TS関係のオススメ本12-00
*アップロードする際に在庫を確認してから行ってはいますが、なにぶん古い本が多い為、時間が経過することで在庫切れになる場合もございますのでご了承下さい。 真城 悠 |
「あめのちはれ 1」 (2009年・ぴっけ・エンターブレイン) |
あめのちはれ 1 (B’s LOG Comics) |
ひとくちに「TSもの」と言ってもそのジャンルは千差万別であるのはこれまで何度も書いてきた通りです。 最もシンプルな「朝起きたら性転換していた」…パターンもあれば、何らかのきっかけで不随意に性転換してしまうやっかいな体質を利用したコメディもあるし、そうした宿命を持つ種族を描いた壮大なサーがもあり…。 よりライトになると女子高に女装して進入せざるをえなくなるとか、一大ジャンルである「女装した状態で女の子として人気が出てしまう」という「女装アイドル」路線なんかもあり。 ある意味一般の方に最もおなじみなのが「男の子と女の子の中身が入れ替わってしまう」物語。 これらはストーリー紹介ですが、ここに「可逆・不可逆」「随意・不随意」などのサブジャンルの分類も加わります。 それぞれにメリット・デメリットがあり、大げさに言えばこのジャンルはあらゆるパターンを模索しながら発展して来たのです。 …と、こういう風に書くと「TSもの」とかいう表記を初めてご覧になる方には「そんな大変なことになっていたのか」と思われるかも知れませんが、正にそんな感じです。 往々にしてそうした「流れ」をご存知で無いであろう作者さんがフィーリングで描き飛ばされた作品が大ヒットを飛ばしたりするんですが。 ともあれ、その集大成としてこのごろ隆盛を築いているのが「少年魔法少女もの」というジャンル。 この「少年魔法少女もの」がジャンルとしていかに優れているかは 「ナイトウィザードヴァリアブルウィッチ 2巻」(レビューはこちら) に書きましたのでどうぞ。 |
今回犠牲になる男子高校生の皆さん(爆)。 とてもカラーイラストが綺麗な作品なのですが、実際にカラーなのは表紙と口絵のみ。惜しいなあ…。 |
結論から言いますと、この作品は「買い」です! ものすごく美味しいんですよ! 一言で言うと「男の子たちが女の子になっちゃってあたふた」という表現で全て言い表されてしまいますが、実は「ありそでなかった」画期的な新機軸が盛り込まれているんです! |
今回犠牲になるメンバーが校舎にいたときにたまたま落雷があり… 女の子になっちゃいました! この「初めて変化した瞬間」のリアクションもTS漫画の見所のひとつなんですがバッチリですね! |
はい、もうお分かりですね。 「集団性転換」なんです! 「少年魔法少女もの」においては、「戦隊ヒーロー」のイメージがあるので、 「桜ish 1―推定魔法少女 」1巻・2巻(レビューはこちら)や 「魔法少年マジョーリアン」第2巻(レビューはこちら) などでも主人公の少年たちは集団で「性転換」したりはします。 |
直後の状況。彼らがまず第一に自分・そして相手の「声」に言及するのもディティールにこだわっていて私にはとてもポイントが高いです(^^ |
ただ、言うまでも無くTSものにおいて「敵と戦う」ことばかりが能であるわけも無く、こうした「不随意性転換」をコメディの種としてのみ利用したり、或いは性転換も起こる「不思議なお話」もあるわけで、この「あめのちはれ」もそちらの系統です。 この手のジャンルとしては 「震える血」(レビューはこちら) 「成城紅茶館の事情」(レビューはこちら) 「僕を殺した女」(レビューはこちら) といった作品群があります。 こうした物語の中では哀れな男たちは突如襲い掛かる女の身体への性転換という不条理とけなげに戦う羽目になり、それを楽しむのが醍醐味な訳です。 この作品の最大の特徴は…なんと「可逆」なんですよ! この流れからすると、てっきり「変身しっぱなし」の不条理悲劇かと思っていたんですが、なんと「可逆」です。 「可逆」というのは「元に(女の身体から男の身体に)戻れる」ということです。 性転換の原因も不明で、しかも男の身体に戻れない…となるとどうしたって物語のトーンは重くなります。 極論すればそれは一種の「難病もの」の様相すら呈します。 ところがこれが「可逆」…つまり、戻れるってことになると、一転「コメディ」の様相を呈します。 それこそ「学園祭女装」とか「宴会女装」の延長のノリです。 ただ、そこまで便利だとそれこそ「お話にならない」訳で、その変身の要因は「不随意」つまり、望まない性転換が突発的に起こる形です。 |
