TS関係のオススメ本12-00
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「わぁい! vol.1」(2010年・一迅社) 「チェンジH」シリーズ (2009年・少年画報社) |
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わぁい! vol.1 |
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10年前まで個人でホームページを持つというのが結構背伸びした行為だったなんて正に隔世の感です。 『ホームページ』の敷居を更に下げた「ブログ」が登場してきた時にもかなりの衝撃だったのですが、この頃は更にそれがゆるくなり、遂には「ツイッター」などというものまで登場してきました。 これらは全て「インターネット」の登場から派生したものですが、実はインターネットによって最も恩恵を受けるのは「マイナーな趣味」の持ち主たちだったりします。 私が最初にインターネットに触れ、更に「検索エンジン」なるものの存在を知った時にまずやったのが「TS」関係のホームページ(ブログはまだ無かった)を探すことでした。 私はそこから「少年少女文庫」「八重洲の性転換の館(現・八重洲のメディアリサーチ)」を発見して、凄まじい勢いで端から端まで読み倒すことになる訳です。 |
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その後紆余曲折あって現在に至りますが、本当に「TS」ジャンルはマイナーでした。 単にマイナーというだけではなくて「公序良俗に反する」と思われていた節があります。 その頃のインターネット上のTS事情といえば、「少年少女文庫」「八重洲の性転換の館」を例外とすれば、個人的に蒐集していたTS作品群を文字情報で自らのページに掲載しているホームページがぽつぽつと見つかる程度で、情報に飢えていた私たちの欲求を満たすものではありませんでした。 アフェリエイトどころかamazonそのものが日本に進出していない頃の話です。 ホームページの作成者自身がうろ覚えの紹介されている書籍郡は当然絶版の嵐で、漫画なのに文字情報だけしかないなんて当たり前でした。 つまり、インターネットというのはそれ自体が「コンテンツの提供元」というよりは、「インターネットの情報を元に古本屋を漁る」ための「手掛かりの提供元」だったのです。 |
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それが高速回線が整備されて重いデータをホームページ上に掲載することも当たり前となり、果ては「動画」そのものを掲載するサービス(Youtubeとか)まで登場して、完全にコンテンツそのものを提供する側に昇格して行ったのです。 これはインターネット事情をめぐる大いなる転換点だと思います。かつてンターネットはそれ自体は文字情報の集積であり、コンテンツそのものの提供媒体ではありませんでした。 携帯電話が最初に手にするインターネット端末であったという若い読者においては想像も付かないかもしれませんが、始めの頃は常時接続すらしておらず、いざパソコンを立ち上げてホームページを閲覧したりメールのやりとりをしようとしたならば、その都度接続操作をし、ピーピーガーガー言う音とともに繋がるのを待ち、ナメクジがはいずる様な遅さの通信速度で閲覧していたものです。 しかも、時間で電話代が掛かっていたのですよ。だから私がドリームキャストを駆使して「少年少女文庫」を読み倒していた頃には電話代が月に2万円を越えたりしていました。いやホントに。 |
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これがほんの10年そこそこ前の話なのですから…閑話休題。 これは同人誌「19年目の孤独」にも書いたのですが、「うる星やつら」そのものの名前は検索サービスでかなり引っかかるのに「原生動物」にピンポイントで注目したページが何もありませんでした。 「原生動物の逆襲!プールサイドは大騒ぎ」 (レビューはこちら) なので私は大方のユーザーと違って「インターネットってのも使えない代物だな」と思っていました(爆)。 これはちょっと後に続く伏線の記述です。 |
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何しろ情報も該当作も飢餓状態で、初期のインターネットに根城を移したTSファンの一部には、手に入る作品は手に入れつくし、国内のTS小説は読める限りを読みつくし、英語圏のTS小説を原語で読むことすら行い、そのお陰でかなり英語が上手くなった人もいたほど。 私も少しそれ…英語で書かれたTS小説を読むこと…にチャレンジしましたよええ。 結局幾つかの評判の作品を翻訳エンジンと首っ引きでどうにか意味を少し取ったくらいで挫折しましたけど。 21世紀初頭は、刊行される「該当作品」そのものが少なく、「TS描写を含む新刊情報」がかなり重宝されていたものです。 ちなみに「該当作品」という言い方も「TSファン業界」独特の隠語で、「性転換・女装要素を含む作品」という意味なのはウチ(真城の城)にいらっしゃる皆さんにはもうお馴染みでしょう。 何やら世間から身を潜めて情報を共有しようと言う涙ぐましい努力が伝わって来そうではありませんか。 |
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ある意味早すぎたか? |
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さて、そのインターネット黎明期に、TSファン業界内で盛り上がったのが「商業作品論争」でした。 どの様なものなのか簡単に説明しましょう。 マイナーな趣味嗜好であるため、TS要素を持つ商業作品は中々発売されません。ですが、ごく少ない数ながら、まれに「TS要素を持つ作品」も発売されることはあります。 ただ、言うまでも無く、そうした作品を描く作者の全員がTS作品に親和性を持つ訳ではありません。 中には露骨に「気持ちが悪い」と思っている編集者なんかもいて、内容に全く愛が無いものも出版されます。 こういう時に、 「出してくれるだけでも有難いのだから、文句を言わずにサポートしよう」という派と、 「いや、消費者である以上、内容にも厳しく注文をつけるべき。それによって出版を企画した側に我々の意思を伝え、内容の向上に結びつけるべき」という派 が分かれて対立したのです。 最近は「女装・性転換」を看板に謳う季刊誌「チェンジH」シリーズが遂に登場するに至ったのですが、その「男装もあり」路線もさることながら、「女装」まで含めているのにジャンル名として安易に「TS」を謳う編集方針に否定的意見が沸き起こったことがありました。 |
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確かにこの雑誌(「チェンジH」シリーズ)の方針はかなり迷走気味でした。 そもそも「女装」といいつつも「男装」も含めていますし、エロをやりたいのかギャグをやりたいのかも良く分からない構成。 ウチでも広告を張って紹介はしていますが、正直言って微妙な出来です。 ただ、「TS」を看板に掲げる不定期刊行ながら「商業雑誌」が曲がりなりにも成立する様になったというのは快挙には違いないでしょう。 TSファンたちはかつては自分たちがこの手の雑誌を作らないか?と大いに盛り上がったりもしたものです。 自分たちだけのマイナーな趣味が広く拡散したことへの寂しさ…みたいなものは少なくとも私には余りありません。 既存のメディアに自分の好みに完璧に合致するものが無いので自分で作ってしまおうというのは既に10年前からやっているわけですので。 |
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商業ベースで「女装・性転換」を含むコンテンツがなし崩し的に立ち位置を確保してきた歴史についてはその内誰かがまとめるでしょう。 私は「趣味の拡散」…要するに「こういうのもあり」と思われてきた…ことが要因の90%くらいを占める「自然な流れ」だと思います。 実際、「百合」を「個人の趣味」ではなくて「外部の人間が眺める趣向」として鑑賞することを前提とした総合雑誌が既に産声を上げています。 |
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これはかなり画期的なことです。 マイナージャンルたる「百合」がそれのみに特化した定期刊行物が商業的に成り立つところまで到達したのですから。 ですので、数多くの商業作品に登場する様になった女装・性転換の数の増加から考えても「TSコンテンツ雑誌」の登場は時間の問題でした。 いや、あることはあるんですよ。それこそ何十年と前から女装の専門雑誌とか。 この場合は「あった」というべきですね。 このジャンルでメジャーだったらしい雑誌は2誌とも休刊となっていますので。興味のある方は調べてみるといいでしょう。 |
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よくテレビにも登場する女装クラブの歴史などにも体験談を交えて踏み込んでいます。 安易な萌えを求めている読者には肩透かしでしょうが、読み応えあり!オススメ。 |
