TS関係のオススメ本05-01


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真城 悠


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少年少女evolution(2002年・日本海荒波・光彩書房)

 ディティールには神が宿ります。
 どんな原因であれ、少年の身体が少女と入れ替わってしまった、或いは見る見るうちに性転換してしまった。
 はたまた朝起きたら性転換していた…。
 そうなったら果たして自分ならばどうするだろうか?
 
妄想は一円のお金も掛からない手軽なエンターテインメントです

 そうした想像の手助けをするのが各種漫画や小説、アニメは映画などの映像作品です。
 しかしこれらは物語の開始があり、そして終わりがある様にある程度厳選して情報を取捨選択しなくてはならない宿命を持っています。
 どんな英雄が活躍する神話的なお話であっても、その間その英雄は常にクライマックスシーンに立ち会っているわけではなく、夜になれば寝たり
トイレに行ったりだってしているでしょう。そんな細かい情景をいちいち書きこんでいたのではお話なんぞ全く進みません
 ですからそういう「細かすぎること」「説明されなくても分かること」などは省略されるのが普通です。
 コンピューターRPGではキャラクターはたまたま立ち寄った街に「宿屋」があれば体力回復の為に寝ますが、
それ以外は不眠不休です。
 とあるテーブルトークRPGにおいて女性キャラの「生理」を再現しようとして顰蹙(ひんしゅく)を買ったマスターがいたなんて笑い話もあります。

 この辺りの「ディティールをどの程度まで描きこむか」というのはクリエイターそれぞれの永遠のテーマです。
 特にこれは
執筆動機が「ディティールを描く事そのもの(例外あり)と言って言えない事も無いTSものということになると特に難しくなります
 恐らくですが、多少なりとも異性の身体に興味のある人間に入れ替わりなどの事態が降りかかったならば、その後の一週間或いは数日は体感時間としては一ヶ月にも下手すれば数ヶ月にも相当する
濃密な時間となるのは間違いありません。

 …しかし、そんな調子では
物語なんぞ全く進みません。その後様々な冒険をしたり、身の上に降りかかる困難を解消したり、はたまたお互いの役割を演じたりしなくてはなりません。

 TSものに関して言えば「ディティールの面白さ」と「TSを利用した状況設定による物語の展開の面白さ」は拮抗しています。
 個人的には“どうせTSをやるのなら”ばディティールには
徹底的に、それこそフェチ的にこだわって欲しいのですよ。
 どうも世の中単なる「突飛な状況」として手軽にTSを使っているみたいで、それに関していちいち深く考えていないんですよね…。
 コメディタッチの連続ドラマなんて雷が当たって男女が入れ替わり、その回の落ちで戻れましたなんて視聴者にしてみればそろそろ「またぁ?」ってなもんでしょ?
 あ、使ってもらうのは大いにありがたいんですよ。はい。
 この辺りの非常な淡白さが真城が映画版の転校生をイマイチ好きではない理由だったりします。
 一回でいいからスカートの中の脚をすりすりさせてく
すぐったさに震えたりしてくれれば神認定だったのですが…ねえ。

 もうタイトルも忘れたんですが、一旦死んだやくざが女子高生の身体になって蘇(よみがえ)るという漫画がありました。
 一応期待して読んでみたんですが、そのやくざは自らの境遇に気付いて人並みにショックは受けるものの、次のページではもう街中を歩いていました。
 
オシャレなスカートルックで。

 …ありえない。
 いや、いいんですよ別に。これでいいんです。可愛いしね。
 しかし、さっきまで男だったのが女子高生の身体に入ってすぐに平常心で行動できるのみならず、自らそんな格好に着替えたとでも?
 10,000歩くらい譲って外出まで許容したとしても、そこはズボン履いて欲しかった。
 感覚が違うとは言え、即座にスカートに脚突っ込んで外出するか?
 私はこの時点でかなり読み続ける意欲が萎えてしまいました。

 極論すれば変化(入れ替わり)を確認してから丸一日は全身弄繰り回しても尚飽き足らないものではありませんか?
 何もそれを描かないからいけないと言っているんではなくて、その部分をそもそも最初から描く気も無いし、気に掛けている様子もないことにイラつくんです。
 「状況としてのみ利用したい」というのは分かる。そしてそんなところにこだわる価値観は無い。
 それは分かるんですけど、折角そこまでやっているんだから
やらないならやらないでそこに演出を突っ込んで欲しいんですね。

 ところが、…実はあったんです。
 
「ディティールのみ」で全編突っ走っちゃった漫画が。
 前置きが長くなりましたが、それが少年少女evolutionなんですね。
 発売は2002年ですが、当時TSサイトの多くが集結して行なわれた人気投票で年間一位を獲得した隠れた人気作でもあります。

