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劇場版 機動戦士ガンダム00
-A wakening of the Trailblazer-

(超ネタバレあり)

目次

 第0章 個人的事情
 第1章 「絵空事と現実」
 第2章 宇宙怪獣というアイデアは新しいのか
 第3章 ならば侵略ものSFとしてはどうか
 第4章 最後はそれでよかったのか?
 最終章 まとめ

機動戦士ガンダム00 MEMORIAL BOX 【初回限定生産】 [DVD]
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 第0章 個人的事情

 これから書く文章は当然ネタバレです。
 テレビシリーズ全50話、劇場版を視聴し終わった読者を念頭にかかれていますので、「ネタバレ」を避けたい方はそれらを視聴し終わってからお読みいただくことをオススメします。

 30年の歴史を誇る「機動戦士ガンダム」シリーズの現在(2010年9月)時点での最新作にして、19年ぶりの劇場版にあたっての完全新作にして完結編。

 私が蛮勇を奮ってこの拙い文章を綴ろうと思ったのは、正直言って
余りにも内容が新しすぎ、どうリアクションしていいのか戸惑っているからですね。

 感想ブログやネタバレスレなどもつまみ読みしましたが、どれも隔靴掻痒。現時点で手に入る最新の商業出版物も一応目を通しましたがこれまた腑に落ちるものではありませんでした。

 特にブログは、わざわざお金を払って観に行った手前悪口を書いたのでは自分が報われないと言うわけでもないのでしょうが、所謂(いわゆる)「署名原稿」に近いこともあって下手すると「絶賛」記事も散見される始末。

機動戦士ガンダム00画集―INNOVATION―
機動戦士ガンダム00画集―INNOVATION―

 この原稿を書いている時点(2010年9月24日(金))でまだ公開7日目ということもあって、ファンの意見は出揃っていない感もあるのですが、それにしても満足行くものが読めないのにはかなりいらだちます。
 このインターネット時代にあって、本当に天地を揺るがす大問題作であれば先行上映やらいち早く観た関係者などから情報が流出して大変なことになっているはず。
 ところが、どうもそういう風でもない。

ガンダムOO(ダブルオー)エース 2010年 10月号 [雑誌]
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全編00と劇場版についての一冊。映画を観終わった後にはオススメ。

 私は2ヶ月遅れて公開される地元の劇場に見切りをつけて
往復10時間のバスの旅を敢行して観て来たのですが、週半ばの祝日であるという好条件がありながら観客はまばら。その日2回目の上映だったのですが、入った瞬間に見終わったばかりのお客も何人かいたのですが、みんな非常に困った気まずい雰囲気

 帰りのバスの時間を考えるとこの一回しかチャンスが無く、
「入場制限されたらどうしよう」と考えていたのに入りは拍子抜けでした。

 とにかく思っていることを素直にとりとめもなく書きますのでよろしくお願いいたします。
機動戦士ガンダム00 −A wakening of the Trailblazer− (角川スニーカー文庫)
機動戦士ガンダム00  −A wakening of the Trailblazer− (角川スニーカー文庫)

 ここからちょっと私自身の「ガンダム00」に対する接し方を簡単に。本論と直接関係しないので、必要ない方は「***」マークで囲みますので、二番目まで飛ばしてください。

データ
「機動戦士ガンダム00」         2007年10月〜2008年3月放送
「機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン」2008年10月〜2009年3月放送
「機動戦士ガンダム00」劇場版      2010年9月公開

***

 「機動戦士ガンダム00」が放送開始されたのは2007年10月。
 前年の2006年に放送されたアニメとして「涼宮ハルヒの憂鬱」「コードギアス 反逆のルルーシュ」「ゼーガペイン」などがあります。ちなみに「ガンダム00」のシーズンの合間の半年を埋めたのは「コードギアス」の第二期(R2)でした。
 2007年アニメとしてはこの他に「CLANNAD」「天元突破グレンラガン」「らき☆すた」などがあります。

機動戦士ガンダム00 in those days (角川コミックス・エース 293-1)
機動戦士ガンダム00 in those days (角川コミックス・エース 293-1)

 私はその頃ブログを始めていて放送開始直後は毎週のように大量の感想をアップしていました。
 ただ、ブログの文字数制限がキツく、レイアウトも決して読みやすいとは言えない上にチャプターを何分割もしなくてはならずに読みにくいこともあっていつのまにか毎週上げることは出来なくなっていきます。

 ちなみに序盤6話辺りまでの私めの「ガンダム00」評は正に“激賞”。大絶賛の嵐でした。
 これはテレビシリーズ全体を通してもほぼ変わらず、
「現代作られるべき最善にして最良のガンダム」という評価でした。

 ところがこの後、個人的にも忙しくなり、大体10週目あたりで視聴は停止してしまいます。
 私が潔癖症で「中途半端に観たくない」などという意識があったこともありました。

 この後、毎週録画するプログラムだけは居残り続けたため、特番によって放送時間がずれてしまった第一期最終回以外はほぼ全てHDDレコーダーに記録され、その後約3年間に渡って塩漬けにされることになります。

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 アニメ雑誌もそこそこ読む私としては毎回のように特集される「ガンダム00」がそれなりの人気を誇っていると言う認識そのものはあったものの、さしたる感心も無いままこの2年間を過ごします。

 それが一気に動いたのが2010年9月17日(金)。皮肉なことに劇場版公開の前日です。
 9月19日(土)と20日(日)にHDDレコーダーの容量を大量に使う臨時の出来事が勃発。何とかして容量を確保する必要に迫られます。
 我が家で使用しているHDDレコーダーはその貧相な録画容量から常にディスク容量問題を抱えており、常に「観ては消す」を繰り返さざるを得ません。

劇場版 機動戦士ガンダムOO A wakening of the Trailblazer オリジナルサウンドトラック
劇場版 機動戦士ガンダムOO A wakening of the Trailblazer オリジナルサウンドトラック

 消せる限りの番組を消しまくって対処してきましたが、もう限界でした。
 序盤と一期の最終回以外は全て収録されている「ガンダム00」に手をつけざるを得ません。

 個人的には前月の8月に年に一度の資格試験を終えており、ある種の「忙しさのピーク」は脱していましたので、この週末の連休を活かしてかなりの程度を消化することにします。

 その少し前から準備はしており、復習のために序盤の10話ほどを見返してありました。
 そこから
金曜・土曜の夜に一気にファーストシーズン全話を駆け抜けます。
 といっても全25話の内、11話ほどは既に観終わっていましたので、実質14話ほど。

機動戦士ガンダムOO Anthology BEST ADVOCACY OF CONGRUITY
機動戦士ガンダムOO Anthology BEST ADVOCACY OF CONGRUITY

 どうしても入ってきてしまう情報(ロックオンの戦死、ルイスの身体欠損)によって、それらを初見で体験できなかったのは残念でしたが、そこも含めて濃密に体験できたのはとてもよかったです。

 そして連休最終日の9月20日(月)に一期最終話をレンタルして来て、前日の深夜から視聴開始。
 全25話に加え、正月特番の芸人の「ガンダム00」トーク番組に各話の感想ブログまで総動員して最後まで駆け抜けることに成功しました。
 きちんと記録していませんが、恐らく13〜15時間くらいはアニメばかり観ていたことになります。

 つまり、
セカンドシーズンは観始めから観終わりまで24時間以内だった訳です。

劇場版 機動戦士ガンダム00 RING OF MEISTERS BOX (食玩)
劇場版 機動戦士ガンダム00 RING OF MEISTERS BOX (食玩)

 実は最初は18日19日のHDDレコーダー残容量不足を一期全デリートで乗り切ったので、それほど無理して観ることも無かったので、せいぜい
1日1〜2話鑑賞しつつのんびり楽しもうと思っていたのです。

 ところが
余りの面白さに止め時が見つからず、ピーリス、ルイスたちの行く末も気になって仕方が無いので、「毒食わば皿まで」とばかりに最後まで駆け抜けてしまいかした。

機動戦士ガンダム00 ガンダムマイスターズ GUNDAM 30th ANNIVERSARY COLLECTION
機動戦士ガンダム00 ガンダムマイスターズ GUNDAM 30th ANNIVERSARY COLLECTION

 ですので、
軍人として再登場したルイスという衝撃場面から、ネーナへの復讐を遂げて戦線離脱するまではほんの十数時間で一気に体験した形となります。

 そもそもその一期すら見たのは前日なので、
4日程度で全50話を見通した形です。
 これは小さいようで大きな差だと思います。
 熱心なファンは恐らく勘違いから事態をドンドン悪化させていく沙慈とルイスに
心を引き裂かれながら「半年間」を過ごさざるを得なかったはずですし、毎回誰かが銃口を突きつけられて次週に引っ張られることを繰り返していたはずなのです。

 なので、「展開がだらだらしている」という掲示板への何気ない書き込みには正直、首を捻らざるを得なかったのですが、確かに
これを25分割して毎回一週間間を開けて見せられたのではイライラが持たなかったかも知れないとは思います。

機動戦士ガンダム00 高河ゆん Dear Meisters COMIC&ARTS
機動戦士ガンダム00 高河ゆん Dear Meisters  COMIC&ARTS

 ともあれ、平日たる21日(火)の明け方に至って遂に「セカンドシーズン」の最終回に到達します。

 当然「ネタバレ」の心配も無くなったので感想ブログやwikiなどを見て回ることになるのですが、なんと
3日前の18日(土)には劇場版が正に公開されたばかりではありませんか。

 速報性が売りであるインターネットの世界で、今この瞬間(公開から4日目)にキーワードでネットサーフィンなんぞした日には
洪水のような「劇場版のネタバレ」が目に飛び込んでくるのは必定でした。

機動戦士ガンダムOO COMPLETE BEST(初回生産限定盤)
機動戦士ガンダムOO COMPLETE BEST(初回生産限定盤)

 調べてみると
地元で公開が開始されるのは10月の末。

 とてもではありませんが、待っていられないので、蛮勇を奮い起こして木曜日に突如飛び込んできた祝日に
往復10時間を掛けて劇場版を観るためだけに小旅行をすることを決意しました。

 
入場制限が解除されるまで劇場の外に漏れ聞こえてくる音を遮断するために耳に指を突っ込んでおくという涙ぐましい“努力”の果てに遂に待望の新作を目にすることになります…。

***

CDドラマ・スペシャル 機動戦士ガンダムOO アナザーストーリー「MISSION-2306」
CDドラマ・スペシャル 機動戦士ガンダムOO アナザーストーリー「MISSION-2306」

 はい、個人的な回想終わり。

 要するに個人的な事情によって、私はリアルタイム視聴組ではなく、
たった3日前にほぼ全話を初見で一気観した状態という非常に特殊な状況にあったということが言いたい訳です。

 二期の放送が終了したのは2009年の3月。

 そこから既に1年半の年月が経過しています。
 アニメ雑誌ではほぼ毎号のように続報が掲載され、スピンオフ漫画が両手に余るほど連載され、声優や関係者を招いたイベントが数カ月おきに開催され続ける幸福なアニメではありつつ、恐らく殆(ほとん)どの視聴者が「結構前のアニメ」という状態だったのではないかと思われます。

 何しろアニメはひっきりなしに新作が放送されますし、そっちの方にも話題作はてんこもりです。

 全50話を復習するなど到底現実的ではありません。「総集編」が3本存在しますが、恐らくそれは「復習」に属するもので「初見一気全話見」とはまた違うものでしょう。

CDドラマ・スペシャル 機動戦士ガンダムOO アナザーストーリー「Road to 2307」
CDドラマ・スペシャル 機動戦士ガンダムOO アナザーストーリー「Road to 2307」

 ですから私にとってプトレマイオスクルーの軽妙なやりとりやスメラギさんの無茶な戦術、ワンリューミンの凄まじい死に様、不死身のコーラサワーの滑りギャグに格好いい電波ミスター・ブシドーに爆笑などもついさっきの出来事なのです。

