TS関係のオススメ本11-10
*アップロードする際に在庫を確認してから行ってはいますが、なにぶん古い本が多い為、時間が経過することで在庫切れになる場合もございますのでご了承下さい。 真城 悠 |
「ドラマCD 魔法少年マジョーリアン」& 「ドラマCD おと×まほ」 (2008年・石田敦子・フロンティアワークス)(2008年・白瀬修/ヤス・フロンティアワークス) |
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ドラマCD 魔法少年マジョーリアン |
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10-01 「魔法少年マジョーリアン」(レビューはこちら) 11-06 「魔法少年マジョーリアン」第2巻(レビューはこちら) |
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注:今回の原稿はかなり話題が脱線気味で、肝腎のCDドラマの話に中々入れませんので、その部分だけ読みたい方は★★★マークまで飛ばしてください。 かつて「カセットブック」というメディアがありました。 要するにオーディオテープに効果音やプロの声優の演技によるお芝居を吹き込んで販売していたのですね。 「ラジオドラマ」をパッケージで販売している様な形です。 テレビ放送されるアニメはほぼ100%DVDメディアで発売される昨今では信じられないかもしれませんが、かつてテレビアニメというのは一回限りの「流しっぱなし」で、パッケージ販売されるようなものでは全くありませんでした。 そもそも家庭用ビデオデッキが普及するのは80年代の初期から半ばに掛けて(*)ですので、「テレビ番組を録画する」ことそのものが不可能だった訳です。(*発売そのものは1976年には始まっています。詳しくはこの辺を参照) そんな時代に「アニメ好き少年少女」たちへ「ビデオ録画」の代わりを果たしてくれていたのがカセットテープでした。 映像を記録することが出来ないのでテレビアニメの音声だけを取得するんですね。 そしてそれを枕もとの「ラジカセ」(懐かしい呼び方だ…)で再生しながら当時小学生の私は就寝する訳です。 当時これで聞き倒していたアニメは数知れません。 私の友人・知人にも似たような経験をしていた人は大勢いたので、当時の子供には割合ポピュラーな行動だったのではないでしょうか。 |
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ただ、何しろ「絵がある」ことを前提に作られているテレビアニメの「音だけ」ですから、「それではいざ聞いても何も分からないだろう」という声が聞こえてきます。 はい、実際分かりません(爆)。 今考えると大笑いなんですが、当時はラジカセにつなぐケーブルもなく、テレビの貧相なスピーカーに押し付けて録音せざるを得なかったことを逆手にとって、後ろから「うわっ!何とかがどうした!」とか言って「実況解説」をしていたりしたんです。 かなり経ってから聞き返しても、そのお陰で記憶が引っ張り出されたりするのでそれほど間違ってもいなかったのかなと。 今でも当時熱狂的にハマり狂っていた「銀河漂流バイファム」やら「うる星やつら」の音声のみのテープが残っています(^^。「バイファム」なんてLD-BOXも持ってるのに未だに音のみの方が印象が深いです。 |
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ことアニメに関して言うならば「音メディア」というのは間違いなく、「映像そのものの代替物」としてスタートしたと思います。ここ大事なんで覚えておいて下さい。 映像を記録するには媒体そのものが無いが、音だけならば環境があるのでそれで代わりを務めさせる…というものですね。 ですから当時は映画などを「音声のみ」収録したカセットテープやレコードなども結構発売されたものです。 有名な「スター・ウォーズ」の音声のみ版レコード(!)もこれにあたるでしょう。 「ウルトラセブン」なども「音声のみ」版を買っていましたし、最初に放送されたテレビアニメ「北斗の拳」にも同種の商品がありました。懐かしいなあ。 私などは60分に編集されまくったドラえもんの劇場版第一作「のび太の恐竜」のオーディオ版をテープが擦り切れるまで聞きまくったものです。 随分後になってVHSで映像そのものが発売になった時も「聞き覚えの無い」場面にどうしても愛着を感じることが難しかったものです。 |
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80年代も半ばを過ぎると「オタク第一世代」と呼ばれる世代が形成される様になり、「アニメファンのための」アニメもそろそろ放送される様になってきます。 ただ、当時は深夜放送もCSもありません。 ですから、「アニメ」と言えば劇場版か或いは熾烈なスポンサーとの駆け引きに打ち勝ってのテレビ放送しかありません。 よく「テレビアニメなどというのは30分のコマーシャル」と言われますが、その状況というのはそれこそ90年代になっても普通に続いていたんですね。 先ほど紹介した「ドクタースランプ アラレちゃん」なんて一体どんな商品を売っていたのか?と思いますが、それこそ「アラレちゃんソーセージ」「アラレちゃんスリッパ」とかそういうのですよね。何か思い出してきた(^^。 思えばこういう「キャラクター商品」ってのも徐々に様変わりはしていますね。 「ガンダムのプラモデル」と「ガンダム(の柄が入った)水筒」では同じキャラクター商品でもその意味はかなり違います。 このあたりどなたかちゃんと分析して欲しいなあと勝手なことを思ったり。 ま、要するに、当時は非常に人気のある漫画・小説であったとしても「アニメ化」されるには非常に高いハードルがあったということなんです。 ですから「おもちゃ」などの関連商品が売れそうに無いマニア向けの作品などは、カルト人気があったとしても中々アニメ化への流れには乗れないのです。 現在、週に数十本の新作アニメが放送され、何よりもメディアが深夜にCS、BSなによりもインターネットと拡散しています。 漫画や小説作品などの宣伝文句としての「アニメ化決定!」という言葉の意味はかつては計り知れないほど大きなものだったのですが、この頃はそうでもないのはこんなページをご覧になっているみなさんにはよくお分かりの通りです。 |
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何しろどれほど高視聴率でもグッズが売れないから打ち切り、とか現在では信じられない話が並びます。 |
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かつて、「電話」が開発された時、誰もが「次にはテレビ電話だ」と短絡的に連想していました。 これは「近未来」を描いた作品の多くに、腕時計状の「テレビ電話」が登場することからも分かります。 現在ならばISNDだ光通信だと、扱える情報量が飛躍的に向上し、動画をやりとりすることは技術的にさほど難しくないので、電話回線を利用した「テレビ会議」なども行われていますが、「テレビ電話」は思いのほか普及していません。 実は「技術の進歩」というのは必ずしも「可能である」ならば即・その技術が普及することとはイコールではないのです。 なんと「電話」という「音声をリアルタイムでやりとり」するツールは「文字情報」をやりとりする「インターネット」へと発展しました。 これは誰も予想できませんでした。 |
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リアルタイム組では無かったのですが、「ウルトラマンごっご」の際の「テレビ電話の真似」は定番でした。 |
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現在でこそ大量の情報を素早く送ることが出来ますので、動画配信サイトなどというものも存在しますが、インターネットの初期はほぼテキストのみのやりとりでした。 この当時に、「近未来」を描いた作品に「未来の技術」としてディスプレイに文字がごにょごにょ出て来る様子をイメージできたでしょうか。 …出来る訳がありません。 数十年前には「音声」という生データをやりとしているのに、「文字だけちょろちょろ送りあう」なんて退化してしまっているではないか?と思ってしまいますよね。 実は私も一番最初に「インターネット」なるものを見せられた際には非常にショボくて「何じゃこりゃ?」と思っていた側でした。ドリームキャスト発売当初は日本語で作られたページもまだ少なかったですからね。 |
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ダイヤルアップ接続で56kbpmモデム標準装備が売りってんだから時代を感じるどころではありません。 しかし、恐ろしくお世話になった最高のハードです。買ってすぐに「少年少女文庫」「八重洲の性転換の館」(現・八重洲のメディアリサーチ)を発見し、電話代が月に20,000円を越えましたが全く後悔しませんでした(断言)。 ちなみに我が家ではまだまだ現役です(^^。 |