裏表紙のストーリー梗概より。全ての漫画にこういう風にちゃんと書いてあればねえ…orz。

 まず、マッドサイエンティストの実験失敗によって男女二人が入れ替わります。もうコメント不要のありがち展開。

これだけ無邪気に喜ばれるとどうもなあ…。いや、読者としても嬉しいけどさ( ´∀`)…

 ところがここからが違います。
 入れ替わったままそれぞれの家に帰った二人はお互い、今の自分の身体をしっかりと確認しあうんですね。
 これまではお互いに自分の身体を気遣う余り、特に女の側が
「目隠し入浴」イベントを発動させるなどお約束の展開になりがち。
 ところが、…この漫画は違います。しっかりお互いに(今の)「自分の身体」を堪能するのです!!

もうこの見開きを一部だけ切り取るところはありません。全て完璧

 こういうのは「お約束」描写ですから、「とりあえずやっとけ」的にさわりだけで済ませてしまいそうなんですが、この漫画では
延々続きます。いやホントに。
 amazonカテゴリでは18禁指定になっていないので一部分だけ引用しますけど、本当にギリギリ。

これ以上は無理!でもしっかりやってるんですよΣ(゜Д゜)!!

 しかもこの漫画が凡百の作品と違うのは作者が女性であるためか、
女の子側も殆ど同じ比重で描かれていること!
 非18禁作品では信じられない展開。

Σ(゜Д゜)!女の子もやっぱり考えていることは一緒みたい

 私はこの一連の描写にクリエイターとしての
誠実さを感じました。恐らく少ない頁数により多くの展開と情報量を詰め込むことが出来る「小説」という形式ならばこういう展開もありでしょうが、それを漫画でやっているのです。
 それも「エロ目的」というよりは
「普通に考えたら絶対にこうなるはず」という風に順番に考えた結果こうなった、と言う風に読めるんですね。
 普通に考えれば匂わせる程度で済ませた方がいいのでしょうが、生真面目にやっちゃうのが。
 この漫画がTSファン界隈でカルト人気を得た理由がお分かりでしょう。

 更に、恐ろしいことにこの二人は遂に一線を越えます。
入れ替わった状態で。
 入れ替わった状態のまま性交渉というのはこの界隈ではそれほど珍しくありません。
 ただ、それは「元に戻るトリガー」であるから
仕方なく行われるのが殆どであって、必要も無いのに「興味本位」でやってみようというのはちょっと空前(絶後ではないでしょう)ではないでしょうか。

初めての体験に緊張する村上君(中身)。可愛い


この可愛らしい絵柄でトンでもないことを言っています。

 この後のシーンを見る限り、「18禁なし」サイトで紹介する基準を若干オーバーしている気がしないでもないのですが、この頃の少女向け学年誌に比べれば大人しいもんです(本当にヒドイです。レディコミかエロ漫画なみ)。
 使われている用語がとても直接的なので刺激的なのは確か。ただ、「18歳以上推奨」としておきます。
 エロというよりはグロテスクが先に立ってしまうやらしい漫画しかないことに辟易していらっしゃるTSファンには福音みたいな作品です。

このレビューでオチまで紹介するのは珍しいですが、ここは紹介しておかないとね

 改めて読み返したんですが、
本当に凄い漫画です。
 だって本当に「入れ替わって、お互いの身体をいじり、性交渉して、戻る」
しか描かれていないんです。
 一応数日間の生活ということで学校のシーンとかもあることはあるけど、必要最小限ですから。
 謎のマッドサイエンティストが誰なのかも分からないし、最終的な目的も分からない。他に何の実験をしているのかも分からないし、この実験が何の役に立つのかも分からない。
 ちなみにハッピーエンドでこの事態が二人を結びつけるきっかけになるのはソウル・オブ・サラマンドラとかと一緒。後腐れもなく、その意味ではとても安心して読めます(^^。

 単行本には短い別作品も収録されているので「完全に一冊丸ごと使ってシチュエーションのみの漫画」では無いのですが、ほぼそう言いきって構わない出来です。
 それにしてもこの日本海荒波さん、女性みたいですけどこの絵柄で全ての作品にやらしい要素を入れるというのは何だか凄いです。

 結構有名な作品なので一部のTSファンにとっては「あれの紹介まだか」物件だったかも知れません。
 私にとっては
「ここまでやってくれたか」「こんな漫画あるんだ」という一作。
 アップロード時点で在庫が大変少なくなっておりますが、興味のある方は是非。一応18歳以上推奨ということで。
2006.12.15.Fri.
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