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TS関係のオススメ本10-03


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真城 悠


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AKUMAで少女
(2007年・わかつきひかる・HJ文庫)
AKUMAで少女 (HJ文庫 わ 3-1-1)
AKUMAで少女 (HJ文庫 わ 3-1-1)

 TSというジャンルは幾つかのサブジャンルに分けることが出来ます。

 「らんま1/2」に代表されるジャンルが「変身」と呼ばれるもので、そのまんま身体が異性のものに「変身」します。
 映画「転校生」に代表されるジャンルが「入れ替わり」ですね。もう一つが「憑依」と呼ばれるもので、他にも沢山ありますがこの3つが代表的なサブジャンル。

 ちなみにこれらの「使い分け」はその物語がどういう風に展開したいのかによって異なります。
 例えば
「変身」の特徴としては、どうしても荒唐無稽になってしまうということ。
 
どう頑張っても「らんま1/2」を科学的に説明することは出来ません。やってやれなくはないだろうけど、どうしても「マンガ的」になってしまいます。

 では「入れ替わり」というのはどういう話なのでしょうか?

 実は「入れ替わり」は外見的な変化は全くありません。つまり
「人間関係」を巡る物語となり、必然的に「社会的」な側面を持つことになります。
 
このジャンルに根強いファンがいるのも分かりますね。渋いんだもん。
 確かにこんなのばかり読んでいたら、「変身」なんて子供だましを読むのがバカバカしくなる気持ちも分からないこともない。

 以前「パパとムスメの7日間」という小説を紹介しました(レビューはこちら)。

 その後ドラマ化され、この度DVD-BOXが発売される訳ですが、非常に面白かったですね。
 恐らく、最初は
「中年サラリーマンと女子高生の肉体が入れ替わる」という刺激的な趣向がアピールしたことと思います。

 ところが、なかなかどうしてこれがとても「痛快」なんですよ。

 落ちこぼれサラリーマンの一発逆転ドラマですし、しかも老舗化粧品会社のサラリーマンなので、
「女子高生ならでは」の意見や感性で危機を乗り切ったりする。
 とにかく爽やかで、観終わった後とても愉快な気分になるのですよ。
 単なる刺激に終わらない良質なドラマでした。

 これなどは
「入れ替わりもの」の「社会的な面」がいい方向に出た格好の例であると言えるでしょう。
 
これが「パパがある日女子高性くらいの女の子に性転換しちゃった!」ではこういう趣向にはならん訳です。

 いや、
それはそれで観たいんだけど(核爆)、全く違う系統のお話になってしまうでしょう。

 前置きが長くなりましたが、ではこの「AKUMAで少女」はどのサブジャンルに分類されるのでしょうか?
 なんとこれが
「入れ替わり」なんですねぇ〜(^^。

 気弱な少年、滝沢僚(たきざわ・りょう)はある朝目覚めてみると、隣に住むクラスメートの如月ゆり絵(きさらぎ・ゆりえ)と身体が入れ替わっていたのです!
 これ自体はもう何回も読んできたシチュエーションです。
 今の読者は、「男女が入れ替わる小説」そのものにはもう新味は感じないでしょう(^^。
 ならば、今新たに「TS小説」を世に問うからには「そこで
どんな新しいことをやってくれるのか?」が眼目となります。

 気がついたら身体が柔らかくて髪が長くて気持ちのいい匂いがして…うわ〜隣のゆり絵ちゃんと入れ替わってるうぅっ!!
 という「男の子の精神」の側からの一人称で始まった物語は、なんと
すぐに回想シーンに突入

 帯の表記に従えば「ツンデレ美少女」であるゆり絵は自室に出現した
ぬいぐるみ型の「悪魔」をあれこれあって脅して「三つの願い」を適えさせる言質を取り付けます。

 …
さらっと書いてますがかなりトンでもないシチュエーションです。
 ぬいぐるみ型の悪魔!?
 …ま、そういうことなんです。

 ありがちなことですが「入れ替わり」というかなり「渋い」展開にも出来るモチーフを使ってはいますが、この「AKUMAで少女」は展開そのものはベタな「漫画」なんですよ(^^。
 そして、強引そのもののゆり絵はなんとこんなお願いをするんですね。

「私は僚とラブラブになりたいの。僚をね、いっぱいさわってやりたいわ。僚に私のハダカを見てもらって、いっぱいいっぱい触られたいの!」


 …
何となく予想がついた方も多いことでしょう(爆)。
 そうなんです、「悪魔」はこれを勘違い(?)して二人の肉体を入れ替えてしまうのです!

