TS関係のオススメ本04-07


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真城 悠


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カメレオンジェイル(1989年・井上雄彦/渡辺和彦・集英社)

 さてここで質問です。
 皆さんに「何でも一つ超能力が与えられる」としたらどの能力を選びますか?
 「ジョジョの奇妙な冒険」で有名な荒木飛呂彦先生は「変身能力」と断言しています。
 …ま、そりゃそうですよね。遠くのものが見えたり手に触れずに何かを動かしてみたところでそんなもん
三日で飽きますよ(推測)。やっぱりどうせならば変身能力が無いと!

 そんなこんなで星の数ほど存在する栄光の「週刊少年ジャンプ」の連載漫画の中でも短期で終了した作品の内の一つ
カメレオンジェイルです。
 折角持っているので(^^;;、旧「スーパージャンプコミックス」版の表紙を掲載していますが、この頃の「完全版」刊行ブームに乗って一冊に纏(まと)めて再販されています。
 この名前をご覧になればお分かりでしょう。あの名作「スラムダンク」の作者の井上雄彦先生の作品です。ちなみに原作付きということで井上先生は作画のみ担当。後に「最初の連載がコケてショックだった」と語っていることからも、ご当人にとっては余りいい思い出では無いみたいですね。
 私が軽く調べたところではどうも「成合雄彦」名義で発表された単行本のバージョンも存在する模様。ま、
私はコレクターではないのでそこまでツッコミません(^^;;。

 ではどの様なお話なのでしょうか?
 ここは主人公の「カメレオン・ジェイル」の説明は以下の通り。

そういえばウッディ・アレンの映画で「カメレオン・マン」なんてのもありましたな

 …だそうです。
 正直、
よく分からんですな。
 そもそも「危険請負人(リスク・ハンター)」という名前なんて
この漫画以外では聞いたことがありません。恐らく造語なんでしょう。
 では何故「カメレオン」という二つ名を持っているのか?
 ここも漫画のコマにあった説明をそのまんま引用しましょう。
 
「顔を変幻自在に操る」というところが強調されてますが、
一応「肉体を変化」「別人になりきる」とは書いてありますね

 ま、ウチの読者さまならば
何となく予想がついてきたと思いますが、彼には変身能力があるんですよ。
 「めたもる伊介」とは違って、若干の「予備動作」は必要とするみたいですが、特に回数制限も無いし変身対象も選びません。自分より遥かに大きな黒人男にもなれるし、自分よりずっと小さい人間にもなれます。
 説明を読む限り「顔を変えられる」と言う風にしか読めませんが、何の躊躇(ためら)いも無く全身変化します。

 冒頭の説明を思い出してください。
 超能力を一つもらえるとしたら何が欲しいですか?そりゃ変身能力ですよね?そして
変身能力があったならば何に変身しますか?

 そりゃ
性転換しまくるにきまっているでしょうが(断言)。

 要するにジェイルは「何でも屋」なのですが、
何かと言うと女に変身して事件を解決します。
 まあ、変身能力がある主人公ならばそういう話がわずかに混ざってくる位ならば別にいいでしょう。
 ところがこの「ジェイル」の「性転換変身の頻度」は
尋常ではありません
 旧ジャンプコミックスで全2巻で連載を打ち切られているのでエピソード数そのものはそれほど多くありません。
 連載回数はたったの12回。ジャンプは毎週アンケートを取っていて、人気の無い作品が10週で打ち切られると言われていますが、その法則に見事に当てはまったと言えるでしょう。
 この「ジャンプスーパーコミックス」というのは、単行本にする際にページ数が中途半端になるので多少分厚めにしたコミックの事を指す用語でした。
 「カメレオン・ジェイル」もたったの12週ですから本来ならば分厚い一冊になるところですが、手塚賞に入選した「楓パープル」などの原稿を足す形で無理に二冊にしているんですね。
 恐らくですが、スラムダンクが有名になってからいずれも人気キャラである「流川楓」の前日談(?)が収録されている為にこのコミックスは売れていたのではないか?と愚考しております。
 閑話休題。