 生半可な劇場アニメすら凌駕する「ブレイクピラー」事件の大スペクタクルも昨日のように…というかリアルに3日前に観たものです。

 無論、一方的なアドバンテージという訳ではありません。
 リアルタイム視聴組は足掛け1年半という期間を一緒に過ごしてきたのであり、それこそ「その時何をしていたか」の思い出と共に記憶されるアニメでしょう。
 熱心なファンならば毎号の様にアニメ雑誌をチェックし、感想ブログで感慨を分かち合いつつ「次の展開はどうなるのか?」と
胸を躍らせ続けてきたと思います。

 更に、アニメ界では締めくくりに相当する一大イベントたる「劇場版」で期待を引っ張り続けたこの1年間は、「ガンダム00」の熱烈なファンにとってはある意味最高の蜜月時代だったとも言えるでしょう。
 そうしたところに
若干の嫉妬を感じなくもありません

 ともあれ、そんな状況の中、遂に劇場で公開後僅か6日目にして見ることが適うことになります。


CDドラマ・スペシャル3 機動戦士ガンダムOO アナザストーリー「COOPERATION-2312」
CDドラマ・スペシャル3 機動戦士ガンダムOO アナザストーリー「COOPERATION-2312」

 
第1章 「絵空事と現実」

 結論から言うと…
微妙でした。
 というか、余りにも
展開が新しすぎて非常に戸惑っています。

 「機動戦士ガンダム」シリーズは既に30年の歴史を持ちますが、スタッフ自ら述懐するとおり
「人間以外」と戦うのはこれが初めてになります。

 言われて見ればあの「機動武闘伝Gガンダム」すら基本は人間同士の戦いでした。

機動武闘伝 Gガンダム DVD BOX 1
機動武闘伝 Gガンダム DVD BOX 1

 ハリウッドあたりの「侵略ものSF映画」を髣髴(ほうふつ)とさせる序盤に、常軌を逸した凄まじい物量の敵が押し寄せて来る荒唐無稽なSF展開に、正直
呆然としてしまったというのが第一印象でした。

 そもそもこの「ガンダムで宇宙怪獣を出す」という
アイデアそのものが賛否を呼んでいます

 監督も脚本家の方も賛否両論になるのは分かっていて敢えて行なった確信犯であることを関連書籍でも明言していますし、キャストコメントでもその点に触れて予防線を張っている方も。

 私は
「新しいこと」にチャレンジすることそのものは否定したくないのですが、やはりこの試みは正しかったのかという点については疑問を投げかけざるを得ません

幻想と怪奇 宇宙怪獣現わる (ハヤカワSF)
幻想と怪奇 宇宙怪獣現わる (ハヤカワSF)

 例えるならば「太陽にほえろ!」の刑事たちが劇場版においてショッカーの怪人が現れたので警視庁と地元警察と連携して倒す…みたいな話です。
 …こうして書くといかに馬鹿馬鹿しいアイデアか分かるでしょ?
太陽にほえろ! 1981 DVD-BOX I
太陽にほえろ! 1981 DVD-BOX I

 一応専門家の先生について脚本を学んでいたこともある人間から言わせて貰うと、これは
セオリーに反します

 脚本の世界では「絵空事から現実になるのはいいが、現実から絵空事になってはいけない」という法則があります。

 具体的に言うと、
「絵空事から現実」というのはこういう例ですね。

* * *

 ある子供が「おもちゃの銃」を手に入れた。
 だがその銃は魔法の銃で、撃った人間を何でも言うことを聞かせられるマジックアイテムだった。
 周囲の人間に買い物に代わりに行ってもらったりといった他愛も無い使い方をしていた主人公だが、ある時感情が高ぶって母を「言うことをきけ!」とばかりに銃撃する。

 当然、当たった瞬間に従順になってお小遣いを呉れたりするはずが、何故かその瞬間に
「おもちゃの銃」は「本物の銃」に摩り替わっており、思いもかけず母親を射殺してしまう主人公。

 パニックになった主人公は、もしかしてこれまでの「おもちゃの銃」云々の体験は単なる思い込みだったのでは…と思うに至る…。

* * *

CDドラマ・スペシャル4 機動戦士ガンダムOO アナザストーリー「4MONTH FOR 2312」
CDドラマ・スペシャル4 機動戦士ガンダムOO アナザストーリー「4MONTH FOR 2312」

 こんな感じです。怖いでしょ?
 これが「絵空事が現実になる」という例です。

 では
「現実が絵空事になる」という「悪い例」だとどういうことになるか。

* * *
 銃弾が装填された状態の拳銃を偶然道で拾った主人公。
 そこに絡んできた不良ともみ合いになった際、思いもかけず銃弾が発射され、顔面を直撃された不良は不幸にも死亡してしまう。

 たまらず逃げ出す主人公。
 その後犯人が見つからないまま日数が経過。発覚を恐れて肌身離さず拳銃を身に付けている主人公をまた似た様な悲劇が襲う。
 二人目、三人目と犠牲者を増やし、精神を病んで行く主人公。 

 ある時、母親に素行の変貌を咎められた主人公はこれまでの犯行が露見してしまったものと勘違いし、精神的に追い詰められた末に母親に向かって銃弾を発射する!

 …ところがその瞬間、時間が止まり、銃弾は空中で枝豆に変貌して母のおでこに「ぴちっ」と当たっただけだった。

 そこに
「妖精」が登場して「ごめんごめん。大事なアイテム置き忘れちゃった。あ、死んだ人は全部戻しといたから」と銃を回収してどこかに去ってしまった。

* * *
機動戦士ガンダム00 MISSION COMPLETE 2307-2312
機動戦士ガンダム00 MISSION COMPLETE 2307-2312

 …どうです?アホらしいでしょ?
 というか
台無しです。これでは「夢オチ」以下

 脚本というかフィクションの世界では何でも出来ますが、長い時間と期間、試行錯誤を経て幾つか「セオリー」めいたものは存在します。
 その内の一つが
「絵空事から現実になるのはいいが、現実から絵空事になってはいけない」というものです。

 しかし、
今回の「劇場版ガンダム00」がやっているのは正にこれです。

 確かに、人目に付かないように他の人類とはかけ離れた超兵器たるモビルスーツを200年前に構想し、実際に製作していたというのも荒唐無稽には違いありません。
 が、「宇宙怪獣現る」と同じレベルかと言われればそれは違うことは説明の必要はありませんね。
機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン オフィシャルファイル vol.1 (Official File Magazine)
機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン オフィシャルファイル vol.1 (Official File Magazine)

 確かに太陽炉を持ち、一方的に強いソレスタルビーイングのガンダム達も荒唐無稽には違いありません。
 ただ、そこは一応「リアル」という前提でこちらはお話を見るわけです。
 そして、「巨大ロボット」などというものが存在する以上、ある程度リアリティは後退させて視聴することになる訳ですが、その
「リアルの境界線」をどの程度に引くのかはクリエイターの匙加減一つな訳です。

 補給もメインテナンスもちゃんと必要で、現実の政治経済にも影響を受ける程度の「リアル」なものとしてこちらは認識しています。
 この
「リアル」の境界線は一度引いたならば“決して”後退させてはなりません
 分かりやすく言うと「え?そういうのもありなの?」とは可能な限り思わせるべきでは無いんですね。

機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン オフィシャルファイル vol.2
機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン オフィシャルファイル vol.2

 そりゃ「どう見ても死んだ様にしか見えないのが実は生きていた」程度ならまだ許容範囲でしょう。
「ガンダムSEED」シリーズほど酷くありませんが、こうした描写は「ガンダム00」にもかなりありました。

 ロックオンのいまわの際の一撃を食らったアリーアル・サーシェスや爆煙の中からわき腹を押さえて出てきたワンリューミンなど。

 そういうことじゃなくて、「こういう『前提』で話を進めますよ」というのを
劇中で「変更」するのが許されない、と言っている訳です。

 「最初からそういうもの」ならばどんなに無茶をやってもいいんです。そりゃ面白いかつまらんかは別の次元のお話として存在はしますが、少なくとも「アンフェア」だったり「馬鹿馬鹿しくなったり」はしません。

機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン オフィシャルファイル vol.3 (Official File Magazine)
機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン オフィシャルファイル vol.3 (Official File Magazine)

 例えば劇中で「密室殺人」が起こったとします。
 所謂(いわゆる)「不可能犯罪」と言う奴で、一体犯人はどんなからくりでこの殺人を実行して逃げおおせたのか?
 というのが読みどころで、ミステリ作家は生涯に一度は密室殺人トリックに挑戦すべき、という格言もあるんだとか。

 ところが、途中まで地道な科学捜査に警察の組織捜査でじりじりと犯人の手掛かりに迫っていたのが、中盤を過ぎて
「実は犯人は超能力者で『壁抜け』が出来た」とやられたらどう思いますか?

 恐らく「ああ、『壁抜け』まではありなんだ。では、その『壁抜け』は何センチの壁まで可能で…」と言う風に「リアリティを後退」させて真面目に考えてくれる読者は皆無でしょう。

 
「はぁ!?何じゃそりゃ!そんなの馬鹿馬鹿しくて読んでられるか!」と本を叩きつけるでしょう。

機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン オフィシャルファイル vol.4 (Official File Magazine)
機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン オフィシャルファイル vol.4 (Official File Magazine)

 もしもこれが
最初から「超能力」前提だったならばかなり面白いと思います。
 実際、ファンタジー世界で「密室で竜が殺された」という謎を解くファンタジーという「殺竜事件」という怪作もあります。

殺竜事件 (講談社ノベルス)
殺竜事件 (講談社ノベルス)

 それに、毎度そういう「荒唐無稽」な前提を元にミステリーを展開するのを作風にまでしている西澤保彦氏なんて異端のミステリ作家も存在してます。
 それもこれも「最初からリアリティの境界線」をしっかり描いているから許されるのであって、「途中変更」は絶対にしていません。

七回死んだ男 (講談社文庫)
七回死んだ男 (講談社文庫)

 漫画・アニメの「デスノート」が荒唐無稽でありながらあんなに面白いのは「許されるルール」を明確に意識してそのからくりを最大限利用する構造だからです。

DEATH NOTE (デスノート) 全12巻 完結セット (ジャンプ・コミックス)
DEATH NOTE (デスノート) 全12巻 完結セット (ジャンプ・コミックス)

 というか、「デスノート」などは特にそうなのですが、最初は「これさえあれば何でも出来る魔法の小道具」の様に思われていたものが、
実際に運用してみると結構細かいルールが存在することが分かってくる様になっています。

 つまり、僅かながら
「リアリティの境界線がリアル方面に前進」しているんですね。
 フィクションである以上、「リアルとの境界線」は
「前進」はしても決して後退してはなりません

 それはどんなものでも同じです。
 
いい年こいた大人が見る映画だろうが、子供の絵本だろうがこのセオリーは揺るがないのです。

機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン オフィシャルファイル vol.5 (Official File Magazine)
機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン オフィシャルファイル vol.5 (Official File Magazine)


第2章 宇宙怪獣というアイデアは新しいのか

 スタッフが胸を張るのが「ガンダムで宇宙怪獣というアイデアはこれまでに無かった」「だから新しい」「反発も大きいかも知れないが、それを敢えてやる」ことでした。

 ではそもそも
「宇宙怪獣」というアイデアは新しいのでしょうか?

