華代ちゃんシリーズUnlimited!


「真相」

作・真城 悠

*「華代ちゃん」の公式設定については

http://geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan00.html を参照して下さい


 こんにちは。初めまして。私は真城華代と申します。

 最近は本当に心の寂しい人ばかり。そんな皆さんの為に私は活動しています。まだまだ未熟ですけれども、たまたま私が通りかかりましたとき、お悩みなどございましたら是非ともお申し付け下さい。私に出来る範囲で依頼人の方のお悩みを露散させてご覧に入れましょう。どうぞお気軽にお申し付け下さいませ。

 さて、今回のお客様は…。

 

 

 

 真島は震えていた。

「こんな凄いことがあるかよ…」

 その独り言は誰もいない職場に虚しく響いた。目の前にけばけばしい色の新聞が広げられている。

「おにーちゃん」

 突然声を掛けられて驚く真島。

「どうしたの?」

「君…は?」

 そこには小学校低学年程度にしか見えない可愛らしい女の子がいたのだ。

「どうしたんだい?もう遅いよ」

「いいのいいの。ところでおにーちゃん。あたしはこういう者です」

 と、何やら名刺の様なものを差し出してくる。

「ん?」

 真島がそれを受け取ってみると、そこには「ココロとカラダの悩み、お受け致します 真城 華代」と書かれている。

「へーえ悩み相談?」

「違うの!セールスレディ!」

「セールスレディねえ…」

 真島は苦笑した。

「何でもお悩みを言ってください」

「ふーん…悩みかあ…悩みって程じゃないけど…ちょっとこれ見てよ」

 その「華代」と名乗った少女は真島の隣の椅子に腰掛けて、真島の招きに応じる。

 そこには『古代に人類?』の派手な見出しがある。

「これは?」

「ふむ。よく聞いてくれたね。ここで質問だけど、恐竜は知ってる?」

「うん。映画に出てきた怪獣みたいなのでしょ」

「そうね。最近は映画にもなった。ちなみに絶滅したのは何年くらい昔か知ってるかな?」

「えー?知らなーい」

「約六億四千万年前だ。原因は色々言われているけど基本的には不明。つまりよく分かっていない」

「ふーん」

「そして人類が発祥したのは…まあ諸説あるんだけど大体百五十万年前。つまり全然ずれてる。というか桁が違ってる」

「うん」

「ところがこれを見てくれ」

 と、過去の新聞を引っ張ってくる。そこには穴ぼこにしか見えないものが映っている。

「恐竜と人間の足跡が並んで映ってる写真さ」

「……???どゆこと?」

「まあ、普通では考えられない出来事さ。これまでにも似たような発見は幾つかあったんだ。それに偶然恐竜の足跡の近くに人間の足跡とそっくりの動物が歩いた可能性も考えられる」

「そうよね。それに…あ、ごめんなさい」

「いや、いいよ。何でも言ってくれ」

「あとから人がつけたんじゃないの?」

「いい質問だ。しかし、それは炭素14法という検出方法で分かる。この場合は時代的には一致するけども単なる偶然と分かったけどね」

「ふーん…でも…そういう不思議なことってあるのかなあ…」

「あるよ。わんさとある。いわゆるオーパーツなんて話はごろごろしてるじゃないか」

「オー…何?」

「オーパーツ。その時代にあるはずの無いもののことさ。ストーンヘンジや巨大石球、水晶髑髏…マイナーだけど、ある遺跡からは「電線」に近いものまで発見されてる。これは知らない人も多いだろうけど「電子ジャー」みたいなものまで発見されてるんだよ」

