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TS関係のオススメ本10


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真城 悠


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リヴァースキス
(2007年・佐野しなの・メディアワークス)
リヴァースキス (電撃文庫 さ 12-1)
リヴァースキス (電撃文庫 さ 12-1)

 「朝起きたら」パターンはTS物語の正に王道にして定番パターン。過去の多くの名作がこの導入をしてきました。
 やっぱり「なんらかの大きな変化」の起こる正にその瞬間を意識を持たせないことで、
「気が付くといきなり変わっていた」というギャップをより強調させることが出来る訳ですね。

 多くの場合は「起きたら女の子になっていた」とか「起きたら幼馴染みと入れ替わっていた」というものですが、この「リヴァースキス」は少々複雑。

 まず、朝起きたらば
「男と同衾している」ことに気が付きます。

 む〜ん、これは健全な男の子であるならば
かなりの衝撃です。
 そして!なんと
その「男」というのが、自分自身の顔をしているのです!!
 中々にショッキングな導入部。いい加減色々なパターンの「朝起きたら」を読んできた訳ですが、これは中々
新しいパターンですよ。

 でもって自分自身は女の子の身体に…ってえええっ!?


 どうやら父親と同居しているらしい主人公の末村善(すえむら・ぜん)くんはその状態を発見されてしまいます。
 モラルに厳しいらしい父親はキレそうになるものの、自ら「彼女です!」と訴えることで何とか修羅場を回避します。

 うおおっ!これは頭がこんがらがるっ!

 最初にネタを割ってしまいますと、この「リヴァースキス」でのTSのパターンは
これまでにないユニークなものです。
 単なる「変身」でも「入れ替わり」でも「憑依」でもありません。

 なんと、
「トモヨシ」と名乗る別人の魂が自分の身体に入り込んできて(!!)、自らの魂を押し出してしまい、その状態で自分の肉体が分裂し、しかも女の身体になって、本来の魂がそっち側に入り込んだ(!!!!!)というパターンなのですね。

 む〜ん、これは凄い。

 
こんなにややこしい設定は聞いたことがありません。そもそも「分裂」ってのが凄すぎる

 一応
「魂の玉突き事故」みたいなのは「ふたりめの蘭子」(レビューはこちら)や「人格転移の殺人」(レビューはこちら)がありましたが、ここに「分裂」を持ち込むってのは凄いですねえ。

 変身直後の「身体が小さくなってしまった」事への戸惑いとかが丹念に描写されているのがちゃんと基本を抑えていていいですね。
 彼がどうしてこんなに落ち着いているのか?

 この超常現象状態で、釈明の為に父親と差し向かいで朝ご飯を食べる破目になったりしても妙に落ち着いているのは…何となくですけど分かりますね。
 だって、この時点で自分自身はすやすや寝ているわけです。


 何が起こったのかは分からないけど、多分どうにか戻れるんじゃ無いかな?と思ってしまうという。

 しかも、残念ながらちょっとライトノベルっぽくエキセントリックな父親と話している内に自分の身体の方は勝手に動き回ってふらふら外に歩いて行ってしまうのです!!
 いいですねえ、
矢継ぎ早に繰り出される全く退屈しないこの畳み掛ける様な展開

 
見た目がカップルみたいなペアルックの二人は路上で取っ組み合う様にして揉めた挙句に事情に気が付くことになります。

 突然の事故で死亡し、そのまま他人の身体を乗っ取ってしまった「トモヨシ」の魂は
「やりたいことを成し遂げれば成仏する」と告白。

 ふむふむなるほど。「戻る為に何かを成し遂げる」型ですね。
 それが
「女の子とキスをする」ことであると!

 そういえばタイトルも「リヴァース(復活)キス」です。

 ここで手元の文庫でページ数を見てみました。
 この時点で38ページ。ホンの最初の触り部分でしかありません。あとがきまで含めて317ページもあるもある小説です。

 む〜ん、確かに
突如女の子の身体になってしまった上に「男とキスしなくてはならない」というのはそりゃ過酷には違いありませんが、それで最後の最後まで引っ張る積もりなのでしょうか?