 思い出していただきたいのですが、わが国の「ロボットアニメ」は最初の頃はどういう筋立てだったのか。
 それは正に
「何故か日本語を使う宇宙人が繰り出してくる敵怪獣を毎週倒す」話だったのでは無いでしょうか。

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 このアイデアの限界は非常にフォーマットとして優れていたらしく、「仮面ライダー」などの等身大変身ヒーローや、「ウルトラマン」のような巨大化変身ヒーローにも使われます。
 「ウルトラマン」シリーズは敵怪獣が統一された組織に率いられている訳ではないですが、基本的には同じことです。

 「ジャッカー電撃隊」に始まる「戦隊もの」も、このアイデアがまずあってそこに「集団」要素を持ち込んだものですし、基本は「人間以外の敵」を倒すというものでした。

 「マジンガーZ」や「ゲッターロボ」、「ライディーン」などは正にそうですね。まあ、地底人だったり宇宙人だったりしますが、要するに「人類以外の知的生命体」ということでひと括(くく)りにして構わないでしょう。何故かみんな日本語を喋るし(この手のアニメでは、恐らく言葉が通じないであろうアメリカ人と日本人が普通にしゃべっていたりするので、俗に「アニメ語」などと言われる)。

 ここに楔(くさび)を打ち込んだのが「機動戦士ガンダム」でした。

機動戦士ガンダムDVD-BOX 1 特典フィギュア付(完全初回限定生産)
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 宇宙人云々といった設定を一切排除し、敵は全て人類としました。
 のみならず、宇宙に暮らす人々と地球連邦政府との軋轢といった政治的背景をしっかり設定し、毎回沸いてくるだけだった「敵メカ」に「量産型」という恰(あたか)も工業製品のような概念を与え、現実へと近づけた訳です。
 まあ、
この辺の解説は活字好きのアニメファンならもう目にタコが出来るほど読んできたことでしょう。

 つまり、私の言う
「リアル方向への前進」が「作品の前提」として行われている訳です。

 一度も「ファーストガンダム」を観たことが無い人は勿論のこと、十数年前に観たっきりで見返していない人は、今はレンタルショップにもDVDが全巻並んでいるのでこの機会に是非見返して欲しいのですが、恐らく
このジャンルではもうできることは無い(やっても意味が無い)ほどにリアル方面を描ききっています

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 ホワイトベースはその貧相な体制ながら敵の補給の隙をついて急襲をかけます(この時登場するのが、型が古くなり退役して補給任務にしか使えなくなっている「旧ザク」)。つまり、素人集団のホワイトベースでも腕利きの軍人集団のジオン軍に対抗する手段はあるわけです。

 その他にも多数の民間人を抱え込んでいるので食料に「塩」が足らなくなって塩を含む湖に補給しに立ち寄ったりしますし、これでもかとばかり「補給」と「メインテナンス」の描写が続きます。ある時などガンサイトの調整が甘くて照準がずれることが戦闘中に発覚してアムロがパニックになる描写まで。

 ここでポイントになるのが
「リアルにする」ことが即(すなわ)ち正義ではないということ。

 本当に
リアルであればあるほどいいのであれば、人型の巨大ロボットなどというマンガみたいな代物ではなくて、戦闘機・戦車が活躍する軍記ものがガンダムを凌ぐ史上空前のヒットを飛ばしていなくては話がおかしいわけです。

アニメンタリー決断 DVD-BOX
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 だってリアル度合いでいえばガンダムの非じゃないし、戦場にカラフルな髪の美少女が跳梁跋扈することもないし、ホストみたいなイケメンがずらりと並んだりもしませんから。

 では何故そうなっていないかというと、誰もが子供じみたアイデアだと思っていた「巨大ロボット」を「リアル方向に前進させた」ことで説得力が増し、見ごたえがあるものになったからです。

 
「ロマン」と「リアル」の絶妙なブレンドですね。
 「ロマン」だけでは絵空事に過ぎて馬鹿馬鹿しい。
 かといって「リアル」一辺倒では息苦しくて楽しくない。

 だからその両者のいいところを取ろうと言うわけ。

機動戦士ガンダムOO セカンドシーズン オフィシャルファイル vol.6 (Official File Magazine)
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 「機動戦士ガンダム」の功罪は沢山あります。
 「アニメ第二の波」と言われ、空前の大ヒットとなったことで、以降アニメは精力的な本数が作られ、ブームに乗って様々な試行錯誤が行われるハネムーン期間となります。

 劇場版の公開にあわせて行われた「アニメ新世紀宣言」に居合わせた人の話を聴くと、単にアニメの劇場版が公開されたというだけではなく「これから新しい時代が始まるんだ!」という興奮・高揚が余りにも心地よかったとのこと。良く分かります。

 では「罪」は何か。

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 アニメは何もマニアのためのものではなくて、基本は子供のものですので「販促アニメ」「幼児アニメ」みたいなものは決して滅びません。
 ですが、
80年代には「リアルロボットではくてはロボットアニメにあらず」といった風潮が蔓延していました。

 では、それらの試行錯誤によってアニメは面白くなったのでしょうか。
 少なくとも全ての実験が成功した訳ではありません。

 「Z」「ZZ」は富野監督自らの手によるものですが、話が複雑になりすぎてファーストガンダムですら子供にはシャアが「いいもん」なのか「悪いもん」なのか分からないのに、戦況など把握出来ないほど複雑化し、それだけならばともかくファーストにあった爽快感が影を潜め、陰々滅滅とした「人間ドラマ」めいたものを見せ付けられてうんざり。

 「太陽の牙ダグラム」は政治的背景をしっかり描こうとする余り、主人公のメカ一機が活躍したところでどうにもならないことばかりが浮き彫りに(実はこれは初代ガンダムでも同じ)。

太陽の牙ダグラム DVD-BOX The 25th anniversary memory
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 最大の問題は、「リアルロボット」の実質的な元祖たる「機動戦士ガンダム」が何故面白かったのかの考察が出来ていないまま「リアルにしておけば面白くなるだろう」と「表面だけリアル」な作品が乱発され、「マジンガーZ」みたいな「毎週怪獣が出て来る」作品を小馬鹿にする風潮を生み出したことでしょう。

 はっきり言いますが、
作品において「リアル度合い」は面白さの二次的要因に過ぎません

 
つまらんリアルロボットもあれば、面白いスーパーロボットだってある

 当たり前のことです。

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「黄金パターン」「勧善懲悪」だからといってベタでつまらんわけではありません

 この頃のアニメは下手すると主人公が不幸になったりする「深く考えさせられる人間ドラマ(失笑)」みたいなのが「作劇場の実験」として高く評価され、「痛快な勧善懲悪」みたいなものを貶(おとし)める風潮すらありました。
 もっとも「ゲージュツ作品」を有難がり、「娯楽作品」を貶(おとし)める「評論家」たちの風潮はアニメに限らず、実写映画や小説などでも似た風潮は常にありますが。

 私に言わせればこんなもの
「裸の王様」と一緒です。

 周囲が「リアルロボットが面白い」と言っているから自分も面白いと言わないと恥をかく…みたいな。
 「え?Zガンダムの良さが分からないって?君はアニメファンとしてはモグリだなあ。あの暗さがいいんじゃないか」とかいう会話がアニメサークルでは飛び交っていたんでしょう(憶測)。
 そこで「リアルだか何だか知らんが、つまらんものはつまらん。おれは「勇者ライディーン」の方が好きだ」と言えない風潮があったのではないかと。

勇者ライディーン DVDメモリアルBOX(1)
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個人的には後半が好きです。

 結局のところ80年代の「リアル(風)ロボットアニメ」の乱発は進化の袋小路に落ち込んで失速してしまいます。まあ、私に言わせれば毎回二体の合体変形バンクに決めポーズまで持つ「ガンダムZZ」が「リアルロボット」を名乗るのもどうかと思いますが。
 ところが、突如意外すぎる形で「ロボットアニメ」いや「アニメ」そのものが復権を果たします。

 こう書けば皆さんお分かりですね。
 そう1995年10月4日(金)(テレビ東京18:30)放送開始の「新世紀エヴァンゲリオン」です。
NEON GENESIS EVANGELION vol.01 [DVD]
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 エヴァについてはブログで書き尽くしたのでぐだぐだ繰り返しませんが、なんとこの「新世紀エヴァンゲリオン」は進化の果てに行き着いたのか
「先祖がえり」を果たしていたのです。

 そう、「毎回登場する怪獣を退治する巨大ロボット」アニメだったんです。

 あれだけリアル云々、人間ドラマ云々、政治的背景云々とやっていて突如「マジンガーZ」超えてまで「ウルトラマン」まで後退してしまいました。少なくとも「設定の前提」においては。

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 ただ、冷静に分析してみると決して単なる先祖がえりではないことが分かります。
 というのは、「ウルトラマン」の時には大して問題にならなかった
「怪獣がどこから現れて、何の為に襲ってくるのか」を大上段に掲げ、それを考察する形になっていたこと。

 個人的にはこれは
「偶然の産物」だと思っています。

 今では余り話題に上ることも無いのですが、「エヴァ」の原型に近い企画の情報については当時のオタクは皆一様にそれなりの知識を持っていました。

 例えば初期には主人公は少女の予定だったみたいです。綾波と同じキャラではなかったみたいですが、その内「母である巨大ロボット」という設定にあわせたのか少年に変化するのですが。

NEON GENESIS EVANGELION [DECADE] NEON GENESIS EVANGELION [DECADE]
アニメ主題歌 LOREN & MASH ARIANNE 高橋洋子 林原めぐみ
CLAIRE ASKA MISATO 三石琴乃 宮村優子 Rei

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 私が持っていた情報から推測するに、「毎週やってくる敵」をオタク趣味全開の凝り凝り描写で粉砕し続けるだけ(いい意味で)の痛快アニメを目指していたようです。
これはこれで物凄く面白くなったとは思います。話題にもなったでしょう「トップをねらえ!2」くらいには。

 ただ、現在に“真剣過ぎる”姿勢で「ウルトラマン」をやろうとするなら「どこから、何故やってくるのか。目的は何なのか」を考えざるを得ず、「どうやら隠された目的があるらしい」と風呂敷を広げて行くことになります。

 元々大した理由なんて考えていない…というか、現実的に考えれば万人が納得する理由なんて“絶対に”設定出来るはずもないのに、そんな風呂敷ばかり広げ続けた結果、
大破綻を引き起こしてしまい、皮肉なことにそれが空前の話題性を獲得する要因になります。

Refrain of EVANGELION
Refrain of EVANGELION TVサントラ 亜矢 晶姫 高橋洋子 LOREN & MASH ARIANNE

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starsエヴァのドラマに入り込めます。
stars鷺巣詩郎氏の名曲
stars劇場版観た方、CR好きな方に
starsいいです☆
starsエヴァのサントラベスト版という感じ

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 話を「機動戦士ガンダム00」に戻します。
 結論から言うと
「怪獣が現れた」アイデアは全く新しくありません

 それどころか、むしろ
「テレビアニメの企画の原型」とすら言って良いクラシック(古典)的なアイデアです。

 「第三の波」と呼ばれかけた「超時空要塞マクロス」ですら敵は異星人です。ガンダムの3年後に放送された『最新のオシャレアニメ』においてすらそうなのです。最も、あれはテーマとして「異文化交流」がありますが。

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 それをブラッシュアップする形で先人は試行錯誤を重ね、そして「機動戦士ガンダム」においてそのアイデアを大胆に転換することで一時代を画することに成功します。

 今回のガンダムで
「ガンダムに宇宙怪獣出しちゃ駄目だろ」というのは、脊髄反射で出てきたありがち意見に感じられるかも知れませんが、「ガンダム」シリーズの持つ歴史的な意義を考えれば当然の反応です。

 「ガンダム」シリーズは長い日本のアニメ文化の中にあって「より現実的な方向に寄せてみる」路線の象徴なのです。当の本人が「怪獣よくね?」ということの意義は決して軽いものではありません。


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 そして、「リアルロボット」風でありながら「怪獣と戦う」アイデアは「先祖返り」「原点回帰」をほぼ理想的な形で実現した「新世紀エヴァンゲリオン」という先達があるので、残念ながら「二番煎じ」の謗(そし)りは免れますまい。 

 それこそ、「エヴァ」が存在しない状態でこれをやったならばある程度歴史的意義もあったでしょうが、起こりえない過去を振り返ってもせん無いことです。

 「怪獣」そして「侵略者」の描写が古めかしいアイデアの再生であるならばその描写、捉え方が時代に即したものになっているか?という点が問われることになるでしょうが、「侵略パニック映画」で見たような場面ばかりで
これといって目新しさは感じませんでした

 そりゃお馴染みガンダムマイスターたちがハリウッドのB級アクション映画みたいなシチュエーションに巻き込まれるのは楽しい妄想ですが、それは同人誌などの二次創作でやっていただきたい。本家がやったんでは困ります。

