TS関係のオススメ本02-08


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真城 悠


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フレックス キッド(1993年・陽気婢・徳間書店)

 辞書で「Flex」を引くと「屈曲」とあります。
 では表紙にある「Flexible」だと「フレキシブル」ですから半ば日本語化しています。要は「変形しやすい子供」というところでしょうか。
 
何だかんだ言ってますが要するに性転換体質を持つ男の子の話です。

 ごく平凡な男の子、星海真生(ほしみ・まお)君はこの頃謎の幻覚症状に悩まされていました。何故か
性転換する夢を良く見たり、実際にそうなったとしか思えない現象に悩まされます。
 同時に何故か同居している祖父の視線が怪しい…。

 ある日遂に完全に身体は女の子のものに性転換してしまい、祖父から衝撃の事実を聞かされます。

 今やこのジャンルの古典となったらんま1/2」はごく普通の人間が「性転換体質になってしまう」お話でしたが、このフレックス キッド」はふたば君チェンジ」と同じく「性転換ありの種族」という設定です。
 同種の性質を持つ種族を主役としたお話としては
11人いる!」やファイナルジェンダー―神々の翼に乗ってがありました。要は
凄くありがちな設定ということです。
 敢えて違うところを探すと性転換が起こるのが「ライフサイクルの一時期」に限定されているということでしょう。つまり「思春期」ということですね(*^^*。
 更に
「初体験によって決定」というのも定番。

 呆然としているマオくんが
犯罪的に可愛いのですが、全二巻のこの物語の主題は「可愛くなっちゃった自分をコロコロと弄(もてあそ)ぶ」(真城造語)ことにあります(断言)から当然!。
 その感覚ってオレの愛するアタシ」とかまるでシンデレラボーイとかのあれとは違うの?と思われるかもしれません。
 確かに似ているところはある…というか
ベクトルとしては全く同じなんですが、このフレックス キッドの最大の特徴は「可愛い」ことに最大限の主題を置いている点。
 オレの愛するアタシ」は(描ききれてませんでしたが)「エロ」を目指しており、まるでシンデレラボーイ
「美しい」「綺麗」などもかなり入って来ます。
 ですがフレックス キッドは徹頭徹尾
「可愛らしさ」の洪水です(爆)。いやらしさは微塵もありません。自己の願望を創作物にして叩き付けたという点においては、同じなのですが、まるでシンデレラボーイ「綺麗になったオレを見て!ああっ!」というナルシシズムに溢れていた(私には聴こえます)のに対し、もう「見てもらう」ことも前提に無いみたいな無邪気でイノセンスな可愛らしさ。

 何と言うか、仮に「女の子になれる」道具とか薬とかを手に入れても、別にそれを使って何かをするとかではなくて、
深夜にたった一人でその可愛らしい姿を鏡に映して、しばらく眺め続けていたら恥ずかしくなって“ぽっ!”と頬を赤らめてそのまま布団に飛び込んで寝ちゃうみたいな感じでしょうか(分かってもらえるかなあ…)。

 男ならば誰でも一度は女の子になってみたいと思うものだ、と申します。ま、
一度どころではない人もいる訳ですが(核爆)。
 ですが、その妄想って抱く時期によってかなり質が違う気がします。
 中学生やら、ましてや高校生以上の時期にその妄想をすると、間違いなくそのベクトルは
エロ方面に暴走します。未経験で知識も無いけど、それでも必死に思い浮かべるもんです。
 しかし、これが
「小学生」ならばどうでしょう?
 それはもう「可愛らしさへの憧れ」が先に立っているのでは無いでしょうか?
お姫様に憧れる男の子(ん?)みたいな感じです。
 もう陽気婢氏の視線は、マオくんが可愛くて可愛くて仕方が無い…という風に見えますね(*^^*。
いい意味で小学生レベルで。ですから、性器にひっかけたギャグ(TS系翻訳小説はこんなんばっかり…orz)とかは一切無く、女性性を象徴する記号と言えばもう「おっぱい」しか無いんです。正に!でしょ(^^?

体質が発現してからというもの、こんな悩みもあったりします

 冷静に考えればこの年代だと、
女の子でもこんなミニスイカみたいな乳房ってありえないでしょう。でも、学芸会でひとたび「女装」するとなれば、誰もがためらいなく胸に詰め物をします。
 もう「おおきなおっぱいがあればそれは女の子ってこと!」みたいな正にステレオタイプ。
 では「おっぱいがらみの名場面」を幾つか。
 

