TS関係のオススメ本04-01


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真城 悠


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妖魔夜行 暗き激怒の炎―
シェアード・ワールド・ノベルズ

(1998年・北澤慶/山本 弘/友野 詳・角川スニーカー文庫)

 昨日のRPGネタに引き続く形でまたRPG関連書です。
 著者名は色々書いてありますが、要するにグループSNEの皆さんです(^^。
 この小説の来歴を説明するのは本当に大変です(^^;;。
 私の理解出来ている範囲で目一杯駆け足で説明しますとこうなります。
 「テーブルトークRPG」というのは言わば「ルールのあるごっこ遊び」なのですが、実は元祖である「D&D」(ダンジョンズ&ドラゴンズ)を始めとして大変な数のルールセットが存在します。
 なんだか知らないんですがアメリカ人ってのはちょっと面白い小説だの映画だのがあるとすぐにそれを「RPGルール」に仕立て上げる性癖があるみたいなんですな。
 ちなみにわが国にも「スレイヤーズRPG―ナーガ様といっしょ」とか「新世紀エヴァンゲリオンRPG (使徒降臨)」なんて商品も存在しました。これってコンピューターゲームじゃなくてテーブルトークのルールなんですよ(^^。
 ちょっとした小話として、「スター・ウォーズ」シリーズは空前のヒットを飛ばした訳ですが、当然ながらこのRPGも作られます。その時にゲームとして成立させる為にあの世界の銀河のあちこちの惑星や種族を設定する必要があり、そこで作られた数々の設定がその後の「スター・ウォーズ・サーガ」の隆盛に一役買ったらしいんですね。閑話休題。

 かなり恣意的に解釈出来るとはいえ、RPGの影の主役と言えばやっぱりルールなんです。
 ですのであちこちで「これぞ究極のルール!」と銘打ったセットが次々に発売されます。この辺りは私はそんなに詳しい方ではないのでTRPG系のサイトに行ってみてください(^^。
 中でも有名なのがグループSNEの「ソード・ワールドRPGでしょう。
 非常に汎用性が高く、シンプルなのであっという間に人気を博し、一時期はRPGサークルの大半がこれしかプレイしないと言う時期もあったとか。ちなみに真城が一番プレイしていたのはソード・ワールドRPGの親戚にあたる「ロードス島戦記 コンパニオン」だったりします。
 まあ、結局のところゲームマスターの腕次第ってところもあるんですが。


 ゲームブック「ソーサリー」シリーズで名高いデザイナー、スティーブ・ジャクソンは「これさえあればもう他のルールはいらない!」という「究極の汎用RPGルール」構想をぶちあげます。
 それが
「ガープス」(GURPS:Generic Universal Role Playing System)です。
 ガープスの詳細に関してはちょっとやそっとで書ききれるものではないのでこの辺を参照して下さい。

 ただ、ルールなんてものは
遊んでナンボ、楽しんでナンボです。
 ということでわが国が誇るRPG集団グループSNEによってガープス世界を舞台にした小説やサプリメントなどがサポートされることになります。
 そこで「ガープス・ルナル」と並んで展開されたのが「ガープス・妖魔夜行―妖怪アクションRPG」なのです。
 …あーここまで長かった(^^。一応大筋は抑えていると思うんですが何かツッコミがあったらよろしくです。

 では「ガープス・妖魔夜行―妖怪アクションRPG」とはどんなゲームなのか?
 本当にガープスというのはどんな舞台でも、どんなことでも出来る(拡張ルールが必要だったりはしますが)ので、現代日本を舞台にして妖怪たちを登場人物として扱うルールなんですね〜。

 え?プレイしたことはあるかって?
 そりゃありますよ(^^。私はルールは持っていなかったんですけど、とあるコンベンションで参加してみました。
 感想ですが…面白さが分かる前なので…というところですね。
 「キャラクターポイント」を自分自身で選んでキャラクターを作成するというシステムです。つまり、ダイス(さいころ)を振ることによるランダム要素を排したものなんです。ここで「いかにも妖怪らしい」クセを設定したりするんですが、これが変なのばっかりで
よほど上手くやらないと流れから浮いてしまいます
 一緒に参加していた私の友人は
「夜中にハイウェイを全力疾走する」というクセを持っているので(ほらそこは…妖怪ですから)、真剣な敵との腹の探り合いの最中に「あ、今夜中だけどどうする?」みたいな。
 …ま、ここは有志に「いちごちゃんRPG」でも作ってもらうってことで(無理無理)。
 (なーんてことを書いていたら本当に「ガープス」ルールによって「ガープス・ハンター」をELIZAさんに作って頂きました。今もバージョンアップを続けています。有難うございますm(_ _)m)


 前置きが長くなりすぎましたが、この「妖魔夜行」をモチーフにした小説などがかなりの数発売されています。その内の一冊がこの妖魔夜行 暗き激怒の炎です。
 どうもグループSNE内で、「魅力的な妖怪」をとにかく沢山デザインすべし!みたいな風潮があったらしく、それぞれの活躍を描く短編集なのですね。
 その中に
物凄く魅力的な能力を持つ妖魔がいました。
 ちなみにこの妖魔が登場する短編を書かれたのは「トンデモ本の世界」で有名な「と学会」会長の
山本弘氏。
 ま、何はともあれその妖魔の紹介を見てみましょう。

 あ、その外見が魅力的だと言っているのでは無いですよ(^^。あくまでも能力です。
 その部分を更に拡大してみましょう。
 
 Σ(゜Д゜*)!!
 何と!この魅力的な美女の姿の妖魔は、
華代ちゃんも真っ青な素晴らしい能力を標準装備しているのです!