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私もコミケの同人誌並に薄くて高いその手の雑誌を何冊か買いましたけど、どうにも波長が合いません。 知る人ぞ知る話ですが、それらの雑誌はインターネットの掲示板も何も無い時代から一種の「交流手段」として位置づけられており、言ってみれば「実践派」のためのものだったんですね。読者投稿欄がメインで、全員が顔出しで連絡先明記なのは今観るとかなりびっくりします。 私みたいに「うる星やつら」に出て来るあの展開に萌えた!みたいなのは明らかにお門違いなのです。 ま、確かに若い投稿者らしい人の中にはお好みのTS漫画のタイトルだけつぶやいている様な人もいましたけど。 私としては紙に印刷された「少年少女文庫」とか「八重洲の性転換の館」(現・八重洲メディアリサーチ)みたいなのが読みたかった訳です。 その手の「女装雑誌」には女装を扱った創作小説なども載ってますけど、今の時代の可愛らしい少年主人公が学園際で女装させられて萌え萌え展開…みたいなライトノベル的なものを想像するとかなり裏切られます。 どう裏切られるかは実際に読んで確かめてみてください。多分今も神田神保町の古書店とかには売ってあるでしょうから。 そもそもそうした「女装交流雑誌」は普通の書店に並ぶ様なものではないんですね。ごく狭いコミュニティでのみ流通する特殊な存在です。はっきり言うと「アダルトグッズ」の一種という扱いをされますので、商品の分類上は「本」ですら無いこともあるんです。 |
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要するに私の様な読者は「女装したい」とか「性転換したい」と本気で思っているわけではなくて、「疑似体験して楽しみたい」という、悪い言い方をすれば「面白半分」「興味半分」のスタンスなんですね。 だから、本気で女装する・している人たちのための「情報誌」というのは余りにもディープで重過ぎるんです。 まあ、「女装・性転換のみを売り物にした“普通”の雑誌は存在しなかった」と言い切って構わないでしょう。これは「普通の流通ルートに乗る」という意味での「普通」です。はい。 そこに今度は「男の娘」(おとこのこ)雑誌が登場するに至ります。 前置きが長かったのですが、それが「わぁい!」です。 |
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私にとってはとても面白かったです。 いや、内容がどうこうというよりその現象そのものというかこの雑誌の存在やらコンセプトやらがメタ的に興味深くて面白くてたまらない。 なので今回は作品の内容には余り立ち入らず、周辺の話ばかりしますのであしからず。 まず、こちらを読んでいるオタクの皆さんならば「現代視覚文化研究」4巻はオススメ。 |
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特にまだ総括が進んでいない「ゼロ年代」(2000年〜2009年)を一年ずつ振り返る企画が非常に面白いです。 私にとって2000年なんてごく最近ですけど、もう10年前ですからね。その頃はVHSビデオテープがバリバリの現役で、地方でアニメを観ようと思えばBSで放送されているものを見るしか無い頃。Youtubeの登場は2005年からです。 その中で「百合」系の雑誌の紹介があるのですが、そのまんま引用します(60ページ)。 ***** (「初の百合専門誌」である「百合姉妹」を指して) ところが当時はまだ「百合」の語は曖昧で、漫画だけではなくビアン系AVやエロゲーの紹介、「実際にお姉さまを作ろう」講座なども掲載されるという非常にカオスな状況でした。特にエロの扱いが分化できていなかったため「逆袋とじ(このページはエロがあるのでノリで綴じて読んでね!)」があったりすらしました。凄まじい迷走っぷりから、この雑誌の百合ファン層開拓の苦労が感じられます。 ***** 私は発売されまくるTS関係のライトノベルやら漫画を買うのに忙しくて「百合」系は特に追いかけていなかったのですが、あちらも「商売として成立させる」のにかなりの試行錯誤があったみたいですね。 そしてそういう意味における「迷走」ぶりを体現しているのが正に「チェンジH」シリーズでしょう。 |
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確かに女装は出てくるし、性転換も出て来るんだけど正直「出せばいいってもんじゃないんだ」と思いました。最初の内はね。最初の。すいません。 明らかにギャグとしてやっている作品はまだ可愛げがあるんですが、中途半端に「芸術」している作品とか、明らかに「女装・性転換」を(エロ)展開の道具としてしか使っていない作品もあり、「困ったものだ」というのが第一の感想。 紙質もよく、装丁も凝っているために価格は決して安くなく、コストパフォーマンスで言えば褒められたものではありません。 少なくとも「可愛くなっちゃった自分をコロコロと弄(もてあそ)ぶ」系のTS作品の愛好家は、スカートの下のパンティに男性器の形がモロに浮き出ている生々しいコマを求めているとは思えません。 ただ、私が実質的に静観を決め込んだのはかつての「商業主義論争」でいう「穏健派」的な立場からでした。 確かに自分の好みではないけど、自分の好みなんてのは物心付いた時からのTSファンのそれであって、決して一般的なものではありえない…と自覚しておりましたから、自分にとって価値があるか無いかだけで切って捨てるべきでは無いと思っていたからです。 こう書くといかにも人格者みたいですが、別にそんな大袈裟な話ではなくてある種自分のオタクとしての鑑識眼に自信が無くなっていたというのが本音だったりします。 果てしない受験勉強生活からオタク趣味にのめりこむ訳にもいかないので、いきおい付き合い方が中途半端にならざるを得ず、、多くのオタクが熱狂的に支持する作品に「乗り遅れる」ことばかりが増えて行きました。 TYPE−MOONしかり、「ひぐらし」しかり、東方Projectしかり…。 |
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これらの作品は元ネタがそもそも入手困難なのに余りにも熱狂的な盛り上がりをしている状況が理解できず、自分自身が「オタクとして旧世代に属する」ことを痛感させらていたのです。 ですから「我こそはオタクのマジョリティと同じ感性を持つ論客なり!」と胸を張ることなど到底出来ない相談でした。 翻って、折角創刊されたTS専門雑誌に自らの価値観でケチを付けるなどとても出来なかったのです。 中でもショックだったのは「キョン子」と呼ばれる現象でした。 これは人気アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」に登場する男の主人公「キョン」をパラレルワールドで(ここ重要!テストに出ます)女の子に設定した二次創作です。 |
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ポイントは「男が性転換した」存在ではなくて、「最初から女の子である別世界」が想定されていることです。 これは「女の子もの」と呼ばれるジャンルで、コミケでは既に10年前から存在しています。 何度も書きますが、「女の子もの」とは「男の主人公を女の子に『置き換えた』」作品群。 劇中で性転換したりはしません。 最初から女の子なのです。 一見すると「TS」が絡んでいそうなのですが、実際には似て非なるものです。下手すると水と油ほどに違います。 「キョン子」の典型的な作品がこちら。 |
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とても可愛らしいですね。 自らがプロデュースした作品を引き合いに出すのは恐縮なのですが、対して、「ハルヒの不思議な能力によって性転換されたキョン」を描く一連の二次創作がこちらです。 |
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サムネイルをクリックすれば該当のブログのページが開きます。 |
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当方の作品群は可能な限りキョンの面影を残しつつ、バニーガールという「どぎつい」アイテムで「ギャップ」を叩きつける構造であるのに対し、「キョン子」シリーズは、名前こそ「キョン」ということになっていますが、実際には別キャラです。 キャラ造形はキョンの面影すら全く無く、限りなくハルヒに近いモデル。 更に長門が愛用している暖かそうなカーディガンを常に着ているのがポイントでしょうか。 はっきり言うと「可愛らしさ」が前面に押し出されている訳です。 今だから打ち明けますが、実は「バニーガールにされたキョン」は多くのユーザーのハートを直撃し、かなりの反響を巻き起こすのではないか?と自信があったのです。 お互いにバニーガールになったキョンと古泉の百合シーンとかある種のツボを直撃するものであるという自信はあったのですが…。 ところが、瞬間的なヒット数の増加はあっても、その反応は実に落ち着いたものでした。 そして、最後に発表された「制服姿のキョンと古泉」が爆発的な反響を呼び、ブログが一日で5,000ヒットするにいたって、自らの感性のずれが決定的に自覚されたのでした。いつもは200くらいですからね。 |
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みんなああいうのを求めていたんだなあと。 私があれほど熱狂的に入れあげていた「原生動物」がどうしてメジャーになっていないのか…が遂に分かりました。 「原生動物の逆襲!プールサイドは大騒ぎ」(レビューはこちら) 私は「TSファン」という世間的に言えばマイナーな趣味嗜好を持つ中でも更にマイナーな感性の持ち主であったのです! 正直、私は「女の子もの」は余り面白くないというか…萌えません。 むしろ「そこまで来ているんだったら何故性転換された瞬間を描かないのか」と隔靴掻痒の思いです。 これから取り上げる「男の娘」ものと全く同じ特徴がそこにはあります。 |
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ブログで同じく展開している二次創作郡。 デミトリが世界中に散らばる別の格闘ゲームのキャラの元を巡ってミッドナイトブリス(相手が男なら性転換させる必殺技)をかけまくるという展開で現在も継続中。 ゲームでは衣装まで変わらないキャラも独自解釈で女装させまくってます(爆)。 上に紹介した作品以外にも沢山ありますので是非ブログにいらしてください。 「女の子もの」とは対極の路線です(爆)。 |