「電子ジャー?」

「ああ」

「でも…そんなものも化石になるの?」

「なるさ。条件さえ揃えば何でも化石になる。近所に犬のフンとか落ちてるの見たこと無い?」

「あるけど…」

「あんなのニ〜三日で無くなっちゃうだろ?それでも恐竜のそれや卵なんかは残ってる。化石となって残ってる恐竜は全体の2〜3%と言われてる」

「え?それだけなの?」

「ああ。…ま、ちょっと話がそれたな。でもね、今度のは本当に大発見なんだよ」

「また腕時計か何かの化石でも出たの?」

「近いね」

「え?」

「何だと思う?」

「えー。わかんない」

「実はね…「新聞」なのさ」

「…「新聞」?新聞って…こういう…新聞?」

 と言ってそばにある「人面魚重態」の見出しの新聞を取り上げる。

「ああ。信じられないけどね。しかも、炭素14法の測定でも確実に十億年は前のものらしいんだ」

「…すごい…」

「それだけならまだいい」

「まだあるの?」

「ああ。実は、この手のオーパーツが発見されると決まって持ち出される定説がある」

「ふんふん」

「えーと…何ちゃんだっけ」

「華代です。真城華代」

「華代ちゃんってグラハム・ハンコックって知ってる?」

「知らなーい」

「とにかくそういうおっさんがいるんだけど、こいつみたく「古代の超文明」みたいなことを言い出す奴が出てくる」

「違うんだ」

「今回ばかりはそのいい訳は聞かないね。何しろ今回発見された「新聞」の化石には「日付」が書きこまれていたのさ」

「日付?…って字が読めるの?」

「読めるも何も日本語…は残念ながら読み取れなかったけど、アラビア数字…いつも僕らが使ってるあれだね…は確定されてるのさ。そして、「日付」らしいものが発見された」

 ごくりと唾を飲み込む華代。

「で、いつだったの?」

「華代ちゃん…今年は何年かな?」

「え…1999年だけど…」

「その新聞には2010年と書かれてた」

 しばし沈黙が部屋の中を覆う。

「ホントに?」

「ああ。今学会は上へ下への大騒ぎなのさ。一応…」

 そういって、「マドンナ痔だった!」とか「デーブ・スペクター日本人だった!」「猪木血だるま」「馬場腰痛」といった新聞を書き分けて1枚の新聞を出してくる。

「こんな日本の地方研究所にも入ってくるデータを元に日付だけプリントアウトして作ってみたサンプルがこれさ」

 それは辺り障りのない一般誌の切り張り…と言っても1枚にまとまってはいるが…だった。ただ、確かに日付だけは「2010年11月15日」となっている。

「へーえ。凄いね」

「まあね。この秘密を解明してみたいもんさ。そいうか、本当の2010年に何かが起こるってころかも知れない。そう考えるだけでもワクワクするね」

「真相を知りたい?」

「ああ。知りたいね。出来ればこの目で確かめたい。それが出来ればノーベル賞もんさ」

「よーし!引きうけた!」

「ん?何だって?」

「おにーちゃん、ちょっと目をつぶって」

「あ、ああ…いいけど…」

 真島はその不思議な少女に促されるまま目をつぶった。しかし、何時までたっても何の声もかからない。

「華代ちゃん?」

 その時、まぶたに強烈な光があたる。

「わっ!」

 驚いて目を開く真島。

「……!!!」

 真島は驚きのあまり声も出なかった。そこはさっきまでの部屋の中ではなく、うっそうと繁るジャングルだったのである。

「あ…あああ…」

 上空でケー、ケーと奇妙な鳴き声がする。

 振り仰ぐ真島。何やら奇妙な鳥が上空を旋廻しているようだ。

「こ、ここ…は?」

 見ると、そのジャングルもこれまで真島が見なれてきたそれではなかった。常緑樹ではなく巨大なシダ類やツタが繁殖している。そして、次の瞬間、目の前に飛んできたものに真島は腰が抜けるほど驚いた。

 それはトンボだった。しかし、その大きさは下手をすると1メートルはありそうなそれである。

「わ、わああああー!」

 腰を抜かしてその場に倒れこんでしまう真島。すると、また空が目に入る。

 あ…あれは…あれは鳥なんかじゃない!翼竜だ!

 めきめきと木々をなぎ倒して、巨大な生物が真島の目の前に歩み寄ってきた。

 遂に真島は自分の身の上に起きたことを悟った。そして、その手にはさっきの新聞が握られていたのだった…