TS関係のオススメ本09-07


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真城 悠


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成城紅茶館の事情(2007年・スエカネクミコ・少年画報社)
成城紅茶館の事情 (ヤングキングコミックス)

 最初に言っておきますが、今回の作品は凄いです。
 あらゆる意味で「破壊的」な魅力を湛(たた)えた問題作。
 その可愛らしい表紙に隠されたインモラル…というかある意味マッドネス(狂気)をお楽しみ下さい。
 まずは思い出話から。

 都会での生活を諦めて田舎に引きこもった時にはいっぱしのオタクとしてアニメを数多く視聴することをきっぱり諦めたものです。
 社会人としてまだまだである現在も日々仕事とそれにまつわる勉強があくまでもメインであり、ホームページの更新その他は二の次三の次というところ。オタク趣味も封印…いや、風化状態です。
 ですから、アニメ雑誌を読む習慣などついぞありませんでした。
 何しろ掲載されているアニメの9割を観ることが出来ないのですから、そんな異次元の読み物みたいな代物を読んだところで仕方がありません。
 さながら海外の日本アニメファンが翻訳された現地語のアニメ雑誌を読みながら

「嗚呼、憧れの国の日本においてはこんなに面白そうなアニメが放送されているらしい!凄いなあ、羨ましいなあ。一度は観てみたいなあ」

 とため息をつくみたいなもんです。
 こちとらマゾじゃないので、何かにつけてわが身の置かれた立場(田舎に住んでいる)を再認識する趣味はありません。

 ところがその時はどういう風の吹き回しなのか、いつもは読まないアニメ雑誌を店頭でパラパラとめくってみていました。
 そして…そこに掲載されていたのが「はじまりのグラシュマ」だったのです。
はじまりのグラシュマ (ニュータイプ100%コミックス)
はじまりのグラシュマ (ニュータイプ100%コミックス)


真城の城内のレビューはこちら→TS関係のブックガイド6(下から2番目)

 ウチはレビュー系のホームページとしてはいいとこ「中の下」程度の規模ですが、中でも紹介以来屈指の売り上げを誇る人気作がそこにあったのですよ!

 「男ばかりの世界」で「触った相手をメイドさんにする能力」を暴走させる敵(?)が登場するというゆるいファンタジー・SF作品。
 アニメ雑誌に連載されている漫画であるためなのか、ストーリー云々というよりも「男→女への変身」場面もかなり力が入っていて、それこそかなり「萌え」ました(^^。
 単行本化は無理だと思っていたので、目の色を変えて過去の掲載号を探し回ったものです。現在は一冊の単行本で手に入ります。

 その時に覚えたのが「スエカネクミコ」という一風変わったお名前でした。
 名前とその絵柄の繊細なタッチからほぼ間違いなく女性であると思われます。
 
「これはもしかして私たち(TSファン)の味方の先生かも知れない…」という希望的観測がTS界ににわかに湧き上がったものです。

 「はじまりのグラシュマ」の興奮も冷めやらない頃、この
成城紅茶館の事情の連載が始まるのですが、果たしてやってくれました!連載第一回目からいきなり「男→女」へのTSですよ!
 一度に読みたいのでしばらく放置して連載が貯まり、単行本化される日々を指折り数えて待っていたのですが、このほど無事に単行本としてまとまりました。
 それがこの「成城紅茶館の事情」です。

 しかし…これが
トンでもない代物だったのです!
 気軽にTSものを楽しもうと思って、大した期待もせずに手に取った私を正にノックアウトしてくれるお化けコンテンツがそこにはあったのですよ!