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それは、「女の子もの」にしても「男の娘」ものにしても、「普通の(?)TSもの」に比べて対象が相対化されているということです。 要するに感情移入の持って行きどころが違うんですよ。 どちらも「女の子になっちゃった男の子」を客観的に観察することがメインで、「自分がなりたい」とか「女の子になっちゃったらどうしよう」といった鑑賞法をするものではないのです。 なので、今回の「わぁい!」の作品の主人公たちはみんな男です。そう、「男の娘」の方ではないんですよ! そう、「男の娘もの」というのは「男の娘」が主人公ではないのです。 寧(むし)ろ「男の娘」の可愛らしさにメロメロになったり振り回されたりする側の視点から描かれているのですね。 これは接点があるわけがありません。 この頃評判になったTS作品(この場合は女装も含む)に「まりあ・ほりっく」があります。 |
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確かに思いっきりメインのキャラとして女装キャラが出て来ることは出て来るんですが、彼がそれによって動揺したりするのではなくて、その立場で女の子の主人公をいじめるという展開。 女性の作者ならではなのでしょうが、王道のTSものの積りだった読者の側からすると、戸惑わざるを得ません。 こ、これは誰に感情移入すればいいんでしょうか? 前回の「ココロコネクト ヒトランダム」のレビューにおいて「過去の『変身』作品の変遷」をかなり細かく書いたんですが、 「ココロコネクト ヒトランダム」(レビューはこちら) この「女の子もの」「男の娘もの」はそれらとは全く異なる変遷を辿った異次元の存在です。 普通の人間と地底人とか海底人みたいな断絶を感じます。どっちがどっちかは…。 元々「TSもの」といえば「変身」であれば作者の変身願望の発露として書かれるか、或いは読者の変身願望を満たすものでした。 これは「入れ替わりもの」でも基本的には同じです。「現実逃避」とか「想像」あるいは「妄想」を疑似体験させてくれるツールだった訳です。 映画「転校生」を鑑賞する場合、多くの男性は「女の子と身体が入れ替わってしまったら…」という幻想に酔うために鑑賞する訳です。 |
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私はこの年代のTSファンにしては映画版「転校生」を買わない方ですけど、後半の一夫くんの「オレっ子」ぶりは、明らかに自分が美少女の外見であることを意識しているとしか思えず、大変素晴らしいので未見の方は是非一度は観てみましょう。 「少年魔法少女もの」はその「鑑賞スタンス」すら「自分としては望んでないんだけど、状況に流されて仕方なく…」という「エクスキューズ(言い訳)」すら内包したある種「完璧」な設定でした。 ところが、「男の娘もの」はそれとは丸っきり異質。 要するに「可愛いものを鑑賞する」ジャンルであって、「なりたい」願望では全く無いんですね。 その鑑賞する対象が「女の子みたいな男の子」だったということなんです。 これは「女よりも美しい男」を観たくて歌舞伎の女形(おやま)を鑑賞するスタンスに近いかもしれません。女形のファンの男性が全員女装趣味・願望があるわけでもないでしょうし、ましてや女性化願望がある訳でもないでしょう。 |
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つまり、「男の娘もの」を愛でる価値観というのは非常に「男性的」なんですね。 外見はかなり違いますが「エロ本」を鑑賞する際のスタンスに関係性としては似ていると思います(くれぐれも悪い意味に取らない様にお願いします)。 エロ本に描かれているのは女性の裸ですが、ならば女性の裸を鑑賞する趣味がある男性は女性化願望があるかといわれれば答えはNOでしょう。 つまりそういうことです。 TSファンがTS要素のあるコンテンツを通して擬似的に「受身の立場」をバーチャルに体験することを求めているのに対し、「男の娘」ものは「男の娘」という存在そのものを愛でて、鑑賞するのが主目的ですから立場は正反対です。 つまり、鳥になりたいかバードウォッチングがしたいかの差とも言えるでしょう。 言うまでも無く「鳥になりたい」のが従来のTSファンであり、バードウォッチングしたいのが「男の娘もの」の愛好者なんですね。 |
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バカとテストと召喚獣7.5 (ファミ通文庫) 敢えてこの大きさで。木下秀吉という「男の娘」が登場することで有名になった(らしい)「バカとテストと召喚獣」の最新刊。表紙に男の主人公の女装姿というのは何とも凄いなあ。しかも結構可愛いのがニクイ。あ、彼が男の娘というわけではありません(ややこしいな)。 |
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この頃は「萌えアニメ」も食傷気味らしく、ギリギリのエロ路線に走り気味なのだそうですが、言ってみれば「男の娘もの」はその一変種である…という解釈が正しそうです。 つまり、TSファンがある種の幻想を抱きがちな「遂に時代が追いついた!」というそれは勘違いなのではないかと。 それこそ「一般のオタク」(この言い方も変といえば変ですが)がTS作品に共感し始めたのではなく、あくまでもその価値観のスタンスは変えないまま観察対象を多様化させた結果、そこにTS要素に外見がそっくりなものが含まれていた…というのが実際のところなのではないかと。 ちなみにもう一つのジャンルである「女の子もの」ですが、これはもっと分かりやすくて「やおい」からの派生です。 |
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やっぱりやおいというと二次創作というところがあるので商業作品ではアンソロジーとかになっちゃいますかね。 |
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恐らくクリエイターの90%以上が女性であろう「女の子もの」は、女性が生み出したジャンルなんですね。 だから、「男性的なもの」は全くありません。少なくとも、その黎明期においては。 私などは「男の設定を変えて、最初から女の子として登場させる」などという面倒なことをせずに、普通に女の子として出せばいいじゃないか、と思わざるを得ないのですがそれでは面白くないのでしょう。 ちなみに「可愛らしさ」が先に立つためか、コミケのやおいジャンルで売られている「女の子もの」はソフトでエロ無しも少なくないため、個人的にはオススメのジャンルです。 男性キャラとの(エロのあるなしに関わらず)絡みも、見た目は男女なのである意味抵抗は少ないです。ま、最初から普通に男女カップルでいいんじゃないのかと思わなくも無いですが(以下同じなので略)。 |
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だって、TSものでの男女の恋愛は受身側がTSされた元・男ならば「オレは男なのに…」という葛藤があったりするんですけど、「女の子もの」の世界の中では最初から女の子なので普通の男女の恋愛に過ぎません。む〜ん。 もう少し筆を滑らせますと、これまた「やおい」系に存在する「女体化」はある意味純粋な(?)TSファンには一番「求めるものが近い」ジャンルです。 元のキャラは当然男同士なのですが、「どちらが男役でどちらが女役か」が決定的に重要な要素なのですね。 ちなみに人気のあるスターキャラクターが「受け」になるほうがよりメジャーなんだそうです。 漫才コンビなどでも「ボケ」の方がスターですよね。ダウンタウンでは松本人志氏がカリスマであり、爆笑問題ではボケの太田光氏が牽引役であるように。 「ツッコミ」はいわば「ボケ」の引き立て役です。 |
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やおいファンは「女役」に感情移入し、自己を投影させて鑑賞しますから「受け」…というかモロに言うと「ヤられる側」…の方が「おいしい役どころ」な訳です。 なるほどこれで「女体化」まで絡めばTSファンと全く同じ立ち位置ではありませんか。 まあ、男性の読者からすると、ビジュアルは男同士の絡みなので流石にそのまま鑑賞するのは辛いものがあります(爆)。 漫画「ANIMAL X」はやおい作品としては表現もソフトでよく出来た佳作なのですが、TSファンとしては「何故そこで女性化しない!」と思ってしまいます。 |
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なまじ求めるところが近いだけに余計に読んでいて歯がゆいところ。 ある程度読みなれてくると、そういう「渋い」ところがいいと感じる様にもなるんですが。 ところが、「受け」側の「受難」の一アイテムとして「女体化」を持ってくる例が出て来るところまで来ると状況が一変します。少なくともTSファンにとっては(爆)。 私はこの頃コミケではカタログで「やおい」ジャンルをかなりチェックします。会場には行けないけどカタログは毎回買う派ですので(爆)。 「女の子もの」はともかく、「女体化」の文字をサークルカットで見かけるのはむしろ「やおい」ジャンルなんですね。 この頃はどうも女性作家さんも男性読者に「女体化」の需要があるのをかなり見越している節があり(爆)、かなり分かりやすく「女体化」を看板に掲げているところもあったりします。 ちなみに、この辺りの嗅覚が凄まじく鋭かったのがあの高橋留美子先生であるのは言うまでも無いでしょう。 「らんま1/2」(レビューはこちら) |