 全12回の内「ウォーキング・マドンナ」と「泣かないDaddy」は連作エピソードなので、これをそれぞれ1エピソードだと数えるとエピソード数は

@「あいつがジェイルだ!」
A「真夜中の狂犬」
B「人魚の夢」
C「ジェイル逆鱗」
D「ウォーキング・マドンナ」
E「泣かないDaddy」

 の6つ。
 この内ジェイルの
性転換変身が登場“しない”のはAとEだけ
 実に
66%
 3回に2回の割合ですよ!
 ちなみにジェイルの変身は全部で7回描かれていますが、女性への変身はその内3回。やっぱり半分近くです。残りの4回にしても事件解決に使ったのは2回だけで、後は「変身能力がありますよ」という紹介シークエンスで披露したものですから実質5回みたいなもの。
 実はこれ以外に「ジェイル以外の変身」もあるんですがそれは後で。


 これまで30作を越える作品を紹介してきましたが、幾つかのパターンの内、単発の小説などと長期連載を目指す漫画というパターンがあります。 そして、どうしても短期連載で終わってしまったり、作品がそのものがマイナーであったりするものは
「煩悩がむき出しになっている」ものが多いんですね。

 そうした作品は私みたいなTSものは多少作品としてのバランスが崩れていても好きなのですが(^^;;、どうしても一般的な人気にまでは結びつきにくいみたいです。
 ある意味それも無理は無い話で、この「ストーリープランナー」という名前でクレジットされている渡辺和彦氏はこの連載を利用して「こっち系の話をやりたかった」という
願望を解消しているとしか思えません。
 だって、「週刊少年ジャンプ」ですよ?
 キン肉マンだキャプテン翼だケンシロウだペガサス星矢だといったヒーローたちが「友情・努力・勝利」を旗印に冒険活劇を繰り広げる健全な少年漫画が看板なのですよ。
 私が子供の頃にも近所では男の子たちが「オレはキャプテン翼だ!」とばかりにボールを蹴っていたもんです。全国で一体何人の小学生が「キン肉マンごっこ」で休み時間にプロレス技を掛け合ったことか!
 また、「聖闘士星矢」などの美少年群像劇に女の子の読者は酔いしれたもんです。
 それが
何かと言うと女に変身する主人公の漫画では少年も少女も腐女子も感情移入しようがありません。これがひばり君みたいに可愛いとかならばともかく、ただのにーちゃんです。
 実際、作画担当がスラムダンクバガボンド」の井上雄彦氏だったから再販が成し遂げられたのであって、これが無名の漫画家の作品だったらまず再販は無かったでしょう。

 さて、実はジェイルの変身には顕著な特徴があります。
 それは
「瞬時に女装までしてしまう」こと。

 例えば、記念すべき連載第一回目の「こいつがジェイルだ!」でのクライマックスシーンは、彼は一瞬にしてこんな風になります。
 
この美女がジェイルの変身後の姿。堂に入ったドレスの着こなしですな。いつも練習してるのかな

 その後
ものの数秒でまた元の姿に戻っています。
 この漫画が結局人気が出ずに打ち切られたのは、この当たりの
非現実的なシチュエーションが多すぎるからではないかと思えてなりません。

 ちょっと惨(むご)いんですが、この数秒で起こったことを分析するとこうなります。

@ 銃撃から逃れる為に机を立ててその後ろの隠れる
A 女に変身した上服を脱いで身代わりの木材に着せる
B 素っ裸(下着くらいは付けていた?)のまま、壁に掛かったドレスまで駆け寄って
素早く着た上に髪を綺麗に結んでメイクまでする
C そのままピアノのところまで行って気がついてくれるまで待つ
(@〜Cまで長くて30秒ほど?)

 そこまではどうにか許容するとしても、
完璧にピアノを弾きこなし、あまつさえ女の声で人を感動させる歌を浪々と歌い上げます
 マフィアの彼が感動しているところを見ると多分「思い出の曲」とかなのでしょう。ジェイルが何人(なにじん)なのかは明記されていませんが、中国語に堪能であるとは思えないし、そもそもそうした事前の説明も事後の解説も何もありません。プロ中のプロである「危険請負人(リスク・ハンター)」だけにその程度は事前調査していた?
 「顔が変わる」「身体が変わる」程度のはずだったのに、この便利さでは読者にしてみれば「そんなの聞いてないよ」状態です。
「別人になりきる」ってのはそういう意味なの?
 更に続きます。

* 龍(ロン)が王(ワン)に呼ばれて振り返り、また振り向く
(長くても数秒)
D まず服を脱ぎ、身体・顔を元に戻す
E テーブルの影の木材(これもどこから用意したんだか)に着せていた元の服を脱がせ、自分が着なおす
F 同じ位置に戻ってきてポーズを決め、龍(ロン)が振り返った瞬間「カメレオン・ジェイル」と名前だけ名乗る

