―― 華代ちゃんシリーズ・大量TS編 ―― もつれた糸 Zyuka 「華代ちゃん」シリーズの詳細については、以下の公式ページを参照して下さい。 |
「こんにちは、初めまして。私は真城華代と申します。 「だ、だいじょうぶかい!?」 少々大柄な青年は、自分が下敷きにしてしまった小学校低学年くらいの少女をあわてて揺り起こす。 「うーーーん。ピンクの子豚が夏候覇と踊ってる・・・夏候覇の妹は張飛の奥さん・・・」 「・・・三国志の物語を言ったって、しょうがないけど・・・君、夏候覇をしってるの?」 「うーーーん・・・あれ、ここは・・・」 「良かった、気がついたみたいだね・・・」 もう安心とばかりに青年は、少女の肩を離した。 「あ、ごめんなさい。ええーと、ここは・・・」 少女は、きょろきょろとあたりを見渡す・・・ あたりの様子は変だった、ものすごく、変だった。 「あ、あれぇ・・・?」 あたりの様子・・・ピラミッドが見える、エッフェル塔が見える、富士山が見える、パリの斜塔、高速道路、シンプルランド、自由の女神、飛行機、土星、宇宙船間トマト、海、リトルグレイ、韓国棋院、万里の長城、アダムスキー型UFO、何もない平原、USJ、東京ディズニーシー、ハリウッド、スペインの闘牛、その他、ありとあらゆるものが見える。 しかも、それらは微妙に重なり合い、またぼかしあい、ぐるぐる回り、また独立しあい、お互いを映しあい、消滅させあい・・・まるで万華鏡のなかにいるみたいだ。まともに見えるものは一つとして存在しなかった。唯一、青年と少女をのぞいて・・・ 「・・・これって、どうなってるの・・・?」 「ああ、ごめんね・・・どうやら、これは僕の責任らしいんだ。」 青年は、そういって一枚のカードを少女に渡した。どうやら、名刺らしい。 そこには 「七式黄課第1級ウィザード 光波世界アーストローム所属 フォーリス・X・クラメッツ」 と書かれていた。 「あ、フォーリスさんって言うんですね。私はこういう者です」 といって、少女もカードを手渡す。それにはもちろん、 「ココロとカラダの悩み、お受け致します。 と書かれていた。 「マシロ・・・カヨ?・・・ましろちゃん、でいいのかな?」 「華代、でいいです」 「ふーん、華代、ちゃん、か・・・」 フォーリスはそういって、華代ちゃんの名刺を自分のポケットにしまった。 華代ちゃんも、少し迷いはしたが、フォーリスの名刺を小さなポケットに入れる。 「で、華代ちゃん・・・君も、魔法使いか何か?・・・それとも、君の世界では、超能力者って言えばいいのかな?」 「え・・・?」 華代ちゃんは、ちょっとビックリした顔でフォーリスを見た。 「違います、私、セールスレディなんです」 「セールスレディ?」 「ハイ、皆さんの心と身体の悩みを解決します・・・って、言いたいんですけど・・・ここ、どこなんですか?」 「ここは、超異空間だ・・・」 「ちょういくうかん・・・?」 フォーリスは、ちょっと華代ちゃんを見つめ・・・それからゆっくりと話し出した。 「君は・・・いや、秘密にしておきたいなら黙っててもいいんだけど・・・空間移動とか、時空移動とか言う能力を、使えるんじゃないかな?ある場所から違う場所へ一瞬で移動する能力・・・もしくは、未来へ行ったり過去へいったりする能力を・・・」 そこで一息つき、華代ちゃんの返答を待つ。 答えはあっさりと返ってきた。 「はい、そうです。それって、セールスレディには必要不可欠な能力でしょ?」 「へ・・・?あ。いや。そうなの?」 フォーリスは、少々面食らった表情で話を続ける。 「僕も・・・そういった能力は使えるんだけどね・・・君と僕がこんなところに来てしまった理由は、そこにあるんだ。」 「と、いうと・・・?」 「・・・僕の空間移動能力と・・・君の空間移動能力が途中でぶつかり合い・・・混線した、もしくはもつれ合った。」 「あうー・・・よくわからないですけど・・・」 「・・・まれにあることだ、と聞く・・・分かりやすく言えばそうだな・・・二つの道が・・・糸かヒモみたいの、と思ってくれればいい・・・それがこんがらがって、中にこんな空間ができてしまったんだ。そして僕たちはそこに閉じ込められている。」 「もつれた糸・・・?」 周りは、あいも変わらずいろいろな景色がごちゃぐちゃになっている。そこから糸というイメージは浮かんでこない。 「・・・ちぃっ!こんな忙しい時にこんなことが起こるなんて・・・!」 「フォーリスさん、何か悩み事がるんですか?」 「んっ?ああ、まあな・・・」 「じゃあ、私に相談してください。もっとも・・・こんな状況で力になれるかどうかはわからないですけど・・・」 フォーリスはじっと華代ちゃんを見詰める。そして、少しため息をつくと・・・ 「明日、弟の誕生日なんだ」 といった。 「プレゼントを買いに、ちょっとこっちの世界に来ていたんだけど、まさかこんなことになるなんてね・・・」 「プレゼントって?」 