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 結論としては、アイデアとしてはまず新しさは全く無い。
 そして、「古いアイデアのリバイバルする」ことに関しては先人が既にいる。
 更に、そのアイデアが現在的なものになっているとは言い難い。

 前章で言及した要素もまとめます。
 「地域紛争への武力介入」からスタートした物語の完結編が
「宇宙怪獣との戦い」ではリアルの境界線が目一杯後退しており、これはセオリーに反する。
 私がメインスタッフにいてこのアイデアを聞かされたら
全力で身体を張って阻止しますね。

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 一応「絵空事を現実にするのはいい」というセオリーを使えば
「宇宙怪獣に見えたが、実はそれはアロウズの生き残りが開発した兵器だった」(リアル方面への前進)とやれんこともないのですが、一回「宇宙怪獣現る」でリアルから後退してしまっているので挽回には至らないでしょう。

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 方法があるとしたら、
「変更しない」ことを堅持すればよかったんです。
 つまり、
完全新作の劇場版ガンダムとして「今度のガンダムは宇宙怪獣と戦うぜ!」とやれば問題ありません
 
少なくとも「地域紛争への武力介入」が「宇宙怪獣から地球を守る」になっちゃうよりずっといい

 元々「宇宙怪獣と戦うガンダム」が「00」の企画の原型だったそうですが、
だったら最初からそれをやるべきでした。

 
全50話にも及ぶテレビシリーズの総まとめになって初めて宇宙怪獣持ち出すというのは最悪の選択です。

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 そして…企画者の皆さんも「エヴァ」を意識していないはずはないのですが、最も大切なことを忘れています。
 それは
「エヴァ」は話題性云々はともかく、「作品」としては「きちんと完結することが出来なかった」ということを。

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第3章 ならば侵略ものSFとしてはどうか

 何度も書きますが、私は
「ガンダムに宇宙怪獣が出てきた」から駄目と言っているのではありません

 確かに「ガンダム」で怪獣が出て来ることに心理的な違和感はありますが、それならば「ガンダムW」にだって「ガンダムX」にだって違和感はあります。というか
「違和感」基準で言うならば「Gガンダム」など許せません

 ただ、
「最初からそういうものだ」と思っていれば受け入れられる訳です。
 これは好み云々ではなくて「姿勢がフェアかアンフェアか」という話です。

 「機動武闘伝Gガンダム」はこれまで散々言われてきた様に「アニメとしては面白いが、これをガンダムと言われると困る」と評される作品でした。
 ただ、それでも最初から「ガンダムファイト」という前提があるのでその意味では姿勢としてはフェアです。
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 私が言ってるのは
「途中で方針を変えるな」ということと「変えるならせめてリアル方面に変えろ」ということ。

 
前半の展開が「機動戦士ガンダム」で後半が「機動武闘伝Gガンダム」だったらみんな怒り狂うでしょ?

 でも前半が「機動武闘伝Gガンダム」で後半が「機動戦士Zガンダム」だったら「これまでにない新しい試み」でみんな賞賛するんじゃないの?

 実際、前半にバカをやっていても後半シリアス展開になれば何か許されるみたいな雰囲気ってあるでしょ?某「機動戦士ガンダムZZ」とか。

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 「機動戦士ガンダム00 劇場版」はこのセオリーに二つとも反しています。
 全50話も掛けて積み上げてきた総決算が劇場版なので、「続き」と解釈して構わないでしょう。それが突如方針転換。しかも荒唐無稽な方向へ。
 これは面白いとか面白くないとか、許すとか許さん以前にアンフェアで愚かです。

 ただ、それも百歩譲って許したとします。
 つまり
「劇場版」として「侵略SF」「ガンダム対宇宙怪獣」路線を受け入れたとします

 個人的にはこれまでで最も現実的で「08MS小隊」ほどではないにしろミリタリー路線に近かったガンダムや登場キャラクターたちが
宇宙空間で怪獣と戦っている場面なんて見たくなかったんですが、それもいいことにしましょう。

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 では「侵略SF」「ガンダム対宇宙怪獣」として
“純粋に”その出来はどうなのかを簡単に検証しましょう。

 過去にの「侵略SF」の代表作だとスピルバーグによってリメイクされたH・G・ウェルズの「宇宙戦争」がありますね。
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 有名すぎる作品なのでネタバレしますが、この時の「火星人」たちは圧倒的な優位を持ちながらなんと地球の病原菌で死滅してしまいます。
 映画「インデペンデンス・デイ」も圧倒的な武力を背景に宇宙人が襲来しますが…まあ、意外すぎる手段で倒すことに成功します。

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 既に散々比較されている「トップをねらえ!」ですが、圧倒的なサイズ差のある宇宙怪獣に対し、「ガンバスター」という「秘密兵器」を出してきて真正面から打ち負かすことに成功するのです。

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 「巨大すぎる」「数が多すぎる」敵を出すのも結構ですが、出すなら出すで
「どう倒すか」まできちんと考えて、納得できるものにしないと娯楽作品としては手落ちでしょう。

 確かに、もしもハリウッド作品だったらこんな感じになったかもしれません。

 圧倒的戦力差に追い詰められる人類!
 ところがそこに味方も予想していなかった新兵器が!
 新政府に反政府組織、そしてアロウズの生き残りまで人類が一丸となって新兵器を敵本体に叩きつける!
 そして圧倒的勝利!
 喜びに沸く人類!
 エンドロール!

 …こんな感じになったんではないでしょうか。

 まあ、確かに馬鹿馬鹿しいし、心にも残らないかもしれませんが娯楽作品としての意義はあります。


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 何しろご覧になった方はお分かりの通り、大きさにしても数にしても余りにも圧倒的な物量差なので
全く勝てる気がしません

 だってガンダムって人間同士のチンケな紛争を鎮圧させるための
十数メートルの人型ロボットですよ?
 それが数え切れないほどの大群に、半径三千キロの本体に対してどうにかできるんでしょうか?

 私は「ああ、多分これは
最後にガンバスター出てくるな」と思いました。アホですな

 というか、こちらも対抗して全長数千メートルの巨大兵器繰り出さないと勝てません。そういうレベルです。

 で、結局どうなるか?
 なんと
人類は勝てませんでした
 少なくともすっきりした形では。

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 戦いの最中(さなか)、主人公がタイムトラベル(?)をして敵本体と交信したことによって突如戦闘は停止し、
巨大な「花」らしき不気味なオブジェが宇宙空間に浮かんで、後はエピローグに突入

 相手がまともに交信することも意思を交わすことも出来ない「知的生命体」であるSF作品なんて幾らでもあります。

 それを「紛争への武力介入」という作品内ギミックとして使い続けた本作品が、「人と人は分かり合えるか」を「裏テーマ」に持っていたことは本編を一気に見通した身としては何となく分かりはするんですが、それを
極めて象徴的かつ観念的に「何となく」描写することで決着とするというのは、方法論としてはありですが、少なくとも明言しないことによるリスクは覚悟していただきたい。

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 「意図的に」分かりにくく演出された映画「2001年宇宙の旅」は未だに
製作者の意図とは全く違う誤解を受け続けていますが、それも仕方が無いでしょう。あんなに分かりにくいんじゃ。

 とにかく、各国の政治的意思や陰謀に振り回された
軍人たちが「宇宙怪獣」との戦いの中で次々に戦死していく様は本当に悪夢みたいでした。

 
なんじゃこりゃ!?という世界です。「こんな現実認めんぞ!」といって亡くなった軍人さんもいましたが、正にそんな感じ。

 それでいて「彼らの犠牲の元に敵を殲滅し、人類は生き残った」と言うわけでもない。

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 宇宙怪獣は確かに突然出てきた訳ではありません。
 セカンドシーズンの「イオリア計画」を聞くと、
「来るべき知的生命体」とコミュニケーションするための準備みたいなことをほざいており、本気でそこまでやってしまったら馬鹿馬鹿しくなるなあと思いつつそこでシリーズそのものが終わってしまいましたのでその危険性は避けられたと胸をなでおろしていたところです。


 
「人類以外の敵との戦いの末、ムチャクチャになってそのまま終わり」作品の系譜ですね。
 同種の作品としては、当然「新世紀エヴァンゲリオン」の劇場版があるでしょう。
 あの作品においては「人と人がわかりあう」ためには結局完全に同化するしかなく、主人公二人を残して
人類は全員液状化して混ざり合ってしまうという凄まじいエンディングでした。

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グロ&トラウマ注意

 恐らく原型はグレッグ・ベアの「ブラッド・ミュージック」あたりでしょう。

ブラッド・ミュージック (ハヤカワ文庫SF)
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私はエヴァ劇場版を観て真っ先にこれを思い出しました。

 個人的に「ブラッド・ミュージック」は漫画版「風の谷のナウシカ」の終盤に登場する「粘菌」にもインスパイアを与えていると思います。

ワイド版 風の谷のナウシカ7巻セット「トルメキア戦役バージョン」
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 調べて初めて知りましたが諸星大二郎の「生物都市」の方が「ブラッド・ミュージック」より10年早いんですね。

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stars緻密で幻想的、そして驚愕、
これが諸星大二郎先生の世界です。
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stars人類の未来と、終末

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 また、結局銀河系の生命が全て死に絶える衝撃のラストを持つ「伝説巨神イデオン」も先祖です。


伝説巨神イデオン DVD-BOX PART-2 ニュープリント・デジタルニューマスター版
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 無論、そのまま人類は全滅しました…では流石に
全国の劇場がリアルに炎上しているでしょう。

 そうではなくて、刹那によって書き換えられた過去によるものなのか人類は「異星体」とコミュニケーションを持つことが出来、
人類の半分が「イノベイター」へと進化、星の海に向かって航海を始めるのだった…という結末になっています。

 星に匹敵するほど巨大生物などと言うアイデアがあるのか?と思われるかもしれませんが、そうしたものが登場する作品は幾らでもあります。
 代表的なところではロバート・J・ソウヤーの「スタープレックス」に小惑星サイズの知的生命体が登場します。
 母星が滅びて行く先を探しているなんてのは「ウルトラセブン」に既に登場していますし、使い古されたアイデアです。まさか「ガンダム」でお目にかかるとは思いませんでしたが。
スタープレックス (ハヤカワ文庫SF)
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分厚くて読むのは大変ですが、ムチャクチャ面白く、SF史上に残る壮大なハッピーエンドなので、活字SFになじみの無い方にも超オススメ。劇場版00もここまで行けるポテンシャルはあったんじゃないかと。

 また、人類の多くが「上位種」へと進化するSFというのも数が多いです。
 代表的なのは何と言ってもアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」でしょうね。他には「ボロゴーヴはミムジィ」など。
 ただ、これらの作品は「新たに生まれてきた子供たち」が進化することが多く、「時代に取り残されていく恐怖」を象徴的に表わす作品という側面が強いものでした。

幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))
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 少なくとも言えるのが、リアルでミリタリー路線だった作品がSFの中でも「サイエンス・フューチャー」と呼ばれる「ハードSF」系ですらないSFになって着地してしまったという
脱力感です。

 しつこく繰り返しますが、
最終決戦は何がどうなったのかサッパリ分からんのです。そりゃ何となくは分かりますよ。

 どういう解釈をするにせよ、あの謎の巨大な花が出現した時点で「敵」の攻撃はやみ、
少なくとも人類が即時全滅という悲劇は免れたわけです。
 その段階で戦場で生存していた兵士たちは救出・回収に成功しさえすれば命は取り留めたでしょう。



 「普通に観ていれば当然分かる」ことではありますが、そこはきっちり説明しなくちゃ。くどいくらいに。
 確かに
「圧倒的火力で敵を倒しました!イエェー!」にはならんでしょうが、敵が半ば自滅して偶然助かった…という侵略SFとしての決着の付け方もそれはそれでありだし、趣も深いのでそれならそうときちんと言ってほしい。

 とはいえ、結局それは無理なんですよね。
 私が読み漁った限りではどこも指摘していないのではっきり書きますが、
一番の問題は荒唐無稽系のSFになったことでも宇宙怪獣が襲ってくるトンデモSFになったことでもありません

トンデモ本?違う、SFだ!
トンデモ本?違う、SFだ!