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ただ、ならばこれは本当に「退化」なのか? …実はそうじゃありません。 これは「既存の技術がより安価になってより普及した」ということなんですね。そして使い方を工夫したと。 どうやら、「技術の進歩」というのはある程度まで進むと少し戻ってよりローテクのものを「便利に」する方向に働くみたいです。 電話には未だに「テレビ電話機能」は標準装備されていないのですが、その分送受信システムは大幅な進化を遂げ、遂には持ち運びが出来るほどのミニサイズになり、個人が一人一つの「電話番号」を保有するという、かつてから考えれば殆ど冗談みたいな状態が当たり前になりました。 これなど「基本的な技術」そのものは数十年前にあったものを、「極限まで便利にした」例と言えるでしょう。無論、そこには大量生産などによる「安価な提供」体制が伴っているのは言うまでもありません。 |
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では「オーディオ(ラジオ)ドラマ」はどうか? わが国において「ヤマト」「ガンダム」などのヒットによって、現在の用語で言えば「オタク市場」めいたものが開拓され、それなりに商売になることが分かったものの、ならば人気のある漫画などが端からアニメになる訳もありません。 その作品が儲かるかどうか?というのは一にも二にも「金になるか?」ということが第一です。 この辺りを仔細に解説していると一冊の本になってしまうのでさらっと書きますが、とにかくアニメを作るには膨大なお金が掛かります。 「アニメそのもの」が売り物になるのは一部の劇場作品(「確実にソフト化される」&「興行収入がある」ので)でもない限り95年の「新世紀エヴァンゲリオン」の登場を待たなくてはなりません。 確かにOAV(オリジナル・アニメ・ビデオ)という道もありますが、こちらは下手するともっと制作費が掛かります。 しかし、ファンたちはそれでは収まらないのでその欲望ばかりが募ります。 現在の様にインターネットがあり、市井(しせい)の一般人であっても全世界の不特定多数の人々に自分の意見やら考え方を伝える手段などがあったりしませんから、そりゃあもう当時のファンたちの欲求不満は凄いものでした。 …そこで登場するのが「カセットブック」な訳です。あ〜やっとたどり着いた。すいません。 一時期猛烈な勢いで「ゲームブック」が発売された時期があったのですが、それと同じく出版社がこぞって「カセットブック」を製作していた時期があったのですよ。 |
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2008年1月発売とありますから復刻されたみたいですね。 とにかく最終巻が凄まじい難解さで挫折した人が多かったみたいですが、私は完璧なマップを作成しましたのでバッチリとクリアしました(^^。レベルアップシステムはいいんだけど、サイコロを使う戦闘は余りにも面倒くさかった…orz。 無限コンボもありましたが復刻版では果たして?実はTS的なポイントもある傑作。オススメ。 |
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恐らく、この時期の「歴史」を研究する人がいたならば、随分奇妙な現象に写ることと思います。 というのは、この時代にはもう「テレビアニメ」は存在しており、隆盛を極めていたからです。 ではなぜ「カセットブック」なのか?なぜそんな媒体が必要とされるのか? この辺りが歴史の面白いところで、「テレビアニメを作る技術がある」からといって、何でもかんでもテレビアニメ化してもらえると思ったら大間違いな訳です。 そう、実は「オーディオドラマ」(カセットブック)というのは「制作費が安く上がる」のが最大の魅力なのですよ。 それはそうでしょう。 何しろ音しかないんですから。 現在の様に「テレビ放送 → ソフト化」の流れが確立していない時代でしたから、僅かに発売されていたソフトはどれも一様に高価なものでした。 忘れもしない、最初に発売された頃の「風の谷のナウシカ」は定価14,800円でした。 なんと、ファミコンことファミリーコンピューターと同じ値段だったわけです。VHSビデオでですよ? |
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私が初めて自腹で購入したアニメソフトは(年がバレますが)、LDこと「レーザーディスク」の「ガルフォース」(無印)でした。 これが定価12,800円なり。 これらは映画なので2時間近い尺があるのでまだいいですが、30分しかないOAVでこれくらいの値段がするものも当たり前でしたから、当時のアニメの制作費がどれだけ高くついていたのかは察するに余りあります。 |
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ちなみに直前にはファミコンの「ディスクシステム」でシューティングゲームとして発売されていました。 「キャラクターを全面に押し出したシューティング」という意味ではその後の「ソニックウィングス」とか「エスプガルーダ」シリーズのさきがけだったかも?(多分違う) |
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流石にこれではやってられないので、すぐに「レンタルビデオ」という新興業態が勃興する訳ですが、当時は一拍二日で定価の10%が相場でしたから、上記の「ナウシカ」などは実に1,480円ということになります。 入会金も合わせると数千円ということが当たり前で、しかも店にならんでいるビデオの半分が違法コピーされた海賊版だったりする凄い時代でした。 話がずれ放題ずれていますが(爆)、こうした中で「カセットブック」はかなり安価で、相場は1,500円〜1,600円程度でした。 ファンにしてみれば大好きだったあの作品に効果音やプロの声優による演技が加わるのはかなりの魅力だったのは言うまでもありません。 何しろ「テレビアニメのソフト化」が難しかった時代なので、この時期にはちょっと妙なことが起こります。 当時のアニメは延々と続く「サザエさん」式の物でも無い限り、基本は一年単位でした。 どれほど人気があっても一年経つと終わってしまう訳です。 作中のキャラにも思い入れが出てきて、面白くなった辺りで「お別れ」となるのでファンにとっては非常に辛いものでした。 ただ、かといってそれならば本編をソフト化するのは容易では無いんです。何しろ40〜50話近くもあるのです。当時のビデオテープの値段を考えれば、仮にソフト化出来たとしても、全巻購入すれば数十万円になったでしょう。 |
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その後LD時代になって「うる星やつら」の「全話LD-BOX」というクレイジーな商品が発売されますが、なんと50枚組みで33万円という値段でした。それでも発売された6,000セットが完売したというのですから当時のファン恐ろしやというところですが。 要するに、一番の魅力である「本編」が余りにも“小回りが効かない”商品とならざるを得ないため、よりコンパクトで確実な売り上げが見込める「OAV」という形式で「後日談」或いは「サイドストーリー」を描くという手法が一時期かなり取られていたのです。 私が知る限りでも「聖戦士ダンバイン」「重戦機エルガイム」「銀河漂流バイファム」などにそうしたOAVがあります(本来OAVとは原作なしのアニメオリジナル作品を指すのですが、ここではこの表記とします)。 皮肉なことに、こちらは「ソフト化前提」なので当時でも容易に入手・視聴が可能でした。 つまり、本編は見られないのに番外編だけは見られるという歪んだ状態が…仕方が無かったとはいえ…普通だったのです。 |
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「イデオン」も「ザブングル」も「ダンバイン」も「Z」も「ZZ」も放送していたのに何故「エルガイム」だけ放送しなかったのか未だに謎です。ともあれ、「ギャブレーが女装する」OAVの存在は知っており、観たくて仕方が無かったのですが、都会に行けた際にLDの裏面ジャケットの画面写真のみで満足するしかありませんでした。つーか未だに観ていません。本編は観たけど。 観たことある人…どうでした? |
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実はそうした「より手に入りやすい本編の代償ソフト」として「カセットブック」が製作されていた背景もありました。 「装甲騎兵ボトムズ」やら「シティーハンター」なんて、アニメ本編が存在するエピソードですら「カセットブック」でリメイクしたバージョンが存在するのです。 |
