「華代ちゃんシリーズ」26


「結婚式場」

作・真城 悠

*「華代ちゃん」の公式設定については

http://geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan00.html を参照して下さい



 こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。

 最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

 さて、今回のお客様は…。

 

 高作はため息をついた。

 何でこんなことになってしまったのか?

 まあ、それでどうなるって訳でも無いのだが・・・

 高作がいるクラスは麗しき男子クラスだった。

「男子校」では無い。「男子クラス」である。

 この高校は進学校であるが、近所に普通科を持つ高校が少なく、多種多様な生徒が一同に会する傾向があった。

 これがどういう事態をもたらすか・・・それは二年、そして三年と専門化が進むにつれて露になってくる。

 それはクラスの男女配分である。

 理系で物理を含むこのクラスには、当然のことながら女子生徒が極端に少なくなっていた。例年なら数人は存在すると言うことなのだが、今年は少子化も貢献しているのか、遂に二年生の時点で1人の女子もいないことになってしまったのだ。

 まあ、いいや。もともと高校に何か期待するでもないし。

 クラスが離れていても彼女を作る奴は作っているし、そうでない奴は・・・という訳だった。我ながらまずいとは思いつつも、日々の日常生活はどうやって早く帰るかを常に考えている様なものになってしまっていた。

 そういう意味では今日は嬉しい日だった。言うまでも無い。金曜日なのである。明日から休みだと思うだけで心が弾む。

 しかもこの週末には従姉妹の姉ちゃんの結婚式に呼ばれているのだ。

 結婚式そのものには余り興味は無かったが、ご馳走をたらふく食べられるのは魅力だった。ご祝儀だって自分が出すわけじゃないし、ちょっとした旅行と洒落込める。

「おにーちゃん」

「・・・!!??」

 びっくりした。

「おにーちゃん、何してるの?」

 そこには小学校低学年くらいに見える小さな女の子がいたのだ。

 何ともミスマッチな光景だった。

 休み時間とは言え、ここは高校の教室内である。そこに参観日でも無いのに見知らぬ女の子というのはどう考えてもそぐわない。

「別に。何にもしてないよ」

 やる気なさげに答える高作。

「はいこれ」

 その女の子は何やら小さな紙片の様な物を取り出してきた。

「・・・」

 別に断る理由も無いので受け取る。そこには「ココロとカラダの悩み、お受けいたします 真城 華代」とあった。

 何だこれ?まじょう・・・かしろ?

「“ましろ・かよ”ね」

 ぱちっとウィンクする女の子。

 ふーん。

 高作は別に子供が好きでも嫌いでも無かった。が、どちらかというとこういうこまっしゃくれたタイプは苦手だった。「おにーちゃん、おにーちゃん」と目を輝かせている無邪気なタイプの方が子供らしいってもんだ。

