おかしなふたり 連載321〜330 |
第321回(2003年08月02日) 聡(さとり)はゲーセンの前の道まで出てきてしまった。 「お、おい!どこまで行くんだよ」 「別のゲーセンまで行こうよ」 「どうして」 「真昼間からファーストフードでも無いでしょ?」 「いやその・・・」 相変わらず一方的に話を進める娘である。 ふと後ろを見ると、こちらに注目している人間が何人かいる。 なるほど、これが所謂「大名行列」という奴の残滓か、と思った。 「大名行列」とは、滅多にいないゲームセンターの女の子プレイヤーの後に男共がぞろぞろついていく現象を指すという。 歩(あゆみ)は目の当たりにしたことは無かった・・・まあ、歩(あゆみ)がゲーセンに通っていた最後の頃には聡(さとり)も付いて来ていたから、それに近い現象はあったかも・・・。 ん?ひょっとして聡(さとり)のゲーセン通いは兄貴について行っていた副作用なのか? ・・・とか何とか考えているうちに、「プリクラ専門店」みたいな店にたどり着いた。 |
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第322回(2003年08月03日) 「よっしゃープリクラとろうか」 「あ、あのなあ・・・」 こちとら健康な男子校生である。幾ら女連れとはいえ、こんなきゃぴきゃぴした店に入ってくるのは抵抗がある。 「いーじゃんいーじゃん」 相変わらず強引な妹。 しかし、よく見ると結構男いるなあ・・・何だか軟派な感じの所謂「ギャル男」みたいなのもいるが、歩(あゆみ)と同年代かもう少し年下の男の子同士がいたりする。 ・・・みんな結構抵抗無いんだなあ・・・。 「あたしのおごりだから」 気が付くとほぼ密室の「全身プリクラ」とやらの正面に来ていた。 「ここって衣装とか貸してくれるのよね。見た?」 「いや・・・」 しばらく来ないうちにプリクラはそんな進化を遂げていたのか。 「ほら、あそこあそこ」 ひょい、と密室から顔を出して一方を指差す。 見ると確かにセーラー服だの簡易だがドレスっぽい衣装まであったりする。 「ま、でもあたしたちには必要ないか」 やっぱりそう来るか。 「ひょっとして・・・考えてる?」 「うん!」 にこにこで言う聡(さとり)。 こうなったらもう止められないだろう。 「幾つか聞きたいんだけど」 |
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第323回(2003年08月04日) 「ん?何?」 歩(あゆみ)はこうした「全身プリクラ」のシステムはよく知らないのだが、半・個室状態ではあるものの、カラオケボックスの様に時間制で課金とかでは無いだろう。 だからこうして無駄話している時間もある訳だ。 「さっきの試合なんだけど」 「ああ、その話ね」 「必ず途中から押されるよな。最後には逆転して勝ってたけど」 「うん。あんまり一方的に勝っちゃうと暴れる人もおおいんだ。だから必ず一本は“いいところ”を作ってあげるのよ」 「・・・え?」 「それに“もう少しで勝てそう”と思うから次から次へと入ってくる訳でしょ?あんまり一方的だったら成立しないじゃない」 なんということだ。そこまで考えていたのか。 「でも、諦めがいいよな。一回負けただけで」 「あのさあ、お兄ちゃん。あたしたちのお小遣いって幾らよ」 「俺が5,000円。お前が4,000円」 城嶋家のお小遣い事情はこんなものである。 「でしょ?毎日何百円も使ってられないじゃん。あたしは一日一コインしか使わないよ」 「あ・・・そう」 「まあ、それでも毎日1時間くらいはやってるけど」 トンでもない話である。 「ひょっとして最後って、相手に華を持たせたのか?」 「うーん、嬉しいんだけどそれはちょっと買いかぶりすぎ。相手の見せ場を作ってあげたらそのまま次の一本も負けちゃったの」 といってぺろりと舌を出す。確かに“流れ”というか“勢い”というのは存在する。それは歩(あゆみ)も経験がある。どれほど実力が離れていても偶発的に一本取られることはありえない事ではない。ましてや聡(さとり)みたいに毎回必ず相手に一本取らせるスタイルでは“もしも”の可能性は高まってしまうだろう。 「ま、なんか今日も筐体叩かれたし、潮時かなーとは思ってたけど」 それほど執着してない雰囲気である。慣れているのだろう。 |
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第324回(2003年08月05日) 「えーと、何にしようかな〜」 早くも写真を撮ることに頭が行っている女子高生。対戦格闘ゲームもいいけど、プリクラも好きというところか。 「今日ってさあ、写真撮る為に呼んだの?」 「うん。何?何か用事とかあったの?」 「いや、別にそういう訳じゃないけど・・・」 「遊びに来るのに理由なんていらないじゃん」 確かにそうなんだが、そろそろ歩(あゆみ)も高校二年生だ。そして時期は夏休み直前。殊勝なことを言う様だが遊んでばかりはいられない。 一年生の聡(さとり)とは意識に少しずれがあった。 心配性というか、特に何かをしている訳でもないのに他人に左右される時間を少しでも減らしたい欲求に駆られ始めていた。 そこも社交的で、お兄ちゃん大好きの聡(さとり)とのギャップだった。 歩(あゆみ)も決して自閉的でも引きこもりでも無いのだが、物怖じしなさ過ぎの妹ほどではない。 「・・・ん・・・」 胸の先がむずむずし、ぐんぐんぐんっ!と盛り上がってくる。 「ま、とりあえず女の子になってもらうってことで」 こともなげに言ってくれる聡(さとり)。 とか何とか言っているうちに、その髪もばさり、といつもの様に腰まで伸びていた。 |