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「装甲騎兵ボトムズ」は「リアルロボットアニメの極北」とかよく言われるんですが、実際にはかなりオカルトチックな薄気味悪い要素を併せ持つ奥深い作品です。 カセットブックは音だけしかないというその特徴からその不気味な雰囲気が良く出ていて何度聞いても飽きません(ちなみにウド編の序盤のみ。60分だからね)。 今にして思えば、これは要するに「テレビアニメの音声コンテンツ」の変奏曲だったんでしょうね。 「絵がある」ことを前提としたアニメの音だけ収録してもなんだか分からない場面も多いのですが、最初から音だけであるカセットブックならば完全に分かります。 以上は「関連商品」としての「本編の代償商品」としての「カセットブック」の一側面です。 当然、より積極的な活用方法もあって、それが「アニメ化の前哨戦」という側面です。 90年代の「第二次RPGブーム」の中心であり、「当時の中高生は全員読んでいた」とまで言わしめた「ロードス島戦記」は後に全13話という当時としては「大作」OAVとなるのですが、その前にカセットブック化されていました。 |
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一番人気のハイエルフのディードリットは「ウルドお姉さま」こと冬馬由美版が一番有名ですが、実は二代目。初代はこのカセットブックの鶴ひろみさんです。ちなみに三代目はTVアニメ「英雄騎士伝」編の新山志保(故人)、四代目は映画のオマケ短編の宮村優子(敬称略)。 このカセットブックは後期のもの以外は全て本編のサイドストーリーという小憎い選定。ファンとしては本編が聞きたくもあるんですが。 当時は正に「ロードス島戦記」が一番盛り上がっていた時期で、「カセットブック」から「OAV」へとステップアップしていくところをリアルタイムに同時体験出来たのは非常に貴重でした。 そう、正に「ステップアップ」という表現が最も相応(ふさわ)しいのがこの「カセットブック」という媒体なんですよ! 人気のある作品は、いきなりアニメに出来ないのでまずはカセットブックになり、そしてテレビアニメになり、そして劇場版になり…という「サクセスストーリー」を描くことが出来たのです。 ですから「カセットブック」という呼び名には何かしらオタク第二世代を興奮せしめるものがあります。 |
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この「成恵の世界」もその一つ。このアニメのキャストはオーディオドラマ時と同じなので、旧来のファンも楽しめます。 アニメ化を機にキャストが交代することもままあるんですが、個人的には勿体無いと思います。 |
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勿論、カセットブックに留まる作品も少なくありませんでしたが、それもまたよし。 現在、古本屋の店頭で投売りされているカセットブックの中には「え?こんなのもカセットブックにしたの?」と驚くようなマイナーな作品も少なくありません。 結局、制作費の安さからアニメにするのに比べてリスクが少なかったのでしょうね。 一時期「コレクター」を目指して見たことの無いカセットブックは端から全部買っていた時期もあったんですが、余りの玉石混合ぶりに挫折してしまいました。 でも、未だに何度も聞き返す「名作」もあります。 音声のみ」というのはメディアとして非常にハードルが低く、子供には親しみやすかったことを覚えています。寝ながら聞けるしね。 まだテレビは一家に一台の時代でしたから、気軽にアニメビデオとか観られなかったんですよ。 当時のアニメは夜の7時とかに始まることが多かったので、家族とのチャンネル争いに勝てずに子供にとってはクソ面白くも無いニュースを見せられていた人も多いのでは? 延々歴史の話が続いて退屈な若い読者も多いでしょうけど、オタク第二世代の体験談と思って聞いてくださいませ。現在の「オタク論壇」ってオタク第一世代の証言ばかりなので、こうした話を書きとめておくのも貴重だと思いますので。 家庭用コンパクトディスクの発売は1982年(昭和57年)です。 まだまだレコードも現役バリバリの時代です。 私は大好きだったアニメ「超時空世紀オーガス」のサントラをLPレコードで聞いた記憶があります。 まだそういう時代だったんですね。 ちなみにLPレコードの生産枚数がCDことコンパクトディスクに抜かれるのが1986年だそうです。 「カセットテープ」は録音・消去が可能なメディアなので未だに現役ですが、「レコード」はここを最後に衰退していくことになります。嗚呼、栄枯盛衰。 |
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絶賛放送中の「ガンダム00」にも登場する「軌道エレベータ」も登場する本格SF。 しかし、設定は地味に難解。子供に「特異点」言われても分かりませんって。 ちと設定が複雑すぎたのか人気はイマイチな模様。 今ではそんなことを言う人もいませんが、余りに鮮烈だった「ヴァルキリー」と主役メカの変形機構が全く同じだったので「パクりだ!」という非難もありました。 |
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そして、もう一つの流れとして徐々にAMラジオにおいてアニメからスピンアウトした番組が登場するようになります。 現在も隆盛を極める「アニラジ」の萌芽です。90年代も前半になってくるとAMラジオにおいて起こっていたんですね。 土曜日の深夜ともなると、全く途切れずに延々「そっち系」の番組が続いたものです。 そうした番組は大抵「オーディオドラマ」を番組内で流すものだったんです。 そして、そのドラマ部分をまとめて後でCDにして発売する…というパターンが定着するに至ります。 つまり、その数年後に「新世紀エヴァンゲリオン」が切り開く「アニメをとりあえずテレビ放送して箔を付け、パッケージしたソフトとして売る」方法論が「オーディオドラマ」で展開されていたんですね。 なので、この時期のオーディオドラマは「カセットブック」とはかなり成り立ちが違います。 |
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ナルディアさんの雄姿を確かめたいかたは是非!…って懐かしいな。このラジオ聴いてたし、多分このラジオドラマも全部聴いてたけど、もう一度聴こうかな。 |
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「ラジオドラマ」とでも言うべきこれらの作品群は、放送枠の中の15分ほどでとりあえず「次回への引き」で終わるように構成しなおされています。 当時のラジオ番組は本当にドラマだらけでした。 有名な「ツインビーパラダイス」もありましたし、ファルコム関連のゲームなどは随分オーディオドラマになってるんですよ。 |
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それにしても今日の紹介はさながら「なつかし地獄」ですな(^^。当時のファンとしては通常のトーク部分の音源も欲しいと思ってしまったりします(^^。 |
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個人的に大好きだったのが「青空少女隊」。Wikipediaにもラジオドラマの存在が記載されてませんが、ちゃんとあります。 |
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あと、「TARACOファルコムぴ〜ひゃらら」内で放送されていた「カミサマン」という作品の最終回のラストで登場人物の一人が女装潜入ミッションをやったら最後に副作用(?)で身体が女体化してしまう話があったんですがどなたか録音してませんか?かなり探したんですけどCD化されていないみたいなので…。 |
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「青空少女隊」はその後めでたくOAVになって(1994〜1996年)「ステップアップ」を果たすんですが、妙なことに私は(一応見ましたけど)それほど昂揚するものがありませんでした。 ラジオドラマが余りにも面白くて、それで「満たされて」しまったのかもしれません。 また、「アニメーション」が作品の「到達点」であり「ステータス」であるという考え方そのものが古くなっていたのでしょうか。 徐々に純粋なパッケージ商品の「カセットブック」は姿を消し、メディアの形態として「CDブック」が当たり前になって行きます。 そして、相前後してアニメ界にも波及してきた現象が「メディアミックス」と呼ばれる手法です。 「メディアミックス」というのは、物凄く簡単に言うと、一つの作品を漫画・アニメ・ゲーム・小説など複数のメディアで展開して幅広く人気を得ようというものでした。 この手法は鬼才・角川春樹氏が陣頭指揮を取って「角川映画」で成功させて定着させたと言われており、現在も角川書店・富士見書房の作品の多くはこの手法をとっています。 オタク系の作品で言うならば、90年代にメディアミックスで一世を風靡した「スレイヤーズ!」シリーズ(富士見書房)や、近年では「涼宮ハルヒ」シリーズ(角川書店)があります。 |