 この所「TS作品」はオタク業界においてはそこそこ話題を集められるコンテンツであるらしく、この作品はかの「アキバblog」でも画像付きで紹介されていました。
 中でも目を引くのがやっぱりこの「帯」でしょう。

 こうもデカデカと「変態」を謳うのはちょっとリスクが高い感じがします。

 素直に「主人公の男の子が紅茶を飲んで女の子に変身!?」とか「主人公は紅茶を飲むと女の子に変身する体質になってしまった!!」といった、「内容説明」に徹した方が「欲しい人が買い、欲しくない人は買わない」といったことが可能になります。

 実際、
「ジャケ買い」による悲劇はこの業界では日常茶飯事。私など、裏表紙に恥ずかしそうにメイクをしている女の子が鏡に向かっている絵が描かれていたワイドコミックを「これはTSさせられた男の子が無理矢理メイクする状況に追い込まれて恥ずかしそうにしている場面に違いない」と邪推して購入したことがあります(爆)!
 逆もまたしかりで、ちゃんと内容が説明されていさえすれば、少々内容的には「外れ」でも高確率でファンは買いますからね。
 しかしこの
「ド変態」帯をレジに差し出せるか?というと…ねえ。

 今の時代はぶっちゃけ
「何を持って変態とするのか」の境界は決めにくいところがあります。
 それこそかつては「TSものを愛好している」というだけで変態扱いだったかもしれませんが、わが国は
「男の子」であるはずのらんまがおっぱいをぽろんぽろん見せまくるアニメがゴールデンタイムと夕方に堂々と放送されていたTS大国です(断言)。

 「入れ替わり」作品の古典である「おれがあいつであいつがおれで」はもう数え切れないほど映像化され、「一般向け」カテゴリでも今も同種の作品は引きも切りません。オタクジャンルよりの「ライトノベル」に至っては
ひっきりなしにTS傾向を持つ作品が発売されている現状です。
 今どき
「超自然的な原因で男が女になってしまう」お話程度で「変態」を名乗られた日には変態がすたるってものです。

*冒頭、紅茶館に送りつけられる謎の紅茶の葉。ここから物語は始まります。
つーか、これが結局なんだったのかの説明って無いんですよね…。

 というか、それこそ現在では性同一性障害とか服装倒錯そのものを「変態」とでかでか表示して売るのは政治的にも倫理的にも問題が大きいと思われます。
 では何故こんなコピーになったのか?
 …それは読めばすぐに分かることになります。

 喫茶店にてフられた腹いせにケーキを自棄(やけ)食いする主人公。

 そこで悪戯(いたずら)心を起こした店員が「謎の紅茶の葉」で作った紅茶を飲ませてしまいます。

 この後、唐突に倒れてすぐに起き上がります。
 …が、明らかに様子がおかしいのです。

 まあ、もうTSファンにとってはお馴染みの転換…ではなくて展開なのですが、なかなかに上手く捻った演出。
 そして店に偶然入ってきた自分を裏切ったカップルの男(悪友)を認めて飛び掛ってひっぱたきます。



*この時点に至っても客観的な状況が分かっていません。
 文章で書くと冗長になるところですが、絵なら文句無い説得力。

 「変身する」というのは「自分では無くなる」ことであり、「違う人物として認識される」ということでもあります。
 自分としては「悪友として」報復の為にひっぱたいたのですが、叩かれた方は見ず知らずの美女に突然叩かれたという認識しか持てないので大混乱です。

 …実はこの辺から徐々に
論理が狂った漫画であることが明らかになって行きます。

 Σ(゜Д゜)…。


 普通(?)こういう場合のリアクションとしては、
「な、何をするだぁーっ!」と言うとか色々あると思うんですが、なんとこいつは「美女にひっぱたかれた」ことに快感を感じて「結構いいかも…」とうっとりするんですね。
 ま、マゾ…?