 私はTSファンではありますが、研究家では無いのでなんとも分からないのですが、こういう
「入れ替わり」の原因が女の子の方にあるってのはかなり珍しいんじゃないでしょうか。

 大抵は「転校生」(「おれがあいつであいつがおれで」)や「パパとムスメの7日間」みたいに、『どちらのせいでもない』不可抗力だったりするもんです。

 しかもこの場合、ゆり絵は
かなりストレートに肉体的欲望を吐露しており、一概に「勘違い」とも言えないという「自業自得」状態

 一応「お互い対等に被害を蒙っている状態」である「入れ替わり」の筈(はず)なんですが、まるで一方的に男の子が被害者です(爆)。

 だって、
この入れ替わり劇に僚くんは全く責任も何も無いんだもん(爆)。
 実に素晴らしい。これぞ不条理ですよ(^^;;。

ゆり絵の身体でもじもじして可愛らしさを全開にする僚くん。

 さて、ここからストーリー説明…と行きたいところですが、細々と何が起こったのなんのとやっても余り意味がありません(^^。
 実はこの「AKUMAで少女」はこの「入れ替わった状態」…というか「女の子の身体に入った男の子」の煩悩を寸止めでじわりじわりと楽しませてくれるんですよ(^^。

 それにしても
描写の細々したフェチっぷりが何だか凄いなぁ…と思うことしきり。
 序盤の何箇所か抜粋しましょう。

*************

「自分の身体から、フローラルシャンプーと女の子の体臭が入り交じった甘ったるい匂いが立ちのぼる」(6ページ)

「顔をわずかに左右に振って、学園のマドンナの甘い匂いと、ぷりぷりしたおっぱいの感触を楽しむ」(55ページ)

「レズっぽいなあと思って見ていたが、女の身体になってはじめて気が付いた。女の子どうしでじゃれあうと、とても気持ちがいい。男の子なんていらないと思うくらいに」(56ページ)

「−ううっ!勃起しそうだ。てかチンチン無いんだけど」(62ページ)
(引用者:上手いっ!正にTSライトノベルが目指すべきはこの境地でしょう!!)

「甘い匂いの正体は、女の子たちの体臭と髪の匂い、それにリップや乳液の香りなのだろう」(64ページ)

*************

 …いいでしょ?
 こうも「体臭」だの「匂い」だの云々ってのがどうにも生々しくて…。

 しかも面白いのが、
ゆり絵は心臓病を抱えていて、強引なやり口にたまにはキレそうになる僚くんなんだけど、どうしてもそこまで強く出られない…という道具立てにもなっています。
 そして、入れ替わってしまったことで、女の子の身体になるのみならず
「心臓病を抱えた身体」にもなってしまうんですね。これは上手い!


心臓病を抱えているので、身体の操縦が上手く行かずにすぐに、そしてよく転ぶ僚くん。
ど、読者サービスじゃ無いんだからね!

 実は序盤でかなり
フェチっぽい表現が目立つなあと思っていたらこの作者の「わかつきひかる」さんはなんと「ナポレオン文庫」デビューのライト官能小説の書き手だったんですね。
 そしてこの「AKUMAで少女」が
一般のライトノベルデビュー作だったのです。
 だからかなりありますよ〜。かなりギリギリな表現が(爆)。
 なので一応覚悟して読んで下さい(^^。
 「伏字」くらいはバンバン飛び交うので。

 それにしても
「気の強い心臓病の女の子」を入れ替わる一方に選んだってのは絶妙ですねえ。

 劇中、「心臓病だからってチヤホヤされている」と陰口を叩かれる
「思い出の場面」なども挿入され、人物に厚みを与えています。

 …これには素直に驚きました。

 ライトノベルの、それも「ギャグ風入れ替わり小説」で
ここまでしっかりキャラクターを盛り立てているとは思いませんでした。

 こうなると元凶である
「クマのぬいぐるみ型の悪魔」ってのは何なのか…ということになっちゃうんですが、これがライトノベルの侮れないところです。
 使い古された表現で恐縮ですが、
半端な一般小説よりもよく出来てまっせこりゃ。

