TS関係のオススメ本11-04
*アップロードする際に在庫を確認してから行ってはいますが、なにぶん古い本が多い為、時間が経過することで在庫切れになる場合もございますのでご了承下さい。 真城 悠 |
「どう男女!?」(2007年・集英社・荻わら子) | ||||
TS作品の「タイトル」ってのは知恵の絞りどころでもあります。 「らんま1/2」を始めとして傑作・佳作タイトルは沢山ある訳ですが、この「どう男女!?」もなかなかですね。「どうなんにょ」とルビが振られています。 さて、何故かamazonにも画像が無い表紙の絵柄をご覧になってもお分かりの通り、こてこての「少女漫画」です。作者の方も女性。短編集の一作、みたいに言われていますが前後編で単行本の半分以上を占めますのでボリューム的には申し分ありません。 いや〜読んでいてとある友人の言葉を思い出しました。 中身に関して疑問に思うことは何もありません。何しろ帯がこれですから。 |
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*これなら内容を間違えようがありません。 今はTS内容を含むというのは大いにセールスポイントになるのでバンバン掲示してほしいです(^^。 つーかもう地雷を踏むのは嫌…orz。 |
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私が子供の頃ってこんなに漫画の中身って分かりやすく無かったですよ(;´Д⊂・・・。 今だと裏表紙に簡単なストーリー紹介が書いてあったりしますが(特に少女漫画)、昔は本当に分からなくて店頭売りのコミックスにビニールカバーが掛けられる様になってからは小学生にとっては友人・知人のネットワークでも無い限り未知の漫画本に手を出すなんて考えられないことでした。 「入れ替わり」ってのは実は非・TS愛好者にも一番「分かりやすい」ジャンルでもあります。 「朝起きたら性別が変わっていた」では「何故?」ということになりますが、「男女が入れ替わった」ならば、現実にそういうことが起こるのかどうかはともかく原理というか「何が起こったのか」はとても分かりやすいですから。 また、わが国には映画「転校生」という存在があるもんだから「ああ、あれね」と納得してもらいやすいということもあります。 さて、私がこの漫画を読んで友人のどんな言葉を思い出したのか? 仮に「Oくん」としておきますが、彼はもう凄まじいばかりの映画マニア。私もそこそこ観ていた積もりだったのですが、本当に「足元にも及ばない」とはこのことか。 何しろ単純に観ている本数が多いだけではなく、コレクターとしても凄まじいものがあります。当時私と同じ二十歳程度だったと思うのですが海外からLD(レーザーディスク。当時の最新メディアです)を取り寄せるのが常態と化していたんですよ。 しかも「コレクションのためのコレクション」ではありません。何しろ「本数をこなす」ために映画館で映画を観てもあのクソ高いパンフレットなどは全く買わないのです。つまり「純粋に映画そのものを観たい」からLDを輸入しているんですね。 何しろ日本で封切られるアメリカ映画などだと、その大半を実際に日本で公開されるよりも早く輸入LDで観賞済み…というんだからその凄まじさが分かるでしょう。 そのOくんが激賞する映画がありました。その一本が「初体験リッジモント・ハイ」。 |
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Oくん自らが認める様に一見するとどうということはないティーンエイジ・コメディです。 浴びるように映画を観てきたはずのOくんはそれこそ「世界の名画」だの「感動の名作」だの、そして数々のB級アクションやらゲテモノ映画も観ているはずなんですが、それらを差し置いて「リッジモント・ハイ」ってのは何故なのか?と私は聞いてみました。 Oくん曰く「楽しそうだから」というんですね。 別にこれはふざけている訳ではなくて、こういう楽しい青春映画を撮ることが出来る脚本家・監督ってのは実際にそういう人生を謳歌してきた人で無いと無理で、それがごく自然に出来るのが羨ましくて仕方が無い…というお話でした。 私にとってベスト映画はアクション映画にして世界の存亡を揺るがす「ターミネーター」だったりしたので、ぶっちゃけ視野狭窄に陥っており、どうということはない毒にも薬にもならない学園コメディなんぞ歯牙にも掛けていませんでした。 しかし、今になってみるとOくんの意見ももっともだと思いますね。 