 でもって主人公のはその勢いで、男の時に好意を寄せていた女の子に告白をぶちかましてしまいます。

TS漫画では非常に良くある「女の肉体で女の子に告白する」状況。
普通ならこのあとすったもんだあるはずなんですが…。

 「TSもの」ってのは「男女の社会的立ち位置」を混乱させて楽しむ
高等知的遊戯です。
 「パーソナリティ(人格)は男」なのに「外見・肉体的には女」である存在となってしまった主人公が、その「障害」を乗り越えて、いかに恋愛を成就させるか…?という辺りが読み応えとなります。
 多くの場合、「思いを寄せる女の子と『女の子同士』で仲良くなり、真実を明かすことに罪悪感を感じる」といったストーリー展開になりがちなもの。
 その際、男に戻らずに告白してしまって誤解されたり、或いは男に戻ると全く相手にされなかったり…といったパーツも最早定番ですね。

 この、
「男女の立ち位置の違い」「男女の認識・被認識の違い」を巡るドタバタを楽しむのが醍醐味というものですよ。

 さて、この場合はいきなり波乱含みです。
 何しろ「肉体的に女である」という自覚なしに悪友をひっぱたいた上に、
「男として告白したい」対象であるはずの女の子に「女の子のまま」告白してしまったのです!
 ぶっちゃけもうムチャクチャのグチャグチャ状態。

 こういう場合、普通なら付き合っている彼氏を見ず知らずの女がひっぱたいたのですから
「あたしの彼に何すんのよ!」と今ひっぱたいた女に対してキレるか、或いは男の方に「この女は何物なのよ!」とキレるかどっちかでしょう。
 しかも、そこに持ってきて女である自分の方に向かって告白してくるというのですから、「ふざけている」としか思えないところです。

 それこそ髪を振り乱しての取っ組み合い、キャット・ファイトになるシチュエーションです。
 普通ならね。

 ところがこのアクシデントに対して彼女はどの様なリアクションをとったか。
 それはこんな具合でした。

 Σ(゜Д゜)!!

 なんと、彼女は
隠れレズだったのです(「奥様は魔女だったのです」調で)。

…orz

 カモフラージュのために彼氏を作っているけど、実は女の子の方が好きなので、突然の告白に大感激!!
 …って
何ですかこれは?

 もう、
まともな人間が殆どいません
 なるほどこりゃ帯に
「ド変態」などと謳いたくなるのも分かるというもの。

 主人公も、「告白返し」をされるに至って
遂に自分の身体の異変に気が付きます

 
こうも堂々とおっぱい出されると一応「18禁なし」を謳っている当サイトとしては気が咎めるんですが、ただ「らんま」でもこの程度の露出は普通にやってましたから一応「あり」ということにします。

 この
「自分が女の身体になっていることに気付く瞬間」は固有の名前を付けたくなるほど「定番」にして「見せ場」でもあります。「被女性化認識瞬間場面」とかどうでしょう?頭文字をとって「HJN場面」とか。…無理か。

 ともあれ、当然の様に大混乱に陥った主人公はそのままトイレに駆け込みます。これまた定番にしてお約束。
 どうでしょう?
 
登場人物たちの人格の壊れっぷりと、それに付随する作品を貫く倫理の着地点とのずれが「ただごとではない」オーラをかもし出している作品であることはもうお分かり頂けるでしょう。

 明確な言及が無いのですが、どうも
「おしっこをすると元に戻れる」模様。
 実はこの「下の問題」ってのは、こと「18禁なし」のTS作品においては触れられそうで触れられない「隠れたタブー」案件だったりします。

 生々し過ぎる上に物語り展開上そう必要なものでも無いので軽く流されているのでしょう。
 自慰や月経は描かれることが多いのに小用が描かれないというのはある意味転倒しているのですが、実は「源氏物語」においては桐壺更衣(きりつぼのこうい)…光源氏のお母さんですね…に対する嫌がらせとして、廊下中に大便をなすりつけておく場面があるのです。にも関わらず「食事」場面が無いというんですね。これまた転倒と言えるでしょう。得てして世の中そういうもんです。

 トイレに駆け込んだ はその後ガラパンでぶっ倒れているところを発見されます。

 自らの女体に興奮して気絶したのでしょうか。ともあれ、男に戻っているからには
「おしっこをした」ことには変わりありません。
 こんな状態で落ち着いて小用を足せるとは到底思えないので、
「漏らした」と考えるのが妥当です。

 …わざとこんなことばかり書いているんじゃありませんよ!
そういう漫画なのです!

