次元管理人フォスター・シリーズ

「フレンズ・オブ・ピス」

作・真城 悠
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イラスト:カマドウマさん


 私は次元管理人フォスターだ。

 時空に暗躍する犯罪者を追って、今日も過去に未来に飛び回っている。

 タイム・パラドックスを引き起こす犯罪者は許せない!

 私はタイム・パトロールとして少々の「修正」を権限で認められている。その時代、位置に相応しくない出来事にはその権限を行使する場合もあり得る。

 私のモットーは「細かいことは気にするな」だ!

 さて、今回の仕事は…



 

 仲の良い三人組みが廊下を歩いていた。中学生の男子三人組みだ。








 その先には男子便所が見えてくる。

 と、目の前に妙な男が立ち塞がる。

「…?」


 突然の来訪者に怪訝な表情をしている三人。その男は場違いなコスプレまがいの妙な銀色の衣装を身にまとい、銀色の銃とも思える物質を掲げているのだ。

「おう。私はフォスターだ」

 突然そんなことを言われても困ってしまう。三人は顔を見合わせた。

「君達はこれからトイレに行くのかね?」

 妙な声質だが日本語だった。

「そう…ですけど」

「ふむ…妙だな」


 三人が「こいつヤバいぜ」と視線を交わす。

「私のメモによると、トイレに連れ立って行くのは主に女子生徒ということらしいんだが…」

 ぺらぺらと「フォスター・メモ」をめくっている。

「うむ、やはりそうだ。という訳で歴史に無い事実は困るな。修正させてもらう」

 といって三人組みの一人に光線銃をビビビと照射する。

「わあっ!」

 と言ってよけようとする生徒。廊下は騒然となる。が、抵抗空しく光線をくらってしまう生徒。


「…?」

 痛くも痒くも無いのに気がつくその生徒。

 が、しかしその全身をむずむずする感覚が襲う。

「お、お前…」

 もう一人が声を掛ける。

「ん?」

 ぐんぐんとその生徒の髪が伸び始める。

「え?ええっ?」

 そればかりが胸がムクムクと膨らんでくるではないか。

「ああ!」

 変化は続き、お尻が大きくなり、お腹がへこむ。すっかり女の子になってしまうその生徒。


「そ、そんな…」

「ふむ。まあこんなもんだろう。しかし制服が不一致だな。これはいかん」

 そう言ってまたビビビと光線を照射する。

 今度はぽん!と制服が歪み、変形して女子のセーラー服に変わる。


 すっかり可愛らしい女子生徒といったいでたちになってしまう。

「な、なんだこりゃあ!」


 驚きの叫びを上げるその生徒。

「うーむ。その言葉使いはいかんなあ」

 またビビビと照射。

「な、なんなのよ…!」

 そう言って思わず口をつぐむ生徒。不随意にその言葉が出たのは明らかだった。

「更に…」

 また照射。

 と、興奮で取り乱していた生徒の態度にしっとりとした落ち着きが宿る。

「言葉使いだけではいかんからな。表面的な態度も直してやったぞ。おお。礼には及ばん。これも当然の仕事だ」

 そう言って残る二人にも光線を浴びせる。


「わーっ!」




「あ…あたし…どうしたのかしら…」

「きゃあ…な、なんですの…これ」

 やはり女子生徒に変わってしまう二人。満足したように頷くフォスター。

「うむ。私は歴史の修正者だ。心配せんでもお前らは生まれたときから女だったことになっている。着替えやその他は用意できているから心配するな。おっと…俺も鬼じゃない。お前らの意識、記憶は男だったときのままにしてあるから大丈夫だ」

 その時、腕時計みたいなものがピーピーと鳴る。

「お、別の所で事件が起こったらしい。ではさらばだ!」

 その場から去ってしまうフォスター。

 周りの生徒はもう三人を見てもどうとも思っていないのか、特に関心を払うでもない。

 見詰め合っている三人の少女。

 不随意なのかどうなのか、三人は仲良く手を繋いで女子トイレに入っていった。

 

 

 どうも意識的なのかどうか分からないが、最近は事実に反する行為をとるものが多くてこまったものだ。が、しかし歴史は守られなければならない。

 歴史を守るため、私は今日も戦いつづけるのだ!