TS関係のオススメ本08-06


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真城 悠


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魔術師2(マジシャン・スクウェア)(2002年・岡野剛・集英社)



 実際の表記には肩に小さく「2」が入って「乗数」となっています。表記を変えると「魔術師×魔術師」とでもなるのでしょうか。読みが「マジシャン・スクウェア」なるほど。

 作者はこの絵柄を見れば一目瞭然「地獄先生ぬ〜べ〜」の作画担当だった 岡野剛先生です。
 何故か人物の配置を「平家物語」から取ったということで主人公の天才手品少年は源九郎判官義経(みなもとの・くろう・ほうがん・よしつね=源義経)から「クロード・ホーガン」くん。
 相方が「武蔵坊弁慶」から「天台ムサシ」。

 一流の手品師を目指すムサシが転校してきたクロードに出会い、そのレベルの高いマジックに魅せられて周囲の人を巻き込みつつも成長していくという物語。

彼のマジックはいつもこんな感じです。友人たち曰く「ジャイ○ンリサイタル」!

 そこにクロードを巡る国際的な陰謀が絡み、クロードの両親の死亡原因の追究と大金を生み出す手品の元ネタ集「ハッティマン・ファイル」を巡る攻防戦が展開します。
 果たして「ハッティン・ファイル」のありかはどこなのか!?クロードたちは悪の組織から「ハッティマン・ファイル」を守り抜くことは出来るのか!?

 …こう書くと結構面白そうですよね。
 実際私は連載中には夢中になって読んでいました。
 しかし、単行本が2冊しか出ていない上に、2巻の巻末には読みきり版が特別収録されているとなると…お分かりですね。この作品もカメレオンジェイル(レビューはこちら。上から4番目)などと同じく
打ち切り漫画なのです。


次々に繰り出される専門用語の数々!

 「友情・努力・勝利」というジャンプ漫画のスローガンを
愚直なほどに守り通していますし、キャラクターも男女問わずとても可愛らしく、読後感も爽やかな佳作です。一応綺麗に終わっている様に感じられるのですが、とても大きな謎が積み残されたままである上作者がそれに自覚的であることから打ち切りが濃厚になってきた時点で強引に軌道修正して最終回に持っていったことは明白。

 
どうしてこの漫画は受けなかったのでしょうか?
 ま、そんなことが簡単に分かる位ならば打ち切り漫画の悲劇は無い訳です。
 考えられる点としては、何故か「手品知識」を「学習漫画風」に解説するというスタイルだったこと。

「薀蓄(うんちく)漫画」は沢山ありますが、実は「美味しんぼ」ではこの様に読者に
直接語りかけることはしてません。やってるのは「クッキングパパ」。かなりどうでもいい
プチ情報ですが「クッキングパパ」の料理は九州(博多)風味が強いので
どれも甘ったるい傾向があるそうです(友人の自炊派の証言)

 私も経験があるのですが、読者に無用な警戒感を抱かせるのは余り得策ではない場合があります。
 どういうことかと言うと、「美味しんぼ」や「マスター・キートン」の様に
余りにも膨大でかつ詳細にして叡智の詰まった“生きた知識”を矢継ぎ早に解説してくれる場合だと読者が途中から「(知識勝負でまともに対抗意識を持つのを)諦めて」しまうので害が無いのですが、そこまで行かないのに半端な知識を開陳されると「自慢か?知らなくて悪かったな!」と読者に反感を持たれてしまう危険性があります。

 実はこの点は連載中から気になってはいました。知識そのものはあってもいいと思うんです。「ジャンプ」には「民明書房」という前例もあることですし。

 ただ、少なくとも本筋を無視してキャラクターが読者に直接語りかけると言う形式は作者が大好きだったという「学習漫画」スタイルを踏襲したにしても
余りにも読者の平均年齢を下に見すぎた可能性はあります。

 今
現在の「週刊少年ジャンプ」を読んでいるのは大半が腐女子ですが(少し誇張)、当時は恐らく小学校高学年〜中学生〜高校生の男子が中心だったと思われます。
 この年代の読者がこれを読んだ場合「馬鹿にするな!」となった可能性が高い。

 そしてもう一つ…それが今回、この漫画をここで紹介する最大の理由でもあるのですが…それは主人公の美少年、クロード・ホーガンくんが
何かと言うと女装することです。

 主人公の一人、ムサシは幼い頃にマジック・ショウでライオンに襲われそうになった少女を身を挺して助けます。

腐っても猛獣なのでしっかり傷口は消毒しましょう。獣の爪は雑菌の宝庫です

 そしてその晩にその美少女はお礼の気持ちとしてたった一人病室に現れてプライベート・マジック・ショウを開いてくれたのです。



 それ以来、ムサシは
その美少女に一目ぼれしてしまい、結婚する事を夢見てド下手なのにマジックに血道を上げる訳です。

ムサシの脳内妄想では、今こんな感じになってます。
衣装はあくまでもハイレグなのな(爆)

 ところが、なんとその美少女は幼い頃の女装したクロードだったのです!

夢が打ち砕かれたムサシくん。そりゃあショックだよなあ…

 初恋の幻想が打ち砕かれたムサシは激怒し、落胆しますが本人はケロリとしたもの。

よくそんなに割り切れるなあ…タックとかコツカケでも使わないと無理っぽい衣装なのに…
あ、まだ子供だから大丈夫なのか(最悪だ)

 …えーとですね、多分
この辺が読者に距離を置かれた原因なのではないかと思うんですよ。
 私を含めた当時の少年読者たちは、この
「女装美少年」姿何やら複雑な気持ちになりつつ下腹部を押さえて目を逸らすしかなく、その「正体不明の胸の中のモヤモヤ」が嫌で毛嫌いしてしまったのではないかと…。

 漫画内で幼年期の少年に女装を強要するシチュエーションは幾つもあります。ただ、その場合の多くが子供用のドレスやスカートなどで要するに「露出度の少ない、演出過剰な服装」です。

 ところがクロード君はあろうことか
バニー・ガール風の体型がバッチリ出るセクシーな衣装なんですよ!