 何やら色々な意味で問題がありそうな漫画です。


*「紅茶を飲んだ瞬間女性化する」主人公。この因果な体質になってしまいます

 それにしても「あらゆる紅茶を飲むことで女性化」はともかくも、
戻るトリガーが「おしっこをする」というのは前代未聞ではないでしょうか。
 それこそ「性交渉で戻れる」というのは18禁ありのTS漫画などでは良く見るのですが、そうする訳にもいかない場合にはどう設定するか?が最大の作者の力量と発想が問われるところです。

 性交渉をしないことは不可能ではないけど、おしっこをしないことは不可能なので永続する心配だけは無い…と。
 ところが、これが
中々に絶妙な設定だったりします。

 何しろ「いつでも自由に戻る」ことがほぼ不可能でありながら、
「戻りたくない時にも勝手に戻ってしまう」可能性を内包している訳です。
 これまでに「変身トリガー」で作劇する方法論は数々目にしてきましたが、
「解除トリガー」を使って物語を転がそうとは…、全く思いつきませんでした。
 それでいて「変身する」部分だけは任意。つまり「自己責任」であり「自業自得」な訳です。いやー、お見事。

 恐ろしいことに、
これで第一話の紹介をしただけです。
 物語はまだまだ続く…というかこれからが本番です。

 正直、どこまで紹介したものか迷います。明らかに「フェチのツボ」を付く物語展開で、これを「オススメ」として紹介するのは一線を越えることになるんではあるまいかと。

 あくまでも「行間を読む」様に楽しむのが少なくとも私のTS作品鑑賞スタンスなのですね。
 「状況的に仕方なく」スカートを履く破目になった女体化主人公が、
誰もいないのを見計らって鏡に向かって可愛いポーズをつけているのを見られて「ご、誤解だよぉ!」とあたふた…

 …とかいう展開ならばいいんですよ(爆)。
 こういうのを「性転換萌え」或いは「女装萌え」と言います。

 しかし、女の身体になれたのをいいことに自らスカートを履いて女装し、その感触にハァハァし始める…などという展開になり始めると、読者としては(少なくとも私は)ドン引きなのですね。
 あくまでも「痛し痒し」であり、「基本的には嫌なんだけども、…でもちょっといいかも…?」くらいのスタンスが理想。
 その部分は読者の妄想に任せて頂きたい(核爆)。

 正直、この後の展開は「そ、そこまでやってくれる!?」と言いたくなるほどフェチな欲求やら願望やらを掬い上げた展開。
 ある意味この容赦の無さは女性だからなのでしょうか?と思う大胆さ。
 一見方向性が違う様でいて高橋留美子先生の感性を思い起こしてしまいました。

 これはあくまでも「紹介コラム」であって「解説コラム」ではないので、
あれこれ語りたい欲望をぐっとこらえて猛烈に駆け足で見所の場面を幾つか紹介します。
 詳しくは実際に本を手に取ってくださいませ。

 「紅茶を飲むと性転換する体質」になってしまった主人公は
「いつの日か戻してもらう」ことを目標にこの喫茶店でバイトをし始めることになります。
 経営者連中はそりゃ男ですから、
可愛い女の子の方がいい訳です(爆)。

 だから「女の子の状態で働いたならば時給を上げる」と鬼の様な要求。

サイズも何もぶっちぎっていきなり女性化する主人公。
紅茶一杯でこれってのは実は結構不便。

 比較的リスクの低い変身なので、半ばヤケクソ気味にさっさと変身した上に「女物」に着替えることになります。


 ちなみにこの手のコミックでかなり大きなポイントとなるのが
「変身後のキャラ造形」
 出来れば可愛くして欲しいんだけど…中には「変身後であることが分かるように」と男の特徴をモロに残したり(太い眉毛など)、或いは気合を入れて「普通の女の子とは違うキャラ」にしようとしすぎて結果、描きなれない画風の妙なキャラになっちゃったりします。

 ところが…この作品の「変身後」のキャラ造形が
本当に可愛いんですよ。
 ここは
女性作家ならではの「可愛らしさ」「着こなしのオシャレなセンス」で作画してくれますので本当に素晴らしい。
 この味わいは男性作家には出せないですねえ。
 もう「論より証拠」何点か見てもらいましょう。
これ、女体に変身して自主的に(?)お店に準備されていた女子の制服に着替えた男の子ですからね?