「このタンジュンキッドの人形・・・あーあ、明日までに渡せるのかなぁ・・・」 「・・・」 華代ちゃんは、包装紙に包まれた人形を見つめ、フォーリスに視線を変える。 「・・・ここから、出る方法はないんですか?」 「ないこともないよ。さっきも言ったと思うけど、ここはもつれた糸の中。どこかに、外の世界に通じた穴が開いていたら、そこから出ることができる・・・間、どこに出るかは運しだいだけどね・・・」 「その穴って、これ?」 華代ちゃんは右へ一歩動く。ちっさな穴が開いている。 「そうそれだ・・・でも、小さすぎる」 確かにその穴は、直径20CMほど・・・手を入れるのがやっとだろう・・・ 「だめ、ですか・・・?」 「いや・・・広げることができれば、出られるかもしれない・・・」 そういって、フォーリスはその穴に手を入れる。 ぐぐっ、ぐぐっ!! 穴は少しづつ大きくなる、だけど・・・ 「だめだ!これがげんかいだ!!」 穴は、子供がやっと通れる程度にしかあいていない・・・ 「この程度じゃ、僕は無理だな・・・華代ちゃん!!」 「は、はい」 「君ならここから脱出できるだろ?」 「あの、それじゃフォーリスさんは?」 「僕はいい、自分が脱出できるくらいの穴を見つけてみせる・・・!」 「それじゃ、いつまでかかるかわからないじゃない、明日が弟さんの誕生日なんでしょ!?」 「いいから、でてくれ!」 ふわっ・・・ 華代ちゃんの体が浮き上がる。 「フォーリスさん!!」 「僕の浮遊の魔術だ・・・華代ちゃん、もし僕が弟の誕生日の間に合わなかったら・・・かわりにそのプレゼントを弟に渡してくれないか?」 タンジュンキッド人形の入った箱が華代ちゃんの手におさまる。 「頼んだよ!」 「きゃ!」 華代ちゃんの体が穴のなかに消える。 「フォーリスさん!!」 土の上に転がった華代ちゃんが叫ぶ。 華代ちゃんは無事、現実世界に戻ってこれたようだ。 そしてまだ、もつれの内の世界にあいた穴が残っている・・・! 「・・・フォーリスさんは、私なら穴からでられると行った。もし、フォーリスさんが私ぐらいの大きさだったら・・・」 華代ちゃんは穴に向けて手を伸ばす。 「フォーリスさんが私ぐらいの、女の子だったら・・・」 華代ちゃんの手には、それまで使われたことのないくらいの“力”がほとばしっていた。 後はその力を穴に向けて放つだけ・・・ 「にゃーーーーーん」 華代ちゃんがその力を穴に向けてそそぎ込もうとしたとき、一匹の猫が飛び出してきた・・・ 「・・・・・・?」 「ふぅ、びびった・・・」 猫は地面に降り立つと同時に姿を変える。 「フ、フォーリスさん・・・?」 「あ、華代ちゃん、心配かけたね。・・・僕はこれでも魔術師、ウィザードだから、変身魔法ぐらいは使えるのさ」 「よかった・・・」 「ちょっとあわててて、すっかり忘れていたんだけど、とっさに思いだしたんだよね」 「あははははは・・・フォーリスさん、よかったです」 「そうだね、じゃ、行こうか」 「へっ?どこに?」 「弟の誕生日だよ。君は僕の悩みを解決してくれるんだろ?だったら最後まで見届けてくれないと」 「あ、そうですね。ははは・・・」 華代ちゃんとフォーリスは、笑いながらフォーリスの家に行くこととなった。 ・・・・・・・・・終わり? いいや、そんなことはありません。 >華代ちゃんの手には、それまで使われたことのないくらいの“力”がほとばしっていた。 >後はその力を穴に向けて放つだけ・・・ さて問題です。この力はどこへ行ってしまったのでしょう? 答えは、「超異空間に閉じこめられた」ではありません。 確かに華代ちゃんの力は超異空間にそそぎ込まれました。 でも、超異空間には穴があいているのです。 華代ちゃんとフォーリスが脱出した穴以外にも、たくさんの穴が・・・ そしてそれは世界中、いや宇宙中につながっているのです。 ある男子高校の生徒全員が、小学生低学年の女の子になりました。 結婚式場では新郎が行方不明となり、かわりにおかしな女の子がいました。 サーファーも女の子になりました。 軍隊の行進がお遊戯になりました。 若者の街の平均年齢が一気に下がりました。 UFOから降りてくるリトルグレイが、みんな地球人になりました。 巨大ロボット内で切れかけていた少年が少女となって転がりました。 永遠のライバル、赤い敵方戦闘メカに乗った仮面の男が、かわいい女の子になりました。 宇宙戦争どころの騒ぎじゃなくなりました。 今回、この世界でTSしたものの数は、TS界史上最高の、 二十九京三千七百六十五兆八千飛んで一億七千二百四十二万四千九百三十三人!! にのぼりました。 華代ちゃんとフォーリス、そしてその弟は、そんなことが起きているとはつゆ知らず、おいしいバースデーケーキを食べていました。 …終わり…
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