つまり、「集団・可逆・不随意性転換」(集団で、元に戻ることも可能だけど、性転換したくなくてもしてしまう)ということになりましょうか。 「可逆・不随意」(元に戻ることも可能だけど、性転換したくなくてもしてしまう)ということになると、何と言っても筆頭は 「らんま1/2」(レビューはこちら) ということになります。 ところがこれで「集団」というのは正に「灯台下暗し」。 そういう手があったのか!と膝を叩きたくなります。 妙な話、この年代の少年たちにとって「女体」なんて存在はどうしたって「シモの話」に直結します。 あらゆる意味でとても…いや、究極の「プライベートな問題」なんですよ。 ある時期の男の子にとって「もしも女の子の身体になってしまったら…」というのは正に定番妄想。 実際、TSものの中にはそうした妄想を一人で悶々とやっている系のものも少なくありません。 私が知る限りではこれらはそうなりますでしょうか。言うまでもありませんが、非難しているわけではありません。 「ぼくは、おんなのこ」(レビューはこちら) 「PERFECT BLUE―夢なら醒めて」(レビューはこちら) 「可逆・不随意」ものにおいては、「性転換する要因を解明し、コントロールしよう」という試みが行われる一種の「ミステリ要素」が介在するのは珍しいことではありません。 それを「集団で行う」ということになると、不思議なことに「スポーツ感覚」みたいな感慨が生まれるのですね。 |
この作品においては性転換トリガーは「雨が降ってくること」。 この詳細な分析はまるで「デスノート」級!? |
それもそのはずで、何しろ雨が降ってきてしまうと多少タイミングのずれはあるものの、5人の少年たち全員の身体が性転換してしまうのですから、「個人的な秘密」にしておくことは不可能。 この「嬉し恥ずかし状態」は仮に男集団の中の一人だけ…なんてことになると 「奥 浩哉短編集 2 -黒-」(レビューはこちら) のような「貞操の機器」を引き起こしたり、 「彼が彼女になったわけ」(レビューはこちら) の様に「興味本位」で女体をからかわれたりといった「悲劇」を引き起こします(それはそれで面白いのですが)。 ところが、…何度も繰り返しますが…「集団」であるために、「お互い様」状態になるので、相手をからかったりは出来ません。 「やーい!やーい!○○子ちゃーん!」 みたいな冷やかしをした日には即、自分に返ってくるのですから当然です。 最も恥ずかしく、プライベートな「秘密」を共有した仲間たち…ということになる訳です。 |
ビジュアルもバッチリ!こんな感じの美少年が雨が降ってくると… ↓ こんな美少女に! 髪型も仕草も ( *´∀`)…。 パジャマなので体型が控えめに強調されているのもそそる…。 |
正直、このアイデアにはすっかりやられました。 お互いの女性時をひやかしたりする「男仲間」というシチュエーションとしては 「桜ish 1―推定魔法少女 」1巻・2巻(レビューはこちら) といった「少年魔法少女もの」の作品が存在してはいるのですが、ごく普通の日常生活に落とし込んでいるのがポイント。 しかも高校に入りたての、全寮生活すら初めての少年たちが「究極の秘密」を共有するのですからたまりません。 個人的な感覚になってしまいますが、作品の展開からしとしとと雨が降る場面が多く、それがまた独特の情緒をかもしていていいではありませんか。 中学時分に日曜日の朝に薄暗く雨がしとしと降っている時の気持ちのよかったことと言ったら…思い出すだけでうっとりします。 後は、この厄介な「体質」を抱え込んだ少年たちの嬉し恥ずかし悪戦苦闘の様子をニヤニヤ・ニコニコしながら眺めましょう…ということになるんですが、ここでぜひとも強調したいポイントがあります。 |
寮監に事情を話して協力者になってもらう展開に。 この「現実味」も説得力になっていますね。 |
それは余りにも特殊な「学校の構造」です。 論より証拠で、以下のキャプチャをご覧ください。 |
