どことなく登場人物たちに感情移入させて優越感をくすぐるという構成になっているのではあるまいかと。
 
この京屋タカシくんの出番もかなり多いです。完全な職業オカマ(?)
3×3EYES」の八雲みたいなもんか

 例えばこんな風に笑いを取って来ます。

流石は同人作家!この手のギャグはお手の物ですな。
最初にこれ読んだときは窒息するほど笑いました

 この場合レズバーに出勤する奥さんが男装している訳ですが、それが引き起こす笑い、という訳。しかし
「リョーホー」には笑いましたねえ(爆)。

 チャムナットちゃんの兄、ウォンロム君はゲイバーに勤めているので(幾らなんでもこんな子供っぽい子は無理なのではと思いますが…)、コマに登場する時には大抵女装している訳ですが…何というか
余りそっち方面に追求する気が(いい意味で)起こらないドライさがあります。
 
女装しているのにコビなど全く考えないマイペースぶり。可愛いのが罪

 この漫画の魅力を「○○が××だから萌え!」という具合にスッキリ伝えるのは難しいです。
 何ともいえない脱力系のシュール風味ギャグ、というところでしょう。そこに性的なものを殆ど感じさせない
同性愛及び服装倒錯ギャグで味付け…という。
 
何を言ってんだか自分でも分からなくなりつつありますが、そういう風にしか言えないというか…。
 
常盤さんは自分のことを絵が下手だとおっしゃってますがなかなかどうして。
きっと同人誌でもこのレベルの作品を沢山生み出しているのでしょう

 極限まで簡略化された
可愛らしい絵柄にさらりと込められているアブノーマルな煩悩、という非常に同人誌的なニッチな漫画です。

 強烈な衝撃を受ける!ということは無いのですが、何か
妙に後を引く軽い中毒性のある作品と言えましょう。

 演出のコツはメリハリを付けることなんですが、それまで寸止めばかりされているので
たまに炸裂するこういうネタに読者としては非常に強く反応してしまうんですね。
 
これも女装ですよ。やらしくないでしょ?(それもどうなんだ)

 ま、
「だから何だ」と言われればそれまでなんですが…。

 このレビュー連載が始まって依頼、古い漫画が手に入るのかどうかに興味津々なのですが、なんとこの「働く少女」もマーケットプレイスで手に入るんですねえ。

 流石に「能瀬くん」の様に
「万難を排して手に入れてください!」と力説するようなもんじゃございません(すみません…)。古本屋で見つけて300円とかなら「値段分の価値あり」としてもいいかな?くらい。
 個人的にはこの
トボけた味何とも言えず好きなんですが。

 そして!ある意味この単行本の価値を押し上げているのが巻末に収録されているエッセイ漫画「同人誌漫画 婦女子のカタログ」と身辺雑記(というか
田舎オタク日記)の「埼玉県民だより」でしょう。


 
ちなみに常盤さんはこの猫の自画像と普通の人間に猫のお面の自画像と二種類があります。
出るたびに違う鳥山明先生のキャラみたいですね

 この当時はボーイズラブ系の漫画を愛好する女性達の自称としての
「腐女子」がまだ定着していない頃らしくて「婦女子」となってますが、正にこれは同人誌を愛好する妙齢の女性達の「あるあるネタ」の宝庫。当然男性にも通じるもの多数。

 これらを読んで作者本人への親しみが湧いたところでゆる〜く終わるのでいつまでも後を引く読後感が醸造されるのでしょうね。
私の周辺では何故か読者が多く「ドチキン!」とか「ケンチキ!」が流行語だったりします(読めば分かります…が、別に知らんでも死にゃしません)。

 TSものとしてオススメする訳にはいかないんですが、「たまにはこんなのもどう?」ということでご紹介。
 実はこの作品もまたこの連載が始まって以来是非紹介したかった一冊だったりします。
2007.01.29.Mon.
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