 
絶対に無理です。
 「漫画だから」で済ませてはいけません。これはギャグ漫画じゃありません。そこを疎(おろそ)かにするのは自殺行為です。
 ともあれ、彼は事件を見事
女性への性転換と女装とそして演技によって無事に解決します。
 読者には
「…こいつって今女になった上にドレスまで着てたんだよね…」と一瞬思わせるものの、余りにも素っ気無い描写にそっち方面の妄想を膨らませるでもなく「ま、いっか」と思わせる勿体無さ。
 個人的には人の思い出の人物を勝手に演じた上に、
形見のドレスに見も知らんあんちゃんが汗だらけ(推測)のまま袖を通して一芝居打つなんてムチャクチャ失礼というか、死者への冒涜だと思うんですが…。
 その上マフィアの彼がそこで改心してくれたから良かったようなものの、
「てめー!ふざけんな!野郎が勝手にリンリンのドレスとか着てんじゃねー」と逆ギレしてきたら射殺されて以上、終了の場面です。
 しかも、これが記念すべき
連載第一回目ですからね。う〜ん。先が思いやられます。

 ちなみに3番目の「人魚の夢」ではこんな具合。

これもジェイルの変身後の姿です。( *´∀`)アンタモスキネエ…

 …今度は
完璧なまでの女子シンクロ選手になってますな。
 どうも彼の能力は
成り代わった人間の技量まで完全に再現してのけるみたい。ってこれじゃあ伊介と全く変わらんじゃん。動物になれないくらいで。というか下手すると伊介より便利。伊介は熊になって怪力になったりはするけど、特定の人物になったら仕草から立ち居振る舞いまで再現した上に特定の技量を身に付けるなんてことは不可能ですから。
 私は「ディティールには神が宿る」と思っているので、ここも簡単に分析します。と、こうなります。


@ プールの底でマール選手(要は女)に変身し、トランクスを脱いだ上マール選手から
水着を脱がせる
A 
その水着を着、鼻栓から髪留めまで全てを再現する。しかも水で溶けない特殊なメイクまで“水中で”行なう
B そのまま浮いてきて演技を続ける(その間気絶した本物のマール選手は水中…死ぬって!)


 シンクロの練習なんぞしたことが無いであろうジェイルが女に変身してのけるだけならばともかく、“演技”まで完全にするとなると
幾ら漫画でも嘘付きすぎです。

 てゆーか技能までギリギリ目をつぶったとしても
「一瞬にして着替える」のは物理的に不可能ですって。
 
水着姿の女性に成り代わるからには、最悪男物のシャツとパンツの上から羽織ればいい第一話のドレスと違って全裸から着る必要があります。状況からして真城ビジョンを発動させて妄想で補いたいところではあるんですが流石に無理。

プールの底で変身するジェイル。この状態でそばに沈んでいるマール選手から脱がせた女物の水着に着替えます。
乳を放り出した全く同じ人間が居並ぶ状態で、お互いにすっぽんぽんで必死に水着に脚を突っ込んでいる
場面はかなりシュール(そんなコマ無いけど)

 その後、プールの底で気絶していたはずのマール選手がどうやって助け出されたのか?どうやって今演技しているジェイルと大勢の聴衆が鵜の目鷹の目で監視している状況下で無事に入れ替わったのかの説明も無し。
 TSファンとしては、肉体が完全に変化するのみならず、メイクから衣装まで一瞬にして変えられるという(実質的に)能力を持ち、しかも技能まで完全に再現してのける能力は
大変魅力的ではあるのですが、描写がどうしてもです。申し訳ないんですけど。確かにボクシング選手やバスケ選手に化けて技能を発揮したりもしてるけど、それで「技能再現機能まで説明したから」と言われると…。
 大体この時、“女王”チチョリーナはマールを貶(おとし)めるために
特殊部隊をプールに潜ませるのみならずサメまで放とうとしていたんです。そんなアホな!
 