「で?」

 促してあげた。

「何かお悩みはありませんか?」

「“お悩み”もいいんだけど、もう休み時間も終わりだよ。先公来るから帰ったほうがいいよ」

「そうなの・・・っじゃあお悩みだけ聞かせて。きちんと適えてあげるから」

 何だろうこの娘は?まあいいか。

 高作は適当にあしらうことにした。

「じゃあ、俺は今すぐ結婚式場に行きたいんだ」

「ふむふむ・・・」

 考え込んでいる女の子。

「それだけでいいの?」

「まあ・・・」

「よし分かった!まかせて」

 またウィンクする。

「それじゃあ!」

 こっちがアドバイスしたからなのか、さっさと教室を後にする女の子。入り口付近で、クラスメートとすれ違う。やはり怪訝な目で見られている。

「おい、何だよあの子?」

 近くにいた岩井が話し掛けてくる。

「さあ・・・」

 本当に知らないんだから仕方が無い。

 その時だった。

「・・・?」

 岩井が自分の胸を押さえたのだ。あきらかに様子がおかしい。

「おい、どうしたんだよ」

「い、いやその・・・か、身体が・・・」

「身体?」

 その時にはもう明らかだった。

 岩井の胸は、醗酵するパンの様にむくむくと膨らんでいたのだ。

「・・・・っ!!」

「な、ナンダァ!?」

 思わず大声をあげてしまう高作。

 もう変化は止まらなかった。

 ぐんぐんと髪が伸びていく。

「あ・・・あ・・・」

 どこからかメガネが現れていた。

 漆黒の学ランはオレンジ色に変わっていった。

 クラスの他のみんなも硬直していた。

「ああ・・あわ・・あ・・・」

 岩井はあまりの出来事に泣きそうな顔をしている。

 見る間にお尻がぷっくりと膨らみ、ウェストがくびれていく。

 髪はショートカットになり、そこにメイクが施されていく。

 ズボンが見る見る間に短くなっていく。剥き出しになったその脚には、肌色のストッキングがかぶさっていた。ズボンは膝上までのタイトスカートへと変化し、そこには上品に着飾った年頃の女性がいたのだ。

 高作は余りの恐ろしさにがたがたと震えた。

 が、驚愕の出来事はこれだけでは終わらなかったのだ。

 目の前にいたもう1人、三雲にも変化が訪れていた。

 彼はその身長を物凄い勢いで縮めていった。

「う、うわあああああーっ!」

 見る見るうちにその慎重は一メートル足らずになってしまう。

 な、何だ?一体何が起こったんだ!?

 そいつはさっきまでの男子高校生の造形から、幼年の女の子へと変貌してしまったのだ!

「だ、だれかぁあああっ!!」

 その声も甲高いキーキー声になってしまっていた。その上綺麗に着飾った“おしゃれさん”になっていた!

 教室内はパニック状態だった。

 が、しかしそこに追い討ちをかける出来事が起こっていた。

 この恐ろしい天変地異から逃れようと出口に向かって殺到する一団。

 あ、しかし何と言うことだろう。入り口は飴の様に溶解し、その形を変えていたのだ。

「ぎゃああああーっ!」

 窓だらけだった教室は落ち着いたグレーになっていた。その上、床には絨毯が広がり、椅子や机は格調のある上等な物へと変貌していった。

 また1人が変貌に襲われる。

 腰が折れ曲がり、皮膚に皺が寄っていく。

「あああ・・・だ、誰か・・・助け・・・て」

 見る見るうちに男子高校生が1人の老婆へと変貌を遂げる。そればかりか香水の匂いをぷんぷんさせ、似合わないきらびやかな服まで着ている。

 それと呼応するようにもう1人がまた皺だらけになっていく。

「お・・俺も・・・あああああー!」

 今度は老年に達した紳士だった。

 腰が抜け、顔面蒼白になりながら後ずさるクラスメート達。

 最早変化は全員に現れていた。

 大勢の人間の学ランがびしっとしたスーツへと変わり、二十代半ばの好青年へと変わっていく。そして半数が同年代の女性へと変えられ、上品な装いの、“大人の女”になっていく。

「お・・・お前・・・その格好・・・」

「お前・・・こそ・・・」

 変わり果てた姿にお互いを見て呆然としている一同。

 ある者は男女問わず子供に、そして壮年に或いは老年へと変えられていった。みんな一様にフォーマルな装いなのが特徴である。

 高作はその時決定的な「雰囲気の変化」に気付いた。

 天井が高くなっていたのである。

「・・・あ・・・」

 そこにはパーツが幾つあるのかも分からない豪華なシャンデリアがぶら下がっていた。

 いつの間にかそこはそれまでの埃っぽい教室とは似ても似つかないものになっていた。

「こ、これって・・・まさ・・・か」

 と、何故か目の前に幼馴染の松本がいる。松本は今や十代の男子高校生ではなかった。二十代後半の凛々しい青年であった。そいつが、遥かに逞しくなったその身体でタキシードに身を包んでいる。

「お前・・・」

 自分の身体を見下ろしている松本。

「・・・俺もよく分からないんだ・・・」

 その時だった。

「・・・?」

 高作の身体を何やら違和感が襲った。

 それは、体験している自分は明らかにわかる位置であった。

「あ・・・ああ・・・」

 自らの身体に起こりつつある異変の正体には、恐ろしいことに察しがついた。それだけに恐ろしかった。

 ゆ、指が・・・

 目の前で指がぐぐぐ・・・と変形していく・・・。

 大雑把で野太かったそれが、ほっそりと美しいそれに変わっていく。

「そ、そんな・・・これ・・・は・・・」

 手を離した胸には、ツンと上を向いた形のいい乳房が育っていた。

「お、お前・・・お、女・・・に・・・」

 い、言うな!

