「華代ちゃんシリーズ」

「共学」

作・真城 悠

*「華代ちゃんシリーズ」の詳細については

http://www.geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan00.htmlを参照して下さい


 こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。

 最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

 報酬ですか?いえ、お金は頂いておりません。お客様が満足頂ければそれが何よりの報酬でございます。

 さて、今回のお客様は…。

 

 

 教室の中。学生服の男子生徒が大勢騒いでいる。

 大勢で何かを取り囲んでいる男子生徒の山。

「おおー」

「すげえぜ」

「もっとゆっくりめくれよ」

 その中心にあるのは外国製のポルノ雑誌だった。

 健全な男子校の平均的な風景であった。

 

 

 立派な部屋。大きな机が一つ聳え立ち、壁には表彰状を入れた額が回り込んでいる。

 ギイ、ドアが開いて多くの人間がどやどやと入ってくる。

 スーツに身を固めた中年男達である。中には議員バッチを胸に光らせている者までいる。その中に小さな子供が二三人混じっている。

 小林は一通り説明を済ませると、再びその団体を連れ出した。その中の一人の少女がキョウロキョロとあたりを見まわしている。

 

 

 ボン!と蹴り飛ばされるボール。

「おらー!走れえ!」

 体操服の一団が一斉に走り始める。

 激しいスライディングタックル。

 もつれて倒れる生徒たち。

 とっさにこぼれたボールをフォローする別の生徒。

 いきなり大きく振りかぶってシュートする。

 

 

 ドアを開いて小林が入ってくる。

 どっかと立派な机に腰を下ろす。

「元気無さそうね」

 びっくりした。思わずその声の方に振り向く。

「大丈夫ですか?」

 そこにいたのは小学生程度に見える可愛い女の子であった。さっきの引率にいた子供だろうか。

「PTAの人、帰っちゃったよ」

「いえ、いいの。違うから」

 引率で無いというのか。

「はい、これ」

 何かを差し出してくる、興味半分でそれを覗き込んでみる。

 そこには「ココロとカラダの悩み、お受けいたします 真城 華代」とある。

「…?」

「お悩みがあるようでしたらどうぞ」

「はは…お嬢ちゃん、おうちはどこかな?」

「聞いてるのはあたしです」

「…」

 参ったな、という表情の小林。

「校長先生なんですね」

「あ、ああ。そうだが…」

「あの人たちは何なの?」

「…文部省の人たちだよ」

 

 

 目の前に迫る大男、小暮。

 追い詰められる坂本。

「な、何を…」

 言い終わらない内に胸倉を掴まれる。

「るせーんだよ。テメーはよ…。黙って金を出せや」

 ドカン!と威嚇の一撃が壁を打つ。その迫力たるや。

 坂本は真っ青になって震えている。

 どうして…どうしてこんな目に遭うんだ…

 

 

「それで何だって?」

 何時の間にか小林はこの不思議な少女の会話に付き合っていた。

「ふむ…まあ、お嬢ちゃんに」

「華代です」

「え?」

「華代です。あたしの名前」

「あ、ああ。…華代ちゃんに話しても分かるかどうか分からないんだけど…少子化…ってのが進んでてね…」

「ふんふん」

「この辺でも大きな統廃合があるらしいんだ」

「学校の?」

「ああ。それでうちも対象になるらしい」

「そうなんだ」

「私としては忍びなくてねえ…校長になってから長いし…愛着もある」

「難しい依頼ですねえ…」

 ふ、と苦笑する小林。

「あ、笑いましたね!真面目に聞いてるのに!」

「ごめんごめん」

「で?それで悩んでるの?」

「ん?ああ。まあね」

「そうなんだ」

「いや、実はそれを回避する方法があることはあるんだ」

「何ですか?」

「今、それの準備を進めているところさ。これが大変でねえ」

「何なの?」

「うちを共学校にするのさ」

「へ?」

「来年から入試を女子も受け付ける。最近は多いんだよ女子高が共学になったり男子校が共学になったり」

「…」

「女子の制服も用意せにゃならんし」

「なあんだ!そんなことなら簡単じゃん!」

「…?何?」

「それでどうにかなるんでしょ?」

「あ、ああ。しかし…」

 やはり苦笑して言う小林。

「何かい?君に話したら今すぐうちが共学校になるのかい?」

「受けた!まかせといて!」

 ウインクする華代。

 

 