 それにしても趣向がとても面白いです。
 何故って、ここに
「女の子の肉体」はあっても「女の子の精神」は一つもありません
 そして
「他人の肉体」も無い

 登場するのは「自分の男の姿」と「自分が女の子になっちゃった姿」つまり、
全部自分なんですよ。

こちらが男バージョン。


 でもってこれが女バージョン。
 「らんま1/2」からこっち「男の子のキャラの女の子バージョン」というキャラパターンがこの世に存在することが認知された訳です。
 良く考えれば「少年魔法少女もの」ってのは「その男の子の女の子バージョン」になるのではなくて、「魔法少女に変身」する訳だから、「同じ人物が女の子だったら」というデザインではないことになります。
 それにしても普通に可愛らしいデザインです。
 個人的な感想ですが、この水彩画みたいなタッチの挿絵はかなり好みです(^^。

 
「異物」としてあるのは、他人の男の精神だけ

 …これ、書いていいのか分からないんだけど「入れ替わり」にしても「変身」にしても、18禁でないTS作品で「女の立場を一通り体験」する際に不足している要素がたった一つあります。

 それが
「オトコ」なんです。

 うがった味方をしてしまうと、これって
「自分同士」で男女の関係になってる訳ですよね?
 
しかも自分が女側で。

 本当は「精神」も分裂した自分のもう一つの自我にしたかったけども、そうすると別の恐ろしさが出てきてしまうから、そこは他人の魂を利用したと。

 それにしてもバーチャルな小説ですね(^^。
 勿論ありとあらゆるフィクションはバーチャルな体験ですけども、この舞台立ては本当に上手い具合に虚構という感じです。

 だって、仮にキスをされたとしてもそれは「自分に」されている訳です。その上、肉体にしたって「どこからか沸いて出て来た」女体ですから「元の持ち主」に気を遣う必要も無い。
 つーか、
自分自身含めて誰も傷つかないでは無いですか!

 その上、「相手とセックスすれば元に戻れる」というありがちでありつつハードルの高いものですらありません。キスすればいいんだから。

 先日、「完全にプラトニックである恋愛シミュレーションゲームよりも踏み込みつつ、ギャルゲー・エロゲーよりも手前」の最終終着点…つまり「女の子とキスをする」ことを目的にした「キミキス」なるゲームが発売されて話題を呼びました。

 ちなみに「元に戻るため」にハードルを設定し、それに向かって物語を進める系統の「不可逆」ものはままあります。
 面白い例としては「成仏するため(天国に行くため)」に、「自分を本当に愛してくれる人を見つけろ」というミッションを背負わされて、しかも金髪美女の姿に性転換させられて地上に落とされる映画「Switch (1991)」(日本語版のビデオ見つからず。スイマセン)ががありました。

 バリバリのプレイボーイが「本当の愛とは?」というテーマを突きつけられるために女の姿で苦労するというお話です。
 何しろ「本当に愛してくれる人を見つける」となるとそれは男ってことに(普通は)なる訳で…。

 でも「リヴァースキス (電撃文庫 さ 12-1)」はこれよりもずっとずっと簡単です。

 だって、「物理的」なものですよね?キスって。

 これが「セックス」ということになれば例え心が篭(こも)って無かろうが色々と心理的葛藤もあるでしょうが、キスくらいになっちゃうと…ねえ。
 簡単とまでは言わないけど、俳優さんとか女優さんなんて初対面の人とすら仕事で必要とあればやってるわけですよ。

 さて、
幽霊に身体を乗っ取られた善くんは、この大して高くも無さそうに見えるハードルをどの様にクリアするのでしょうか…


 紹介コラムなので、「じゃあこの辺でレビュー終わり。後は本編で確かめてね」と放り投げてもいいんですが、もう少し続けます。

 読み進めてみて分かりました。なるほどこれは面白い趣向です。
 
自分が分裂して、男女に別れ、自我は女の肉体の方に入ってしまう…という類例を見ない舞台立てを準備できた訳ですが、その後美少女となった善くんはこの関係において完全に主導権を握ります

 関係で言うと「男・男→女・男」になりますね。

 ところが善くんは状況が状況であるためか、
必要以上に言葉が乱暴

「うるせえ!」
「〜だろ!」
「〜じゃねえか!」

 常にこんな感じです。
 私は気が小さいほうなので、別に殴り返してくる訳でもない小説の文章を読んでいるだけでも、こうも一方的に怒鳴り続けられている男の方が「何だと!下手に出てると思って調子に乗りやがって!」とブチ切れやしないかとヒヤヒヤしてしまいます。

 大体この
「トモヨシ」なる人物(の魂)は余りにも大人し過ぎます
 だって「成仏する」ってことはそのまま魂も死んじゃうってことですよ?