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「Xエックス劇場版」の余りの血なまぐささ&救いの無さに打ちのめされた観客を同時上映の「スレイヤーズ!」が癒したのは一部で有名。
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個人的に「メディアミックス作品」ということで最も印象に残っているのは「機動警察パトレイバー」シリーズ。 |
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現在アニメはパロディ路線のものが多いのですが、その先駆けと言って間違いないでしょう。 |
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「パトレイバー」については、あちこちで何度も書いてきたので繰り返しませんが、「成功例」と言って間違いないでしょう。 ただ、この「メディアミックス」戦略は思わぬ負の側面もあります。 それは、「多方面で展開される」ことと「人気がある」ことが必ずしも直結しないということです。 例えば「機動戦士ガンダム」などで言えば、その後の「ガンプラ」ことガンダムのプラモデルは勿論のこと、ファンの期待に応える形で制作された数々の「関連書籍」などがありました。 それらの「書籍」によってより設定などが掘り下げられ「iフィールド」(アイフィールド)の様に遂には本編の設定に取り入れられたものすらあります。 今では全てのモビルスーツに標準装備されている「形式番号」もアニメ雑誌が勝手につけたものが発端だって知ってました? |
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要するにある段階までは「アニメグッズ」…それも「アニメ本編が純粋に好きなアニメファン」たちが喜ぶような…が発売されるアニメというのは「人気がありすぎて困る」様なものだったんですね。 だからこそその飢えを満たすために次々に色んな商品が出る訳です。 それこそ「機動戦士ガンダム」ならばシャアとアムロの区別が付かない人でも名前くらいは小耳に挟んだことがあるはずです。 そういう作品ならばあれこれ関連グッズが出るのも分かります。謎本とか。 お分かりですね? 「メディアミックス」というのは、言ってみれば「人気を出すために」あれこれ発売する訳ですが、実際に人気があるか/出るかなんてその時点では分からないんですよ。 なので、ある時期から全く名前も聞いたことも無いのに、関連商品だけは矢鱈(やたら)にあるアニメみたいなのが増えてくることになります。 こう聞くと「あ〜あれあれ!」とか思う方もいらっしゃるでしょう。 人によって該当作は違うと思いますので、そこはお任せします。でも、多いでしょ?そういうアニメとかゲームとか。 …そして、こういう流れになったならば当然ご推察の通り、実は「CDブック」(オーディオドラマ)もその一環として制作されることが増えてきたのです。 かつてのカセットブックファンとしては、このメディアの作品が増えることそのものは喜ばしいのですが、かつての時代を知っている身からするとちょっとだけ寂しかったり。 要するに「大好きな作品なんだけど、環境が許さないからカセットブックくらいしか作れない!」という状態で作られたカセットブックは、もう「思いいれもひとしお」というマストアイテムなんです。 現在、89年の宮崎勤事件を20年近く経て「オタク」に対する偏見も薄らいでは来ましたが、本当に長い間アニメファンたちは「日陰者」扱いでした。この頃のオタクは巷間伝えられるイメージよりもずっと社交的な人が多いのですが、それは「熱心なファン活動」をしないと仲間にめぐり合えなかったことと無関係ではありますまい。 |
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雑誌「アニメージュ」(徳間書店)では何度も特集を組みましたが、女性の投書で「今すぐこいつを絞め殺したい」というのがありました。 宮崎が暗転させたサブカルチャー方面のことを言っているのでしょう。気持ちはよく分かります。 ちなみに事件は1988年から1989年に掛けて。映画「となりのトトロ」の公開は1988年。 |
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ともあれ、時代は移り変わり、当初「カセットブック」だったものは今では「CDブック」(CDドラマ)となり、「代替物」だったものが「数多くある関連商品の一つ」にまで移り変わりました。 その制作費の安さからなのか、とっくにテレビアニメになっていて、しかもある程度成功を収めた作品であっても「CDドラマ」が次々に発売されるという作品もあります。 |
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このほかにも「ハヤテ」はCDドラマが数多く発売されており、ゲームのオマケにまで付いています。 |
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今のオタク(アニメファン?)が本当に恵まれているなあ、と思うのが選択に困るほどの作品と、そして関連商品が溢れていることです。 こちらにいらっしゃる様な方々は先刻ご承知でしょうが、今はアニメとなれば「ラジオ番組」がほぼセットで付いてくると言っても過言ではない状態です。それは「誰もが知ってる有名アニメ」にではなく、「オタクしか知らない」様なマイナー(貶(おとし)める意図はありません)アニメにこそあるんです。というか逆に「誰もが知ってる有名アニメ」には逆に無いと言える状態。 これってたぶん日本ならではの現象ではないでしょうか。アメリカで「ジャック・バウワーの24時間ラジオ!」とかをキーファー・サザーランドがあの暑苦しい声でやってると思えないもん。 「はい、今日はニーナ役のサラさんがゲストでーす!」とか。…ちょっと聞きたいな。英語分からんけど。 ドラマじゃ日本も一緒か。じゃあ「シンプソンズ・ラジオ」とか「ハンナ・バーバラアワー」とか無いでしょ?ラジオで。 でも、日本のアニメは今その状態。そして、ラジオの中身がアニメ本編とほぼ関係ないことなんてザラですよ。「中の人」が素のトークを展開しているだけとか。 上の方で「普通のトーク部分の音源も欲しい」なんて書きましたけど、今ではそういう商品も普通に売ってます。 |
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最高に面白いラジオです。ちなみに余りの人気にソフトのオマケとか、写真集の付録などラジオ番組を付けまくったので全部を聴くのはかなり難しいことに。 私はほぼ全部を聴きましたが、唯一ゲーム&一巻を買った際に応募してもらえるキャンペーンCDに入っている中原麻衣出演回のみ聞けず…orz…。 |
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そんなこんなで、正に「グッズの一種」として気軽に「CDドラマ」がバンバン作られる様になって、現在に至る訳です。 あ〜長かった。本当にスイマセンでした皆さん。 ちなみに時代を多少ごっちゃにして書いてます。朝日ソノラマ系のカセットブックの中にもそりゃ「メディアミックス」を意識したものもあったでしょう。しかし、話の流れをすっきりさせるためにこういう風にしましたのでよろしくです。 ★★★ さて!遂に「ドラマCD 魔法少年マジョーリアン」の話に入りましょう。 原作については一応レビューしているのでそちらをよろしくです。 また、一応原作をご存知であるという前提でレビューします。それほどネタバレが深刻な作品ではありませんが一応。 |
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10-01 「魔法少年マジョーリアン」(レビューはこちら) 11-06 「魔法少年マジョーリアン」第2巻(レビューはこちら) |
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内容は原作の1巻と2巻の代表的なエピソードを鏤(ちりば)めて、「変身体質を付与され、使命を帯びさせる」エピソードから始まってラストは2巻の冒頭「バッドドリームガールズ」で締めとなってます。 これは2巻レビューで予言した通りの形となりました。 まあ、誰が脚本を書いても一応の締めはこのエピソードになるとは思います。それほど感動的なフィナーレでしたから。 ドラマCDということなので、当然「キャスト」がいます。 声優に詳しくない方にはピンと来ないかもしれませんが一応列挙させて頂きます(敬称略) 鷺乃宮マサル(さぎのみや マサル)(声:下田麻美) 久米河イオリ(くめがわ イオリ)(声:新谷良子) ジェン太とダー子(声:矢島晶子、小桜エツ子) 鷺乃宮麻紀(さぎのみや まき)(声:小平有希) 鷺乃宮真由(さぎのみや まゆ)(声:藤田咲) 鷺乃宮真央(さぎのみや まお)(声:神田朱未) 翔子(しょうこ)(声:清水愛) もう驚くほどの実力派揃いです。 こと声優さんの質の面では全く問題ないと言えるでしょう。 この頃、話題作りの為に声優業など全くやったことが無い人が声を当てて折角の傑作を棒読みのヒドイものにする例が後を立たないのですが、「ドラマCD」という地味な媒体な為に皮肉なことにその被害を逃れることが出来た格好です。 |