 輪の一番中心で大村は身体に異常を感じた。

「ん…?」

 めくられるポルノ雑誌のページ。

 その異常は止まなかった。胸の部分がくすぐったいような感触がするのだ。

 こっそり自分の胸を見下ろしてみた。

 信じられなかった。その胸がむくむくと膨らんできているのだ。

「え、ええ!?」

「おい、何だよ?どうし…」

 声を掛けた生徒も口ごもってしまう。そして大村もそれどころでは無かった。

 胸に続いてお尻にも異変を感じる。不思議な感覚だった。どんどん大きくなってくるではないか。腰もくびれて行く。

「あ、あああ…」

 そう言っているうちに手がか細く、柔らかく変化していく。サラサラの髪がすうーっ、と伸びて行く。

「な、何だ!?」

 カッターシャツの襟が一瞬にして繋がり、大きく広がる。そして黒く染まって行き、白いラインが入る。その下でシャツが大きくなった胸を締め付ける。パンツはその大きさを全く変え、ズボンが消滅してしまったかのように下半身が開放された。

 とどめとばかりに大きくなった襟の下に真っ赤なスカーフがしゅるっと通る。セーラー服だ!一瞬にして大村はセーラー服姿の女子高生になってしまった。

 陣形が崩れる。

 その災難に見まわれたのは大村だけでは無かった。

 目の前に見なれた顔がある。いや、確かにその顔には見覚えがある。しかしそれは面影を残すのみだった。そこにいた友人たちの半分がやはりセーラー服姿の女子高生へと変貌を遂げていたのだ。

 

 

 激しい激突。

 ボールを巡っての攻防の果て、その二人はグラウンドに倒れこんだ。

 むにゅり。

 妙な感触がついた手の先にあった。

「ん?」

 そこには相手がいるのみ…だったが、何か様子がおかしい。

「な、何だ?…」

 体操服の下にもりもりと何かが盛り上がってきているのだ。

「あ…あ…」

 思わずその胸に手をついてしまっていた生徒も驚愕に声も出ない。

「そ…そんな…」

 むむむ…とヒップが大きくなり、腰がくびれる。髪型はショートカットになり、その顔いかにも可愛らしいそれに変わって行く。すねからは無駄毛の一切が消滅し、柔らかくぷよぷよの「女の子の脚」になる。

 短パンはブルマへと変わり、幼いヒップラインを露にした。

 その場にいた生徒の半数がブルマ姿の女子高生になってしまった。

 試合続行は不可能だった。

 

 

「どうしたよ?早く金を…」

 そこまで行ったところで小暮は口篭もった。坂本の胸倉から手を離し、自分の胸を抱きしめるように覆い隠す。

「お…おお…」

 怪訝な表情でそれを見ている坂本。いずれにせよ助かった。

「な、何だ…これは…」

 苦痛、という感じじゃないな…

 坂本は迷っていた。

 いじめの現場からはとりあえず逃れたのだ。しかし、急激に体調を崩した相手を放っておいていいものだろうか?

 しかし、目の前で起こっている出来事は坂本の理解を越えていた。

 まずは小暮の髪が長く、長く伸び始めたのだ。

「え?」

 それだけではない。ズボンが繋がっていく…様に見える。いくら信じられなくとも目の前で起こっているのだ。信じない訳にはいかない。

「な、何なんだ…これは…」

 なんだ?この可愛い声は?また驚く。そいつはあのゴツイ大男では無かった。「か弱い」という形容がぴったりの少女であった。

 カッターシャツと黒いズボンは、すっかりセーラー服へと変わる。

 あの憎たらしいいじめっ子は、今やセーラー服姿の清楚な女子高生であった。

 握り締めれば折れてしまいそうなその細い手を見ながら言う。

「そ、そんな…」

 つかつかと近寄った坂本は思いっきりスカートをめくり上げた。

「きゃあ!」

 ぶわり、と広がる膝下まであるプリーツスカート。白い下着が目にまぶしい。

 ぺたり、と座り込んでしまう小暮…だった少女。

「だ、誰か…助け…」

 それを見下ろしている坂本。

 立場逆転、だった。

 

 

 だーから回りくどいんですよ。最初から「共学校にしたい」っつってくれればすぐにしてあげるのに。もう。

 とにかく今度の依頼も楽勝!ですね。「発想の転換」って大事ですよお。ま、あたしにかかればこの程度の依頼は楽々ですね。まさしく「中小企業の見方」華代ちゃんの面目躍如って感じですね。あ、自分で言っちゃいけないか。えへへ。

 皆さんも困ったことがあったら言ってくださいね!明日はあなたの街に行くかも知れません。それでは!