 私だったら、一度死んだはずの人間がかなり変形とはいえ再びこの世に生きるチャンスを与えられた訳ですから、
何が何でもしがみつきますね。


 そもそも「キスをしたら成仏する」みたいなことは言ってますが、それだって「本人が望んでいるから」というだけで、確証がある訳でもなんでもありません。
 これが
ライトノベルなので、「一緒に替わりにキスをしてくれそうな人を探す」みたいなほのぼの展開になりますが、ハードボイルド作家だったら…いや、それこそ「一般の小説」であったとしても「トモヨシ」はその肉体的優位を利用して「善」を手篭めにしてしまい、一方的な隷属関係を築き上げると思います

 だって、戸籍は勿論のこと社会的基盤がキチンとあるのは「善の肉体」を持つトモヨシの方で、「どこの馬の骨とも分からない」謎の女でしかない「善の精神」の立場の脆弱さは言うまでも無いのですから。

 つまり、
どの様に贔屓目に考えても膳の精神の入った謎の女の子は「善の肉体を持つトモヨシの精神」に対して「弱い立場」とならざるを得ないはずなんです。

 ライトノベルですから流石に「隷属」だのまでやらなくてもいいですが、それにしてもあれだけ一方的に怒鳴られ続けて、ただでさえ「死んじゃった精神」という精神的不安で爆発してもおかしくないほど不安定であるはずの
「トモヨシ」が黙って言われるままになっているのはちょっとなあ…と思ってたんです。途中までは。

 そうじゃないんですよ。
 この小説の読み方はそうじゃなかった。

 
この「トモヨシ」ってのは「自分がワガママな美少女」になって思うままに自我をぶつけ続けても「全部受け止めてくれる存在」だったんです。

 そう、実は一見「トモヨシにキスをさせるため」に奔走しているかの様に見えますが、実質的に全てのコントロール権は全て「美少女の外観を持つ善の魂」側が掌握しているんです。
 そして、「女となってしまった善」に
「自分自身の肉体をしているトモヨシ」が求めてくるのは「キス」だけです。
 
決して臨まない性交渉なんて求めてきたり、「男のわがまま」で善を振り回したりしません


 
これほど贅沢な状況があるでしょうか

 つーか
現実の女性だってこれほど恵まれた立場の方なんてそうそういないんじゃないでしょうか?
 
あんだけ怒鳴られたり叩かれたりして全く反撃しない男なんて考えられないもの。

 「自らが女の肉体となってしまいつつも、女性優位の男女関係を築く」ことに成功した作品としては続・革命の日(レビューはこちら)が思い浮かぶ訳ですが、こちとら
「全部自分」という変り種中の変り種

 …相変わらず
「ライトノベル侮れず」というところですね(^^。

 善くんは、自分がキスするのが嫌なもんだから、
二人で街を流して適当な女の子を見つけてはその子とキスしてもらえるようなシチュエーションを作ろう…という無謀すぎる行動に出ます。

 ところがこの子は「公園の立像に恋をしている」という、二次元オタの腐女子みたいな(自主規制)な女の子。


Σ(゜Д゜)ナンジャコリャア…。

 更に、クラスメートに「うっかり見られてしまって」一目ぼれされる。
 いやあ、女の子になっちゃったら「男にぞっこん惚れられる」のは基本ですよ!

 突如尋ねてきた親友に咄嗟にクローゼットに身を隠した為に「思い人を監禁していた親友」という構図になってしまい、親友相手に修羅場に突入!