 最後の最後で、
観念的でオカルト世界に突入してしまったことなんですわ。変に宗教的というかカルト的というか。

 「こんな人だとは思わなかった」ではないんですが、それこそ製作者と視聴者とは分かり合えていたと思ってたのに、そういうことだったの?と思わざるを得ません。

 皮肉なことに「人と人とが分かり合えるか」をテーマに掲げるアニメなのに、最後に製作者と視聴者がすれ違ってしまいました。
 もしかして
「身を持って『人と人とは分かり合えない』を体現」したのかな?(意地悪)

機動戦士ガンダム00 4 [Blu-ray]
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 私は何も
「自分の望みどおりの結末じゃないから難癖をつけている」訳ではありません。まあ、そういわれても仕方が無いんですが。

 ただ、
最後を観念的にするというのは猛烈にハイリスクであることは主張しても間違いではないでしょう。

 正直、宇宙怪獣との戦闘が佳境を迎えて以降は映画館の椅子に座って画面を眺めながらも
意識は飛びそうでした。それこそ現実味が全く感じられない。
 演出的にもとにかく敵の数が多すぎるのでメリハリが全く無い。5分前と画面の中で起こっていることが同じ。

 裏テーマがあっても構わないけど、少なくとも「映画内現実」においては我々が現実であると共有認識が出来る程度の出来事が起こるに留めておいて、
「テーマ」は「深読み」させるくらいが落としどころでしょう。

機動戦士ガンダム00 5 [Blu-ray]
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 それがあんなことになるから、画面が
「カルト宗教」になってしまった。それも性質(たち)の悪いそれです。

 はっきり言いますが、ガンダム云々というよりも、
純粋に娯楽作品として非常にすっきりしないものにしかなっていません。
 だって、大上段に構えて「人類の存亡を賭ける戦い!」をやっておいて
最後どうなったか分からないじゃあ締まらないこと夥(おびただ)しい

 我々が見たいのは第一に娯楽であり、製作者の観念的メッセージではありません。歴史的名作は無理なくそれを融合させていますよ。
 ファーストガンダムもニュータイプがどうしたの、人と人とが分かり合えるか云々は言っていても、
現実的な戦場としてはまっとうに終戦しています

 
宇宙空間に巨大なオブジェが出現して尻切れトンボなんてことは無かった。

機動戦士ガンダム00 6 [Blu-ray]
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 冷静に考えてみてください。

 どう考えても明らかに
人工的なフォルムを持った巨大オブジェが出現して、そのままハッピーエンドになる作品ってあると思います?

 「風の谷のナウシカ」は
「昆虫というのは巨大化させるだけで怪獣になりえる」ことを端的に表現した傑作でした。
 蟲(むし)だけでなく、劇中に登場した余りにも巨大な植物になにやら「根源的な恐怖」を感じませんでしたか?私は感じました。

風の谷のナウシカ DVD コレクターズBOX
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 全長数千キロに渡る巨大オブジェなど、はっきり言って
吐き気を催す気色の悪さです。

 あれを「美しい」とは到底言えない。
 
あれは人類最後の二人になったシンジとアスカの背景に横たわる真ん中で断ち割られた巨大綾波と同じものです。

 「じゃあどうすれば良かったのか?」という文句が聞こえてきそうですが、腹案はありますけどそれを開陳したからどうなるものでもありますまい。少なくともガンダムであることを除外しても
ちょっと受け入れがたい「生理的な気持ちの悪さ」があり、「上手く説明できないけど、何かすっきりしない」と感じている観客の皆さんの感情は案外その辺にあるのではないか?と推理してみたまでです。

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 ふう…。
 とりあえず言いたいことは言えました。
 個人的に非常にもやもやしていたのですが、
言いたいことの半分くらいが言えたので多少すっきりしています。

 そりゃ我らのスメラギさんが「地球到達まであと3ヶ月」みたいなSF映画みたいな(そうだけど)台詞を言ってくれるなんて、
「それ何て同人誌?」みたいな夢の展開です。
 ただ、それもこれもきちんと終結してから言えること。

 冷静に考えてみると、もしも無事に宇宙怪獣を撃退したとしても「…やっぱ無いよな」という感想に落ち着きますね。うん。

 感想を求めてネットの海をさまよっていらした方が多少腑に落ちるなり、溜飲を下げていただければ幸いです。

 そして、個人的に「ガンダム00」の劇場版が持つ最後の、そしてもしかしたら
最大の問題が次の問題です。

機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン 1 [Blu-ray]
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第4章 最後はそれでよかったのか?

 「機動戦士ガンダム00」は毎回エンディングの後に短いエピソードが入って次に続くというフォーマットを守っていました。
 非常に効果的であったと思います。

 呆然とエンドロールを眺めている私は、先日公開された新エヴァの映画と同様、
すぐに席を立つ気はまるでありませんでした。

 果たして「後日談」が始まるわけですが、なんと
時代は50年後にかっとんでおり、そこには齢(よわい)81歳になり、視力を失った上に声優さんまで交代した(爆)マリナ・イスマイールさまが!

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 そして、通称「メタル刹那」と呼ばれる
人間なんだか何なんだかサッパリ分からない存在となった刹那がやってくることになります。

 セカンドシーズンのエンディングの最後に印象的に花畑の中に鎮座するガンダムが描かれていましたが、それを再現して今度こそ終了…となりました。

 ある意味「トンデモSF展開」「何が起こったんだかサッパリ分からんラストバトル」「すっきりしないエンディング」「下手なカルト宗教みたいな観念的決着」よりも
この方がずっと問題でしょう。

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 別に
好きなキャラがおばあちゃんになったから怒っているとかそんなんじゃありません。そりゃマリナさまいいなあとは思っていましたが、それとは別次元のお話です。

 「決着から数十年後に無事に帰還する主人公」は散々指摘されている「トップをねらえ!」のラストを髣髴(ほうふつ)とさせます。
 ただ、あちらは誰が見ても明らかなハッピーエンドなのですが。
 マリナさまが視力を失っているのは、自分はおばあちゃんになっているのに若々しい容姿の刹那を見せ付けるのは酷だと言う判断なのでしょう。

トップをねらえ! Vol.2 [DVD]
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 元々「機動戦士ガンダム00」は時間の進み方と言う意味では
過去のどのガンダムよりもダイナミックでした。

 劇中に4年もの中断期間を挟むのは史上初だそうです。ブレイクピラー事件の後も4ヶ月経過したと言っていましたし、テレビシリーズ終了から劇場版まで劇中でも2年の年月が経過しているという設定ですから、リアルタイム組はシンクロを味わったことでしょう。

 ただ、全てが終了してから50年後をエピローグで描くというのは幾ら「非宇宙世紀もの」(本筋のガンダムとはパラレルワールド)とはいえ大胆です。

機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン 4 [Blu-ray]
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 ちょっと考えてほしいのですが、この「機動戦士ガンダム00」は「消費されるアニメ作品」としてある意味手堅く、
非常に成功した部類に入ると思われます。

 キャラの人気も抜群ですし、熱心なファンもついている。
 イベントの映像もあれこれ観ましたけど、どの会場を見ても黄色い声援が絶えません。
 DVDのアマゾンカスタマーレビューも一部に酷評あれど、全体的には概(おおむ)ね好評といえます。

 その「成功の要因」はどの辺にあったのでしょうか?
 本編が良く出来ているのは言うまでもありません。それ以外の付加価値としてはどうだったか。
 やはり
「感情移入できる魅力的なキャラクターたち」という部分が大きいのではないでしょうか。

機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン 5 [Blu-ray]
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 実は私は、エヴァのコラムでも書きましたが、こと「新世紀エヴァンゲリオン」に関してはそれほどキャラに感情移入していなかったことが最近になって分かりました。

 エヴァファンはアニメのファン層の中でも最も熱狂的に入れあげる傾向がありますが、それはアスカに共感したり綾波の境遇に思いを馳せたり、シンジと同調したりするからなんですね。
 私はそういう見方は遂に出来なかったので、怒りはしていつつも「どうしてそこまで」と別のファンを冷ややかに見ていたところがあります。

 では「機動戦士ガンダム00」はどうだったか?
 結論から言うと
かなり感情移入していました

 これは別に恋愛感情とかと言うわけではなくて、
愛着が沸くというか…表現が難しいな。
 セカンドシーズンが始まって、
お馴染みのキャラクターたちが次々に終結して行く展開には燃えたでしょ?

機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン 6 [Blu-ray]
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 そして、やっぱり沙慈とルイスですね。
 ガンダムへの復讐のことばかり考えているルイスはアロウズ(要はナチスとかティターンズのイメージでしょう)に入隊し、モビルアーマーを駆って主人公チームに襲い掛かります。
 そこに偶然乗り合わせた沙慈はお互いに殺しあわざるを得ないシチュエーションとなってしまい、その
「切ないすれ違い」がセカンドシーズンを牽引する大きな動力源でした。

 ファーストシーズンで明らかに本編から浮いていたお笑い要因だったのに、この急展開。過去のガンダムシリーズでは
この手の人物は大抵非業の最期を遂げます

 「ZZ」でプルが死ぬと夢にも思っていなかった私は若かったなあ。

機動戦士ガンダムZZエルピー計画 (アニメージュ文庫)
機動戦士ガンダムZZエルピー計画 (アニメージュ文庫)
「エルピー・プロジェクト」と読みます。今みたいに全キャラのキャラブックが発売される様な時代ではないのに主役でもない彼女単体で一冊発売されたのはいかに人気だったかが伺えますね。
本当に最初はやかましいにぎやかしキャラだったので、戦死したときには「サザエさん」でカツオが戦死したくらいの衝撃を受けました。

 どう考えても偶然殺してしまいそうな儚げな二人を
「どうにかして幸せになってくれ!」と祈っていた視聴者は少なくないでしょう。

 というか、明らかにそういう風に思うように仕向ける脚本の仕組みになっており、正に脚本家の掌の上で踊らされてしまいました。
 しかしまあ、それこそ
「視聴者冥利に尽きる」というものでしょう。

 最終的にルイスは生き残り、地上の病院で闘病生活を送りつつ幸せな生活を送るに至ります。マジで
「脚本家さんありがとう!」と言ってしまいたい。

機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン 7 <最終巻>[Blu-ray]
機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン 7  <最終巻> [Blu-ray]

 元々は「沙慈をかばってルイスが戦死」という案もあったそうです。恐らく過去のガンダムシリーズを考えるにいつそうなっても不思議ではありません。
 これは別にキャラに恋してるとかとは違うけど、明らかに「愛着を持って見ている」見方です。

 ちなみに、ラジオ番組「ソレスタルステーション00」は沙慈・クロスロード役の入野自由さんがパーソナリティを勤めていますが、その内4回にルイス・ハレヴィ役の斉藤千和さんがゲスト出演していますので、
このカップル好きは必聴です。

ソレスタルステーション00 第18回 
ソレスタルステーション00 第19回 
ソレスタルステーション00 第65回 
ソレスタルステーション00 第66回 

 演じていての余りの切なさや、
どうしても沙慈への感情が演技から抜け切らず、音響監督に指導されるくだりとか震えます。

機動戦士ガンダム00 スペシャルエディションI ソレスタルビーイング [Blu-ray]
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 個人的に「テレビシリーズを観終わってから劇場版を観るまで」の
2日間は私と「機動戦士ガンダム00」の蜜月期間だった訳ですが(短いな)、そこまでのめりこんだきっかけの大きなものとして、2008年1月に特番として放送された芸能人が「機動戦士ガンダム00」を語る番組の存在があります。

 その中で芸能人の皆さんは、「名場面」としてソーマ・ピーリス改めマリー・パーファシーとセルゲイ・スミルノフ大佐の別れの場面を挙げていました。
 私も単なる敵役に過ぎないと思っていたスミルノフ大佐が『漢気』(おとこぎ)を見せる非常にいい場面で好きです。