 この「過去の場面」というのは、作者の作風とでも言うべきもので、
使う作家と使わない作家がはっきり別れます

 「過去の場面」を効果的に使う作家さんといえば、何と言っても「スラムダンク」の井上雄彦先生がいるでしょう。
 あの漫画では主人公の花道やライバル(?)の流川も印象的なんですが、ゴリこと赤木キャプテンやメガネくんこと木暮先輩なんかもみんな印象に残ってますよね?

 あれって、試合中なのに挿入されまくった「過去のエピソード」のお陰ですよ。
 だって全国大会一回戦の…言ってみれば
「引き立て役」の敵チームにすらこの手法はしっかりと使われており、決して無駄な人間がいません。
 実質的に最後にして最大の敵である山王工業のメンバーですら「どんな奴らなのか」が読者の胸に染み込んでくるんだから。
 もう
「お前らみんな大好きだ!」状態ですよ。
 私なんぞ薄いファンですが、語りたいところが沢山あります。実は私はあの赤木晴子というキャラが余り好きではありません。
 元々女の子の読者に余り好かれないキャラではあるんですが…ま、これは機会があったらってことで。

 ちなみに、「過去のエピソード」という意味では「バガボンド」や「リアル」でも多用されています。ちゃんと数えてないけど、もう比率で言えば半分とかじゃ?とすら。

 逆に「過去のエピソード」を全く使わない手法を「意識的に」貫いたのが「デスノート」の原作者大場つぐみ先生。これもこれでありでしょう(実は1人だけ過去が描かれています。誰でしょう?)
 個人的には自分も使いたいんですが、漫画でないとやりにくいからなあ…。
 あ、でも効果的に使っている小説がありましたね。
ここに

 元々「入れ替わり小説」は
「入れ替わる前とのギャップ」を周囲から指摘されるのも読ませどころの一つなんですが、身体が弱くてか弱い肉体なのに、コンプレックスの裏返しで勝気な性格だったのが、中身が気弱な男の子になっている…というシチュエーションなので実に効果的。

 ってか誰だ!帯に「ツンデレ」とか書いたのは!…ま、書くのは仕方ないのか…。
 でもね、漫画とかライトノベルが馬鹿にされるのは「キャラクター小説」と呼ばれて揶揄されるのは「記号的」に「ツンデレ」とかを扱うからですよ。「そういうもんだから」って。
 でも、この「AKUMAで少女」のゆり絵は
ちゃんと「ツンデレ」になる必然性もあるんです。こうでなくちゃ。

 ツンデレから一点、「可憐な美少女」然とした態度に変貌した(中身が気弱な少年になったということで)ゆり絵は
一転して女子たちにモテモテになります(^^。
 ここのレズすれすれのスキンシップの描写はいいですよ〜(^^。

クラスメートの女子たちにおっぱいをもまれる僚くん。
ここをカラー口絵にするとはやるな( ;´Д`)ハァハァ

 もうここだけで値段分の元は取れるかも(爆)。

 勿論「目隠し入浴」の場面もあります(*)し、

*「入れ替わりもの」に良くある場面で、男性の肉体に入り込んだ女性のパーソナリティ(人格)が、男のパーソナリティに「自分の女の肉体の裸を見せたくない」ために、目隠しをさせて入浴介助をする行為。
 多くの場合は物語の必然性から出てくる場面ではあるが、同時に「入れ替わりもの」の見せ場の一つでもある。

 定番の「スカートがすーすーする」「ブラジャーがキツい」もありますし、に「ブラジャーを付けるに悪戦苦闘」も。そしてなんと「レズすれすれ展開」展開とその睦み合い寸前場面まで!

*流石の官能小説家さん。「縛り」の場面もあります。大丈夫。ちゃんと未遂に終わるので

 わかつき先生はいざ入れ替わりを描こうとする際に
よほど研究なさったのでしょうか?「お約束」のシーンを軒並み網羅するという素晴らしさ!