後ろでコケている美少女状態の自分が可愛いな( *´∀`)

 話がややこしくなるので、トモヨシの精神が入った自らの肉体を部屋の外に押し出して美少女の姿で差し向かいになって親友を説得。

 しかし、
断っても断っても「キミの事が好きなんだ!」と言われる立場ってのは…悪くない気分ですねえ(爆)。

 だってその後押し倒されそうになって、慌ててトモヨシを呼んでしまったことで事情を説明するも、それでも尚
自分を巡って目の前で言い争う男二人…。
 もう、
女と生まれたからには(?)一度は体験したいシチュエーションばかりではないですか!

 本当にこの「リヴァースキス」は
「理想の美少女生活体感シミュレーター」みたいな小説です。
 600円でこれが体験出来るってのは、TSファンにとってはかなり安上がりな体験では無いでしょうか(^^。

 だってその後も「キスを替わりにしてくれそうな女の子」を探す旅は続くんだけど、丸っきり
「イイ男を連れたカップルの美少女」の立場ですよ。

 度胸満点だから痴漢も撃退しちゃうし、それをその辺の男に後処理を押し付けていながら顔を赤らめられ、その後何事も無かったかのように男のところに戻る…という。

 だって見た目がそっくりのお似合いカップルなんだから!
 
こ、こりゃあ贅沢だ。だってこの男はこと美少女となっている自分に関しては完全に人畜無害。これ以上無い「男よけ」にもなる。
 
完璧じゃないですか


 モラルに厳しい父親と同居している割には成り行きで同棲状態になっている訳ですが(この辺も理想的?)、「亡くなった母親への墓参り」への身支度ってんで二人してショッピング。
 でもって試着室でワンピースを…なんて展開もちゃっかり抑えてあります(^^。

このわけの分からん状況に何故なったのかは本編にて


遂に可愛いワンピースを着てくれる善くん。
う〜ん、一応「変形入れ替わり」と言えないことも無いけど、こりゃ「変身」ですね(*^^*。

 そんなこんなで読み終わった訳ですが…
いやあ、面白かったですねえ。
 登場人物は決して多い訳じゃないので、全員がきっちり描きこまれておりどいつもこいつも愛着がわきます。
 ライトノベルの泣き所でちょっとマンガっぽい言動が目立つものの、みんな魅力的な登場人物ばかり。

 それでいて、「善人ばかり」の甘ったるい物語では全くありません。

 展開もメリハリが効いていて全く飽きさせず、時々「えっ!」というほど突発的な展開もあり、最初の内はもしかしたら反発を覚えていたかも知れない登場人物たちの意外な運命に感情を揺り動かされること!

 善人も悪人もちゃんとバランス良く出てくるし、人の二面性も暗黒面もちゃんと垣間見せてくれます。

 物語の最後の最後に全てが説明され「ああ、そういうことなのか」と思わせてくれます。

どいつもこいつも個性的な愛すべき脇役たち

 この二人(?)は無事にキスにまで至ることは出来るのでしょうか。
 しかし、いざ
キスをしてしまえばトモヨシは消滅してしまいます
 とはいうものの、トモヨシが成仏してくれないと善くんは女の子になったままだし…。
 そして、何と言ってもキスするということは、
「トモヨシとはお別れ」ということを意味します。

 さあ、善くんはどの様な決断を下すのでしょうか。

 ここでは結末は書きません(^^。
 あえて匂わせる様なことも書かない方針で。
「あなたは泣かずにいられるか」とかも書かない。書かないんだってば!

 ということで、
「面白い小説が読みたい」と思っている方にはオススメ!というか大オススメ!
 ぶっちゃけ「TS小説を読むのはこれが初めて」とかいう人にも思わず薦めてしまいたい(^^。

 良く見ると
「第7回「電撃hp」短編小説賞<大賞>受賞作品」とあるじゃないですか。それも納得の面白さ。そして爽やかさ!

 とにかく挿絵が多く、軽快に進むので読みやすさも抜群。これで面白いとなりゃ言う事ありませんね。
 そんなこんなで、悩んでいる方がいたら「間違いなし!」と太鼓判を押してしまいましょう。

2007.11.08.Tue.
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