大体この競技って何なの?シンクロナイズドスイミングって同時にプールに入って同時に演技を競う競技では無いと思うんですが…。

 
企画の根本否定をしてしまって申し訳ないんですが、この「顔を自由に変えられる主人公」ってお膳立てでは面白い話って出来ないんじゃないかと思います。

 だって他の話でもそれほどこの能力を活かせてるとは思えないし、ワンパターンなんだよなあ…。結局「突然変わって人を驚かせる」とか「本人に替わって死地を潜る」位。 
 偉そうで申し訳ないんだけど、もっと能力を限定的にする代わりに
「知恵と工夫」でそれを最大限に活かす形にした方が面白くなるでしょうね。「HUNTER×HUNTER」とか「デスノート」みたいに。
 勿論
ジェバンニ並にありえない描写も最小限にして。
 この2エピソードを見る限り「顔と身体を変えられる変身能力」とかではなくて、「ゲットバッカーズ」みたいな
「相手に幻覚を見せる能力」とかに設定していた方が良かったんじゃ?と思えてなりません。
 幻覚ならばあの程度は楽勝。全く破綻がありません。てゆーか
幻覚だとしか思えません
 ちなみにゲットバッカーズにおいては同じ相手には24時間以内には二度発動することが出来ない、などの細かい縛りがありそれを逆手に取ったエピソードも多数。やっぱこれ位はやってくれないと。

 あ、でも
「これならいいかな?ちょっとありかも」という状況がありました。
 12回の連載の半分を占める連作「ウォーキング・マドンナ」の終盤。
 
相変わらず性転換変身しているジェイルさん(男)
よく考えたらここで変身解く必要無いよな(爆)

 
これはちょっと可愛いですね( *´∀`)。それでいて服装についても無理が無いし。この水準でやってくれればねえ…。

 さて、
6エピソード中3エピソードを性転換によって解決し、2エピソードのみまとも(?)に解決。
 では残りの一つは?
 これが
いろんな意味で大問題(爆)
 個人的には「行間を読む」ならぬ「絵の間を読む」ということで「絵間を読む」(かいかんをよむ)と名付けている技術(妄想とも言う)を使ってかなり楽しむ事が出来るんですが、人によっては怒っちゃうんだろうなあ…というものです。
 ただ、ある意味一番ツボに近いのも事実。

 殺し屋ダンヒルが人質を取ってジェイルに決闘を申し込みます。
 でもってその対戦中。

いつもの通り「クラ」に気合を溜めて“他人に”叩きつけます。すると…


何と他人を性転換させることが出来てしまいますΣ(゜Д゜)!!

 …この漫画って
「聞いてもいない設定が後から次々出てくる」困ったちゃんなのですが、これは幾らなんでも無でしょう。
 他人を変身させられる!?
 しかも
本人の意思に反して性転換させることが出来るんですよ!しかも永続。こんな生命体をのさばらせておいてはなりません。すぐにCIAが飛んできます。NASAかも知れんけど(爆)。
 現実問題、自分が変身するだけならばともかく、幾ら悪人限定(基準は?)とはいえこんな能力を自由自在に操れるとなると当局が放っておくとは思えません。
 今回は性転換させただけですが、
その気になればこんな恐ろしい能力はありませんよ。体格まで変わるからもう何でもあり。
 最悪、「悪用」だって出来ちゃうんです。
 もしも「あいつは許せない悪人だからか弱い小娘にしてくれ」とか言う依頼が来たらどうします?永続となるとジャンプ漫画史上でも最悪の「他者性転換能力」を持つ主人公です。相手の人生を大きく狂わせてしまえるのですから。
 幾らでも使えそうなあんな便利な能力なのにその後使ってる気配も無いし…。格闘する際には岩みたいな筋肉の大男でも女子高生とかにしちゃえば楽勝なんでは?
 正に悪魔の能力です。…が、この回以外には登場した痕跡もなし。

先に言えよ。聞いてねえよそんな話

 しかもその後の描写が余りにも悪い意味での「マンガ」。「漫画」じゃなくて片仮名の「マンガ」。
 
“自然と女言葉になる”というコテコテ(?)の描写。っていうかこいつら喋ってるのは何語ですか?
英語には「かしら」「わ」「よ」といった「終助詞」が存在しないのでこういう風に「女言葉」を表現することは出来ませんが。

 いちいち検証するのも大人気ないんですが、
普通は女にされたんならばまず「戻せ!」って言うでしょ?
 それを言う気配も全く見せないし、さっきまで殺す気満々だった殺し屋が
こんなことになっちゃってます。