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*「オタク第三世代」をリアルに描いた史上初の漫画「げんしけん」の一コマ。言うまでも無く、この会場はコミケです。 示し合わせた訳でもなんでもないのですが、この「やおいと女体化と男性読者と女性作家」の分析は木尾先生と私は完全に一致してます。光栄です。 「げんしけん」についてはTS作品ではないのですが、完結を機にレビューしていますので興味のある方はどうぞ。 真城の部屋 「げんしけん」 (山本弘、唐沢俊一、岡田斗司夫、庵野秀明、竹熊健太郎(敬称略)などは全員オタク第一世代。「おたくのビデオ」で描かれたのは正に「オタク第一世代の生態」でした。 東浩樹氏などはオタク第二世代。「げんしけん」の主人公たちは、劇中の時間の流れ方が現実と同じならば2010現在は三十歳前後であるはずで正に「オタク第三世代」です。ちなみにこの頃、最終話直後の時系列に属する「後日談」が掲載されて時間の流れが現実にリンクしているかどうかはかなり怪しくなりました) |
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TSファンにとっては少なくとも「男の娘もの」よりは「女体化ありのやおい」の方が楽しめると思いますよ。「やおい」なので性交渉に至る展開の同人誌もかなりあります。つーかむしろそっちがメイン? まあ、わざわざ男を女にして男女をからめるなんて面倒くさいことをせずに最初から男女カップルでいいんじゃと言う気は…これに関してはしないですね(爆)。 確かに見た目は普通のカップルなんですが、このねじれ具合はむしろTSファンの土俵でしょう。 でもって、ここから「わぁい!」の話に戻ります。 |
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以上の説明から「男の娘もの」の特殊性がお分かり頂けたと思います。視点の立ち位置が非常に男性的であるということが。 確かにニコニコ動画などで「男の娘」が登場すると「可愛い」とか「抱きたい」とかのコメントが溢れます。 つまり、あくまでも鑑賞する側として愛好しているわけです。「男の娘になりたい」訳ではない。中にはそういう人もいるでしょうけど、「男の娘」ものの鑑賞スタンスの主流ではない。 この「わぁい!」は「TS」全般ではなくて「男の娘」ものに特化した雑誌です。 これが面白いですよね。 正にジャンルの細分化を更に細分化したみたいな話です。 ところが、にもかかわらずアプローチが明らかに違う方向に行ってるんです(爆)。 まず、雑誌の付録としてあろうことか「ブルマのようなもの」が付属というまるでこの頃ブラジャーやらパンティやらを雑誌付録で付け始めたアダルト雑誌みたいなことをやらかします(爆)。 まあ、「ハヤテのごとく!」の増刊号で「体操服」が付いてきた例もあるので(核爆)、可愛いものなのかもしれませんがそれにしてもこれは凄い。両方購入すれば「体操服+ブルマ」が完成するわけですねそうですか。 「チェンジH」シリーズだってこんなことはやらなかった。 |
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そう、お分かりですね。 なんとこの「わぁい!」は読者を取り込もうとして「リアルな女装」方面でアプローチしてきたんですよ! これまでに分析したように、恐らく「男の娘」愛好家というのは「ブルマを履いた存在」に興味はあっても「ブルマを履きたい」側ではないはずなんですよ。 そりゃアイテムとしての使い道(詳細は略)はあるにせよ、明らかに製作者側としては「履いていいよ?」というメッセージです。 それでもまだ、これだけならばいい。 確かにこの頃一部のアダルト雑誌には物凄くチャチなパンティやブラジャーが付属したりしています。恐らくその読者は「中身」の方を連想してその先に及ぶでしょう。 だから、そっち方面の需要という面で付属させた可能性はゼロではありません。 ところが、「読者プレゼント」を見てひっくり返りました。 なんと、「本物の女性もののランジェリー」「リアルな付け乳(コスプレ用?)」果ては「女装スタジオの体験チケット」までが読者プレゼントにラインナップされているのです! |
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ちょっとありえない「読者プレゼント」の数々(核爆)。 この「8」番は、上手く装着すればスカート履いても目立たなく出来る優れものだそうです(えー。 |
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更に更に間に入ってくる広告はコスプレ様の髪の長いウィッグ(≒カツラ)やら、女性もののところのみ写真を掲載している大手コスプレ衣装のメーカーのそれ。 これはつまり、「女装コスプレならばウチの広告主でよろしく!」と言っている訳です。 アダルト要素が無い、一般の書店にも流通する「雑誌」でここまでおおっぴらに「男性読者を想定した女装グッズの広告展開」をした例は前代未聞ではないでしょうか。 恐らく編集者は「女装願望がある」読者を想定してこういう方針になったのでしょう。 それは商売として全く間違っていません。 むしろ、ある意味ニッチなニーズを目指して読者を絞り込むのは賢明な判断です。 爆発的に広がることは無いでしょうが、反面「ある程度」の数の熱烈な支持者を掴むことは確実なのですから。そもそも、リアルな女装は別に犯罪でも何でもありません。一人で勝手にやる分には誰にも迷惑掛けませんからね。 |
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表紙をめくっていきなりこの広告。編集者の本気を感じます。 |
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ここでちょっと分からなくなってきました。 「男の娘」ジャンルの愛好者は自らも女装する傾向の読者だったんでしょうか? 実は先日、NHKの「MAG・ネット」という番組で「おとこの娘」が特集され、「わぁい!」を企画した編集者さんや愛好家も画面に登場して大いに抱負を語ってくださいました。 それを拝見させて頂いた限りでは、熱心な読者はメンタリティ的に「TSファン」にかなり近いですね。 それどころか、「TS(性転換)」という非現実的なファクターを介する必要の無い「女装」という行為の作品群であるため、そっち方面に趣味の幅を広げた方も多数いる模様。 つまり、「男の娘」専門誌でリアル女装方面に舵を切るのはそれほど間違った選択肢ではなかったのですね。 リアルに女装した状態で画面に登場されていた愛好家も仕掛け人たる編集者の方も口を揃えて性的にはストレートで、女性が恋愛対象であると語っていたのが印象的。 つまり、「可愛い女の子が好きすぎて同化願望に到達してしまった」ということみたいです。 確かに、「わぁい!」の方はもうさわやかなシャンプーの香りがしてきそうな可愛らしさ全開路線。エロなんて全く無しです。 |
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これも広告の一つで、メインキャストの女性の役を全て男性が女装して演じた舞台劇のDVDの広告です。広告で女装バレエ団みたいなコミック路線の紹介に走らない「真面目さ」がある意味オタクっぽくて面白いです。 |
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こうなると、「チェンジH」シリーズの立ち位置がよく分からなくなります。 どちらかというと、「女装・男装まで含めたTS全般」を謳いつつも、実態はこちらの方が「セクシャルにアブノーマル」方面を謳った、ちょっとエロ路線のアンソロジーにしかなっていません。 塩野干支郎次さんの漫画は圧倒的に面白いんだけど、この方はTSもありのギャグ路線なので、「可愛い女の子が好きすぎてむしろ同化したくなっちゃった」路線では全くありません。 もしも、「チェンジHシリーズ」が本気で所謂(いわゆる)TSファンの願望を救い上げた企画を展開しているのならば、「女装スタジオ無料体験チケット」とかはむしろ「チェンジH」シリーズがやるべきでした。 そして、TSファンが見たいものということでいうなら「チェンジH」においては「エロ無し」で全く問題ないんです。 ところが実際には「チェンジH」にはエロがバリバリです。 恐らくTSファンが一番「チェンジH」シリーズで「何か違うんだよなあ…」と思ったのはエロ路線がかなり激しく、時にはグロいほどの作品も収録されていること。 売れるんならそれでいいとは思いますが、TSファンはTS作品に必ずしもエロは求めないんです。 何らかのきっかけでとても可愛らしくなっちゃった自分を疑似体験してその雰囲気に酔いたいのであって、エロなんて時には邪魔物です。 |
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「わぁい!」の読者プレゼント続きます。何と抱き枕カバー! 男の娘なんですが…。いい夢見れそう…なのか? |
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表現がアレですがTSファンは精神的には「恋に恋する乙女」とか「お姫様に憧れる女の子」と同じ精神状態(精神年齢?)とも言えるので、そんなもん(エロ)なんていらないんです! 幼稚園の女の子が「お姫様になりたい」という発言の裏に「逞(たくま)しい王子との激しいSEXで燃え上がりたい」と思ってると思いますか?ありえないでしょそんなの。 「綺麗なドレス」とか「綺麗なお姉さん」とかそういうのに憧れてるでしょ?そういうもんなんです。TSファンも全く同じです。 とにかく、TSファンが一番求めているのは「可愛らしさ」! これに尽きます。 恐らく一般人であろう「チェンジH」シリーズの編集者が 「女装に性転換ありありのアンソロジーでエロが不要とか全く意味が分からん」 と思っていたのは想像に難くありません。 その辺りが意識の断絶というものです。 |