Σ(゜Д゜)!!


( ;´Д`)ハァハァ

 ちょっと思ったのですが、
女性作家の描く「自分がなってみたい女の子」像というのは当然の様に男性作家が描く「性的対象としたい女の子」とは異なっている訳で、その辺りが我々TSファンの心にピンポイントでヒットするのかも知れませんね。

 第一話で「目を付けられた」格好になった女の子がお店にやってくるのですが、当然言い寄られます。
 トイレに連れ込まれてスキンシップ…と相成る訳なんですが、何しろ彼女は女体のこちらを「性的対象」としてみてますので、当然「そういう方向」に暴走します。

 む〜ん、確かにそういう場面を待ち望んではいるんだけど、こうもストレートにやられると困るというか…
目の前に「五億円」どころか「五兆円」を積み上げられて「いや、多すぎるよ」と困っているみたいな贅沢極まりない悩みです。

 ここで、ある意味当然と言えば当然なのですが、ブラジャーをしていないことを咎められてしまいます。この辺りはにわか女。
 ところが、ここで凄まじい展開に。
 何と彼女は、トイレに二人で入り込んで女となっている
主人公の上半身を素っ裸に剥いた上、自ら付けていたブラジャーを外してプレゼントしてくれるのです!

 更に、それに留まらず、彼女自らの手でブラジャーを装着させられる主人公…。

*強引にブラジャーをぎゅうぎゅう締め付けられてはぁはぁと喘(あえ)ぐ主人公(精神・男)。TSファンの読者としては嬉しすぎるんだけど…
大丈夫かこの漫画?女性読者はどう思ってるのでしょうか。

 いや、これまでにも同居人だの母親だの、理解のある女友達だのに強引に女装させられる元・男の主人公は珍しくありませんでした。
 中には下着女装だってありました。というか、むしろブラジャーなんて定番にして王道とすら言える存在。

 しかし、
レズの女の子から脱いだばかりのブラジャーを直(じか)に付けられるなどというシチュエーションは前代未聞ではあるまいか。

 なんだか
「前代未聞」ばかり言ってますが、そうとしか思えないんだから仕方がありません。
 状況的になるべくしてこうなっているとは言え、
余りにもフェチ的な道具立て。逆に男性作家では「肌感覚」すら伝わってきそうな生活感溢れる女の子の描写から滲み出すこの道具立ては不可能だったかもしれません。

 ぬーん、「ブラジャーを付けらせられる」だけでも充分に倒錯的なシチュエーションなのですが、それがまた「脱ぎたて」の代物というのは…
幾重にもフェチ要素が積み重なりすぎて何だかもう「凄まじい」という表現しか無いですよ。
 しかも乳房が大きすぎてブラジャーもぎゅうぎゅう!


*余りにも凄すぎるシチュエーションに泣きながら頬を紅潮させて鼻血をどぼどぼ出す主人公。
もうムチャクチャになってます。

 男の方は男の方で「憧れの女の子の下着が手に入った!」と大喜びで必要も無いのに女性化して始終「彼女のブラジャー」を身に付けているというはしゃぎぶり。
 む〜ん…
どうなんだこの漫画

 次のシチュエーション。
 男の方はしょーこりもなく女の子状態の主人公に好意を寄せています。
 「女性化した男がモテモテになる」というのもこれまた定番の展開。主に女の子相手にだけどね(核爆)。