*ここから先は短編のネタバレになります。ま、TS的な見所の紹介ページなので、そこを確かめたい方はどうぞ。ウチの読者様ならば何となく想像は付くでしょうが…。

 この文庫の該当作は、表題作にもなっている「暗き激怒の炎」(山本弘)。
 物語の冒頭に登場する謎の性的暴行被害者。彼女は男言葉で口汚く呟く彼女の正体は何者なのか…。
 時を同じくしてあちこちで暴行された上に焼き殺された女性の死体が次々に見つかるが、どの死体や被害者の正体も全く分からず、うわ言の様なことを呟くのみだった。
 主人公たちが調査を進める内、都会に生息する集団レイプ・チームの存在が浮かび上がる。
 同時に、ニューヨーク生まれの妖魔・フューリーが日本に上陸した可能性が示唆された。

 レイプ・チームがまた新たな犠牲者を餌食にしようとしていた正にその時!
 謎の女性がその場に立ちはだかる!

 …はい、もうお分かりですね。
 レイプされた女性の犯人たちへの憎悪から生まれたフューリーは、レイプ犯を見ると、
同じ目に遭わせて復讐するための能力を備えていたんです!
 何しろ華代ちゃんと違って他人だけではなくて自分も性転換能力があるんですから。それで何をしようとするか…そう、そういうことなんですよ。

 レイプ・チームなる連中は人の心を持つとは思えぬ鬼畜に描写されており、
こんな目に遭っても当然というお膳立てがなされています。
 このフューリーがいざ能力を発動させる場面は
本当に大迫力で、流石は山本会長というところです。この部分を読んで、久しく忘れていた「TSものを読んだ時の背筋の凍るような感覚」を再び味わう方もいらっしゃると思います。
 ということで、ほんの一部分だけ引用しましょう。

 これは…
正に無差別ではありませんか!
 しかも、こうした「普通の小説」でよくある「目が覚めたら」(アウェイクニング・キャプサイズ)ではなくて、
目の前でムクムクと変形していくタイプの性転換です。これは貴重ですよ(マジで)!
 う〜ん、このビジュアルをアニメで見てみたいですねえ…。

 私は勝手に「ペナルティ系」と読んでいるんですが、
「罰として性転換させられる」タイプの物語に該当するでしょう。しかも、その後の仕打ちが強烈なので…。
 TSものの多くは「男から女への変身」なので、そこには「メジャーセックスからマイナーセックスへの転落」といった面を否応無く持ってしまいます。
 性犯罪というのはフィクションにおいては扱うのが難しいモチーフです。
 が、現実世界では今この瞬間も起こっている悲劇であることは否定しようがありません。
 アメリカで長い長い伝統を誇る刑事&法廷ドラマ「ロー&オーダー」シリーズでは、先ごろ性犯罪のみを扱う別チームが編成され、そのドラマも放送されているそうです。
 何しろ犠牲者にとっては一生を狂わしかねない悲劇であるにも関わらず、犯人は極刑に処されるでもなくそれほど重くない罪しか与えられません。
 また、親告罪(訴えないと罪にならない)なので、法廷でその詳細を証明する際に何が何でも勝利を得ようとする相手の弁護士の誹謗中傷に耐えなくてはなりません(これをセカンド・レイプという)。ですから、発覚する事例の数倍する事件が起こっていると考えられます。

 山本弘氏はそこはしっかり調べていて、事件が一応の収束を見せた後のフォローなどからも軽々にこのテーマを扱っているのではないことを感じさせてくれます。

 そこまでしっかりやっていれば
「同じ目に遭わせる」というのは正にフィクションならではの(こういう言い方はある種不謹慎ですが)痛快さではありませんか。

 ともかく、ディティールの描きこみが半端ではなく、この臨場感を楽しむのもまた
娯楽作品としては全く正しい鑑賞法です!

 全ての仕組みが明らかになった時の全体に仕組まれた数々の伏線が合点する快感!冒頭のシーンの謎の氷解!そしてピリリと効くラストなど、とても読み応えのある力作!。
 何と言っても最後のシーンの大迫力!
 私がこれを読んだのはかなり遅かったのでそうでもないのですが、それこそオレの愛するアタシみたいに学生時代とかに読んでいたらトラウマになったかも。
 ちなみに「因果応報」パターンもいいけど、何の罪も無い人がヒドイ目に遭うという「不条理」系の展開も好きなのでそういうのも読みたいところ…って私だけか(爆)。
 そんなこんなで値段も安いしオススメ! 2006.12.05.Tue.
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