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それにしても文庫になってたんですね。ちなみに編集者が「女装なんて気持ちが悪い!」と拒否したことでも有名。つーかこの絵柄で「女装なんて気持ちが悪い」と言うのも漫画編集者としてどうなんだと思いました。 |
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私自身もここまで書いてきてやっと分かって来たんですが、「チェンジH」シリーズが生粋の(?)TSファンが違和感を感じるのは、少なくとも創刊号あたりの段階においては編集側の視点が男性側…つまり、TSする側というよりも、それを外から眺める傍観者的な立ち位置…にあったことに起因するのではないかと。 直裁な書き方をすれば「女(になった男)とやりたい」という煩悩というか大脳新皮質に訴える方法論で向かい合うしかこのわけの分からんターゲットに向かうことが出来なかったんです。 TSファンがそうではないのはお分かりですね? |
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ただ、難しいのはTSファンは別に女性化願望があるわけではありません。 なので、「女になって男にやられたい」とは必ずしも思ってないんです。 しかし、「男にちやほやされていい気分」くらいならば味わってみたいわけです。 要するに「許容出来る疑似体験」をしたい訳です。 不思議な薬を飲んで性転換してしまった挙句、綺麗なドレスを着せられて(着せ“られ”るのがポイント!ここ大事!テストに出ます)、鏡を見て「これが…おれ…?」と言うくらいならばありですが、そのまま街に放り出されて男性に集団レイプされるのはNGなんです。 場合によっては男の恋人が出来て幸せな恋愛をするのもNG。男相手なんて気色悪い。 |
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前半で紹介した「女装雑誌」の創作小説とか、妄想体験記にはこういうの(お分かりですね)がてんこもりな訳です。読者の方々は性同一性障害の方もかなり含まれていたであろうことは容易に想像が付きます。 「女装願望があること」と「精神的に女性であること」は必ずしも一致しませんが、リアル女装願望を持つ皆さんがそうした連載で欲求不満を妄想で解消していた面があることは間違いありません。 私に言わせれば肉体が男性の性同一性障害の方は精神的に女性なので、つまり女性と同じです。 だから形式としては「女性」が「女装したい!」とか、「女性」が「女になって男と恋愛やSEXをしたい!」と主張していることになるわけで、不思議なことも不自然なことも何もありません。しごく当たり前の主張に過ぎません。 表現が婉曲すぎるかもしれませんが、私にとっては「女装雑誌」とかは「女性による女性のための雑誌」なので、それこそオシャレな「女性ファッション雑誌」を読んでいる様な居心地の悪さを感じます。 少なくとも精神が男性の読者には「女性ファッション雑誌」ってのはそれほど面白いものではありません。 別にけなしているのではないことはお分かりいただけると思います。逆に生粋の女性が「男性雑誌」を読んでも面白くないでしょ?そういうことです。 |
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だから、TSファンは精神は男性のままで、しかもそれでいて女性への疑似体験はしてみたいわけです。だから男性とからみたいとは余り思いませんし、ましてやSEXなんて余程の上級者しか求めません。 でも、そのままの百合ならあり。…分かりますよね? この辺りが物凄く難しいところで、「TS作品にエロは不要」という一部のTSファンの主張の意味するところは、TSファンで無い人には中々理解して頂けないと思います。 これとよく似た例で次のような話が思い浮かびます。 それは深夜の通販番組「激★店」においてでした。 現在も良質なアニメを放送し続ける「BS−i」(現・BS−TBS)の番組です。この局はかつて「Air」や「CLANNADO」なども放送し、ことさらアニメを侮辱する報道を繰り返す親元の地上波とは一線を画します。 |
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ともあれ「激★店」でのお話。 司会を務めるは山本麻里亜、新谷良子、三重野瞳(敬称略)の三人。全員がカラフルなメイド衣装に身を包んでいます。特に山本嬢は童顔なので人形みたいな可愛らしさです。 内容的にはよくある通販番組のオタク版というところ。ゲストトークなどもあったりしますが、最後には必ずサインをもらった商品の広告が登場することになります。 かくいう私もこの番組を通して購入した商品があったりします。 |
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何しろ深夜なので、番組スタッフとしてはもっとアダルトグッズなど直接的にいやらしい商品も扱っていいのではないか?と考えていたそうです。この辺りテレビ業界の人は全くオタク気質を分かってませんな(爆)。 結果的にそうした商品は全く登場しない健全な番組のまま終了することになります。 そう、オタクは可愛らしいものを観て萌え萌えするのがまず第一の欲求であって、「男だったら汗だくの女の裸見ないと収まんないだろ?」といった短絡的発想は余計なお世話以外の何物でもないのです(ちと誇張)。 まあ、オタクだってエロそのものに全く興味が無い訳ではないのですが、少なくとも「オタク用コンテンツ」を観ている状況においてはそっちの欲求は眠っていることが多いと言えるでしょう。 確かにこうして書いて見ますと、「この頃の若いもの」の一部を構成するオタクが「生命力に欠ける」風に受け取ることは可能ですね。 その強烈なタイトルでTS業界界隈でも一瞬だけ話題になった「女になりたがる男たち」という新書があります。 |
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この手の「一般人」を対象にした書籍は例えタイトルに直接的にTSを匂わせるキーワードがあったとしても多くの場合はTSファンが求める内容ではありません。 単にタイトルで吊っているか、さもなければ見当外れのズレた分析を読まされるか、或いはリアルなニューハーフのレポートとかそんなんです。 |
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どこにも「不思議な薬で女の子になっちゃった男子高生が異世界でお姫様の身代わりを一週間勤めないと元の世界に戻れなくなる」みたいな楽しそうな(爆)妄想なんぞなかったりします。 TSファンが読みたいのはそういういい意味での「御伽噺」なんですが。 要するにこの「女になりたがる男たち」に何が書いてあるか?それは 「この頃の男どもは女が押し付ける公序良俗に抑圧されて女性化が進んで腑抜けになっている!嘆かわしい!」 という、「古き良き時代のおっさんの愚痴」が延々書いてあるんです。 曰く 「男なんてのは、常に溜まってるもんだから、恋人がいようと女房がいようと常にやってやってやりまくるもんだろうが!浮気なんて当たり前だ!女子供は黙っていろ!」(大意) という具合。 原書の著者はエリック・ゼムール氏。 言うまでも無く母国において出版直後から凄まじい反発と顰蹙(ひんしゅく)を買って大問題になりました。まあ、そりゃそうでしょう。この内容じゃね。 |
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こうして刺激的な主張の骨子だけを聞いていると「そりゃあんまりだ」と思わなくもありませんが、通して読んだ感想としては「確かに頷けるところはあるなあ」というものでした。あ、私が公序良俗に反する部分まで全面賛成した訳じゃありませんからね!そこはよろしくお願いいたします。 『恋愛感情』と「種の保存本能」に根ざした『性欲』とは表裏一体ではあるものの、やはり「別物」と考えるのが自然です。 少なくとも著者に限って言うならば、社会的な性的倫理はさておき、より多くの女性と性交渉を積極的に持とうとし、実際に持ってしまう「男」こそが「生物として正常」なのであり、「女性との性交渉に積極的ではない」男性はそれだけで「オカマ野郎」な訳です。それこそ、恋人に風俗に行った事を責められて謝るなんて「男の沽券に関わる」というタイプなんですよ。 「男なんてのは浮気して当たり前。グダグダ抜かす女は殴って黙らせとけ」(大意)ってな具合。 …この人が「男の娘」とかを目の前にしたらなんて言うんでしょうか。「もっと男らしい格好をしろ!」とか言うんでしょうか。 脱線ついでに書きますが、わが国でも某国会議員が集団レイプ事件を起こした大学のスポーツサークルを評してこんな意味の発言をしたことがあります。 「レイプする人は、まだ正常に近いんじゃないか。」 |
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目を疑いますが、要するに 「(集団レイプというのは)女の子と手もつなげない様な男が増えている今の世の中にあっては元気があっていいもんだ」 という意味なんだそうです。 まるで集団レイプ推奨とも取られかねない暴言で、すぐに撤回して謝罪することになりました。 ただ潜在意識が透けて見えることには注目しなくてはなりません。 オタク界隈でよく言われるのは 「オタクの集団はいい意味で人畜無害で、少なくとも女子高生を集団レイプすることなどしない(体力がないから出来ないし)。にもかかわらず、しょっちゅう集団レイプ事件を引き起こす『危険な集団』であるスポーツクラブのイケメンの方が「まとも」とされて、自分らは「ネクラ」的に白眼視され、異常者扱いされている。これは恣意的な差別である」 という主張です。 某議員の発言の底意は正にこうした意識の発露でしょう。 集団レイプは犯罪ですが、これを「普通の恋愛、恋人同士の性交渉」に置き換えれば論理としては一応通用します。 まあ、プロポーズする勇気とレイプをする行動力を同一視するその「国会議員」先生の認識が狂っているのは書くまでもありませんが。 確かに、男として肉感的な女性にハァハァ言い、最後には性交渉に至る方が「まとも」で、可愛らしい幼女や女装少年に萌え萌えし、必ずしも女性との肉体的接触に至ることを求めない方が「まともでない」様に見えるという価値観は分からなくはありません。 同意はしませんが。 |