ある程度の年齢を越えると、世界の存亡云々なんて絵空事の方が馬鹿馬鹿しくなり、寧(むし)ろ「青春時代」の素晴らしさ、痛々しさと切なさを高らかに謳いあげる作品を作るのがいかに凄い事で、そして難しいかがしみじみ実感されるのですよ。 多くの読者さまにおいて推測されている通り、私の学生時代は到底「ばら色」では無かったわけですが、ならば今から若返って中学・高校とやり直せたとしても「青春映画」みたいに能天気で楽しそうな青春時代は送れないでしょう。 さて、何でこの話を思い出したかと言うとこの「どう男女!?」は正に「女子高生の瑞々しい感性」そのもので描かれており、それこそ実際の女子高生の生活実態に定点観測カメラを置いて覗き見したみたいに活き活きとした描写が随所になされている作品だからなんです(^^。 これはもう、「真っ只中」にいる人間、或いはいた人間が自然に素直に描いたからこそなし得た物語であり、それに最大の意義があるんですね。 それこそどれだけ取材をしても「当事者」でない人間にはこれは描けないでしょう。「価値観の違う」主観を覗き見ることは正にフィクションを繰る目的の一つではあるまいか。 では人物関係をご紹介しましょう。ことこの物語に於いては「人物関係」が決定的に重要になります。 まず主人公の工藤里美(くどう・さとみ)。 |
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ズボラで部屋を片付けられないという…大半の少女読者にシンクロするであろう…「親しみやすい」造形。 でもって、その「親友」として三谷真理子(みたに・まりこ)というクラスメートの女の子がいます。 |
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…そっくりで見分けが付きにくいとは思いますが頑張って付いて来て下さい。 ここであと2人出てきます。 まず、同じクラスの人気者の男子である吉永直茂(よしなが・なおしげ)くんがいます。 |
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いいですか?この年代の女の子は「誰が誰を好きか?」とかそういうことが思考の中心な訳です。もうそれが何よりも大事。 「パパとムスメの7日間」(レビューはこちら)でも娘がそんなことばっかり気にするのでかなりイラついたもんですが、現役を退いてそれほど年代が経っていないであろう作者自らが描くと何と言うか「ナチュラルさ」が違います。 この真理子は直茂に一方的に思いを寄せています。ここが大事。 主人公の里美ではなくて、主人公の親友にしてサブキャラの女の子の片思いってのがポイントです。 そしてここにもう一人。 それが大葉武(おおば・たけし)。 |
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*全く同じスキャンですが、背後霊みたく後ろにいるのが大葉武です(;´Д⊂…。 |
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彼は写真の写り方でもお分かりの通り、この世界の人気者である直茂の親友なのですね。 実際問題「親友」がいるかいないかってのはキャラ造形の厚みにモロに影響しますよね。ごく自然に友人・親友とたわむれる描写ってのは頑張って出来るもんじゃございません。 さて、とりあえず4人の重要中心人物を紹介しました。簡単におさらいします。 里美(主人公)―[親友]― 真理子 直茂 ―[親友]― 武 ここまでよろしいですね? では「入れ替わり」が起こるのはどことどこでしょうか? これは面白いですよねえ。というのは、男性作者ってどうしても関係性を1対1に絞り込みたいのかまずは入れ替わる男女二人にフォーカスし、それ以外の人間関係は外部に求めることが多かったですから。 映画「転校生」の原作である「おれがあいつであいつがおれで」もまずは斉藤一夫と斉藤一美がいて、入れ替わった後に「思い人」のヒロシくんや一美の親友のアケミがぼろん、ぼろんと登場してくる構成を取っています。 個人的にはこの「アケミ」というキャラは昔から注目していました。 エヴァでいう初期のアスカみたいにサバサバしており、全ての事情を知っていながら面白がって他人の不幸は蜜の味とばかりに腹黒くはしゃぎ回る面白いキャラです。児童文学でライトノベルみたいにキャラが立っているというのは中々面白い現象。 徐々に事情を察して本気で心配してくれるクラスメートの川原敬子も魅力的なキャラです。作品名は失念してしまいましたが、彼女にインスパイアされたキャラが登場するTS作品があったはず。 名作「 |