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では肝腎の「TSファンとしてどうか?」と言う点について。 …実はこれが正直「微妙」でした。 元々TSジャンルはマイナーの中でも更にマイナーなジャンルでした。 ですから、特に変身シーンが露骨に「女性としてのセックス」を思わせる濃厚なそれである当作などは諸手を挙げて大歓迎してもおかしくないはず。 …ところが聴いてみると何とも微妙なんです。 |
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元々原作の漫画を熱心に読んでいたこともあり、ストーリーそのものは熟知しています。なので「これから先どうなるのだろう!?」という「未知の興奮」は確かに味わえない訳ですが、ただ冷静に考えればこの「ドラマCD」を原作を全く知らない人が買う確率はかなり低いと思われます。 原作漫画のファンに向けて「ドラマCD化されましたよ!」という商品のはずです。 ならば内容を熟知している読者に対しても何らかのサプライズがあってもいい。 勿論、内容を大幅に変えるというのは論外。ならばどうするべきなのか? …これが余り思いつかないんです。 そして、私はこれが「TSもののドラマCDである」という当たり前の事実について初めて深く考えた機会であったことに思い至ったのです。 |
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私は物心付いた時にはもうTSものの作品群に興味を示して、ある程度自分の自由になるお金が使える年齢になってからは熱心なコレクターとなって今に至る訳なんですが、その中には「映像作品」はあっても「音声作品」は皆無でした。 TS作品としてのメインはやはりどうしても「漫画」ということになります。 一部「小説」もありますが、やはり「ビジュアルイメージ」を明確に伝えてくれる「漫画」は今も昔もTS作品の王道です。 そして非常に数の少ない「映像」も珍重されました。 私がどれほど「うる星やつら」に魅了されたかは繰り返しませんけど、とにかくその強烈なビジュアルイメージは一生を決定つけたほどです。 残念ながらいい大人になってしまった現在は、バラエティ番組でお笑い芸人さんや局アナの方が女装したりさせられたりしているのを見ても眉根を少々上げる程度にまでなってしまったんですが、やっぱり「映像」の『威力』はかなりのものでした。 では、大好きだった「ドラマCD」或いは「カセットブック」ではどうなのか? …実はそれほど印象に残っている作品はありません。TS要素のある作品もきっと無かった訳ではないのでしょうが、瞬時に思い出せないということはほぼ無いと言っていいと思います。 これは音声のみのコンテンツであるデメリットがモロに出た形となってしまっていると思います。 |
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何しろ本人がどれだけ“恥ずかしがった演技”をしようとも、「実際にどんな姿なのか」がどう頑張っても視聴者には「見えない」のです。 ということは「女装」ジャンルでは圧倒的に不利ですし、「性転換」ったって「ムクムクッ!」とか「キラキラ」なんて効果音を幾ら入れられても分からんものは分かりません。 ということは後は「声での演じわけ」ということになります。 過去、男女を行き来する役柄で男女それぞれに声優を分ける試みは何度かなされてきました。 その筆頭は何と言っても「らんま1/2」でしょう。 |
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ただ、これは私の私見ですけども、どうしても「らんま」は性転換後が「同一人物である」と言う風には聞こえなかったんです。 何と言うか、男女の「声の差」というのは単に声質が違うというだけではなくて、発声から呼吸法から違うと思うのです。 「声が変わるから」という理由で男女を振り分けるのではなくて、元のパーソナリティの時の「発声方法」をトレースするというかそこまで出来なかったか…と思わずにはいられないんですよね。 なので、私は「うる星やつら」の「原生動物」エピソードで性転換後の面堂の声が変わらない方針を結構高く評価する方です。先日忘年会で出会ったTSファンの方は「あそこで声が女に変わらないのにはがっかりした」とおっしゃっていましたが、これは見解の相違でしょう。 |
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07-07 「原生動物の逆襲!プールサイドは大騒ぎ」(レビューはこちら) |
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この「ドラマCD 魔法少年マジョーリアン」は原作をドラマCD化した作品としては及第点が付けられると思います。 エピソードの選定も的確だし、順番も妥当。 原作をきちんと咀嚼(そしゃく)して過不足の無い作品に仕上がっています。欠点が見当たりません。 ただ、「ビジュアル」という最大の武器を取り上げられた状態で「TSの醍醐味」を表現するための創意工夫、という点においては今一歩及ばないと言わざるを得ないんです。 例えば、今回主役の一人を演じられた声優の新谷良子さん。 どうして彼女が選ばれたか?と言えば、まず主人公の少年がローティーン、つまり「声変わり前」の男の子だったので音域的には普通に「女声」だったことがあるでしょう。 その為、今回は「変身前後の男女声優交代」ではなくて「女性声優一人による演じ分け」で表現する方針が取られた訳です。 |
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それ自体は全く問題ありません。 ただ、問題は新谷さんご自身がボーナストラックでのコメントでおっしゃっていた通り「少年役を演じたことが無い」方であったこと。 新谷さんには申し訳ないのですが、私にはどうしても「変身前」が「少年」の声に聞こえなかったんです。 普通に女性声優さんが演じる「男の子」という記号にしか聞こえなかった。 このあたり余りに細かい指摘かも知れませんが、ここはTSサイトですのでこだわらせて頂きます。 生粋の女性に、小学生の男の子がいきなり思春期以上の少女の身体になってしまった演技を求めるのは酷だとは思います。 思うんですが、そこが感じられないことにはわざわざドラマCD化する意味がありません。 よく「アニメ声」などと揶揄される声優独特の発声法には反発する向きも多いでしょうが、「記号」というのはそれだけで強みもあります。 それこそ、実年齢の男の子に「変身前」の声を当てさせ、「変身後」を新谷さんが担当する…という方針ならば相当に迫力のあるものにはなったでしょう。 ただそれは、「漫画のドラマCD化」という「無難なコンテンツ」からはかなりはみ出す創作行為になります。 というか、恐らく余りの生々しさにかなり「背徳的」「倒錯的」な雰囲気すら漂う「問題作」になっていた可能性もあります。 果たしてそこまでのモノが求められているのか…? |
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決して私は「ドラマCD 魔法少年マジョーリアン」がまるっきり駄目な駄作だ!とけなしている訳ではありません。 ただ、100点満点で言うと80〜100点の作品である。ということが言いたかった訳です。 つまり、「作品そのものとしては及第点だが、TS作品としては微妙」ということです。 私としては仮に50点、いや0点になるリスクを考えても120点、200点を目指して欲しかった。 確かに当代の人気声優を主役に据えて、「記号的少年演技」と「素の演技」(変身後は普通(?)の女性なので)でストーリーをサクサク進めれば「ドラマCD化」は無難に達成できます。 でもそれでいいのかと。 確かに、単なる「少年魔法少女もの」という「出オチ」っぽい前提で始まりこそすれ、実際には複雑な人間関係を内包した一筋縄では行かない作品ではあります。 ただ、「いたいけな少年が、成熟した肉体の女性になり、絶頂に達せられる(かのごとき変身をする)」のもある意味最大の見所なのではないのか? このあたりはTS作品には常に付きまとうジレンマです。 TSファンとしては「ディティール」にこだわりたい!こだわり抜きたい!という欲望があるのですが、TSファン以外は「ディティール」よりもストーリー重視でしょう。 恐らくTSファンが真に望む展開を真正面から取り組んで具現化したら、「一般人ドン引き」のものが出来上がる可能性がかなりあります。 一般人が許容出来るのは、「らんま1/2」みたいな健全な“記号的”お色気なのであって、「性転換しちゃった少年の衝撃」を生真面目に表現することなど望んではいないわけです。 この辺がTSファンがメジャーになってアニメ化なんかもされたTS作品に意外に冷淡な理由でしょう。 折角望むものが見られるのかと思っていたら、単に「記号的に利用」されただけで、一番見たいものが見られないと。 …とまあ、これが私の「ドラマCD 魔法少年マジョーリアン」評になります。 ある種TSファンが「らんま」に抱く感情に良く似ています。 「望むものは全て揃っているはずなのに…何か違う」という感覚ですね。 また、これは私見なんですが、「気恥ずかしさ」みたいなものもあると思います。 |