 この胸を突付かれただけで真っ赤になってしまう初々しさを見習って欲しいもんですね。
 最初の説明にあった通り、彼は
「好意を抱いている男性」(潜在意識でもいいみたい)がそばにいると性転換してしまう体質なので、なんとそれを「レーダー」みたいに使って人探しをするという荒業を使いこなします(結果論ですが)。
 実はこの陽気婢先生は知る人ぞ知るアダルトコミックの描き手ですので、それこそこの可愛らしい絵柄で18禁コミックも沢山描いていらっしゃるのですけど、この作品においてはそんな事実など無かったかのように封印。見事に思春期の男の子による「女の子疑似体験」のときめきを描ききって頂きました(*^^*。

 名場面は数限りなくあるのですが、ここでは「自爆」と私が勝手に呼んでいるシーンを紹介しましょう。アーサー王子乱行記我らがランス君もやっていたあれです(*^^*。

 女の子の身体になったのをいいことに(?)部屋においてあったブラジャーをどんなもんかな?と
試しにつけてみたところに同級生の女の子に踏み込まれた瞬間です(核爆)。
 たった二巻しかないのに、この「自爆」シーンがもう一度繰り返されるのですから、もうたまりませんね(*^^*。ちなみにその時は鏡に向かってみようみまねで口紅を塗ってみていました。う〜ん、行動の衝動というか発想も正に小学生レベル(褒めてますよ!)。
 それだけに実に初々しいではありませんか!

 ふたば君チェンジの項で指摘した「自由自在に性別を変化出来る」ことによる物語における枷(かせ)の不在は、「すぐに変化不能になる(固定されてしまう)」可能性を滲ませることで解決を図ります。

元に戻れなくなる事態発生!チャンス…じゃなくてピンチだ!

 結局困りはするものの、それはそれで結構心理的に楽しんだりしています。
 やっぱこれですよ。TSものってのは「女の子になっちゃうなんて嫌だ!
…でも、結構いいかも…」と思わせる快感原則に従ったものでなくてはなりません。
 さんざん「不条理もの」とかを書いてきて何を言うか!という感じなのですが、この
「嬉し恥ずかし」があるからこそ「娯楽」として楽しめるんですよ。この頃目先を変えようとしているのか、一方的にデメリットが目立つ作品も散見されますが、基本的に私はこっちのスタンスでないと受け付けにくいですね。
 
ママに迫られ(?)て結構ドキドキのマオくん             てゆーか普通に「わくわく」してますが何か?

 あれこれあって、結局「なし崩しに女の子に決定してしまう」事態を回避することには成功するのですが(しかし、上記のコマを見る限りまんざらでもない様にしか見えませんな…)、二巻に至って何を思ったか突如
「女子高に編入する」という選択肢を取ります。
 

 第二巻はこの女子高を舞台に物語が展開し、第一巻までは基本的には男の子だったマオくんは全編女の子で通すことになります。上記左の部分なんて
普通に部屋着もスカートで完全に「女の子」してます。実は第一巻においては「謎の性転換現象に振り回される」展開であるため、実は「女装」はしていないのです。それを解決するためなのか(?)こういう展開になった模様。
 第一巻掛けて「男の子だ」と認識していた読者は、可愛らしい女子の制服に身を包んだ違和感の無いマオ君の姿を見るたびに胸の中になんとも言えない感情が沸き起こってきてとても複雑な…はっきり言えば倒錯的な…思いに身を焦がす羽目になります。
実に素晴らしい(爆)。

 
一応宇宙人なのでその辺りでトラブルに巻き込まれたりもしつつ、「可愛くなっちゃった自分をコロコロと弄び」つつ可愛らしく物語は展開し、「思春期の一時の夢」が冷める様に綺麗に収束します。
 とてもほのぼのした
癒し系のTS漫画で、稀にありがちな「読み終わった後に虚しくなる」(これはこれでいいもんですが)感覚が皆無なのは素晴らしい。宇宙人マニアの同級生の女の子がらみのエピソードなんて泣けました(;´Д⊂…。
 秀作、傑作と呼べるかどうかまでは分かりませんが
間違いなく佳作。このアマゾンリンクを紹介し始めてから遂に単独で一巻が販売されていない絶滅危惧種でしたが、「セット販売」にて現存してました。1993年、1994年発売と決して古くないのですが手に入れる最後のチャンスかも知れません。個人的にはかなりオススメしておきます(*^^*。
 それにしても後半をもう少し締めれば、この可愛らしい絵柄も相俟ってアニメ化にはぴったりの素材だと思うのですが、ちょうど時代の狭間(はざま)だったかなあ…という感じ。
 最後に「お約束」の場面を紹介してお別れです。2006.11.22.Wed.

*この記事が掲載されてから品切れになってしまったみたいです。読んで注文していただけたということでしょうか(^^;;。ともあれ、これから手に入れたい方は古本屋チェックにGO!ですね。
 真城の主観では入手難易度は5段階評価(5が最高)で3くらいかなあと思います。

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本家:「真城の城」 http://kayochan.com


ブログ「真城の居間
http://white.ap.teacup.com/mashiroyuh/







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