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第325回(2003年08月06日) 「うーん、相変わらず可愛いなあ・・・」 いや、“可愛い”ったって自分でやってるんじゃん・・・と思ったのだが、もうこれは抵抗できないので仕方が無い。 まあ、流石に無いとは思うけどあんまり邪険にしてまた衆人環視の中で変な格好をさせられたんでは適わないし・・・。 とか何とか考えているうちに、お尻がむくむくと膨らみ、脚も内股になって行く。 「・・・ん・・・ふぅ・・・」 この時自分がどんな悩ましい表情をしているかと考え・・・るのはやめた。 「でもって・・・ここを・・・」 下腹部からしゅしゅしゅっ!と物体感が消える。 「わあっ!」 「はい、これでバッチリ」 「・・・ふう」 身体が完全に女になり終わったらしい。 ふと見るといつもはほんの少し見下ろしている聡(さとり)の顔が真横にある。 女になると身長も一回り小さくなるみたいだ。 「実はね〜。今日は珍しく色々研究してきたのよ」 「いつも研究してんじゃん」 声も高くなっている。もう慣れたけど。 「ま、そーなんだけどね」 「ひょっとしてゲームキャラのコスプレとか?」 「あ、そういう手もあったか!」 ・・・墓穴を掘ってしまった。 |
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第326回(2003年08月07日) 「うーん、ゴメン!今日はそういう用意が無いんだよ」 用意も何も念じるだけで変身させられるじゃないか・・・。 「とりあえずこんなんでどーだろー」 と、どんどん制服が黒くなってくる。 「またメイドか?」 「うんにゃ違う」 どういう会話なのかと思うが、この兄妹ではそろそろ珍しくなくなっている。 「あ、ごめんごめん忘れてた」 と、言うが早いが胸を“むにゅっ!”と締め付ける感触が襲ってくる。 「・・・っあ!」 それは毎度お馴染みブラジャーであることは予想がついた。 「あのさあ、聡(さとり)」 「ん?」 「下着まで女物にする必要ってあるのかな?」 すっかり可愛い声で聞く。 実は正面きってこれを聞くのは初めてだったりする。 |
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第327回(2003年08月08日) 「駄目よ!ちゃんとブラしないと形が崩れちゃうじゃん」 人聞きの悪いことを大声で言うなっての! |
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第328回(2003年08月09日) 「いや、てゆーかさ」 歩(あゆみ)は抵抗を試みる。 「こちらはこの先ずっと育ってく訳じゃないんだし、そんな見えない所までこだわらなくてもいいよ」 そう、下着は“見えない”では無いか。 「あら、そうかしら?」 「そうじゃんかよ」 「でも、薄着だったら胸の先のぽっちりがくっきり見えちゃうよ」 「う・・・」 そんな薄着をしたことってあったかな?とちょっと考える。 「ブラ無しだと結構胸の先っちょとか気になるのよ。こすれるし」 さらっとかなり際どい話題を流している妹。少なくとも普通の兄妹の会話とは違う。 「あたしも最初にし始めた時は苦しかったんだけど、結局つけてた方が落ち着くから。ねっ!」 といってウィンクする聡(さとり)。 確かに可愛い。 |
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第329回(2003年08月10日) 最近は聡(さとり)もかなり器用になってきて、会話しながらこちらの服を変えたりすることが出来るようになってきている。 ブラジャーがどうこうという、少なくとも兄妹がゲーセンのプリクラコーナーで話すべきではなさそうな話題を交わしながら歩(あゆみ)の服の中ではトランクスがパンティに変わり、シャツがスリップに変わっている。 「・・・あのさあ」 身体を軽くひねって自分の身体を見下ろしている歩(あゆみ)。 長い髪がぶわりと揺れて、実に魅力的である。 「・・・可愛い・・・」 聞いてないのか。 「ブラジャーの話は分かったけど、その他の下着はやっぱり必要ないんじゃないのか?」 「まあまあ、硬いこと言わずに」 「はぐらかすなよ」 「でも女の子の服の上からトランクスのラインが見えたら幻滅ものだよ。こういうのは見えないところから気を遣わなきゃ」 「誰にだよ」 「あたしとか」 「・・・」 もう諦めるしかないかな。 大きく突き上げているハト胸の白い制服のシャツが赤と黄色の原色に変わっていく。 同時にスニーカーがぴっちりしたブーツに変化しつつあった。 |
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第330回(2003年08月11日) 抵抗する間も無く、全身が原色に染められていく。 「あ・・・あ・・・」 今度は変えられる対象の予想が付かない。 ま、いつもつきにくいのだけども、これまでものものはある程度の時点で“まさか”とか何とか思いつつ予想が付いた。 だが今度は余りの全身のちぐはぐさに却って分かりにくいものがある。 「あのさあ、これって・・・」 今まさに変化しつつある身体の感触の中、口を利く余裕があるとは・・・慣れとは恐ろしい。 |