おかしなふたり 連載1161〜1180 |
第1161回(2007年02月01日(木)) そもそも全身鏡にしろデジカメにしろ、兄を着せ替え人形にする以外の用途も沢山ある。 別に大出血ではない、というのが我が妹の主張だった。 ああ、これでまたこの格好で撮影会だなあ…と面倒くさく思ったり思わなかったり。 放っておけばだらだら汗の流れ落ちる陽気なので薄布一枚で局部だけ隠している様な格好でも寒くは無いけど…やっぱり17歳の男の子としては抵抗があるんだよ! |
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第1162回(2007年02月02日(金)) 「ほいっと!」 またまた全く必要が無いのに妙なポーズを取る聡(さとり)。 歩(あゆみ)は見るのが怖くて一瞬目をつぶる 。 「はい、戻ったよ」 |
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第1163回(2007年02月03日(土)) 恐る恐る身体を動かす。 動かした瞬間にひやりとする空気が無い。 露出度が下がったみたいだ。 目を開けて身体を見下ろす。うむ、問題ない。 「よし、じゃあ再開しよう」 「ん」 保留ボタンを解除する。 |
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第1164回(2007年02月04日(日)) 「あ、もしもし…」 この瞬間に、電話に出て何を話そうかを考えていなかったことに気がついた。 しかし、今更立ち止まれない。 『あ、ごめんねー』 「いや別にいいけど…」 『で、どーしたのよー。いつ知り合ったのぉ?』 |
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第1165回(2007年02月05日(月)) 完全に芸能レポーターのノリだ。もう誤解を解消するのは無理っぽい。 「いやまあ…何となくかなあ」 何も考えていないので返答もその場のノリである。しかし、ここで余りそれっぽいでっちあげをしてしまうとあとで辻褄を合わせるのが難しくなる。 ま、口裏を合わせるのは簡単だが。どっちも自分なので。 |
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第1166回(2007年02月06日(火)) 『うらやましいなあ。あたしあゆみちゃん…あ、男の子の方ね…とデートしたこととか無いよ』 ええ〜っ!?こっちは寧(むし)ろしたいくらいなのに…。 「その…別にいいよ」 『駄目駄目!浮気しちゃ駄目だよ!あなたはあゆみちゃん同士仲良くしてなさい!応援するよ!』 そんなことは不可能だっちゅーに…。 |
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第1167回(2007年02月07日(水)) 『うん分かった!ありがと!ゴメンね。納得したよ』 何だか分からないが納得してもらえたらしい。 この辺も妹に似ている。気が合うはずだ。 『それにしてもこんなちょっとの時間に部屋を抜け出してまで彼女に会いに行くなんてやけるな〜』 確かに、ものの数分だったからな…。 |
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第1168回(2007年02月08日(木)) 『ま、いいわ。じゃあとりあえず最後に女の子のあゆみちゃんに代わって』 来た!必ず来ると思っていたこの要望である。 携帯電話の反対側に耳を引っ付けるようにして聴いていた妹が飛びすさる。…事情を察したようだ。 でもって自分の掌(てのひら)に人差し指を押し付けている。 “保留しろ!”ということみたいだ。 |
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第1169回(2007年02月09日(金)) 「…じゃあ、ちょっと待って」 ピッと保留ボタンを押す。 建前では目の前にいることになっているのでこんなにタイムラグがあるのはおかしいのだが、仕方が無い。 「女の子の方に替わってって言われたでしょ?」 「…楽しそうだな」 「うん。楽しい」 こぼれそうな笑み、とはこの事を言うのだろう。 …ま、可愛い妹を楽しませられて嬉しいよ。 |
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第1170回(2007年02月10日(土)) ぼうんっ!…という音はしなかったが、それ位の感覚だった。 「…っ!!」 また全身がひんやりする。 「わああっ!」 「はい、出来上がり」 今度は目が痛くなりそうな真っ赤な水着が目に飛び込んできた。 相変わらず露出度が高い。 |