はい、もうお分かりですね。 この学園の構造は現在絶好調に刊行を重ね、漫画化と遂にアニメ化もなしとげたTSライトノベル 「けんぷファー@」(レビューはこちら) と全く同じ構造をしています。 |
けんぷファー〈1〉 (MF文庫J) 「けんぷファー〈2〉」(レビューはこちら) |
「学校」そのものを舞台とするTS作品においては、その「学校」が「男子校」なのか「女子高」なのか「共学校」なのかは決定的に重要なポイントです。 「男子校」である場合は、性転換してしまえばそのままの生活を送ることは不可能となります。 「女子高」にTS作品の主人公がもぐりこもうと思えば性転換したままの状態を維持するか、或いは女装したままということになります。 が、これはかなり特殊な状況。 ただ、それならば「共学校」ならばいいのか?というと当然そんな訳には行きません。 なにしろ「一人の男子学生が消え、謎の女子学生が出現する」ということに他ならないのです。 とはいえ、決定的な解決策がある訳でもなく、そのあたりのディティール・設定に関しては「勢いで押し切る」くらいしかなかったというのが正直なところ。 目一杯「周囲に性転換体質がバレている」という「らんま1/2」は例外ですが、「結局どう処理しているのか良く分からない」作品もあります。 「ふたば君チェンジ」(レビューはこちら) 「能瀬くんは大迷惑」 「能瀬くんは大迷惑Jr.編」(レビューはこちら) などはその典型。 「能勢くんJr.編」なんて、典型的な「共学校もの」なんですが、次第に「同じ名前の女子生徒」が来ているのになし崩し的に受け入れてしまう…というなし崩しぶり。そこがいいんですけどね。 |
ところがこの「男子校と女子校を同じ敷地内に独立して存在させる」という方法ですと、「男子校と女子校のおいしいところ取り」が出来てしまうんですね〜。 言ってみれば「最新型」である「けんぷファー」と共通のアイデアを採用するに至ったのも故なしとは言えますまい。 正に、考え抜かれた上にたどり着いた境地、というところでしょう。 女子化してしまった男子をそのまま学生生活を送らせようとするならば、「女子校」側に通わせればよい、ということになる訳です。 普段は別の校舎に通学していて、生活も共有していないのでバレる可能性は限りなく低く、男子側にも不審感は最小限。 かくして、寮監にも協力をもらえることが体制として確立して来た5人は、「ある準備」を進めることになります。 |
そうなんです! 「雨が降っている間は女子生徒として過ごす」ために女子の制服を調達するんですね! いやあ、女子校側の先生にも根回ししておいてくれるなんて助かるなあ…っておい! |
遂に全員分の女子制服が手渡され、様々な感慨を抱く皆さん。 女子部にお願いして5人分用意してもらうとか、「絶対に転売しないように」と釘を刺される場面まであったりして手抜かりは全くありません。お見事。しかも「たまにしか現れない」ことまで「作中内設定」として言及。 |
ということで、なんとここで予行演習も兼ねて5人とも制服姿で「下着」を買いに街に出る(!!)ことになります。 寮監のイケメンのお兄さんいわく「下着だけは私が買う訳にはいかなかった」そうなんですが…まあ、細かいことはいいでしょう。 さあ皆さんお待ちかね!遂にあの男の子たちの「女子高生姿」が拝めますよ! |
Σ(゜Д゜)…。 この遠くから見た腰が細く、スカートの広がったシルエット…そしてスカートから出た足のアップ…。 もうむちゃくちゃそそりますよ! ほっそりした体躯に、古風なセーラー服デザイン。 「マリアさまが見てる」世界に迷い込んでしまったみたいな男子高生たち…。 しゃべっている声はちゃんと女性の声優さんで脳内変換するのを忘れないように(強調!)。 |
( *´∀`)…。 もう何も言うことはございますまい。 この後の下着ショップでブラジャーやパンティを物色したり、おなじみの店員さんとの 「バストサイズは?」 「計ってません!(計ったことありません!)」 「駄目よそんなことじゃ!計ってあげる!」 のやり取りとか、全編スキャンしたいくらい! ですが、涙を飲んで「電車移動している時の一コマ」のみ掲載。 |
もう普通に女子高生してますね…猫背でスカートにもかかわらず脚を開き気味なのもポイントか。 |