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 印象深かったのが、直後にマリーを抱きしめるアレルヤの
手の動きがヤバイ(良すぎる)と女性陣がキャッキャと盛り上がりまくっていたこと。

 視点が違うのは当然として、個人的には「女性でもそういう風に作品にのめりこむんだな」とそこに驚きました。
 いや、これは別に馬鹿にしているわけではありません。
 つーか普通の
女性ってキャラ萌えしているオタク男を冷ややかに見下しているイメージがあるじゃないですか。

 というか、むしろ女性の方がそういう風にのめりこむみたいですね。

 恐らくこの場面に感情移入する女性視聴者はピーリスに自らを投影するのでしょう。

 貧相な認識で恐縮なんですが、私なんぞ女性が「ガンダム」と名の付くアニメを観るイメージがどうしても抱けなかったので、明らかに台本に書かれていない、
自分自身が熱狂してアニメを観ていてゲストに呼ばれた方々の語りに心底感動しました。「mag・net」(NHK BS2 日曜23:50〜00:35)には熱心なガンダムファンの女性なんてわんさと出てるのを観てたのにね。

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 これはホントに一例ですが、この他にも印象的な場面は無数にあり、名前の付いたキャラはみんな厚みを持って描かれています。
 私はお酒が弱いというか殆(ほとん)ど飲んだことも無いのでスメラギさんの酒豪ぶりには付いていけませんけど、一緒に飲みたいと思いますし、女王様としての適性には欠けますがマリナ・イスマイールさんも素敵な女性です。


 特番に話を戻します。

 その特番においては、ゲストたちはこの他にも格好よく電波台詞をキメまくるグラハム・エイカーに爆笑したり、
「機動戦士ガンダム00」を肴に本当に楽しそうに語っておりとても良い番組でした。

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 つまり、現代においては
アニメは単なる消費物を越えて「コミュニケーションツール」なのですね。

 私はそれこそ一週間前に始まったにわかファンですけど、それでも
同じ趣味を持つ人々との語らいが何より楽しいのは良く分かります。

 もしも、
劇場版を観るのがもう少し遅かったら「「機動戦士ガンダム00」おもすれー!「機動戦士ガンダム00」サイコー!関連グッズ全部買っちゃうぞ!ブルーレイも全部買っちゃうぞ!」になっていたかもしれません。

 少なくとも、サイドストーリーの漫画くらいならば全部買っていた可能性は大です。

機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン(1) (KCデラックス)
機動戦士ガンダム00 セカンドシーズン(1) (KCデラックス)

 セカンドシーズンのラストは「世界は一応統一され、前政権のアロウズみたいな無茶も今のところしていないが、
これからも何かあれば俺たちはすぐに駆けつけるぜ!」という風に終わっています。

 超兵同士にして
二重人格カップルのアレルヤとマリーもどうやら上手く落ち着いたらしく二人して仲良く旅を続けていますし、バカップルから一転して視聴者の誰もが祝福するカップルとなった沙慈とルイスの順調なその後も描かれ、そしてスメラギさんを始めとしたプトレマイオスクルーも全員健在。

 更には、国を再建したマリナさまや、反政府ゲリラから一転して為政者に返り咲いたシーリンさん、マネキン大佐とコーラサワーに至っては結婚式までが描かれて
「まさしくハッピーエンド」でした。

機動戦士ガンダム00 2nd.season 1 (角川コミックス・エース 146-7)
機動戦士ガンダム00 2nd.season 1 (角川コミックス・エース 146-7)

 はっきり言って私は
劇場版は丸っきり不要だったと思います。

 理由として、
「これから先」へと想像の羽を広げる余地を完全に奪ってしまったから。

 恐らくプトレマイオスクルーはあの戦闘で全員生存はしているでしょう。

 しかし、ティエリアと刹那は行方不明のままだし、
あの戦闘で誰が生き残ったのかは劇中では何の言及もありません

 普通に考えればあの大混乱の中宇宙に放り出された戦士たちを全員回収して回るのは相当に困難を伴います。

 まあ、それでもいい意味で「アニメだから」という理由で助かったということにしても、
その後が描かれるのはなんと50年後。それもマリナ姫ただ一人です。

機動戦士ガンダム00 1 (角川コミックス・エース 146-4)
機動戦士ガンダム00 1 (角川コミックス・エース 146-4)

 プトレマイオスクルーで
スメラギさんがマリナと同い年なのであの時点で生存していれば81歳。イヴァンさんなんて劇中で50台半ばですからまあ、間違いなく老衰でお亡くなりになっているでしょう。

 他のクルーや登場人物だってのきなみ
生きていても70台です。あの可愛いフェルトもルイスもマリーもみんなおばあちゃんです。生きていればね。超兵が寿命が長いのか短いのか何とも言えませんけど。

 かろうじて外宇宙航行艦にその名を残すスメラギさんがこの世界である程度の影響力を持つ有名人であろうことは読み取れますが、それこそあの戦いで戦死したことによるものかもしれません。何も分からないのです。

 繰り返しますが、アニメは「作品」であると同時に「コミュニケーションツール」です。
 この世界を使ってみんな二次創作で遊んだり、そこまでしなくても
想像の翼を広げて楽しく妄想するためにあります。

 そう言い切っちゃうのは不遜かな。

機動戦士ガンダム00 2nd.season (3) (角川コミックス・エース 146-10)
機動戦士ガンダム00 2nd.season (3) (角川コミックス・エース 146-10)

 そりゃ確かに
人間誰しも老けますし、いつかは死ぬでしょう。

 しかし、それを
劇中で見せる必要があるのか。それも事故死とかではなく、「逃れようの無い運命」としての老衰の果てを。

 物語のテーマの必然として、数十年先に再び現れる必要があったのであるならば、やはりこの劇場版は成立しえなかったとしか思えません。

 例えば「天空の城 ラピュタ」のラストシーンで全てが終わった後「あの時はこんな様子だったんじゃ…楽しかったのお…」と言って
息を引き取るパズーの老衰した姿を映したらどうだったか

 そりゃ当然の帰結として恐らくはそうなるでしょうよ。
 ただ、
映画の幸せな終わり方としては未来に希望が欲しいじゃないですか。

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 恐らくパズーとシータはこれからシータの地元に帰り、あれこれあって幸せな一生を送るでしょう。二度とラピュタを巡る大冒険みたいなことは起こらないでしょう。
 
あのラストが爽やかなのは「この愛すべき登場人物の人生はこれからも続いていくんだなあ」と思わせられるからであって、幾ら「幸せでした」って言われようがいざ人生が終わるところまで映画で描いてもらおうとは思いません。

 4人のガンダムマイスターの中で恋愛フラグが立ちそうで立ち切らなかった刹那ですが、劇場版の時点で一応二十代半ば。マリナ姫は三十代になったばかりです。

 歴代のガンダムで最も年の離れた主人公とヒロインで、しかも三十代となるとこれまた史上初なんだとか。セイラさんとかあれで17歳だもんなあ。

TOMORROW
TOMORROW

 普通に考えれば、一国の王女とテロリストの恋愛が成就するわけがありません。それこそ大スキャンダルです。

 しかし、セカンドシーズンのラストの様に「(一応決着はついたけど)これからも俺たちは戦うぜ!」で終わっていれば
「もしかしたら」という含みは残せるじゃないですか。

 ところが、
「絶対に続編が作れない」状態にしてシリーズを完全に終わらせてしまいました

 そりゃ「挿話」とか「あそこに至るまで」のサイドストーリーを描くことは出来ますけど、
結局マリナ姫と刹那は50年に渡って会うことすら適わなかったんだなあ…というのが分かっているというのは、ルイスと沙慈の「すれ違う男女」とはまたまるで違う切なさがあります。

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 というか、私は
このラストを観て物凄くどよ〜んと沈んだ気持ちになりました。

 パンフレットには「歴代ガンダムでもっともハッピーエンド」などと書かれていましたが、流石にそれはないでしょう。

 こちとら「劇場版」という
「お祭り」に参加して一時の憂き世を忘れて楽しみに来ているのに、どうして「人生の黄昏」めいたものまで意識させられにゃあかんのか

 「機動戦士ガンダム00」も「ガンダムSEED」あたりと比べても非常に激しい戦闘が繰り広げられたシリーズで、数多くの犠牲者を出しましたが、彼らの多くは若くして散っており、だからこそ切ないわけです。

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 そりゃ
何が何でも痛快な娯楽作にしてお客を楽しませんかい!というのは傲慢に過ぎるというのはいち観客として分かっています。

 クリエイターが自分の作品を「すぐに忘れてしまう消費作品」にしたくないから、印象に残る幕切れにしたがる衝動もよく理解できます。

 ただ、観客ってのはいい意味でそこまでの「心に残る作品」は求めてないんですよ。魅力のある作品であれば、例え能天気なほどのハッピーエンドだったとしても残りの部分は想像力で埋め合わせするものです。

 あの「50年後」のみならず「老けたマリナ姫」まで見せてしまったラストは「観たくないものを観せられた」と言う風に私は拒絶反応を示した訳ですが、その拒絶反応はそんなに非難されるべきことではありますまい。悪いかよって。

 それこそ劇中に登場した軌道兵器の名前、「メメント・モリ」(フランス語で「死を忘れるな」の意味)ではありませんが、それはアニメでわざわざ指摘されて見せ付けられなくても結構です。

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 そりゃ現実から目をそむけるのは良くない。
 でも、意識しなくてもいい状態で無理矢理意識することが何が何でも正しいとは思いません。
 
寿司屋の職人が「ああ、今うんこしてきました。臭かったですよ。で?何握りましょうか?」と言うみたいなものです。

 人はいつか死ぬからって年がら年中そんなことばかり考えていても仕方が無いでしょう。

 幾らテーマの為だからとはいえ、
あの可愛いキャラクターたちが恐らく全員生存していないであろう状態までラストを描く必要があったのか?
 そこまでして必要なラストだったのか。

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 私は本気で
沙慈とルイス、アレルヤとマリーがいちゃいちゃしているだけのエピソードとか見たいですもん。いやホントに。

 既存アニメの二次創作とかついぞやってないけど、
沙慈とルイスの入れ替わりアホ短編とか書いてみようかな(爆)。
 少なくとも次のコミケで「00本」を探すのは間違いありません。

 でも、それをやってしみじみ面白いのは、
彼ら彼女らが死に物狂いの死闘を、修羅場を生き抜いてきたからなんですよね。

 沙慈とルイスは
あの後どんなアホな掛け合いをやっても視聴者はしみじみと眺めることでしょう。
 つーか何だかんだと私も相当入れ込んでますな。いかんいかん。

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 あれだけキャラクターグッズ売って、イベント開いて、「キャラクターへの愛着」で展開してきたんですよね?
 そりゃ商業主義で作品を歪めろとか、贔屓のキャラを活躍させないと許さないとは言いません。
 ただ、お金を頂く娯楽作である以上、
もう少しサービスしても罰(ばち)は当たらないんじゃないでしょうか
 セカンドシーズンのラストはああいう風に出来たんだから、劇場版でもそうすればよかったんです。私はそんなにムチャなことを言っているとは思いません。

 唯一、メリットがあったとすれば、私みたいなにわかの目を覚まさせる効果くらいでしょうか。
 わたしみたいなにわかのワーキングプア一人が冷める冷めるくらいなら別にどうということもありませんけど、相当熱心なファンもすっかり「100年の恋も冷める」状態になりゃせんかと心配ですわ。

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最終章 まとめ

 何でも、今日本のアニメ・漫画が世界で大いに受けているのだとか。
 普通なら人種差別的な観点から「日本の漫画やアニメなんて」と思われてるんじゃないかな?と考えてしまいそうですが、何しろ自我が固まっていない幼児期に親しむことが多いらしく、その影響力は物凄いみたいです。

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 ただ、
「劇場アニメ」ということになるとちょっと事情は違う気がします。

 
日本のアニメといえばそれはイコール「テレビアニメ」と言い切って構わないと言えると思います。
 というのは、日本の「劇場アニメ」は一部の例外を除いて非常に特殊な形態をしているのです(ブームを起こしたアニメという意味ね。販促アニメや幼児向けアニメなどは別)。

 それは「テレビアニメが無いと成り立たない」こと。
 第一の波「宇宙戦艦ヤマト」、第二の波「機動戦士ガンダム」、第三の波「新世紀エヴァンゲリオン」(1997年当時)のどれも「劇場版」への到達をその頂点としていました。

 しかし、
見事な位にそのどれもが「テレビ版の総集編」でした。

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 最初のヤマトの熱狂は大変なものでしたが、徹夜組だった人の話を聴いたことがあるのですが、一番落胆したのは
「総集編かよ!」ということだったそうです。これは案外聞こえてこないエピソードです。

 ちなみにこれ以外にもテレビの総集編を「劇場版」として公開した例は沢山あります。
 社会的事情として、まだビデオデッキが普及する前であったため、
もう一度観るには再放送でも無い限りは劇場に行くしかなかったということがあるでしょう。

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 スタジオジブリの一連の映画が日本アニメ史上でも特異な地位を占めているのは
「劇場版オリジナル」であることです。
 その一編、2時間ほどを観れば全てが分かる様になっているのです。
 だからこそあれだけ爆発的に受け入れられた訳です。

 「千と千尋の神隠し」が実はテレビシリーズ45話の総集編だったりしませんからね。

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 対して「機動戦士ガンダム」はテレビシリーズは43話。正味でも全部観ようと思えば17時間は掛かります。
 「ターミネーター2」は確かに大いに受けましたが、あれが
テレビシリーズで全50話だったらこんなに受けたでしょうか?