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そろそろまとめに入りますが、これを書いている時点(2010年5月)で定期刊行が決定したらしい「チェンジH」シリーズは、まだ立ち上がったばかりですので連載の質にばらつきがあるのは仕方が無いでしょう。 問題は「我々TSファンの求めるコンテンツの提供元となるかどうか?」なのですが、見通しは私の見解では明るくは無いと思われます。 「男性として女性の裸にエロを感じる」だろうから女の裸出しとけ的な作品の「女の裸」が元・男みたいなコンセプトの作品は、両方の読者から拒絶されるでしょう。 普通の読者にもTSファンにもです。 ごく普通(?)のエロを求める男性読者からは「元・男の女の裸なんて気持ち悪い」と思われるでしょう。「原生動物」に関するインターネット上の感想は現在も片手で数えられるほどしか存在しませんけど、その大半は「そいつ(女性化した面堂)はついさっきまで男だったんだぞ!」というものでした。そこがいいのに…。 そして、TSファンは余りどぎついエロは好みません(主観)。せっかく疑似体験してるのに痛いの嫌じゃないですか。つーか男となんて絡みたくないし。 喜ぶのは、「女性化した元・男性をあれこれするシチュエーションが好き」なかなり特殊なTSファンということになります。 とはいえ、「TS系エロ」作品が今も結構数が出ていることを鑑(かんが)みるに一定の需要が存在はしているのは間違いないでしょう。というか、私は勝手に自分みたいな「可愛くなっちゃった自分をコロコロと弄(もてあそ)ぶ」系作品の愛好者が「変身」系TSファンの典型的な姿だと思い込んでいますけど、もしかしたらこちらの方が「TSファン」の中でもマジョリティなのかもしれません。この点については統計の取りようも無いので断定は出来ないのですが。 |
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その他に読者として喜ぶのは「男性との性交渉」までを妄想疑似体験のメニューに加えられるハードなTSファン上級者(??)くらいでしょうね。 ならば「可愛くなっちゃった自分をコロコロと弄(もてあそ)ぶ」系の作品ばかり並べば、確かにTSファン大喜びにはなりますが売れないでしょう。 良し悪しではなくて、大半の読者には理解し難い価値観だからです。要するにマジョリティ(多数派)かマイノリティ(少数派)かという話です。 なので、数多く行われる連載の内、大半はマジョリティたる読者に向けての作品になるので、それを横目に見つつ、たまにクリティカルヒットする作品をぽつぽつと楽しむ…という形式に落ち着くことになると思います。 少なくとも典型的な「変身」ファンたる我々がマジョリティ側になることは永遠にありません。 ですから、少なくとも商業ベースで成立する程度の人数を対象にした商業誌において我々の求める好みに合致した連載が「多数派」を形成することは無いでしょう。 ですが、別にそれはそれほど嘆(なげ)くことでもないのではないか、と思います。 何しろ「雑誌」という総花的な形式においてはマイノリティであるというだけであって、個別の単行本などにおいては今も「TSファン大喜び」な素晴らしい作品が続々と生み出され続けているのです。 例は沢山ありますが、「ナイトウィザード・ヴァリアブルウィッチ」に登場する主人公の「普段着女装」などは本当に素晴らしいものです。 |
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「ナイトウィザードヴァリアブルウィッチ 2巻」(レビューはこちら) |
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また、「男性的価値観をほぼ完全に残したまま、女性として幸せに生きる」というとてもコンセプトとして両立できなさそうなことを達成してしまっているキャラもきちんと存在します。 それが「革命の日」の恵。 |
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「革命の日」 「続・革命の日」(レビューはこちら) |
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思うに、いまやメジャーな少年雑誌にもTS要素を持つ作品が堂々と連載されており、TS作品そのものの「希少価値」はかなり薄れてきています。 その昔も「ストップ!ひばりくん」は泣く子も黙る「週刊少年ジャンプ」連載ですし、「可逆変身」TS作品のスタンダードを築いたと言っても過言ではない「らんま1/2」は老舗どころか元祖週刊少年漫画雑誌の一誌である「週刊少年サンデー」連載でした。 元々「精神入れ替わり」や「強制女装イベント」などはギャグ風味のある長期連載ではお馴染みのものでした。 |
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また、堂々と謳ってはいないのに、あきらかにTSばかり出て来る「めたもる伊介」や「カメレオン・ジェイル」などもあります。 「めたもる伊介」(レビューはこちら) 「カメレオンジェイル」(レビューはこちら) 更に、決して作品全体の完成度やバランスは良くないにせよ「TS作品を描きたい!」という欲望が噴出している愛すべき作品である「まるでシンデレラボーイ」は忘れ難い逸品です。 |
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「まるでシンデレラボーイ」(レビューはこちら) |
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頻度こそ高くありませんが、印象的な女装イベントを仕掛けてくれた「ガクエン情報部H.I.P」の該当回は「普通の男の子の主人公が嫌々ながらも女装してみたら物凄く可愛くてちやほやされる」例の典型として教科書に載せたいくらい。 遭遇する被害が身代わりにチカンされるというのも濃すぎず薄すぎずGOODです。 |
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「ガクエン情報部H.I.P」(レビューはこちら) |
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そして、現在連載中のTS漫画作品を全て網羅すれば長大なリストとなるでしょう。 つまり、もう既に巷に「TS要素を持つ作品」は溢れ帰っている訳です。 逆に言えば「だからこそTS要素を持つ作品ばかりを集めたというコンセプトの雑誌が創刊されるに至った」とも言えるわけで、この点鶏が先か卵が先かという議論になりそうです。 ただ一つ言えるのは、「TS専門誌」を謳うならば「他の一般少年誌に連載されている様なヌルいTS作品とは一味違う」「ここでしか読めない」作品ばかりぎゅっと濃縮していないと存在価値は無い、ということ。 だって他に幾らでも読めるんですから。 その点、「チェンジH」シリーズは志は買いますが「何を差し置いても買う」「他では味わえない」レアリティ(希少度)を誇っている、かと言うと諸手を上げて高評価とするにはちと厳しいものがあります。 文句ばかり付けるのはフェアでは無いでしょうから、僭越ながら幾つか「提案」を掲載させていただきます。 |
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*過去の作品の再掲載 新規掲載作品にばかりこだわらず、現在絶版で入手困難な「伝説の」作品の再掲載などはインスタントでありながらクオリティは保てるいいアイデアではないかと思います。 言うまでも無く「TS作品の」ですよ。 余りにもニッチ過ぎる商品展開ですが、元々そういう雑誌ですよね? 出版社が異なったりすると権利関係が大変かもしれませんが、絶版作品の作者の方にとっても悪い話ではないでしょう。 漫画の雑誌再掲載は過去に例が無い訳ではありません。 ちなみに「TSライトノベルのコミカライズ(漫画化)」はあちこちの雑誌で行われまくっており、既に大幅に「先を越され」ています。凄い時代だ…。 |
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なぜかamazonカスタマーレビューでは酷評されていますが、大傑作! 「AKUMAで少女」(レビューはこちら) |
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*コラムを充実させる 漫画雑誌なのに豪華な連載陣に文字連載を大量に持たせている「コミック リュウ」という雑誌があります。 TS作品のある種の極北である「トランス・ヴィーナス」が連載されていたことでもTSファンにはお馴染みですが、この文字の連載がめっぽう面白いんですわ。 |
