その2
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 その“女性”はバレリーナのチュチュに身を包んでいたのである。

 チュチュばかりではない。そのつま先を抱擁するトゥシューズに濃厚なメイク、ティアラやピアスまでが完璧に彼女を白鳥たらしめている。とりがらの様な細い身体に透き通るような白い肌は、これが本物のバレリーナなのか・・・とこれまでまるで生活からかけ離れていた存在が間近にいることをより実感させた。

「それはそうとさっきの話なんですけど」


第一回より

イラスト 平岡正宗さん



 高速・・・何号線だこりゃ?・・・ふん。
 OLはしょぼしょぼする目を擦りながら現在位置を確認した。日はもう高く上っている。車体に埋め込まれたデジタル表示は午前十時を過ぎていた。
「どうです?」
 信号が青になる。動き出す車。
「しかし・・・」
「何です?」
「日本ってこんなに広大な田舎が広がっていたんですね・・・いくら走っても山の中と田んぼの中ばかりで・・・」

第一回より

イラスト 平岡正宗さん




 一瞬のことだった。ぴくぴくとわななく唇…。
 全身が跡形も無く変貌し、「あの姿」になってしまったのである!

「ああっ!!」

 ベッドの上にスカートを広げて「ぺったんこ座り」になってしまう俺。
 その時だった、テレビの中の、今の俺の姿と同じ「あの姿」の娘が何かを示した。
 そこには俺がデザインした灰皿の映像が映し出されていた。

「…?…!!!」

「不条理劇場」
「この卑しき地上に」より


イラスト 鬼邪太郎さん

 そこにはだぶだぶのガクランに身を包んだ、ストレートロングヘアのほっそりした美少女が映っている。
 そしてそれは…今の俺の姿であった…。そして・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 な、何だこれは?一体…何が起こったんだ?
「あ…あ…あああ…」
 鏡に映るその姿は、瞬く間にセーラー服姿の女子高生となってしまった。


「秘儀の研究室」より


イラスト 浅島ヨシユキさん



冬コミ同人誌新刊(予定)
「女体変化」裏表紙

イラスト おおゆきさん

 一歩踏み出そうとしたその時だった。

「あああっ!」

 視線を自らの身体に落として見ると・・・。

 な、なんてことだ!し、信じられない・・・俺は…俺は…バニー…ガールに…。

「あ、あなたぁああ!!」

「不条理劇場」
「日本の一軒家」より

イラスト 神木亨太さん

 ふと気が付くと周囲は好奇の目で爛々としたおじさんおばさんに囲まれていた。

「い…いやあの…その…これは…」

 病院の待合室のきらびやかな衣装のバレリーナはまさしくシュールな光景と言うほかは無かった。

「晶くんシリーズ」
「白鳥」より


イラスト 如月 澪さん


「華代ちゃんシリーズ」
「高嶺の花」より

「か、からだが…勝手に…ああ!」
 その声がギャラリーに届くことは無かった。

 そして、意思に反して華麗な新体操を踊り続ける伊集院は悪夢を見た。
 瀬石さんが、他の聴衆と同じく呆然とこちらを見ている!
 ああっ!せ、瀬石さん!あ、あなたに…こんな姿を…。い、いやだああ…な、なんでこんな…ああ!
 その目尻から羞恥の涙をほとばしらせながら、レオタード姿の美少女となった伊集院は踊り続けた…。


イラスト 小笠原空馬さん

「華代ちゃんシリーズ」
「高嶺の花」より

「きゃー!伊集院さまー!」

 自分の身体を見る伊集院。そこには大胆に自分の美しい体型をさらす、あられもないレオタードがあった。ぽっちりと出ていた胸の先がどこからともなく現れたパッドでふ…とカヴァーされる。
「あ…」
 伊集院はレオタードに身を包んだ美少女になってしまった。