 ところが、今回は
物凄いことになります。ある意味ウチで紹介するのもギリギリの展開に。

 「18禁なし」TS漫画で女性化した状態の主人公がここまで切羽詰った貞操の危機に瀕するのは結構珍しいです。
 この「襲われそうになるけど結局助かる」というのも実は定番の展開ではあります。
 何故なら創作物としてのTS作品というのは、「疑似体験」そのものに意義があります。
 つまり、「力ずくで男に屈服させられる女の立場」をもこの「疑似体験」の範疇に含まれるのですね。
 大抵は相手の股間に蹴りを食らわすなどして助かります。
 そこは勝手なもので、本当に手篭めにされてしまっては「疑似体験」としてはやりすぎだからです。

*ちょっとウチ的にはギリギリなんですが、このコミックは18禁カテゴリではないし未遂に終わったので一応許容範囲ということにします。

 しかし、こちとら
変身解除トリガーが「おしっこをする」ですから、自由に戻ることがとても困難です。
 それこそトイレ以外で戻ろうと思ったら「漏らす」しか無い訳です。

 …
どうにも困った漫画です(爆)。

 この「おもらし」はまた別種のフェチを形成する分野です。ちなみにTS漫画の古典とされている「ヒロインくん」においては女の子となった主人公は
何かと言うとおしっこをお漏らしするという妙な漫画でした。
 私はその手のフェチ属性が無いので「どうしてもらしてばかりいるのだろう?」と不思議だったものです。学年誌に連載されていた純粋に子供向けの漫画だったはずなのですが…。油断ならない話です(えー。

 ともあれ、一応18禁なしの漫画なのですから、どうにかこうにか危機を脱することには成功します。
 しかし、それは
「そのままの状態で元に戻る」ことを意味します。

 更に悪いことに、
そこを女の子に目撃されてしまいます
 かくしてこの場面が完成しました。


…orz。

 状況をまとめますと、

@ 男に襲われている男
A しかも半裸状態
B 
その上ブラジャーをしている

 もう、言い逃れの仕様が無い状況です。
いっそ殺して!

 「高橋留美子っぽい」と表現した理由がお分かり頂けたでしょうか?
 まるで往年の「うる星やつら」の各回のオチみたいです。
 綺麗に収束させる気なんぞ全く無く、全てをムチャクチャにして放り出すというか…。
 
この後は当然修羅場ですよ。

*いや、「お揃い」かどうかすら小さな問題なのですが…。

 この他にも、「紅茶を飲むと性転換してしまう」体質を知られたことで脅迫めいた強制を課されたりといった
美味しい展開がてんこもりです。
 ああっ!スキャンしたい!したいけどキリが無いので断念です。

 この調子で解説していると本当に
全てスキャンする破目になってしまいますので涙を呑んでここまでといたしましょう。
 今のところこの一巻しか出ていないのですが、「終わらない日常」系のドタバタコメディとして幾らでもやれそうな感じです。

 今回、全く触れられなかったのですがこのお店に勤めている人間は全員が「紅茶を飲む」ことでその変態体質が発露する変人ばかりです。

 その内容も、いっそ全員性転換にしちゃえばそれはそれで美味しいのに「人格の違うもう一人が現れる様になる」とか「全身が性感帯になってしまうので、仕方なく全裸で過ごさなくてはならなくなる」とか
全く発展性の無い妙な体質ばかり。

…(゜Д゜)ナンジャソリャア


(・∀・)イミガワカラネエヨ…

 こりゃあ、
こんな原稿受け取った編集者はさぞ困ったことでしょう

 確かに
「ド変態ばかり」という帯にしたくもなるというものです。
 間違って「オシャレな喫茶店を舞台に繰り広げられる淡い恋のさやあて」みたいな漫画の積もりでこんなのを手に取る純真な女子高生がいたりしたら
大変なことになります。

 では、最後にこの手の「変身TS」ものではこれまた大いに問題になるにも関わらずどうしても避けて通りがちになる話題にずばり切り込んだシチュエーションを紹介してお別れです。

 自由に女に変身出来るならば、当然「遊んでるだろ?」という訳。
 18禁ありありのTS漫画ならばともかく、それは「言わないことになっている」ものなんですが…。
 色んな意味で凄い漫画です。

2007.09.17.(月)
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