この黒い帽子の美女もかつてジェイルの怒りに触れて女にされたんだそうです

 その後女にした殺し屋を放置していますが、女にすることで人格が温和になるんだと思っているんだとしたら
トンでもない誤解です。ま、一応「心身ともに」性転換させるとは説明されていますが、凶暴な女だっているでしょ?
 「女殺し屋」としてその後更に活躍することが容易に推測されますし、自棄(やけ)を起こして「依頼されて人を殺す」という職責を忘れてその殺人スキルを無差別に発症したりしたら
ジェイルはこの事態を引き起こす原因を作った責任を取ってくれるんでしょうか?
 犠牲者の遺族には何と申し開きを?…って裁判関係者を責めるみたいな話になってるな。

 この「殺し屋」を成敗するには、
現実的に考えて殺すしかありません。警察に逮捕させるのは難しいでしょう。
 恐らく健全な少年漫画の主人公であるジェイルに余りにも分かりやすい「人殺し」をさせたくないからこうなったのでしょう。
 が、それならばもっと
きっちり落とし前をつけるべきでしょう。この幕切れでは余りにも無責任で、上記の様なツッコミも可能になります。

 そうですねえ…ではちょっと
真城ビジョンをば。
 例えば愛する若い恋人を殺された大富豪の依頼を受けてジェイルがその
犯人である殺し屋を成敗する代わりに性転換させ、人格も変えた状態で「恋人が帰ってきましたよ」とか言って変わり果てた殺し屋を恋人の元へ送り込みます。
 当然、男の頃の記憶が残っている犯人は「ふざけるな!オレは男だ!こんなのやってられるか!」と思って最初の内は抵抗する訳ですが、
大富豪のやさしさに触れて感動。彼に人間的に惚れてしまい、そして恋人を手に掛けた自らの行為を悔いて涙を流します。
 そして、
自ら身代わりとなり、女として大富豪の恋人として残りの人生を生きていくことを決意するのでした。

 ラストシーンでジェイルが机に向かってだらけている(彼は普段は寿司職人だそうですからオフィスにはいないんでしょうが)ところに封筒が届きます。開けてみると、それは
幸せそうな大富豪と、赤ん坊を抱えた魅力的な若い女性(ジェイルが性転換させた元・殺し屋)が映っている写真だった…。
 と、私がやるんならこんな感じですかね。
 綺麗にまとまってますけど、
一回しか使えそうに無いのがこまりもの。
 毎回これだと
「ちゃんと依頼を解決する華代ちゃん」になってしまいます(爆)。
 それにしても「永続」って考えれば考えるほど
ヒドイ設定です。
 だって「バスケ選手になるのが夢」だったらそいつを優秀な黒人選手にしちゃえばいいし、「頭がよくなりたい」だったら…と本当に何でもありです。

 あ、もう一つ思いついた。ということで
真城ビジョンパート2
 異様な運動能力を持つコソドロ集団がいました。
 彼らは身よりも無く、犯罪に手を染めることでしか食べていけない境遇なのですが、決して性根が悪人という訳では無いのです(ありがち)。
 なんやかやあって、ジェイルは彼らを犯罪暦を抹消させ、別人にする意味も込めて
全員女子高生に変え、全米でも有名な女子バスケチームとして生まれ変わらせます。
 最後には奨学金とスポンサーを得て
感動で抱き合っているところで幕。
 …って彼一人に何人女にされるのか。

 或いはこの便利すぎる無制限能力を一時的に制限を掛けて追い込むのもありかと。
 
真城ビジョンパート3
 例えば
女になったまま戻れなくなったジェイル。とある薬品によって復活することが分かっているので何とかその薬品を手に入れようと奮闘するものの中々果たせない。そうこうする内に目的をほぼ同じくする謎の男(二枚目)が現れて、一緒に活動することに。
 そしてジェイルが元・男であることを知らない二枚目は「潜入シチュエーション」で
ジェイルに女装させてカップルを演じたり(!)している内に擬似恋愛っぽい関係になってきて…とか。
 何か
アイデンティティを揺るがす展開になってますが「女になる」ってのは大変なことなんですよ。この程度のリスクは背負ってもらわないと!
 流石にこのエピソードの最後には、元に戻ったジェイルがオフィスで『彼にプレゼントされた口紅』を退屈そうにいじりながら
「もう当分女にゃ化けねえ」位は言わせましょう(^^。