さていよいよ、「雨の日限定」の女子高生生活がスタートすることになるのです。 |
こ、この着替えシーン…。生粋の女性のものであっても漫画の中ではそれゆえめったに拝めませんよ! ちゃんと「制服の構造が分からない」からと着方の練習をする場面もあり! |
先ほど「女子校のおいしい部分」を取れると申し上げましたが、具体的にはどんなんか? 言うまでも無く「女の子になって女の子といちゃいちゃ」ですよ。決まってるじゃないですか! というか全てのTSファンの理想! しかも、いちゃいちゃったっていやらしい方面じゃありません! 可愛らしい女の子と一緒にふわふわ遊ぶんですよ! つまりこういうことです。 |
Σ(゜Д゜*)… |
でもって早速出来た「女の子の友達」と一緒にコミュニケーションを楽しんだりしています。 |
いやあ、もおバッチリですね。文句なし、スキ無しですよ。 この後「不随意」で元に戻ってしまうため、「バレたらどうしよう」とするサスペンスとか、正体に感づいたのかカマを掛けて来るクセものの女子生徒とかいろいろ出てきます。 |
上記デートの途中で「予兆」を感じてトイレに駆け込んでそこで「女 → 男」への性転換をしてしまった場面。 いやそりゃ本当に嫌ですわ。つーかその用心は常にしておくべきですな。 逆はまあありですが(^^。というか、戻った瞬間には女装のままだった?? ( *´∀`)…。 |
これは面白いです! とにかく「美少年5人」というアイデアが本当に秀逸。これはあれですね、「仮面ライダー」とか「ガンダム」みたいにイケメンを集団体制にしたみたいなものでしょう。 だから不随意性転換にしても集団で行うのが現代風だと。 体質やら女物の制服・下着を着る苦労なんかもみんなで共有ですよ。 そういう場面は無いんだけど、内心ではお互いに可愛らしい制服姿で「お前…結構可愛いな…」とか思ってるはず。 もう高校生ともなるとある程度精神的には大人だし、しかも「お互い様」なのでスカートめくりあったり、おっぱいもみあったりはしないけど…ね。 全員が可愛らしい女子の制服姿で「これからどうしよう」と悩む場面なんて、もう「なんと言っていいやら」とでも言うしかない健康的かつ倒錯的な場面です。 いい年こいた青年ふたりがお互いに女に変身しておっぱい丸出しで全裸で月刊連載の一話を丸々語り合う超絶展開をぶっかました 「めたもる伊介」(レビューはこちら) なんて作品もあったりはしますが、あくまでも露出の低い制服姿なのがいいんですよ! |
全員男の子です。 この「下着買出し」シークエンスではこうした場面はてんこもりなので是非確かめてくださいm(_ _)m。 |
これも全部「集団」の利点です。 ここだけの話、「女装」とか「性転換」とかはどうしても内にこもりがちというか、背徳的な趣になりがちです。 実はそれはそれで魅力的というか、「正にそこがいい」から愛好しているところもあったりはするんですけど、そのあたりが綺麗に払拭されていて、別の魅力が出てきますねえ。 一人で女装するのと、五人でいっせいに女装するのって何だか後者の方が爽やかな感じがするじゃないですか。やってることは思春期の男の子がパンティ履いて、ブラジャーつけてスカート履いて、女子トイレ入ったりなんですけど。 やはり「ギャップ」がポイントです。 「爽やかに倒錯的なことをやる」という絶対に無理そうなことを見事に実現してみせている傑作ですよこれは。 |
なりたくもないのに女の身体になっちゃう体質がね |
いよいよ初期設定の説明も終わって、これから面白くなってくると思われます。 一応予想しておくと、「雨があがっても戻れなくなる」とか「一時的に精神的にも女性化しちゃう」とか、制服以外の女物を着るシチュエーションに追い込まれる…とかでしょうか。 この手の作品はこれまで浴びるように読んできたんですが、ここに「集団」という要素が加わることで一体どのような化学変化が起こるのか予想も付きません。 本編は非常にいいところで「つづく」となっており、それも気になるところ。 では、最後下着から制服まで女子高生姿に決めて、いざ女子校側に出陣せん!という場面をご紹介してお別れです。 2009.04.05.Sun |
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