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 劇場版オリジナル映画を作るアニメ監督はジブリを除けば非常に数が限られており、少なくとも
テレビアニメに比べてわが国の「劇場用アニメ」は産業として確立していないのは間違いないでしょう。

 何度も言いますが「テレビアニメ」は別ですよ。あっちは何だかんだと今も定期的に傑作・名作が生まれ続けています。

 では、
どうしてこうなるのか?
 日本の『典型的な』アニメというのはどうしてテレビ向けであって劇場向けでないのか。

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 それは「消費の論理」が違うからだと思います。
 
日本の典型的なアニメは漫画的であり、「映画」はその構造からして「小説的」なのでかみ合わないんです。

 少し説明が必要でしょう。
 例えば貴方が「こち亀」こと「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のストーリーを説明して欲しいと言われたら何から説明しますか?
 恐らく、まずは主人公の両津勘吉の説明に大半を費やすでしょう。
 で、ストーリーは?

 …その両さんがあれこれやるんだよ…で終わりです。

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 では「らんま1/2」のストーリーだったら?
 「ドラゴンボール」だったら?

 要するに
日本の漫画は「キャラクター」が中心で、まずは何は無くともキャラクターがいなくては話になりません。

 極端なことを言えば
ストーリーすらどうでもよくて、その漫画の説明をしようとすれば主役や脇役の説明をすれば殆(ほとん)ど事足りてしまうんです。

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 そういう消費の仕方を読者にしてもらおうとすれば、
まずは「登場人物に馴染んでもらう」ことが必要になる訳です。

 
この頃の日本の漫画は連載が非常に長期化することが多いのですが、恐らく一旦定着したキャラクターを終わらせて新たに「読者との関係」を構築するのが困難だからでしょう。

 編集家の竹熊健太郎氏は
「週刊少年雑誌から読みきりが消えた」というブログ記事を掲載なさいましたが、これはある意味当然の帰結です。

 「読みきり」ということは「お馴染みのキャラが活躍」というアプローチは出来ませんから、勢い
アイデアやストーリーが命になるのですが、今の漫画ファンが求めているのはそういうものではありません

マンガ原稿料はなぜ安いのか?―竹熊漫談
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 例えばですけど、「ドラゴンボール」の主人公の名前を覚えていない読者がいると思いますか?
 まあ、まずいません。

 「キン肉マン」の主人公は誰ですか?
 最近の漫画だと「ワンピース」の主人公の名前は分かりますか?

 漫画と主人公のキャラクターは切っても切り離せません。
 当たり前と思われるかもしれませんが、「小説」では必ずしも当たり前ではありません。

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 松本清張の小説の主人公の名前を覚えていますか?どれでもいいので。
 では、夏目漱石の小説の登場人物の名前を言ってみてください。

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 …恐らくすんなりは出てこないでしょう。
 でも、
小説を読むことそのものにそれほど支障はありません
 これはとりもなおさず
小説が「ストーリー優先」の構造をしているからです。

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 「映画」でも同じです。「プレデター」の主役の名前をご存知ですか?
 え?シュワルツェネガーだろうって?
それは中の人というか役者の名前。役名は「ダッチ」です。覚えてないでしょ?でも楽しむ分には問題ありません。

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 よく「ライトノベル」を定義付けるのに苦労しているみたいですが、私に言わせれば説明は簡単で「キャラクター優先」…つまり、漫画と同じ構造…の小説であることが「ライトノベル」の最大の特徴です。

このライトノベルがすごい! 2010
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 「涼宮ハルヒの憂鬱」の主人公は誰でしょう?
 まあ、これはタイトルロールなので正解が出てしまっていますが、主役の名前がタイトルになっている時点で既に「漫画的」ですよね。
 「フルメタル・パニック!」の主人公は?
 相良宗介ですね。これも難しくない。私はライトノベル方面に明るくないので余りすらすら出てきませんが、主人公の名前が誰なんだか思い出せないライトノベルは珍しいでしょう。

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 話を戻します。
 つまり、
日本のアニメは「漫画」の様にキャラクターに愛着を感じている視聴者がだらだらだらだらと毎週観るという構造にはバッチリ嵌(はま)るのですが、ストーリー優先でキャラクターをその都度使い捨てる構造は非常に苦手なのです。

 現在「けいおん!!」なるアニメがアニメファンの間では非常に盛り上がっていますが、これもまた「キャラクター優先」構造の強みを最大限に活かした形でしょう。
 「キャラ萌え」という風潮もこの延長線上にあります。

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 わが国にもそうした風潮に逆らって毎回違うキャラクターで独立したお話を紡ぐ監督さんがいらっしゃいました。
 今敏監督ですね。
 先ごろ急逝なさってしまいましたが、今監督のアニメがどちらかというとアニメファンには受けが悪く、アニメファンでない一般の映画ファンの方に受け入れられた事実は興味深いです。
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 ならば、日本のアニメはストーリーらしきものもロクに無いが、「何となく楽に観られる」お気楽な娯楽だというのか!?といわれてしまいそうですが、
はっきり言うとそう言うことだと思います。

 しかし、それは別に恥ずべきことではないでしょう。
 それは「特色」「特徴」というべきで、ストーリー優先で毎回2時間で綺麗に決着を付けられる
「小説的」論理の映像作品の方が程度が上だとは全く思いません


 それはカレーとラーメンがどっちが美味しいかという不毛な論争にしか過ぎません。
 どちらにもそれぞれのよさがあり、優劣など付けられません。

 そして、その
「日本アニメ的なよさ」がじわじわと世界を侵食しているのも事実。私が好きでしょっちゅう見返す動画がありますのでご紹介します。
 日本アニメは入るのは大変ですが、一旦夢中になってしまうとその中毒性たるや凄まじいものがあります。



 さて、話を「日本のオリジナル劇場アニメ」に戻します。

 以上の様に
たったの2時間しかない上に、折角作り上げた「魅力的なキャラクター」をその都度放棄しなくてはならない「劇場アニメ」は日本アニメの良さが活かしきれません
 
長距離の選手に無理矢理短距離を走らせる様なものです。

 唯一それに逆らってヒットを飛ばし続けるのがスタジオジブリの映画郡ということになります。逆に言うとここくらいしかない。この頃は細田守監督が台頭なさっていますが、それくらいしか目立つ存在がいないのです。

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 それでも、定期的に映画は製作され続けます。
 日本アニメの敷居が高いのは、
代表作である「機動戦士ガンダム」(TV版)にしても、余りにも視聴時間にすると長いので気楽に薦めにくいんです。
 たった2時間の映画でも人に薦めたってなかなか観てもらえないんだから。


 では、映画ではどうなのか?
 本当にジブリ以外に一つも面白いのは無いのか?

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 ありていに申し上げて
日本の「劇場アニメ」はちょっと問題があるジャンルです。それは「テレビの総集編」軍団にしてからがそうなのです。

 日本のアニメの代表みたいに語られている「AKIRA」ですが、セルアニメの限界に挑戦する映像表現には舌を巻きますが、まあ
一般的に言う「娯楽性」はかなり乏しいといわざるを得ないでしょう。

 
酸鼻を極める残酷描写墓場みたいに静まり返ったBGMも何も無い画面。説明不足で総集編以下のストーリーに極め付けがラストのグロテスク描写ですよ。

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 それでもエポックメーキングな歴史的作品であることは否定しませんが、少なくとも
幼女が悲鳴を上げて押しつぶされて肉塊になる映画を愛着を持って語ることは出来ないなあ。
 ラストも何だか訳が分からないし、友人四人と連れ立って勇んで観に行った夏休みを悪夢のように思い出します。帰りは誰も何も言わなかったし。

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 「プロジェクトA子」や「王立宇宙軍 オネアミスの翼」なども、今観てみると
「一周回って」面白さも発見できるんですが、こちとら娯楽が見たい訳です。
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 それこそ能天気に「スター・ウォーズ」やら「インディ・ジョーンズ」みたいなのを観たくて映画館行くわけですよ。それこそ「劇場版ドラえもん」みたいな健全で痛快な娯楽が観たいのです。
 ところが、少なくとも上記の映画郡は「娯楽作」にはなっていない。

 「天使のたまご」とか「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」なんかは確かに面白いけど、それは酸いも甘いも噛み分けた「通」「マニア」は面白くても一般人は放ったらかしです。
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 理由はよく分からんのですが、あれだけ世界中を熱狂させる「日常生活に密着させる」「キャラクターへの愛着を抱かせる」日本アニメは、
こと劇場アニメともなると人が変わったようにつまらなくなります

 いや、「つまらない」というか
妙に芸術方面に走ったり、必要以上の残虐表現をしたりと「間違った作家性」を発揮して観客を大いに戸惑わせる傾向があるのです。

 「劇場版 X」などは本当に酷くて、
全編に渡るスプラッタ・ショーに世界が破滅して終わるエンディングは観終わった後軽く死にたくなります

 実はその後作られたテレビシリーズでもそんな調子だったので、原作からしてそうだったりはするんですが。

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star冒頭でいきなり昴流と星史郎が相討ちで消滅して「呆然」とする作品。
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 といってもまあ、
こっち方面のキングは何と言っても「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを君に」にトドメを刺すでしょう。

 とにかく
全編に渡って残虐、グロ表現のてんこもり

 ストーリーも
アンハッピーエンドの極地。実写映像でアニメオタクで埋まる観客の映像まで挿入し、そしてあのエンディングですよ。

 見た人によって賛否がはっきり分かれますが、
間違いなく言えるのはもしもこれが世の中に出た最初の「エヴァンゲリオン」だったならあんなブームにはならなかっただろうということ。

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 あれだけ世界を熱狂させ、実際に面白いテレビアニメを作れる民族が
どうして「劇場版」となるとこうなってしまうのか?