イラスト 小笠原空馬さん




「魔法少女ナナシちゃん!」
連載第2回(2002.9.22.)
より
 体制を整えた女の子は立ち上がり、暴漢の方をビシリ!と指差してはっきりと言う。
「大人しく観念しなさい!暴行未遂の現行犯で逮捕よ!」

イラスト 水原れんさん

「と、豊川…さん…?」
 林さんの持つコップから波立ったコーヒーはぴちぴちと落ちる。
 豊川は、その林さんと同じ制服に身を包んだ、可愛らしいOLになってしまった。
「は、林さん…違うんだ。これは…その…」
 その声はすっかり女性のものだった。
「華世ちゃんシリーズ」 「パニック・オフィス」より

イラスト 出川鉄道さん


「魔法少女ナナシちゃん!」
連載第106回(2003.1.4.)
より
 激突の瞬間はなかなか訪れなかった。
 ・・・なかなか時間がかかるな。スカートがめくれあがって脚やら下半身やらが寒いの何のって。
 それにしてもみっともない死だ。
 女装した上に転落死・・・。
 その上どこの誰とも分からない謎の少女への変貌・・・。
 それはいいんだけど、まだ地面に付かないのかな。
 ・・・おかしい。幾らなんでもおかしい。
 現実が認識できなかった。
 何だ?これ?
 現在身の上に起こっている出来事をそのまま形容すれば・・・僕はふわふわと浮いていた。
 少しずつ大きくなる地面。
 僕は、綿の様にそのばにふわりと着地した。
 真横に広がったスカートが、ふぁさ・・・と落ち着く。
 
た、助かった?のか?


イラスト 水原れんさん

 ひろみは、いつもその店員が気になっていた。
 毎日の様にコンビニに通っていると、自然と雑誌の発売日を覚える。これは前にも言った。
 とにかく食っちゃ寝の生活なので、どんな時間だろうと平気で出かけて行く。
 特に家族に会わない様にするために、夜の2時とか3時とかに出歩くことも珍しくない。睡眠時間は充分なので平気なのである。
 その店員は殆ど毎日働いていた。
 日曜日と月・水・金かな。うろ覚えだけど。
 月曜日発売の雑誌を日曜の深夜、日付が変わる頃に梱包を解いているのを見かけたのが印象に残っているから、日曜の深夜にいるのは間違い無いみたいだ。
 すらりと背の高い・・・まあ、格好いい兄ちゃんだ。
 この頃のひろみの男性を見る目は、きっと少年の心の持ち主として同性としての憧れのものだっただろう。スポーツマンに憧れるような物だろうか。
 稀に・・・ごく稀に目があったりするのだ。
 普通の高校生ならまず出没しないはずの真昼間に現われたりするので、こちらも随分印象的に思われているはずだ。
 ・・・何時の間にかそんな世間知の回る娘になっていたひろみだった。
「華代ちゃん番外編」子供の日・後日談より
このイラストはオーダーメイドCOMによって製作されました。
クリエイターのあぷぷさんに感謝!


「魔法少女ナナシちゃん!」
連載第100回
(2002.12.29.)より

 どの部屋なのか分からない。
 そこには鏡があった。
 これは・・・夢だよ。
 夢に決まってる。
 そこには女の子がいた。
 暗くてはっきりとは分からない・・・いや、暗いから叫ばなかったのかもしれない。
 金髪のとんがり帽子に膨らんだ肩。
 膝まであるブーツ。
 そして・・・横に広がったスカート・・・。


イラスト 水原れんさん


 

 バタン!と勢い良く閉められるドアの音。
 もっと静かに閉めてくれないかな、と彼・・・いや“彼女”は思った。
「どうでした?」
 声を掛けられた少女はスカートの乱れを直している。直すまでも無く元から大胆に短いそのチェックのプリーツスカートはその脚線美の大半を直接空気にさらしている。


「四人の女」 第1回より


イラスト みろりろ(略)さん


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