ちなみにこれ第一話の最初のページ。この頃の漫画はしょっぱなから
主人公の女装シーンなのが定番なのでしょうか(そんなことはありません)

 そりゃマジック・ショウですからお客さんの目を意識して目立ちそうなことなら何でもやります。
 それにしても、この全身ぺったんこのはずの幼年期の少年にこのひらべったい下腹部を見せ付けんばかりのセクシー衣装ってのは…
お客(ついでに読者も)の多くが求めているのは「そういうセクシー」ではないと思うのですが…。

 テレビドラマ「トリック」においては仲間由紀恵演じる売れないマジシャン山田奈緒子はチャイナドレスでマジックをやっていましたが、
その程度で十分なのでは。いや、実際どんなもんかは知りませんよ。あくまで漫画の演出としてね。

 ぶっちゃけ、第一話からこういう女装を回想でぶちかましてしまったので、
読者の興味はクロードの女装に一点集中してしまい(核爆)ストーリーを楽しむどころではありません(推測)。

 それも高校生以上の“大人”と言ってもいい美少年が自主的に女装しているのならばともかく、
小学校低学年くらいの年齢であろう美少年が半ば強要されてセクシーな衣装に身を包み「少女として」人前でマジックをさせられていた…ということになると、そっち系の趣味が無い人でもあらぬ妄想に身を焦がそうというものです(最悪だ)。

 しかも、
主人公のムサシが片思いしていたのが実は女装したもう一方の主人公だった…という倒錯的シチュエーションまで畳み掛けるとあってはフォローも難しい…。

 これがストップ!!ひばりくん!」(レビューはこちら。下から3番目)みたいに「そういう話ですよ」と告知されていたのならばともかくも、「そういうものではない」と思い込んでいたというか全く予想もつかなかっただけに戸惑いの方が大きかったのではないでしょうか。
私は大喜びだったのですが(爆)。

 ま、当然
「クロードまた女装してマジックとかやってくれないかなあ」とは思いつつも普通に(?)読者として楽しんでいると…何とまたやってくれちゃったんですねえ。

 後半に入ってムサシはマジック試験の大きな大会で素人としてクロードの為に必死に頑張ることになります。



何故かマジックの試験なのに体力と根性勝負みたいなのばかり。
でないとムサシが勝ち残る余地が皆無だからでしょう。
「展開はえー」の自己ツッコミが虚しい…orz。

 この時に主催者の隣にいた美女に注目。

 …ま、この時点で予想がついたと思いますが、実はこの美女は
女装したクロードだったのです!

Σ(゜Д゜)!そ、そんな無茶なー!

 …この時にはもう打ち切りが見えていた連載回数のはずなので自棄糞(やけくそ)だったのかもしれませんけど、
「ここまでやってくれるか(^^」というのが当時の偽らざる感想でした。

 晴れてコンビ再結成となった二人ですが、ここから一気に物語は深刻度を増し、「ハッティマン・ファイル」を巡る攻防が始まります。



天才マジシャンだったクロードの両親事故死の原因を知る黒幕。カミーユ・ノートン。
マジックのワイヤーで人の首を切断して殺害する(しかもマジック風演出)など
ちょっと演出が残酷でこの漫画の後味を悪くしちゃいました。彼自身もシャンデリア
の下敷きになるなどこの漫画の暗黒面ともいえる存在。
モデルは平家側の「能登守平教経(のとのかみたいらののりつね)」。

 個人的には「「味付け」程度だったはずの「女装」というスパイスが思わぬ読者の拒絶反応を生んで本体まで侵食してしまった迷作」として記憶されているのがこの作品だったりします。

 だって数ある打ち切り作品の中でも(女装以外の)
致命的欠陥が全く見当たらないんです。知人に話したところ「不人気の決定的な要因は確かにないが、人気の出る決定的な要因もまた無い」という評だったので「確かに」とは思ったものの、そんな程度の漫画は腐るほどある訳で、やっぱり個人的には原因は不明のまま。
 
裏表紙の狭いところに描いてある挿絵。
どちらもクロードくんの女装姿だったりします。う〜ん(*^^*

 TS的要素が嫌われたところはあるかもしれませんが、「らんま」の連載は9年間も続いた訳で「TS要素があるから駄目」という訳では全くありません。

 しかし、それにしてもこの
バニー風の衣装が本当にお好きですね(爆)。ラストに登場する生涯のパートナーであろう「吉野静」(当然静御前でしょう)にも屋上特撮しょーでバニーガール衣装を着せています。

 ともあれ、一般的な人気と言う意味では残念なことになってはいるのですが、
TSファンには間違いなく高得点!の本作。

 連載そのものがコンパクトにまとまってしまったために「怪我の巧妙」で
全2巻と買いやすくコスト・パフォーマンスも上々
 手品の豆知識も付いてお得な「魔術師2」(この表記しにくいタイトルも不人気の原因?)をこの機会に是非!天下のジャンプ・コミックスなので「カメレオン・ジェイル」と並んでまだ新品の在庫もあるのでクレジットカードが無い方でも安心!

 それでは、第二巻の作者自画像を紹介してお別れです。
2007.01.27.Sat.

…Σ(゜Д゜)
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