 
まるで「入れ替わりTS作品の名場面集」ですよ!

 これ、さらっと流してますけど、それぞれが全部引用する価値のある描写に溢れてますからね(^∀^)ノ!
 あと、
足りないお約束と言えば状況的に無理な「慣れないハイヒールで歩きにくい」くらいじゃないでしょうか?

*定番中の定番。「ブラジャーに悪戦苦闘」の図。
この小説って2〜3箇所設定を変更すれば普通の小説としても通用すると思うんですが、この場面に配されたイラストはあくまでも可愛らしいです(^^。

 入れ替わった状態ながらも波乱万丈あった二人ですが、ラスト間際で大きな…そしてこれまでの狂言ではない、本当の…危機に巻き込まれます。
 
果たして二人は元に戻れるのか?そして、本当は両思いである二人は無事に結ばれることは出来るのでしょうか…!?

 それは読んでのお楽しみということで(^^。


 これは
思わぬ佳作でした。

 最後まで読み終わった後に表紙のイラストを見てみると「あ、なるほどそういうことか」と思うでしょう。
 いやあ、それにしてもTSものを読みなれている人間には変わった趣向も多く、それでいて「お約束」はきっちり抑えてあります。
 「場面の瞬発力重視」なのはポルノ作家さんならではの作劇術なのでしょうね(^^。これは見習いたいところ。

 勿論「完璧な作品」ではありません。でも、キャラクターはライトノベルらしいエキセントリックなところは残しつつも厚みを感じさせる造形ですし、とても後味爽やかな一品。イラストも可愛らしいですし、これはオススメしておきましょう(^^。
 嘘かホントか、続編が出版されるなんて噂も。これは是非読みたいですねえ(^^。
2007.10.30.Tue.

追記:
 とても面白い対比なのでちょっとだけ追記を。
 先日紹介した桜ish 1―推定魔法少女 (1) とは全く真逆のベクトルを持つ傾向の物語なのですが、これは何故なのか?というと、これはわかつき先生がポルノ小説家でいらっしゃっることと関係があるでしょう。
 桜ish 1―推定魔法少女 (1) 」の主役の恭一くんは、全く何不自由ない健康体なのに常に自分の存在意義について悶々と悩む「セカイ系」な主人公。
 なので当然、「死」のイメージが纏(まと)わり付くような、思春期らしい物語となっています。

 この意識が「タナトス」ですね。「タナトス」というのは「死への願望」。
 確かに、若い頃って訳も分からんとそういうのに憧れていたりしますから。

 ちなみに「タナトス」の反対語は何でしょう・
 正解は「エロス」。

 そう、いわゆる「エロ」です。「やらしい」方のエロ、そのまんまの意味です。ね?官能小説家の書く入れ替わり(TS)ラノベだけにエロス。
 別にこれはシャレってだけじゃありません。

 ちなみに「エロス」ってのは「生への渇望」という意味でもあります。

 だって繁殖行為(要は「やりたい」ってことね)って「自分の子孫を残したい」ということですよね?だからやらしい人ってのは生命力がある訳です。

 確かに劇場版のシンジくんはやらしいこともした訳だけど、基本的に彼はタナトスの子。
 逆に「やらしいキャラ」って自殺しそうな感じとか全然しないじゃないですか。

 それこそシンジが「あ〜やなみちゅわ〜ん!」(諸星あたる風に)とかいうキャラだったらあんなにうじうじ悩まないでしょ?


 AKUMAで少女」において全ての元凶であるゆり絵は心臓病疾患を抱えているという設定でありながらツンデレで、設定的にはシンジくんや恭一などよりよっぽど死に近いのに全くそんなことを感じさせません。
 何しろ恭一だったら見ただけで死んじゃいそうな「悪魔」を足蹴にしてシバキ倒し、自らの願望を実現させるそのバイタリティ!

 全編が…直接的に言えば…「エロス」な意匠に溢れているこのAKUMAで少女」は間違いなく「エロスの子」です(^^。
 そう考えればAKUMAで少女に登場する本能(煩悩)に衝き動かされて行動する人物たちもみんないとおしく見えてくるではありませんか(^^。

 「セカイ系」もいいけど、能天気なエロもいいよね、ということで。

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