 言われることによって変化が加速する様な気がした。

 それが本当だったのか分からない。しかし、髪の毛はぐんぐんと伸び、肩から背中へと流れ落ちるまでの時間は短かった。

 言わないで・・・くれ・・・

 肩幅がぐぐぐ・・・と縮まって・・・いく・・・。

 体全体がふっくらと丸みを帯びた女性的な身体つきへと変わっていく。それでいて胴体はぺらんぺらんに細かった。

 お尻がむくむくと大きくなる。

「い・・・いや・・・そんな・・・」

 それと同時に全身が白く白く染まっていく。

 どうして?どうして・・・こんな?

 学ランが白くなるだけではなかった。腕が大きく剥き出しになり、手首から先には白い光沢を放つ手袋が被せられた。

 その乳房と身体にむぎゅう、と何かがまとわり付く。

「あっ・・・」

 下半身の生地が爆発的に広がっていく。

「お、お前・・・」

 それがスカートなのはもう分かっていた。

 足が何か窮屈な物に押し込められ、持ち上げられる。それはハイヒールだった。

 腰の部分、スカートに生地が切り替わる個所に可愛らしいリボンが出現する。

 顔全体を、筆の様なものがハタハタとあてられる様な感覚がする・・・。

 そして唇を何かがぬるーっと撫でていく。

「あっ・・・あ・・・」

 紅いルージュが高作の唇を彩っていく。

 まぶたにアイシャドウが乗り、耳たぶにはイヤリングが下がる。

 ふわあっ、と被せられる美しいヴェール・・・。

「あ・・・み、見る・・・な・・・」

 高作は、純白のウェディングドレスを身にまとった美しい花嫁となっていた。

 そればかりではない。さっきまで小汚い教室だったそこは、格調高い披露宴会場になっていた。

「み、みんな・・・」

 ま、まさか・・・

 そうだった。

 ある者は高作の職場の同僚・・・つまりOL仲間となり、またある者は仲人となり、またある者は親戚の子供になってしまったのだ!

 そして、自分自身は花嫁に・・・

「た、高作・・・」

「松本・・・」

 見つめ合う2人は今や男同士、親友同士ではなかった。タキシードとウェディングドレスに身を包んだ初々しい新郎新婦となってしまっていた。

「お、お前と・・・こんな・・・」

 無性に恥ずかしくなって俯いてしまう高作。

「いや・・・」 
近くまで歩み寄る松本。














「構わないさ」

 花嫁となった高作の脳裏に、ほんの少し先ほどの少女のことが浮かんだ。

 どこからともなく湧き上がる拍手。

 だがそれは、どうでもいいことの様に思われた。

 高作・・・いやこれから松本になる女性は伴侶の顔を見上げて恥ずかしそうに笑った。

 

 

 あ、どうもどうも。華代ちゃんでーす。

 なんか久しぶりな気がしますけどどうもです。

 今回は結構大規模でしたね。建物までってのはあんまりやったことが無いので。

 でもあたしにかかればどんなお望みでも簡単に適えてあげますよ。今回も結婚式場に行きたいって話だったからものの五分くらいで行けたでしょ?

 また何かあったら呼んでくださいね。

 そんじゃまー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 小説に後書きを書くのは久しぶりなんですが、今回は書きます。

 私は数あるTS小説の中でも「変身もの」ばかり書いて来ました。そんな中、「集団性転換パニック」というジャンルを提唱したりと色々やってきました。一応今回は「集団性転換パニック」のバリエーション・・・の積りです。実は「フォスター」で同じようなことはやってますが、改めて提唱します。敢えて言えば「状況作り集団性転換」でしょうか。以前「マナー」の中で、家族全員がお父さんもお母さんも子供もみんなスチュワーデスになっちゃう話をやりましたけど、あれの反対とでも言うんですかね。

 後、風祭さんの影響で「異形変身」に興味が湧いたってこともありますね。流石に私にはこれくらいが限界かもです(^^;

 ・・・と言っても他に余り思いつかないけどね。

 それでは皆さんごきげんよう。