18歳未満お断りのアダルト(成人)TS
作品の紹介ページ09
「俺はオンナだ!?」(1993年・山際 遥・フランス書院) |
フランス書院といえば言わずと知れたポルノ小説の老舗です。 現在のライトノベルブーム(?)の遥か以前、1993年に勃興しつつあったローティーン向けの小説ジャンルに目をつけて言ってみれば「エロライトノベル」とでも言うべきレーベルを立ち上げました。それが「ナポレオン文庫」です。 2ヶ月に一度数冊が配本され、その後何年にも渡って刊行され続けたのですが何と言ってもTSファンから見たポイントと言えばTSに関連する内容の小説がかなりの頻度で含まれていたことに尽きるでしょう。 中には時代を越えて復刻されている様な人気タイトルもあったりします。 記念すべき第一回配本にいきなり爆弾級のタイトルがありました。 それがこの「俺はオンナだ!?」です。 タイトルは保守反動の象徴、森田健作氏の「おれは男だ!」というドラマを反転させたもの。この手の作品のタイトルの付け方に常に注目している真城なのですが、悪くないですね。 人間の赤ちゃんが誕生する前の「性の選別」工場(?)に働くうっかり天使「メリル」。 |
のっけから性別決定を間違えまくっているメリル。最悪だ |
彼女がしょっちゅう間違いを犯すもんだから赤ん坊は男性の肉体に女性の意識を持ってしまったりその反対だったり…いきなりシャレになっていない場面から始まります。 何と「性転換棒」を下界(人間界)に落としてしまった為、それを取りに行かされることになります。そしてこの「性転換棒」によって様々なトラブルが巻き起こる…という筋立て。 こう書くと何やら波乱万丈までは無くても、色々物語が展開しそうなのですが、実はストーリーらしきものは余りありません。 ゆきずりの女性にホテルにつれこまれていい思いをした主人公の「風間啓介」くんは、その時にたまたま手にしていた「性転換棒」をお尻の穴に突っ込まれ、何と女の子の身体になってしまいます。 |
そこはエロありのライトノベルですからひとしきり鏡で鑑賞した後は 一人えっちに及びます。母親に踏み込まれたところ |
その「秘密」を隠していざ学校に行ってみると何と性転換のきっかけを作ったあの女が教師として赴任しているではありませんか。 素っ裸に剥かれてゆすられ、器具を局部に差し込んでそのまま授業を受けさせたり、運動部の筋肉男に強姦させたりと散々な目に遭わされます。 |
冷静に考えれば何故かれが優遇されているのか分からない運動部の大男。 レイプするのが趣味だからなのでしょうか? |
ここだけの話、半分を過ぎても延々こんな調子なので「…この小説はいつになったら本格的に物語が始まるのかな?」と不思議に思ったのです。 こっ恥ずかしいことに、純粋な(?)ポルノ小説というのを読んだ事が無かったので、「こういうものである」というのを知らなかったんですね。何しろ主人公は流されるままにひたすら辱めを受けるばかりでこの状況を逃れようと具体的なアクションを起こすでもなく、また敵も根本的には一体何が目的なのかさっぱり分からないんです。 それも道理で、要するに「セックス描写をする」ことだけが目的なのだから「それを通して何かする」とかそういう風になっていかないんですよ。 ではその一番肝腎なセックス描写はどうなのか? …これも人生経験が足りなくて申し訳ないのですが、いつも18禁描写無しの「可愛くなっちゃった自分をコロコロと弄(もてあそ)ぶ」系ばかり読んで来た人間からするとどれもこれも「痛そう」な性的行為ばかりで、ちっとも楽しめませんでした。やれ道具を使うだの最も敏感な部分を鋭利な器具でつつくだの…。慣れている方にはこの程度の刺激は平気なのかもしれませんが…。 何より、読者として「女の子になっちゃって気持ちいい!」とか気分がほんわかと高揚してくるものが無いんです。 あ、文句ばっかり書いてますがこれは私の主観ですからね。ここは私の主観を書きとめるページです。 フィクションとしてこういう刺激に快感を覚える方には何よりのテキストである可能性は高いのでその辺りはご注意を。 |
こんなクラスメートたちもいずれ酒池肉林の地獄に… |
因(ちな)みにこの頃天使のメリルちゃんはどうしているかと言うと、下界に降りる際に性別決定に悩みすぎた為に時間切れでふたなりになって落とされてしまい、その辺をうろついていた不良軍団と酒池肉林。仕事しろよ。 この不良軍団は天使とセックスしたことですっかり更正して善人になってしまい、きちんと社会復帰するというオチがあったりしますがそれは別の話。 学校が乱交場になってしまう汚染は徐々に拡大を続け、美少年は軒並み美少女に変えられて校長や教頭、運動部連中の慰み者にされてしまいます。 何故かこの部分に関しての記述は結構淡白。やっぱり主人公一人に絞り込んだ方がいいのでしょうか。 また、この絵柄ですのでどこか信じている「お転婆な同級生の女の子」まで淫乱になってしまう救いの無い展開。 しかし、この辺になってくると主人公は完全に精神というか存在が女性化してしまっていて、ごく普通の女の子をいたぶる話にしか読めませんでした。「男なのに女の肉体に押し込められて陵辱されるなんて…ああっ!」というのが良かったので、ちょっと刺激を与えすぎて不感症といったところ。 ただ!ここでこのまま終わっていたならばこんなところで紹介はしませんよっ! 終盤に作者も想定していなかったであろう展開によって為された偶然の演出でかなりのハイレベルなTSの醍醐味が味わえる作品になっているんです! まず同級生の山森伸吾に相談して自分の肉体が女性化していること、そして毎日の様に慰み者にされていることを打ち明けます。 衝撃を受け、結局その晩同衾してしまう二人(この辺がポルノ)。 問題は翌日からで、その様なことは止めさせようと勇んで学校側に乗り込んでくるんです。 |