 浅い分析で恐縮なんですが、やっぱり
「肩肘張って」しまうからじゃないかと思いますね。

 「どうせお金払って映画館に来てもらうんだから、気合を入れて見たことも無い凄いものを作ってやるぜ!」みたいな具合に。

 わが国には映画専門に作っているアニメ作家は殆(ほとん)どいません。
 大抵テレビアニメも手がけているクリエイターが映画も作ります。
 何しろ映画専門ということになると、ジブリですら2〜3年に1本しか作れませんので生活が大変です。

 この際具体的に個人的「残念なアニメ映画」を幾つか実名を挙げて並べてしまいます。


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 …流石にこれは説明不要でしょう。前代未聞ではないんですが、未完成で劇場に掛かった問題作。

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 「ファンが観たい完結編」でない映画。劇場版で失敗する典型パターンですな。
 絵柄が違うだけならまだしも、テレビ版と一部設定を変更してパラレルワールドにしてしまうなど「どうしてこうなった」仕様。


「機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-」
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 総集編でない、完全にテレビの後日談の新作アニメ。
 元々
オフビートな作風で視聴者の期待をはぐらかすところのある佐藤竜雄監督の「機動戦艦ナデシコ」は「新世紀エヴァンゲリオン」の放送終了後半年の時期に放送が開始され、第一話で「エヴァ」テレビ版のパロディをやったりと、明確にオタク方面にいい意味で媚びた作品と看做されていました。

 ところが、綾波に明確にオマージュを捧げたキャラ「星野ルリ」に「ばかばっか」という決め台詞を与えるも、序盤で早々に引っ込めたりと「本性」をあらわにし始めます。
 何故か一方の主役とも言えた「ダイゴウジ・ガイ」を3話で死亡退場させるなど、本当にはぐらかし展開ばかり。私は序盤3話は今でも見返す傑作だと思っていますが、それ以降は何ともつかみ所がありません。
 余り指摘されませんが本編エピソードは尻切れトンボで終わっており消化不良気味の作品でした。
 その意味では
決して視聴者を甘やかさない作風ではあったんです。

劇場版 機動戦艦ナデシコ The prince of darkness ホシノ・ルリ フリルスタイル
(1/8スケールPVC塗装済み完成品)

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 ただ、映画ということになればやっぱり期待しますよね。少なくとも物語に決着は付けてくれると。そしてテレビシリーズでは一番盛り上がった「ナデシコクルー」再集結ばりの高揚を感じさせてくれるものと!映画なんですから!お祭りなんですから!
 ところが蓋を開けてみてビックリ。

 
主役のバカップル二人は冒頭で死亡していることが告げられ、キャラの大半は新キャラで全くなじみがありません。

 「ナデシコの映画」を観に来たのに「ナデシコでないもの」ばかり延々と見せられてファンはポカーン。
 お話もなんだか難解でよく分からず、やっと登場したテンカワ・アキトも異形の姿に変貌しており、徹底的にテレビからのファンを突き放すことに。そういえばユリカってどうなったのかな。
 彼女の観ていてイライラするくらいの能天気な明るさが今にして思えば「ナデシコ」そのものでした。
 彼女がクライマックスで再登場してこの映画そのものを覆っているもやもやした暗さを一気に吹き飛ばしてくれれば傑作足りえたかもしれません。この映画にこそミスマル・ユリカは必要だったのではなかったでしょうか。

 
「テレビシリーズを観ていないと分からない」作りなのに、「テレビシリーズからのファンにやさしくない」奇妙なスタンスは正に日本の劇場アニメの典型かと。


 この他にも「微妙な作品」とかは沢山ありますが、どれもテレビアニメの番外編的な位置付けで「独立してそれだけ楽しめる作品」というのは余りありません。

 アニメ映画の一覧表を見ると、どれも「テレビの総集編」「テレビのストーリーに沿って作り直した新作」ばかりで驚きます。
 そしてそもそも「新世紀エヴァンゲリオン:DEATH」の様に、「本編を観ていない人にそれまでのストーリーを説明する」ために存在しているはずの「総集編」と位置付けられていながら、
丸っきり総集編の体をなしていない作品まで存在します。

「エヴァンゲリオン:DEATH」オリジナル・サウンドトラック
「エヴァンゲリオン:DEATH」オリジナル・サウンドトラック

 
「一見さんお断わり」の総集編というのも物凄い話ですが、この「春エヴァ」公開時点ではテレビアニメ版はロクにソフト化が進んでいなかったので、地方のファンは24話までのエピソードを補完する手段がまるで無かった事情すらあります。
 当時はインターネットなどというものは無いに等しい状況でしたから。


 そして、たまに「完全新作の後日談」アニメがあっても今回の「機動戦士ガンダム00」とか「機動戦艦ナデシコ」みたいなことに。


 では、完全オリジナルアニメで独立して楽しめる作品は作りえないのでしょうか?

 ヒントがあるとしたら「ピクサー」の作品群でしょうか。
ディズニー・ピクサー DVDコレクション
ディズニー・ピクサー DVDコレクション

 私はアメリカ…ハリウッドの量産する能天気「無思想エンターテインメント」が悪いとはどうしても思えません。
 映画なんて所詮お祭り、興行です。
 極端なことを言えば
「コンテンツ」なんて上等なものじゃなくて、花火見物みたいなものですよ。


 みんなバカにしてますけど、全世界を相手に商売をして、大多数の観客を満足させ、「あー面白かった!」と言わせて返すノウハウの蓄積ぶりは本当に見事なものです。

 日本のアニメというのは、元々「子供向け」という枷(かせ)に縛られずに、クリエイターたちが自分の好きなように趣味を全開にすることも厭わずに作り上げてきたものです。

 だからこそ「若者」層に熱狂的に受け入れられるんですね。
 それは、一般的に言う「ありがち」展開とは少し違ったところに成立していたのは間違いないでしょう。
 それはそれで多いに結構なんですが、
「お客に媚びない」ことが即(すなわ)ち作家性だったりはしません

 「主張したいメッセージを込めて発信する」のも「クリエイターとして新たな表現に挑戦する」のもいいでしょう。
 ただ、それよりも前に「お客を楽しませる」ということが存在意義としてあってもいいのではないか。

日本のアニメ全史―世界を制した日本アニメの奇跡
日本のアニメ全史―世界を制した日本アニメの奇跡

 思うに、日本の特に劇場アニメに関して言うと、一番最後、映画を見終わった段階で「あー面白かった」と思わせるにはどうしたらいいのか?…という方法論を逆算して設計している様子が余り見られないんですよね。

 なんと言うか与えられた素材と設定を使ってとりあえず作ってみました、というところで止まっている感じ。結果はその時々で出たとこ勝負。どうなるかは分からない。

 だから、殆(ほとん)どの場合は最後まで到達してみたら「何だか分からない」という感想しか抱けなかったり、下手すると
不愉快極まりない気分で劇場を出ざるを得なくなります

 私が理想としているのは、それこそ「劇場版ドラえもん」です。
 それも初期の7作目あたりまで。

「のび太の恐竜」
「のび太の宇宙開拓史」
「のび太の大魔境」
「のび太の海底鬼岩城」(超傑作!)
「のび太の魔界大冒険」(オールタイムベスト!)
「のび太の小宇宙戦争」
「のび太と鉄人兵団」

映画ドラえもん のび太の海底鬼岩城【映画ドラえもん30周年記念・期間限定生産商品】 [DVD]
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 確かに子供向けアニメではあるんですが、私が言いたいことは分かっていただけるでしょう。

 テレビアニメを基調としていながら、「スピンオフ」作品で、「この劇場版が終わったらまたテレビの日常生活に戻る」という前提が存在するためか決して暴走せずしっかりハッピーエンドで終わります。

 ようするに、
この水準のエンターテインメント性は最低限確保するべきなんじゃないですか?ということですよ。

 私は冗談抜きで「面白い映画無いか?」と聞かれて、ネタに詰まったら「ドラえもん観ろ」って言ってますもん。「海底奇岩城」とか「魔界大冒険」とか
マジで面白いんですから!

映画ドラえもん のび太の魔界大冒険【映画ドラえもん30周年記念・期間限定生産商品】 [DVD]
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 はっきり言いますけど、観終わった後に胸糞悪くなる某話題アニメ映画なんぞ、
「ドラえもん」以下ですよ。いやマジで!

 私に言わせれば、
どんな屁理屈こねようとも、最終的に気持ちよく劇場を出られない映画なんぞ下の下です。

 それは「ハッピーエンドでなくてはならない」という短絡的な話ではないですよ?
 それこそ「気持ちのいいアンハッピーエンド」だってあるはず。

 結局、「逆算して作る」というある種マニュアル的というか工業製品的な作り方を良しとしない悪い意味での凝り性というか、職人的な意識が
「計算せずに出たとこ勝負」みたいな作り方の免罪符になっているみたいですが、みんなが好きな映画って結局「面白い映画」でしょ?

 
「天空の城ラピュタ」はあんなに再放送されるのに「AKIRA」はどうしてあれほど再放送されないのかな?


 …結論ですが、結局この「劇場版アニメ」のジンクスはあれほど賢明だった「機動戦士ガンダム00」のスタッフをして払拭することは適いませんでした。

 単に「ハッピーエンドでない」という意味での「アンハッピーエンド」というだけではなく、その後の想像の余地を綺麗さっぱり奪い去ったという意味においても罪深いあのラストを残して我々の前から完全に姿を消すことになってしまいました。

 公開直後の劇場の様子をビビッドに記録したブログ記事がありますのでご覧になってください。


ブログ「今日もやられやく」内
劇場版『機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』公開!
 初日に見に行った人の反応



 つーかね、アニメ映画に本気で腹を立てる一素人ってのもどうかと思うわけですよ。
 どんなに観客が納得しないもの作ったって最終的に作品はクリエイターのものなんだからいいじゃない。
 公開からたった一週間だからこうして感情的になってるけどあと10年後には物凄く評価されてるかも知れないじゃない。

 確かにそう!仰るとおり!
 物語が綺麗に終わって二次創作までは行かなくても勝手にキャラの行く末を妄想する余地が奪われたってクリエイターにキレるってお前は何様?全くその通り。

 しかしね!
 あの面白かったテレビシリーズを観て期待し、それまで基本的にはタダで観られていたものをわざわざ劇場まで来て1,800円を払ってるお客さんに対してそれはないんじゃない?と愚痴を垂れるくらいは許してくださいよ。

 いたいけな小学生の女の子が「アスカがんばれー!」なんていいながらエヴァ劇場版観て泣きそうになりながら帰ったり、上記ブログで読める通り、イケメンキャラに萌えたりしていた女子高生までがポカーンとなりながら終わった後の劇場の椅子に座り込んでる訳ですよ。

 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」みたく終わったあと思わず立ち上がって拍手したくなる「痛快な」お話を「お祭り」であり、そのアニメの総決算たる劇場版で観たい!というファンの意見はそこまで蔑(ないがし)ろにしていいものですか?

 ガンダムマイスターを始めとした全員が大活躍!全員に見せ場があって大興奮!
 そして爽やかなエンディング!それで何か問題あるんですか!?
 確かに一本の映画としてハッピーエンドしか認めないという姿勢ではまともにメッセージも描けない。そりゃそうです。
 しかし、この作品はテレビアニメとして成功したものであり、いい意味での日本アニメ的な構造を根強く持っている作品です。
 その上でなおあの「破滅よりも厄介」な結末にしたのか?

 「どんなムチャやってもキャラグッズが売れ続ける」エヴァを見てそうした訳でもないでしょうがそんなの例外です。
 嗚呼、せめてあのエンディング後の後日談だけでも無かったら…。


 ということです。
 もう残念。ひたすら残念。
 非常に申し訳ないんだけど、私の中では「機動戦士ガンダム00」の劇場版は無かったことにします。無くても十分面白いし、むしろ無いほうがいい。

 そして、よほどのことがない限りはこういう形での「面白かったテレビアニメの劇場版」への期待はしないことにします。そうとでも思わないともう辛くて…。

 そんなこんなで、先ほど到着した「ガンダム00」のラジオドラマでも聴きながら楽しい妄想にふけりたいと思います。

 観終わってからさっきまでの2日間。本当に気持ちのもやもやが全く晴れなかったのですが、毒を全部出し切ってすっきりしました。

 恐らく10年後どころか1年後、一ヵ月後に読み返してさえ恥ずかしさに顔から火が出る様な文章だろうと思います。
 それでも吐き出せてすっきりしました。

 長々とお付き合いいただきまして有難うございます。願わくば同じ思いを共有できますように。

P.S.面白いと思っていらっしゃる方を誹謗中傷する意図はありません。
 そういうかたはそういう方で楽しまれたらいいと思います。
 これはあくまでも私の偏った偏見です。

2010.09.25.Sat.





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