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「TSをテーマにしたコラム」を書ける人材となるとそうそういないでしょうけど、八重洲さんとか本気で探せば必ず見つかりますので、こういうところで情報量を増やすのもいい手段ではあるまいかと。口幅ったいですが私でよければいくらでも書きますよ! 自らTS小説を著しているオタク界の論客、本田透さんなんてぴったりじゃないでしょうか。 ただ、小難しくなるのはNG。やたらに学術用語を並べ立てたり、心理分析を始めたりされても困ります。スパイス程度ならばいいのですが。 なるべく気楽に能天気に、それでいてディープにTSを語って欲しいですね。 「TS作品の変遷」とか「統計に観るTS作品の増加傾向」とか。 「らんまの着た衣装の一覧表」みたいなデータも面白いかも。 それこそ、後に単行本でまとめて読みたくなるクオリティのコラム郡を期待。まあ、TS専門のコラムの単行本なんて流石に売れないでしょうけども。逆に雑誌にならば居場所があると思うのです。 *情報雑誌を目指す 折角定期刊行が実現したんだから、「現在放送中のTS要素を持つアニメ、ドラマ」とか「現在連載中のTS・女装要素を持つ漫画、小説」といった情報を掲載するのは大いにありじゃないでしょうか。 確かにこの手の早出し情報はインターネットの得意分野ですが、紙媒体で残る意義は間違いなくありますし、掲載される側にとってもする側にとってもメリットがあり正にWin-Winの関係ではないかと。 ちなみに、「雑誌」の形式がより鮮明な「わぁい!」にはTS(女装)新作ゲームの紹介がわんさと載っています。素晴らしい。 |
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*過去作品の紹介 今「なつかしのゲーム」をテーマにした大人向けのゲーム雑誌、なんてのも成立しているんですから「大昔のTS作品」などを紹介して思い出に浸るのも一興ではないかと。 つまり、作品そのものを掲載するのではなくて「作品の紹介」を掲載するんですね。 OAVの「ボディジャック」などは憑依ものですが、OAV黎明期と言ってもいい時期に登場したTS要素を持つ数少ない作品でしょうからこれを紹介するのも悪くないですし、OAV「バラバンバ」なんてウチに来る方すら殆(ほとん)ど誰も知らないでしょうね。 今もYoutubeなどで変身シーンのみの抜粋をよく見かけるOAV「麗しき性の伝道師 麗々」などは、「この時代によくぞここまで」というほどコッテコテの男 → 女の変身シーンが見られます。 この頃のTS作品って、数が少なくてマイナーである以上にアンダーグラウンドな雰囲気があって(案外中身は堅実だったりするんですが)、裏モノマニアの興味もそそる一品です。 |
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憑依もののTS要素ありなんですが、当時勢い込んで買ったもののクリアできませんでした。 ベスト版も出ているそうですが攻略記事なんていかがでしょう? |
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無論、「誰でも知ってる」作品は新味こそありませんが、多くの読者に訴えるものがあるでしょう。 映画「転校生」や「らんま1/2」、「ボクの初体験」など。「ふたば君チェンジ!」や「椿ナイトクラブ」はTS界隈ではメジャーですけど一般読者には新鮮でしょう。 |
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ポイントはそれほど高くありませんがたまにドキッ!とするコマや場面があるので侮れない漫画。 わが国はこういうのが普通に少年週刊漫画雑誌に途切れず連載されているのでした。 |
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また「ドラマ」分野は「埋もれた」TS作品の宝庫で、未ソフト化作品がわんさとあります。 単なる「歴史的な意義」のみで紹介するのも悪くありませんが、埋もれた名作やら注目のTS作品などの紹介コラムなら是非読みたいですし、またこうした単行本やVHSビデオみたいな形に残らないパーツの紹介も、商業誌ならではの取材力でどうにか頑張って欲しいんですよね。 そんな情報がびっしり掲載されている雑誌なら1冊10,000円でも買いますよ。ええ結構マジな話で。 |
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「ボクの初体験」(レビューはこちら) |
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私の記憶に残っている「まずソフト化されないだろう」という映像はこんな感じ。 ・日本テレビ系「それゆけ!ココロジー」 イメージVTRにて「もしも異性になってしまったら」というテーマ。メガネに冴えない普段着の男性が夜の遊園地のアトラクションの中で鏡を見ていたら自分が女性になっていた映像。 女性に男性の服を着せて、メガネまでさせて「えーっ!」と可愛い女性的発声をさせるもので、非常に完成度が高かった。 実は誰も女装していないし、男装した女性が登場するだけのローテク映像ながら実にツボを衝いていた。 小泉今日子出演の回であることを覚えているのでライブラリを探し当てるのはそれほど難しくないはず。 |
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・芸能人による水泳大会の女装 近年はほぼ絶滅した番組ジャンル。 ただ、この手のイベントに女装は定番で、ある年などは「借り物競争」めいた趣向で大いに盛り上げてくれました。プールの途中まで泳いで行き、中ほどに吊り下げられている封筒の中の「衣装」を反対側に設置された更衣室で着た状態でターンして帰ってくるまでを競うもの。 テレビという大資本がバックなので衣装が豪華で、バリバリの男性アイドルなどの芸能人がウェディングドレスやバレリーナのチュチュ姿で必死に泳がされる姿はシュールの一言。 今と違ってお笑い芸人がアイドルと相撲を取ったりすればわざと負けないと仕事が無くなる時代です。この時代に女の子にキャーキャー言われる男性アイドルに強制女装させたというのは凄い。 しかもプール内のカメラで水中を泳ぐところまで撮影されるという屈辱。 とある男性タレントがバニーガールの衣装を着せられて水中で艶(なまめ)かしい網タイツで必死に歩く一幕はトラウマものでした。網タイツって女性のものでも一瞬「ドキッ!」とするのですが、それが男性のものであると一瞬遅れて分かった時の衝撃。 こんなのがゴールデンで放送されていたのが何とも素晴らしい時代です。 ゴールした後はずらりと並ばされて全員がその格好のまま一言コメントを求められるのだから最高でした。 この手の「後を引きずらない」のに「完成度の高い」学園祭・忘年会系の女装は貴重は貴重。 この手の情報って「データ」と呼べる水準のものは流石にWeb上にも無いんです。 そういう「スキマ」を狙っての雑誌ならば正にありでしょ。現物を見られる人間はもう誰もいないわけだけど、スクリーンショットなら掲載できるわけで。 まず再放送だのソフト化だのも無い訳で、情報としては面白いんじゃないかと。 |
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・「THE 対決!」(1985年4月〜9月 フジテレビ系) 何度か書いてますけど、また書きます。 ずらり並んだ女の子の内、一人だけが男の娘…もとい男の子なので、それを当てるという企画がありました。一応「対決」がコンセプトなので回答者のどちらが多く正解するかをスタジオの芸能人が賭ける形式。 テレビ局主導の「素人による」女装企画は、古くは「ザッツ・コサキンルーの怒んないで聞いて!」内の「初めての女装コンテスト」や、お馴染み「笑っていいとも!」の「ミスタービジョアル系」「彼が彼女に着替えたら」、「学校へ行こう!」の「女装パラダイス」など、結構沢山あります。 だが、そのほぼ全てが一応の分別を備えた「大人」か最終的には説得されたにせよ自主的に参加した形式であるのに対し、この「THE 対決」版は出場者が際立って年少なのが特徴なんですよ。 何しろ下は小学一年生かそれ以下からなので、周囲に説得されたか自分でも何だか分かっていない可能性が大。歌舞伎役者やら旅芸人でもないのにこの年から女装というのは、かなりの程度禁断の匂いが漂います。逆に今は倫理的に無理なんじゃないでしょうか。 最年少は晴れ着なのでまだともかくも、小学校3年生(うろ覚え)の子はなんとバレリーナのチュチュを着せられて女の子に混ざって踊らされる破目に。 |
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正直、当時年齢がほぼ同じだった私は長年これがトラウマになりました。 こんな酷いことが世の中にあるのかと。 最後の中学生の男の子はなんと真紅のチャイナドレス! ぱっくり入ったスリットもまぶしいその姿。 流石に「中学生」くらいになるとメイクで性別をごまかすのも限界とスタッフが判断したのか、顔は半分扇子で隠しながらの登場でした。 |
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答えを発表する際には、「女装した男の子」が大声で自己紹介をするという方法を取るのですが、真紅のチャイナドレスにカツラを取った坊主頭で「おーっす!!○○です!」と怒鳴らされた彼の目をつぶっての絶叫姿もまた同じくトラウマに。 「坊主頭」+「メイク」+「チャイナドレス」の三連コンボ。凄すぎる。 彼はその後夏休み明けにどんな顔して中学に行ったんでしょうか。 同じ番組で大人の男を使ったそれもありましたけど、この「子供編」ほど禁断の匂いはしませんでした。プロデューサーもそれほど考え無しに適当にやってみたんでしょうが、正に偶然が生んだ奇跡でした。 こーゆーのを付録のDVDとかに付けてくれたらマジで幾らでも買います。 他にも“幻のTS映像コンテンツ”は沢山あります。地方のCMであったそれとか。 折角商業誌で展開するのならば、関係者しか知りえないところまで深く突っ込んで欲しいものです。 *関係者へのインタビュー TS総合誌ならばそれこそ「ストップ!ひばりくん」の話題のみで江口寿史先生にインタビューするとか、しょっちゅう女装企画を展開する「笑っていいとも!」プロデューサーにインタビューするとか幾らでもあるはず。 ちなみに私は何度も何度も強制女装や性転換の被害に遭っている面堂終太郎を演じられた神谷明さんに直(じか)にその辺の話を聞いてみたいというのが一生の夢の一つだったりします。 まあ、実際に会えたらそれどころではないでしょうし、ご本人も星の数ほど演じられた役の一つに過ぎませんかがお忘れでしょうけど。 すぐに思いつきませんけど、「TS作品の作者」「TS作品の仕掛け人」といったくくりならば候補は山ほどいるはず。 |