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これは「不思議の国の少年アリス」(レビューはこちら)のドラマCDです。1994年発売。エヴァの放送1年前ですね。まだ「Windows95」もこの世に無い頃です。 主人公のアリスをアンパンマンでお馴染み戸田恵子さんが演じていらっしゃいます。 やはり「女性声優さんによる演じ分け」になりますが、流石にムチャクチャ上手くていらっしゃるので、その点では安心して聞けます(^^。 ただ、何と言うかちょっと「申し訳ない」気持ちになっちゃうんですよね。これは完全に私見なので反発のある方がいらっしゃったら御宥恕頂きたいのですが、「TSものを読む(見る/聴く)」と言う行為はある種の「欲望」を満たそうとする行為であって、それこそ非常に「プライベート」なものです。 なので、「漫画」の様に作者一人と直(じか)に向き合う形式ならばともかく、「お芝居」であるオーディオドラマとなりますと、そこに関わる多くの人たち…声優さんは勿論のこと、脚本家や演出家といったスタッフの方々…のことが浮かんできてプレッシャーを感じてしまうんです。 TSものなんて、物凄く微妙な精神状態の上に乗っかったものですよね? それこそ大勢の力で作り上げる作品は、大勢いるスタッフ/キャストの一人でも白けてしまったら途端に無価値になってしまいます。 とはいうものの、本気で「リアリティーを追求」すれば性転換した自分に気が付いた少年なんて、恐慌状態になるか気絶するか…いずれにせよ平静を保てるとは思いません。実際にショックの余りゲーゲー吐く話もあります。 |
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ただ、全編が余りにも血なまぐさいことと、女性の身体に入り込んだことに気が付いた主人公がショックの余り嘔吐したりと、「萌え」とは対極の作風。 |
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確かに、「そこまで考えていては話が全く進まない」のも事実。そして「アリス」はどちらかというと破天荒なコメディ・ファンタジー路線ですので、ある程度はリアクションを戯画化して描くのは間違いはありません。 ないんだけど、いかにも「セリフ」然としたお芝居で「うわっ!なんだこりゃあ!」ではなんともその…。 確かに私たちは映画「転校生」や「らんま1/2」が普通に存在した後の歴史を生きています。 ここに「ありがち(TS)展開に意義を唱える革命者」は出てこないのでしょうか。 ちょっと余りにも微妙な感覚なので伝わりにくかったかも知れませんが、それほど「オーディオドラマ」と「TS作品」とは相性がいいとは思えない…という話でした。 この「不思議の国の少年アリス」のCDドラマは発売と同時に速攻で買いましたけど、ちょっと聞き返すのが辛い…。いや、決してつまらないとかそういうんじゃなくて何とも気恥ずかしいというか…。どうか分かって下さい。 では、今回ご紹介しようというもう一つの作品「ドラマCD おと×まほ」はどうなのか? |
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ドラマCD おと×まほ |
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…結論を先に言ってしまいますと、これが「大当たり」でした。 |
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10-06 「おと×まほ」(レビューはこちら) 11-03 「おと×まほ 2」(レビューはこちら) |
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このレビューを書いている2008年12月の時点で既に原作小説は6巻を発売する大ヒットぶり。ライトノベルは量産が売りではありますが、中でもヒット作と言えるでしょう。 ジャンルは王道の「少年魔法少女もの」。奇しくも「マジョーリアン」と同じですね。 冒頭からサブカル方面のラジオドラマばかり紹介してきましたが、テレビが普及していなかった1960年代には寧(むし)ろラジオドラマの方がポピュラーでした。 私は本当にラジオドラマ、カセットブックが好きなんですがその要因の一つとして、NHKラジオの「青春アドベンチャー 」があります。 名作・傑作揃いなのですが、特に「音声のみ」コンテンツと相性がよかった「ジャンル」があります。 さてそれはどんな傾向のお話でしょうか? |
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これは大長編となった「バナナフィッシュ」のラジオドラマ版。いや〜聞いた段階では原作未読だったんですけど、余りにもハードボイルドな世界観に打ちのめされました。ムチャクチャ面白かった…。ユーシスが途中で声優さんが交代してしまうのが残念でしたが、欠点はそれくらいです。バッチリ。 |
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答えは「怖い話」です。 何となくイメージが沸きましたか? この場合、情報源が極めて限定されている「音声のみのコンテンツ」のメリットが最大限に出た格好です。 また、「怖い話」の近接ジャンルと言っていいでしょう「不思議な話」「薄気味悪い話」なども実に素晴らしいものがあります。 「青春アドベンチャー」では大半の作品に漫画や小説の原作があるのですが、覚えている「そっち系」のお話を列挙しますね。 ジャック・フィニィ「盗まれた街」 カート・ヴォネガット「猫のゆりかご」 マイクル・クライトン「ジュラシック・パーク」「スフィア」 北野勇作「昔、火星のあった場所」 メアリ・H・クラーク「アナスタシア・シンドローム」 どれも傑作ばかり。「ジュラシック・パーク」なんて、CG満載のイベント映画の方ばかりが有名ですが、映画版は原作のあの余韻の残るラストの感慨を1/100も伝えていません。ラジオドラマ版は、通常は10回の放送で終わるところを異例の15回(225分!)掛けて「完全ドラマ化」してあるのです! こういうのを聞いちゃうとそりゃ夢中になって止められませんとも!ラジオドラマ万歳!カセットブック万歳! ここで紹介した作品群のラジオドラマはどれも発売されていないのですが、原作小説だけでもオススメ。ただ、「アナスタシア・シンドローム」は読み終わったら2〜3日寝込むほど読後感が強烈なのでご注意を。 |
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しかし、派手な見せ場よりもじわじわ来る疑心暗鬼的な恐怖は正にラジオドラマ向き。 現在「青春アドベンチャー」枠は半分以上が再放送なので聴く機会はあるかも?超オススメ。 |
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そしてもう一つの「得意(と私が勝手に思っている)ジャンル」それが「コメディ」です。 それもいわゆる「二次創作」系のものが非常に向いてるんですね。 ここで言う「二次創作」とは別に同人グッズという訳ではなくて、原作(一次創作)を“元にした”作品という意味。「番外編エピソード」とか「後日談」「前日談」などのことです。 元々「ファンのためのキャラクターグッズ」という側面もありますので、「お馴染みのあのキャラクターたち」が本編では見せなかった意外な側面を見せたりするのも醍醐味です。 そしてこれは「メディアミックス」では出てこないタイプのグッズなのもポイント高いですね。 |
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「同人誌よりも公式の方が過激」といわれますが正にそんな感じ。元々脱線気味だったのですが、二期(R2)になってからその方針に加速が。 この二期5巻目の目玉は「おでん屋ナナちゃん」。完全なパラレルワールドですよ。 「うる星やつら」なんかで舞台を平安時代に設定してレギュラーが活躍するエピソードを見慣れてきた世代としては嬉しい仕上がり(^^。 よく考えたらここまでやるんなら夢オチで性転換薬を飲んじゃうエピソードとかもやれば良かった気がしてきた(爆)。 勿論、熱烈なカセットブックファンとしては一期から含めて12枚全部買いました(^^。 |