この狂った学校上層部を叩きのめして啓介を救出するんだ! 先ほどのクラスメートの女子がやられていますね |
しかし、敢え無く返り討ちにあってしまいます。 そこでどんな目に遭わされるか…もう、お分かりですね。 どうもこの敵役にして諸悪の根源である魔女「魔百合」は(そして作者も)美少女然とした美少年しか性転換していたぶる趣味は無いらしく、気乗りしていなかったのですが結局は「性転換棒」を突っ込まれ、伸吾まで女の肉体に性転換させられてしまいます! この緊縛された状態で「女になんかされたくない!」と必死の抵抗をする場面の読み応えといったら…(しかしこんな場面は普通のポルノ小説にはありえないでしょうなあ)。 |
素っ気無いイラストではありますが、男性の顔に大きな乳房、そして突き立った 乳首とポイントを的確に抑えたいいイラストです(*^^* |
どうして「偶然」かというと、物語の大半を「男」として過ごしてきて、かつ読者にもその様に認識されている彼は言ってみれば「物語内における『男性としてのアイデンティティ』をしっかりと演出された」立場だった訳です。 私がどうして主人公の啓介のTS後の陵辱場面にイマイチ乗れなかったかと言えば、彼はもうほぼ最初から女性としていたぶられているために「男性時とのギャップ」の演出がどうしても不足してしまうんですね。 この辺りは難しいところで、大半のTSものは「それがモチーフである」が故に冒頭でいきなり性転換したり入れ替わったりします。 これが中盤や終盤、下手すれば結末での性転換ともなると読者に大いなる混乱をもたらします。 平たく言えば読者の性的アイデンティティが混乱するんですね。 何のことは無い、そういう「刺激の強すぎる」シチュエーションを巧妙に避けているということなんですよ。 恐らくこれから先も中盤以降に主人公がTSする作品はそう沢山は出現しないでしょう。 平たく言えば読者が堪えられないから。 読者は序盤から中盤くらいに掛けて「あ、この物語はこういうものなんだな」と認識を確固たるものにします。 それが想像を超えるほどひっくり返されてしまうと、もう「楽しむ」段階を越えて「混乱」してしまうんです。 考えてみてください?例えば「スター・ウォーズ」のクライマックス直前でレイア姫とルークが入れ替わったらどう思いますか? 「日本沈没」のラストで“謎の性転換現象”で主人公の肉体が女性化したらどう思いますか? 恐らく「ふざけるな!金を返せ!」ということになると思うんですよ。「そんな話を観に来たんじゃ無いんだ!」と。 しかしこれが「トッツィー」(ダスティン・ホフマンの女装映画)とかだったら女装しても誰も怒らないんですよ。そりゃそうでしょ? ですから、ここで伸吾が女性化したのは本当に偶然で、脇役だったからこそ可能なシチュエーションだったのだと思います。 ただ、偶然だろうと何だろうと物語の大半を使って「男性」であることを演出されてきて、読者もキャラクター本人もそう思っていたのがいきなり女にされたのですから、主人公よりも遥かに手ぬるい(?)仕打ちであってももうビンビン響きまくりですよ!! 私のポリシーとして18禁あり作品をこんなに褒めるのはちょっと悔しいんですが(爆)、ここは本当にキました。 ナポレオン文庫で該当作は本当に沢山あるのですが、恐らくこの作品以外に紹介することは無いでしょう。それほど(偶然とはいえ)頭一つ抜けています。 |
女にされた直後、強姦担当(?)の岩男に目をつけられる伸吾 これでゾクゾクくる読者もいるんだろうなあ…実は私もそうなんですが(核爆) |
ここはもう本文をご紹介しますのでどうぞ。この破壊力たるや凄まじいものがあります。 |
この「受身の性への転落」の感慨こそがTS作品の醍醐味であり、「行き着くところ」(女性としてのセックスと女性としての絶頂)まで行けるのが18禁ありの作品の最大のアドバンテージなのですが、そこにはぜひともこういうお膳立てと演出が欲しいなあ、というのが私の願望だったりします。ただセックスすりゃいいってものじゃない。…しかしつくづくやかましい読者ですな(爆)。 実はこの「主人公を女にして陵辱し続けるものの、徐々に食傷気味になって対象を無差別に取って暴走する」という現象はまま見られます。 別にTSに関わらずとも、魅力的な脇役を大量に出しすぎて主人公がちっとも活躍できなくなる漫画なんて幾らもあるでしょ?そんな感じ。 別に綺麗にまとめる必要は無いと思うんですが、一応最後にはめでたしめでたしで終わります。この辺は折角のライトノベル風新レーベルだから、ということなのでしょう。 何しろストーリーらしきものは殆ど無く、普通の(?)読者がまず第一に知りたがる「結局 は何が目的だったのか?」が宙ぶらりんなままなのが消化不良感を煽ります。 他にも何故か本文とイラストが一致していない場面が散見され、服を着ているはずの場面で全裸だったり、全裸のはずの場面で服を着ていたりします。 しかし、何度も言いますが偶然産み落とされた伸吾の強制性転換シチュエーションが白眉。これだけでも十分過ぎるほど楽しめます。 ひたすらセックス!セックス!なので、一部の下着とか以外は「女装」方面は全くフォローしていませんが、それは仕方が無いでしょう。 ということで、結論としては真城的にはかなり楽しめました。恐らく作者の意図とはちょっと違うところで楽しんでしまったとは思うのですが、楽しんだのは間違いありません。 このレビューで興味を持った方ならばまず間違いないでしょう。 2007.01.14.San. |