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つーかこの辺も先行されていて、長門有希の女装コスプレ姿で演奏を動画投稿サイトにアップする「てぃっしゅ姫」(男性)の顔だけを隠したグラビア企画とかインタビューとかがオタク雑誌には既に展開されています。 こういうところで希少価値を打ち出さないと負けるよ! *独自の企画 かつて週刊少年サンデーの読者投稿ページには「大いなる女装」というコーナーがあったそうです。 筒井康隆の「おおいなる助走」をもじった「大いなる女装」というパロディ企画はこれまで1億回くらいあちこちで行われているでしょうが、何しろ天下のサンデーですからね。 実際に見たことは無いのですが、まあ読者とか編集者に女装させる企画なのでしょう。かなり古い話ですが、日本一コラムが面白い隔週テレビ雑誌「TV Bros.」でも定期的に女装企画がありました。 |
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流石に実際に性転換させるわけにも行きませんので、「強制女装」を伴うおバカな誌上企画を連載形式で引っ張るのは面白いんじゃないでしょうか。 何人かのイケメンを集結させて籤(くじ)を引かせ、「花婿」「花嫁」「父親」「列席者」とかを強引に割り振って演じさせて写真を撮るところまで…とか。 やりたいのが「障害物レース」みたいなの。 コースは平坦だけど、全員がウェディングドレスを着ていたら全力疾走は難しいでしょ?なので、スカートを鷲づかみにして必死に走る男集団…という訳の分からん絵面になります。 いや〜アホだなあ(爆)。間違いなくドレスが破損するので買取で行わねばならず、素人にはまず不可能。どうでしょ? ある意味「女装雑誌」はみんな真面目なのでこういうアホな企画はまずありません。だからこそ面白半分に荒らすんですよ。 「もしも写真」とかどうでしょう。 「もしもバレーのユニフォームをバレエと間違えたら」で、屈強な男どもがみんなバレリーナのチュチュでバレエしている写真とか、「もしも会社でスーツじゃなくてバニー必須だったら」でクソ真面目な顔した男がバニー姿で会議やってる瞬間とか、アホ過ぎて誰もやらん(つーかモデルさんが仕事受けてくれないかも)企画なんてどうでしょう? シュールで面白いと思うけどなあ。 「もしも学ランがウェディングドレスだったら」で童顔のモデルばかり集めて制服姿の女子高生と同じ比率で花嫁姿の男子高生が楽しそうに学園生活送ってる場面とか、ある意味悪夢に見そうな写真になりそうで楽しいです。 「もしも野球のユニフォームがセーラー服だったら」とか「もしもお坊さんの袈裟が女子高生の制服だったら」とか「もしもサッカーのユニフォームがスチュワーデスの制服だったら」とか意味分からん企画なら幾らでも思いつきますよ。 つーかこういうのってもしかしてCG合成で出来るのかも? でも安っぽくなるのでなるべく本物でやって欲しいですね。やるならやるで徹底してふざけまくって「撮影に使った制服を洗濯済みの上全部読者プレゼント」とかやれば?本誌付属の応募券必須にすれば複数買いまで出てお得? 更に撮影のメイキング写真まであれば完璧。 まあ、実際にやってみたら中学生くらいならばともかく、大人がやっても案外映えなかったりするんですがそこはチャレンジして欲しいなあ。減るもんじゃなし。 |
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*シミュレーション 私が大好きな本に「ゴジラ対自衛隊」という本があります。 |
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「ゴジラが実際に現れたらどうなるか?」を本当に真面目に考察した一冊です。 目撃した役所(警察とか海上保安庁とか海上自衛隊とか)はそもそも「巨大生物」をどの様な用語で呼ぶのか?とか実際の役所間の連絡の手続きはどうなるのかとか、怪獣映画でははしょられる様な細かい描写を全部真面目に考察してあります。 もう面白いったらありゃしない。 映画「ガメラ」で「ガメラが出現した場合」の法律が無いので(そりゃな)、参議院で臨時に立法してから自衛隊が動き出すという描写がなされたりと映画界は追いついているみたいです。 |
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つまり、「実際に性転換現象が起こったらどうなるか?」という考察を「雑誌企画」としてやるんですよ。 民法の専門家などを招いて真面目に考察すれば結構面白いと思います。 恐らく法律には「超自然的な性転換現象」や「人格の入れ替わり」を想定した記述は無いでしょう(そりゃな)から、お互いの財産の所有権はどうなるのかとか、個人的にも興味があります。 そういう、個人では難しい企画こそ真骨頂でしょう。 *クロスレビュー 実は今、AVの世界ではTS要素を持った作品が凄まじい勢いでリリースされています。 実は、実際に購入したものもあります。 感想は…正直、玉石混合もいいところ。 それでいて決して安くはないし、多分レンタルショップにも並ばないでしょう。並ぶのかな?詳しくないので知りません。 映画の撮影は学生映画とドキュメンタリーに付き合ったことがあるので分かるんですが、テレビで映っている様な映像って本当にちゃんとプロが照明を炊いて、音声をしっかり管理しているからあんなに見られるものになっているのです。 素人が下手にやると、「恋のみくる伝説」みたいな有様になります。 要するに画面は暗くてよく見えないし、録音環境が最悪でぼそぼそと何を言ってるのかさっぱり分からないという、「映像作品として最低限のレベルもクリアしていない」作品すら多数。 |
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AVに女優さんの演技なんぞ期待はしませんが、それにしても余りにも棒読み演技というのはどうなのか。 とても元・男が喋っている様には聞こえませんし見えません。 ごく普通のお姉ちゃんが台詞を棒読みしているようにしか見えないんですよ。 まあ、そっち方面のクオリティにばかりこだわった鑑賞をしているユーザーの方がマイノリティなのかもしれませんが(核爆)。 なので、こういうのこそクロスレビューで複数のライターさんに感想を上げてもらうのはどうでしょう? だって、「TSファン」をあてこんでそういうの作る訳ですよね?だったら意見を戦わせた方がいいと思います。 別にAVじゃなくてもいいので、新刊のTS作品を軒並み斬る!とかね。 確かにインターネット上には発売されたばかりのTS作品の感想ブログとかわんさとあがっていますが、特定の情報に特化したブックガイドというのは需要があるのは書くまでもありません。 老舗のSF雑誌「SFマガジン」はその月に発売された、漫画やライトノベルの中からSF要素の強い作品をピックアップして紹介してくれますし、「Arms Magazine」などは、銃器の登場する映画やアニメだけを紹介するといったコーナーが厳然とあるのです。 Armsの該当コーナーはかなり面白いです。 |
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何しろ着眼点が普通のアニメファンと余りにも違うのでカルチャーショックを受けられます(爆)。ま、要するに銃器オタク視点ってことなんですが。 だったらそのTS版があってもいいでしょ? 女装含めてと謳っているし一石二鳥じゃないですか 今度こそ本当に最後。 「わぁい!」の方はもうこの路線で突っ走ってもらうのがいいと思います。 ここまでエッジが効いていたのは創刊号だけ、なんて未来が見えそうで怖いんですけど、ある意味ソフト路線の女装というか、コスプレ専門誌のたま〜に載ってる女装特集を切り取ったみたいなアプローチは外野から見ても興味津々です。 個人的にはエロ無し路線で、「ガチの女装趣味者をターゲットとしない女装漫画専門誌」というのは画期的な存在だと思います。 結構大事なのは作品数を絞り込んで本誌が「薄い」こと。物理的に。 これはある意味正解。 無理して玉石混合の「石」の方を増やすよりはコンパクトにまとめる作戦はおおいに「あり」。 期待してますよ! でもって、恐らく正統派(?)の「TS作品」を希求していると思われる「チェンジH」シリーズにご意見をば。 あくまでも「こういう漫画があると個人的に嬉しい」という意見です。はい。 どうせならガチのハードボイルドで男くさい主人公がTSする作品が読みたいです。 女の子みたいな外見の男子高校生とかも悪くないんだけど、「女の子が女の子に性転換する」みたいな作品には個人的にはそろそろ食傷気味。 変身前は渋く、格好よく、変身後は綺麗で美しく。 40代の男が、20代の女になる様なのが読みたいなあ。 ま、そんなこんなで期待してますよ。 当分レビューは出来ませんが、時間が取れるようになったらこの「二大TS雑誌」の行く末には注目して行きたいと考えております。 2010.07.19.Mon. |
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マーケットプレイス無しで手に入るオススメ物件(^^。 05-03 「3レボリューション」(レビューはこちら) 10-05 「ナイトウィザード ヴァリアブルウィッチ 1巻」 (レビューはこちら) 01-07 「シュヴァリエ」(レビューはこちら) |