TS関係のオススメ本01-06


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真城 悠

悪徳なんかこわくない
(1977年・ロバート・A・ハインライン・早川書房)
 悪徳なんかこわくない 上
悪徳なんかこわくない 上

 さて、本日は「問題作」の「悪徳なんかこわくない」をご紹介しましょう。
 著者はこれまでで恐らく最もビッグで、ロバート・A・ハインライン御大ですよ!
 よく「SF三大作家」の一人に数えられる大家。ちなみに残りの二人はアーサー・C・クラークアイザック・アジモフ

 要するに大金持ちがこのままだと老衰で死んでしまうので、新鮮な(死んだばかりでなるべく傷の無い)死体が手に入ったら緊急手術してくれ、という契約を取り交わすんです。
 …はい、こうなったらもうお分かりですね(核爆)。

 
最愛の美人秘書が上手いタイミングで(ヒドイ)亡くなってしまい、当然その肉体に移植されてしまいます。
 最初は「何でこんなことになったんだ!」とじいさんは怒るんですが、何と移植される肉体の条件に
「男性に限る」と書くのをすっかり忘れていたんです。…ってなんじゃそりゃ!

 
表紙のイメージが全てを物語っていますね(*^^*。

 この脳移植描写は、「脳移植なんてどうせ出来ないんだから」と割といい加減に描かれている作品が多い中、割と「ありそう」な雰囲気を漂わせていて流石はベテランという感じです。
ちゃんとリハビリにかなりの長期間掛か描写もあります。

 先にネタを割ってしまいますが、実は
「脳移植」に見えて実質は「憑依」ものに近いんです。何故かと言うと、亡くなったはずの女性秘書はその「精神」がしっかり生きており、脳内でじいさんと丁々発止の「会話」を交わすことになるからです。

 ほぼ全編に渡ってこの二人のかけあいを通じて話が進んでいく訳で、こちとら「脳移植もの」だとばかり思って読んでいるもんですから正に
「聞いてないよ」状態

 そして、すっかり別人になってしまったヨハンは「ジョアン」と女性風の名前に変えて女としての人生を歩み始めます。巨大企業の創業者だったのでそうした雑事もあり、身内からの訴訟をかいくぐりながら、無事に幸せを掴めるのか…というところなのですが、実はストーリーそのものは割りとどうでもよくて、あちこちの書評で書かれている様に、
「女になってあんなことやこんなことをしてみたい!」という願望が爆発した『快作』になっちゃってるんです!
悪徳なんかこわくない 下
悪徳なんかこわくない 下

 最初に身体の調子が回復して動ける様になってまずやるのは…そりゃ
お化粧に決まっています(本当)。
 全編こんな調子で、まるで
文才のある男子中学生が妄想を長編小説にしたみたいなありさま。一応男性とのセックスもありだけど、全身素っ裸で妙な色のペインティングを塗りまくるモデルになるとか、どうにもストーリーのディティール変態っぽいんだよなあ…(爆)。

 ちなみにハインライン御大は以前にも、
「自分ひとりで父親と母親と子供の人生を全てやる」という超絶展開で「タイムパラドックスの傑作」とされている「輪廻の蛇」というTSものの前例もあるのですが、ここまであからさまにやったのは初めてでしょう。しかも、この作品を書いた時にはハインライン御大は「老境」と言っていい年齢に達しています。

輪廻の蛇 (ハヤカワ文庫 SF 2)
輪廻の蛇 (ハヤカワ文庫 SF 2) 矢野 徹

早川書房 1982-09
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おすすめ平均 star
star孤独な男たちは必読

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これもその内やりたい意欲作。
母親と父親と自分が全部同一人物だった!という作品。
当然タイムとラベルと性転換が絡みます。

 この小説の出版は本国アメリカでも結構話題になったそうです。ぶっちゃけ
「遂にハインラインもボケたのでは?」と勘ぐられてしまったんですね。しかもまたこの小説が無駄に長いんだこれが!もう書きたくてたまらなかったんでしょうね(*^^*;;。

 普通ならもうまず手に入らないところなんでしょうが、今は「マーケットプレイス」があるんで手に入ります。いやあ、本当にいい時代になりました。私が高校生の頃に本屋に注文して3週間待って手に入れた思い出が蘇(よみがえ)ります(;´Д⊂…。
 正直、真正面からオススメするのは気が引けるんですけど、「作者に感情移入」という荒業(?)を使えれば間違いなく楽しめます(^^。それこそ
「表紙を見て萌える」だけでもありなんじゃないかと。

 ちなみに翻訳者の矢野徹さんはSFファンなら知らない人のいない方ですが、知る人ぞ知る「TS・SF小説の書き手」でもあります。正にベストマッチですな。後書きでTS的展開への感想とかが殆どなくて自分の青春時代の思い出と翻訳の解釈の苦労ばかり書いてあるのは照れだったのでしょうか(*^^*。

新・SFハンドブック (ハヤカワ文庫SF)
新・SFハンドブック (ハヤカワ文庫SF) 早川書房編集部

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 お手元の「SF入門」「SFハンドブック」とかを開いてもこの作品はせいぜい「タイトル」が載っているだけでしょう。あのハインラインがこんなの書いていたという事実をなるべくスルーしようとしているかの様です。

 今にして思うと、最後の最後の終着点もある意味衝撃…というか
「そこまでやるか?」状態。SFとTSがかなり親和性の高いジャンルであることは皆さんもご存知でしょう。ここは思い切って手を出してみてはどうでしょう(^^?。あ、でも「輪廻の蛇」は普通にオススメ。SFとして。
(2006.11.11.Sat.)
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ブログ「真城の居間
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