「華代ちゃんシリーズ」34

「プリティ・リーグ」

作・ヒラリーマンさん

「華代ちゃん」シリーズの詳細については

http://geocities.co.jp/Playtown/7073/kayo_chan00.htmlを参照して下さい

WBC(ワールドベースボールクラシック)も佳境を迎えていた。
予選リーグで韓国に惜敗したものの世界のホームラン王・黄監督率いる全日本チームは予選を突破し、ここ野球の発祥の地であるアメリカで決勝リーグに出場を果たした。そしてその第一戦は王者アメリカと当たる事となった。

試合開始後いきなり現役大リーガーのジローが先頭打者ホームランを放ちさらに二回には追加点をあげ、3対0と有利な試合運びと成ったが流石に王者アメリカ、中盤に追い付かれ9回表迄3対3の息詰まる試合と成った。ここで、日本は1死満塁という大きなチャンスを迎え、打席にはクロレラストローズの主砲岩山を迎えた。…と、丁度その頃観客席では…

「うわあっ!!すごいお客さんの数!」と小学生低学年位のおそらく日本人であろうと思われる可愛い女の子が感嘆の声を上げた。
「お嬢ちゃん。野球場に来るのは始めてかね?」と、隣に座っていた上品な老紳士が話し掛けてきた。
「ええ、初めてなんです。こんな広いとは思いませんでした。」と、その少女は流暢な英語で答えた。
「そうじゃなあ野球はアメリカ人の誇りだからねえ。でもそのアメリカ人と切っても切れない野球が中止に追い込まれた事があったんじゃよ」
「えっ?」
「第二次大戦という戦争じゃよ…」
「戦争…」
「戦争で若い働き盛りの男達は次々と兵役に駆り出された。メジャーリーガー達も例外じゃあなかった」
「それで野球が出来無く成っちゃったんですね?」
「ああ、が野球好きのヤンキー共はとんでも無いことを考え出したんじゃ」
「へっ?」
「女子プロ野球リーグじゃよ」
「女の人の野球チームですか?」
「と言っても最初は見せ物的な娯楽要素の高い物として始められたんじゃ。選手達を集めるにしても、若くて美人、スタイルも良い子ばかり集められてな。そしてユニフォームも今で言うミニスカートの様な物をはいて、男の観客達の目を楽しませる事に主眼が置かれておった」
「あらあら…」
「しかし、彼女たちの野球に掛ける情熱たるや半端な物じゃあなかった。下手な男共より凄かった。いつしか我々も彼女達の真摯なプレーに引き込まれ、見せ物としてより、ゲームとして楽しむように成っていったんじゃよ」
「ふ〜ん」
「わしはその頃身体を壊しておってな、兵役に就くことは無かったが、仕事も出来ずに毎日悶々として暮らしておったから野球観戦位しか楽しみが無かった。そういうわしにとって彼女達は正しく天使の様じゃった」
「へえ〜、じゃあお爺さんはその頃の女の人達の野球をもう一度見てみたいんですね?あっ申し遅れました、私、セールスレディやってます。Kayo Mashiro って言います。あいにく、日本語の名刺しか持ってませんので、…でも、お爺さんの願い叶えて差し上げますね…え〜い!!」

…その時グラウンド上の選手達やベンチにいる選手、監督やコーチ陣に異様な事が起こった。みるみる髪の毛が伸び始め、ガッチリした逞しい上半身が首から肩にかけてなだらかになり、肩幅は狭くなりいかつい顔は皆一様にほっそりとしてゆき、さらに腰回りにくびれが出来、それに反して腰回りが張り出してゆく。そしてユニフォームの前ボタンを弾き飛ばさんが如く胸がむくむくと持ち上がり、次にズボンが見る見る短くなり、しかも一本に繋がりお尻が見えそうなくらいの超ミニに変化した。ところが、不思議な事に審判達に変化は起こらなかった。

「「おおおお〜〜〜〜!!」」観客が皆驚きの声を上げた。

…が、試合に集中しているのか、自分達に起こった変化に気づいてない様だった。ショートカットの似合う美女に変身した岩山は同じくブロンドの美女と化したマウンド上の相手投手のストレートをレフトに打ち上げた。飛距離にして充分犠牲フライと成る打球であった。
レフトの赤毛の美女がフライをキャッチした瞬間、全日本の最年少で、すっかりコギャル風美少女と化した千葉バブルガムズの西丘が茶髪のロングヘアをなびかせながらそのしなやかなカモシカの様な脚で短いスカートから下着が覗くのも気にせず、猛然と本塁に突っ込んだ。『4対3』ついに全日本が勝ち越しを決めたかと皆が思ったとき、三塁手の金髪美女が審判に抗議を始めた。

「「ちょっと!!今のタッチアップ、離塁が早すぎるんじゃない?」」
さらにグラマラスな美女と化した米チーム監督が飛び出して来て、主審に猛然と抗議を始めた。
「「どこに目を付けてるのよっ!!今のはアウトよっ!!アウトッ!!」」
紅い気炎にたじたじと成った主審はホームインの判定を取り消し、全日本の得点は認められないという異例のジャッジを下した。
これには全日本の首脳陣も黙ってはいない。真っ先に飛び出したのは、切れ長の目も妖艶な美女と化した黄監督であった。

「「ちょっと!!あんた!!一回下した判定を変えるなんてどういうつもり?男に二言は無いんでしょ!!それでもあんたキ×タ×付いてるの?どうせ家に帰っても奥さんに頭上がらないんでしょ?この役立たず!とか言われて!!あんまり馬鹿げたジャッジするんなら急所蹴飛ばすわよ!!」」…と、放送出来無い様な言葉で主審を罵った。

「「こんなアジアの島国の小娘共に馬鹿にされて…しっかりしなさいよ!!」」
「「なによっ!!ちょっと胸が大きいからってつけあがるんじゃ無いわよ!!」」
両監督の気炎は停まる事を知らず。彼女達に挟まれた主審はただおろおろするばかりであった。

「へえ〜、やっぱりいざと成ったら女の人の方が強いんですね〜。あっそうか!WBCってウーマンズ・ベースボール・クラシックの略だったんですね?」

                                      (完)