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何故出てこないか? そりゃ簡単で、「パロディ」が成立するには、「元の作品」がある程度知名度があって、キャラクターたちが「お馴染みの存在」になっていないといけないからです。 新たに発売されるアニメでそんな「下地」が出来ているはずもありません。本編の前に番外編ばかり見せられても困るでしょ? しかし、「もう有名になっている」作品でならば出来るんですよ。 また、ここで「音声のみコンテンツ」のフットワークの軽さが活きて来ます。 確かにそんな「付属エピソード」みたいなのを大金掛けてアニメ化するのは大変ですもんね。というか、流石に「番外編」くらいならばまだしも「パラレルワールド」くらいになっちゃうと「そこまでして見なくても…」と思っちゃうとかね。 でも、オーディオドラマならば割合身軽に出来るんですね〜。そしてファンの方も気軽に楽しめる。 私が未だに「カセットブック」の流れを汲む「ドラマCD」が大好きなのはそういう「距離感」が大好きというところがあります。 そのフットワークの軽さは今も健在で、「雑誌付録」に普通にCDドラマがバンバン付きますからね。 |
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で、なんと「ドラマCD おと×まほ」が取った手段がこれでした。 そう、本編を描くのではなくていきなり番外編という形でドラマCD化したんです。 これは物凄く思い切った決断でした。何しろ、このドラマCD中に主人公の白姫彼方(しらひめ・かなた)くんがどういう経緯で「魔法少女」に任命されたのか?とか、どうして「ノイズ」と戦わなくてはならないのか?ということを殆ど説明しないんです。 いや、全くしない訳では無いんですが、冒頭のモエルというマスコットキャラ(喋るネコ)との掛け合いで通り一片の説明で流しちゃうんですよ。 小説版だけを読んだ方ならば、あの破天荒にして全ての元凶であるママの「白姫此方」(しらひめ・こなた)が全く登場しないという事実一つとっても「ええっ!?」と耳を疑うレベルです。 回想シーンで一言喋ったりすらしないんです。 |
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実際に聞いてみて驚きました。 これが全く問題ないんですよ! 何故こんな無茶な設定のお話がロクな説明もなくすんなり受け入れられるのか? 私もこれは不覚、完全に盲点でした。 要するに映画「転校生」があり、「らんま1/2」がある現在、「少年魔法少女もの」はそれほど突飛な設定では無かったんですね。 つまり「こういうもんなんだよ」で押し通せばそれで通る程度のものだったんです。 正直、「こんなやりかたがあったのか…」と愕然としました。 「やりかた」も何も説明をはしょっているだけに見えるかもしれません。 「読者のレベルをどの辺に設定するか」というのは古今東西、二次創作の抱える永遠のジレンマです。 二次創作とはいえ、「原作を全く知らない」視聴者も同時に想定し、どちらも満足させなくてはならないからです。 |
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なので大抵原作を読んでから映画を見るとガッカリします(^^;;。ただ、これは例外。映画の方が面白いんです! ラストのクライマックス近くが正に「映画的」な処理になっていて、これは原作『小説』ではなしえない表現!お見事! |
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特に「少年魔法少女もの」などという特異…というか、少なくともTSファン意外には“目新しい”(はず)…趣向の作品ですから、普通に考えたらまずは「設定の説明・解説」を浪々と行わなくてはならないはずなんです。 これはごく自然な帰結であり、実際それを丁寧に行った「ドラマCD 魔法少年マジョーリアン」の方針は決して間違ってはいません。 残念な話ですが、数あるドラマCDの中には「視聴者が原作を熟知している」であろうことにあぐらをかいて、初めて聞いた視聴者にはまるっきりちんぷんかんぷんなものも存在します。 そうした作品群に比べれば「ドラマCD 魔法少年マジョーリアン」の態度は実に誠実です。 ただ、それによって予定調和になってしまったことも否めません。 「ドラマCD おと×まほ」の構成はそうではなくて、とりあえず事件を起こして、それに対処する彼方くんたちを描くことで「こういう設定でやってますよ」ということを自然と説明してしまうというものなんですね。 これが大当たり。 何しろ、普通の理解力を持つ…「変身ヒーローもの」「魔法少女もの」を知識として知っている…人が聞いたならば、途中まで知れば大体は理解出来るんですよ。 なので、聞いていて「もたつく」感がゼロ!「新世紀エヴァンゲリオン」とかでも言い切らないでしょ?「○○は××である!」とか。視聴者側の「脳内補完」をもって完成とするこのスタイル! 匙(さじ)加減を間違えると、「よく分からん」ものになってしまいますが、当作品では大当たり! これは「おと×まほ」という作品の「傾向」も影響しているでしょう。 元々数あるTS系作品の中でも「おと×まほ」の作風は際立って能天気です。 はっきり言って、語る側が「どうして主人公の男の子は変身して敵を倒す運命を背負わされるのか?」といったことに興味が無いんですね。 それよりも、女の子扱いされて困ってもじもじする可愛い男の子のリアクションをひたすら愛でるのが目的ですから(言い切った!)、別に変身する理由なんてどうでもいいんです。 |
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既刊の原作小説に対するamazonカスタマーレビューには厳しいものが並んでいますね。 そもそも、私が紹介したときもそれほど褒めていません。 ある種の読者層が「おと×まほ 2」(レビューはこちら)読んで怒っちゃう気持ちも分かります。 だって、現実とリンクするところが何一つ無いんだもん。これはレビューに書いた通り。 正直、まだ2巻までしか読んではいないんですが、数あるTS作品の中でも私としてもそれほど評価は高くありません。 ただ、それは「小説として」の純粋な評価であって、「ドラマCD」の素材としてはムチャクチャに輝くものだったんですね。 正に「化けた」と言っていいでしょう。 では、こちらもキャストをご紹介。敬称略です。 白姫 彼方(しらひめ かなた)矢島晶子 モエル 皆川純子 明日野 丈(あすの じょう) 小林和矢 いいんちょ 斎藤千和 樋野 留真(ひの るま) / グレイス・チャペル 小清水亜美 小早川 ひらく(こばやかわ ひらく) 渡辺明乃 (*ドラマCDのみのオリジナルキャラ) 来栖 真帆(くるす まほ) 後藤沙緒里 (*ドラマCDのみのオリジナルキャラ) こちらも鬼の様な豪華なラインナップ。 主役級の声優さんがずらりと並びます。 …つーか、聞いた皆さんならばもうお分かりの通り、この「ドラマCD おと×まほ」の成功の秘訣は、1から10まで矢島晶子さんに尽きるんですよ! |
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矢島晶子さんといえば「クレヨンしんちゃん」な訳ですが、性別不詳なところが売りである彼方くんを演じるのにある意味これほど相応しい方もいらっしゃらないでしょう。 え?その評価はずるいんじゃないかって? 確かに、この「おと×まほ」は一応「少年魔法少女もの」というカテゴリ分けにはしていますが、実際には「変身」ではなくて「変装」。 なんと性転換を伴わない「強制女装」によって「魔法少女」役を演じているのですから、確かに「変身前と変身後の「演じわけ」」が必要な訳ではありません。 つまり、矢島さんはこのCD中ずっと肉体も精神も男の子(の役)のまま。 しかし、一度でも聞いてみればそんな些細な問題ではないことがお分かりになるでしょう。 |
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もう、矢島晶子さんはこの役の為に生まれてきたのではないか?とすら言ってしまいたい快演! 何と言うか、男の子とも女の子とも言えない実に不思議な声の演技なんです。 一体どういう役作りでこの演技に到達したのか…。 それこそ、もうストーリー関係なく矢島さんの声を聴くためだけにCDを再生してしまいたくなります。 そうなんです、カセットブックなんてテープが擦り切れるまで聴くのが当たり前でした。完全に暗記してしまっても、その上尚聴くもんだったのですよ。 流石にいい年こいた大人になった現在ではそこまで聞きませんけど、それでも何度も聞き返してしまうほどのめりこんでしまいました。 どうもそれは一視聴者である私だけでは無かった模様で、ボーナストラックに入っているキャストの皆さんの自己紹介&感想では、いいんちょ(本名不明でこういう役名なんです。「キョン」みたいなもんです)役の斎藤千和さんが絶賛! プロにも…というか、プロだからこそなんでしょう…その凄さが分かるみたいですね。 恐らく現場では「これは…イケるんじゃね?」という昂揚した雰囲気だったんじゃないかと…推測ですが。 |
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…要するにこういう「替えの効かない」ものを見せて欲しかった訳ですね。ええ。 だってこの「ドラマCD おと×まほ」では矢島晶子さんの代役とか考えられないんです。正に唯一無二。 矢島さんのことばかり書いてしまいましたが、他の方々も凄いんです。 モエルってのはマスコットキャラなんですけど、これの声がまた甲高い声のアイドル声優の方という路線も充分ありえたと思うんですが(別にそれが悪いというわけではありません。というかアイドル声優と呼ばれる皆さんも大好きですから)、これが皆川純子さんですよ。 皆川純子さんと言えば「テニスの王子様」の越前リョーマとか「コードギアス 反逆のルルーシュ」のコーネリアさまですよ。 |