 逆もあり。
 ということで
真城ビジョンパート4
 戯れに
仲間(そういえばこの漫画「何でも屋」を描いているのに馴染みのタレコミ屋とかライバルの賞金稼ぎとか全く出てこなかったな)を性転換させて遊んでいるジェイル(ヒドイ)。
 「○○したら戻してやる」とか「そのまんまオレとデートすれば勘弁してやる」などといびっていると(たち悪い…)
本当に女の姿のままギャングにさらわれてしまう仲間
 流石に罪の意識に苛(さいな)まれたジェイルは救出ミッションを敢行。しかし
彼は既にギャングの毒牙に掛かっていた(少年誌ギリギリですが匂わせるくらいはありでしょう)。
 怒りに震えるジェイルはその場のギャングを
全員手当たり次第に性転換させて成敗(ちっとも懲りていない)。
 しかし仲間は「男の姿に戻してもらう」ことを拒否。
 「こうなってしまったからにはもう女として生きて行く」ことを決意。
 
去り際に「最後の思い出」としてジェイルとキス
 その後二度とこの街には帰ってこなかった…、とかね。

 結局「悪人」ではなくて、
何の罪も無い友人一人の人生を軽はずみに行なった「他者性転換能力」で完全に狂わせてしまったという罪の十字架を常に背負っているジェイル…というエピソードになりますね。
 「他人を性転換出来る」ってことは
これだけのリスクを背負っていることを思い知らせる教訓話なのですよ。

 私だったらジェイルにはもう一人助手を配置しますね。
 ええーい
真城ビジョンパート5!
 「少年探偵団」の小林少年みたいなのを。で、しょっちゅう
悪戯(いたずら)でジェイルに性転換させられて遊ばれるという(えー。
 勿論、いざとなったらジェイルに変身させてもらって潜入ミッションでも何でもござれですよ。
 臨機応変に
少年を女の子にしてジェイルとのカップルにしたり、逆にジェイルが女になって少年の保護者を装ったり、はたまた二人とも女になって女子高に潜入したりとか、幾らでも思いつくじゃないですか。
 まあ、
純朴な少年読者の性的アイデンティティはムチャクチャになっちゃいますTS的にすこぶる美味しい傑作漫画の誕ですよ!

 …ってこうして書いてみると
何だか面白そうだなと思ってしまいました。この辺の展開って真城が勝手に「こんなんでどうでしょう?」と思いつくまま書いただけで本編にはこんなエピソード全く無いですからそこんとこよろしく。

 とにかく、正に
「隠れたTS漫画」と言えるでしょう。
 恐らくですが「伊介」は降板騒動や雑誌のお家騒動が無ければあのまま長期連載になることも出来たと思います。確かに興味本位で性転換するけど、中津先生ってそこまで「キャラが女に性転換する」シチュエーションに自家撞着している感じがしないので。多分「性転換はもう無しね」と言われればそれはそれで問題なく出来たと思います。

 しかし
「ジェイル」は無理ですね。
 私が所持しているのは1993年の第10刷(…って結構売れてるな。「スラダン」効果か?)です。しかも今もamazonでは旧装丁のコミックも普通に新刊で買うことが出来ます。初版発行は1989年。わが国においてはインターネットなんて影も形も無い時代です。
 この頃に自らの作品を広く発表しようと思ったらそれこそ
作家デビューする位しかありません。あとはコミケで同人誌売るとか。…ま、私は大学ノートに一人でしこしこ書いてましたが(爆)。
 「そっち系」の願望でパンパンになっている人がいて、天下のジャンプに作品を発表できるとなれば
そりゃやりますよね。性転換の話(爆)。

 ですからジェイルは
多少強引な理由であろうと性転換しその上女装するし、果てはそのエピソードが無くても全く支障の無い「他人性転換能力」まで挿入する。
 それでいてギミックとしてこなれているかと言えばそれも無し。やったはいいけど照れてるのか「マンガ」になっちゃう。「オレの愛するアタシ」を思い出すなあ。

 ただ…私は
こういうの嫌いではないんですよ(爆)。バランスも何も無いし、ツッコミも浅いけど「愛すべき作品」というところでしょうか。
 この素材の料理が全く不可能という訳では無いと思うので、思い切ってデスノートの大場つぐみ先生みたいに緻密なお話を書ける方に原作を依頼してリメイクなんてどうでしょう(^^?
 結構面白く生まれ変わりそうな予感がします。
 てゆーか
私でよければ原作書きますよ。井上雄彦先生も「バガボンド」とか少し休んで「ジェイル」リメイクしませんか?
 …って自己アピールで終わるってどんなレビューだよ。
2006.12.11.Mon.
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