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恐らくCDドラマをお聞きになっていない方だと、一体どんな感じで「しゃべる猫」を演じているのかの想像が付かないと思われます。 …これがいいんですわ。 確かによく聴くと皆川さんの声だし。 というか、此方ママがいないこのCDドラマにおいては彼方くんをいじる先頭に立っているのはもっぱらモエルの役回り。 無理矢理カバンにおしこめられたり、相変わらず彼方…というか「かなたん」を「女の子としていじって」放り投げられたりと「おいしい」ところを発揮。 そして今回の主役…というかゲストの二人組なんですが、何とCDオリジナルだったんですね。 「サイドストーリー」というのはカセットブック…もといドラマCDの得意とするところですが、今回は「男女の差」と「人の心」というテーマに深く連動した役回りに。 つまり、「設定だけを借りて、テーマをより体現した形でオリジナル作品を作る」形にした訳です。 余りにも「おと×まほ」世界に違和感なく馴染んでいたため、私はてっきり小説に原作があるエピソードだと思っていたんですけど、なんとオリジナルなんですね〜。 というか、実は「敵」である「ノイズ」の設定も原作1〜2巻のあたりでは余りはっきりしていなかったんですが、このドラマCD版においてははっきりと「人の思いが形になって現れる」ものと定義されています。 …つーか小説版よりも明らかに面白く、そして論理的に納得の行くものになっているんですが…。 |
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恐らくなんですけど、このドラマCDってシリーズ化されて次々に出るんじゃないかと思います。 いざエピソードが終わろうと言う頃には「ああ、このみんなと別れたくない!」という気持ちになっています。この感情って正に子供の頃にアニメを見ていた時の感慨ですよ。 キャラクターへの愛着とか感情移入とか言われますが、それが出来てしまえばもう勝ったようなもの。 はっきり言ってこれまで聞いた中でも大成功の部類に入る傑作ドラマCDです。 原作を全く読んだことの無い方にも普通にオススメです。 原作のファンならば迷わず買わないと嘘です。いやホントに。 どちらかというと原作をそれほど評価していなかった私もこのドラマCDはイチオシです! 原作にはまるで沿っていない…というかオリジナルなんでこの部分の原作が無い…上に、序盤のエピソードを全てすっ飛ばしているのにどうして、「きっちり原作どおり」にやっている「ドラマCD 魔法少年マジョーリアン」に比べても面白いのか?逆に言えば、どうして「ドラマCD 魔法少年マジョーリアン」はそうなっていないのか? 確かに、コテコテの「セカイ系」路線である「マジョーリアン」はひたすら能天気路線の「おと×まほ」に比べて「遊び」というか「しょーもないエピソード」をやりにくくはあります。 原作も一本道なのでわき道にそれている暇がありません。 ただ、それにしても「漫画」と「ドラマCD」というメディアの差を考慮せずになぞってしまったのはちょっと問題だったかも知れません。 元々ドラマCDが発売された段階で原作の漫画は完結していないのですから、最後まで描くことは出来ません。 確かに「バッドドリームガールズ」は「ラスたち」に相応しい展開ではあるのですが、「マジョーリアンに任命されるところ」からここまで60分で一気に駆け抜けたために、「詰め込みすぎ」になってしまいました。 何しろ4エピソードもあるんです。 |
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その悉(ことごと)くが「重い」ので大変です。しかも全てのエピソードが一応「一話完結」方式。 その結果「駆け足」で「詰め込んだ」印象になってしまいました。 「ドラマCD おと×まほ」は一見ふざけておちゃらけている様に見えるんですが、実は約60分かけて「1エピソード」しかやっていないんです。 つまり、じっくりとやる余裕があるんですね。 今となってはせんないことではあるんですが、「ドラマCD 魔法少年マジョーリアン」も1エピソードのみ抽出してじっくりやるとか、或いは「きっかけ」エピソードはやるけども、その後オリジナルでキャラをより掘り下げる形にした方が良かったかもしれません。だってどうせ終わらないんだから。60分じゃあ。 だったら、敵を1体倒した段階で「これからもこの戦いは続くのだった…」と言う風にすべきだったのではないか。 そう、「ドラマCD 魔法少年マジョーリアン」は「ストーリーを語る」ことに重点を置いていたんですね。 これは元の原作もその傾向があるので、ある程度は仕方が無いんですが、ひたすらキャラクターにフォーカスしている「ドラマCD おと×まほ」と比較してしまうと、申し訳ないんですが「完敗」です。 確かに「マジョーリアン」は一見するとキャラの内面に入り込んで「テーマ」を描いている様に見えるんですが、ちょっと「テーマ」が前面に出すぎていて、キャラクターが「テーマをあぶりだすための道具」になってしまっているところがあります。 トラウマを告白すれば「キャラクターが描けた」ことにはなりません。 これは「新世紀エヴァンゲリオン」が持ち込んだ悪癖です。 かといって、「マジョーリアン」であまりにもおちゃらけたオリジナル展開をやってしまうのもそれはそれで違う気がします。やはり「ドラマCD」向けの素材だった、かどうかという「めぐり合わせ」もあったのかもしれません。 些細な差かも知れませんが、ここで両者のジャケットを比較して見ましょう。 |
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ドラマCD 魔法少年マジョーリアン |
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石田さん自ら描かれるコミックの表紙にもその傾向があるのですが、ちょっと色味がくすんだ感じな上に、要素を詰め込みすぎてごちゃごちゃしちゃってますね。 また、これも石田さんのクセなのでしょうが、塗りがかなり大胆というか、はっきり言うと余り細かくないんですね。 左のマサルにもル・マーサにも黒髪にハイライトが全く入っていません。光沢とか照り返しですね。 これが無いと途端に画面が「重く」なります。 また、どういう意図なのかル・マーサのまつ毛と瞳の色が同色で、ほぼ一色塗りになってしまっています。 …はっきり言うと「描きかけ」に見えちゃうんですよ。完成していないと。 これは「イラスト」とか「設定資料」としてならば「あり」なんでしょうけど、「作品の顔」たる「表紙」には力不足だと思います。 これは「おと×まほ」のジャケットと見比べてみるとクッキリ差が分かります。 |
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ドラマCD おと×まほ |
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物凄くシンプルなんですね。 実は「アニメのセル絵」と私は思い込んでいたんですが、「アニメ風塗り」はしているものの、ちゃんとイラストなんですよ。 真四角であるジャケットの「形」を意識して主役二人(?)の「顔部分のみ」のどアップ、という思い切った構成。 恐らくイラストレイターのヤスさんには「CD」こと「コンパクトディスク」の「大きさ」も意識にあったと思います。 LDことレーザーディスクはその「ジャケット」に関してだけは本当に恵まれていました。 LPレコードと同じサイズのそのジャケットは装丁家には腕の振るいどころだったことでしょう。 しかし、CDのジャケットは十数平方センチの大きさしかありません。 ヤスさんが手に取った時に瞬時に認識できる「単純な絵」をもって臨んだと考えて間違いないでしょう。 ちょっと距離を離して見ると覿面(てきめん)です。 「ドラマCD おと×まほ」の方は、かなり距離が離れても「可愛いキャラクターが2人描かれている」ことがちゃんと認識できるんですよ。 更に細かいことを言えば、この表紙にも使われているイラストがそのまんまCDにも刷り込まれており、「文字のみ」の「マジョーリアン」と差をつけちゃってます。 大胆なことに帯にもインナーにも「男の子が魔法少女に任命されている」ことが読み取れる文字情報が全くありません。「可愛い女の子と猫の話」と推測することが出来るのみ。 これでタイトルが「魔法少年」とかならばともかくも「おと×まほ」では何がなんやらです。 ということで、あれこれ脱線しましたが「ドラマCD おと×まほ」は大オススメ!です。 ドラマCDをこれからもバンバン出して欲しいのは言うまでもありませんが、このキャストをスライドしてもらえるんならばアニメのDVDも全部買います! 2008.12.19.Sat |
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