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第1171回(2007年02月11日(日)) 今度は上下に分かれておらず、繋がっている…んだけど、どっかのデザイナーが気合を入れすぎたのか背中やらお腹やらがばっくり開いているんだけど、ナナメに入り組んで生地が繋がっている。 …勿論、おっぱいが半分出ていて、危うく見えそうなハイレグ気味であるのは変わらない。 聡(さとり)は相変わらずロングヘアが好きらしくって、お尻が毛先にちくちく当たる。 「…」 思わず自分の身体をまじまじと見てしまう。 |
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第1172回(2007年02月12日(月)) 自分の身体ながら惚れ惚れするほど美しいプロポーションである。 この100%むき出しになったこの脚なんぞ、確かに全身鏡で見たいし、写真に残したいと思わない事も無い…って何を考えているのか! そんな場合じゃないっての! ニコニコしている妹を尻目に携帯電話の保留ボタンを押しなおす。 …少なくとも本物の女の子であってもこれほど目まぐるしく着替えることは無いと思うんだが。 |
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第1173回(2007年02月13日(火)) 「…もしもし?」 声もちゃんと女の子に変わっている。当たり前だが。 『あ、ごめんね。何度も』 「はあ…」 派手な水着姿で憔悴している美少女・歩(あゆみ)。 |
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第1174回(2007年02月14日(水)) 『もう引き離さないから安心して。男の子の歩(あゆみ)ちゃんに帰ってきて帰ってきて言ってたけどもう言わないからふたりでラブラブしててよ』 そんな事は出来ないけど、気持ちはありがたい。 「あ…そうなんだ」 声に明らかに安堵感が漏れた。 |
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第1175回(2007年02月15日(木)) 『あたしたちの方から行くから』 心理的には思わずぶっ飛んで天井に頭をぶつけそうになった。 「え、え〜と…それは…!?」 必死にこらえたがムチャクチャに動揺しまくっている歩(あゆみ)。 言うまでも無くこれまで話してきた話は全部虚構である。近所に女の子の「あゆみ」の家なんてないし、遠距離で携帯で話していることになっているが実際には同じ家の隣の部屋だ。 そもそも「女の子の「あゆみ」」が存在しない。 いや、いることはいるけど別人ではない。同一人物だ。 |
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第1176回(2007年02月16日(金)) 『さっちゃんと一緒に行くから安心して!…ってさっちゃんがいないな』 水着がずれて大事なところが見えそうなほど無言でじたばたする歩(あゆみ)。何だか涙目になっている。 何故か付き合って聡(さとり)までじたばたしているので無言で変な動きをしている水着と普段着の美少女二人、という訳の分からん図がそこに出来上がる。 |
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第1177回(2007年02月17日(土)) 「やー、いーよいーよ」 もう、動揺している声がするのも構わずに言う歩(あゆみ)。 『いーからいーから遠慮しないで!』 歩(あゆみ)は必死に自分の胸を指差して聡(さとり)にアピールする。直接声に出せないのでこうするしかない。 「?…?」 しきりに首を捻っている聡(さとり)。可愛い。 |
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第1178回(2007年02月18日(日)) 指差されているおっぱいをむにゅっ!と揉む聡(さとり)。 反射的にゴン!とげんこつで聡(さとり)の頭を殴る歩(あゆみ)。 ムチャクチャ怒っている歩(あゆみ)。 口を大きく開けて口パクする歩(あゆみ)。 “も・ど・せ!も・ど・せ!” |
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第1179回(2007年02月19日(月)) 珍しく口を尖らせてひょいっ!とアクションする聡(さとり)。 歩(あゆみ)は一瞬にして元に戻る。 聡(さとり)がじんじん痛むほどげんこつで殴られてもキレ返さないのは流石に兄とはいえいきなりおっぱい鷲掴みはヒドイと自覚があるからだろう。 「あ、もしもし!恭子ちゃん!」 切羽詰った男の声で畳み掛ける歩(あゆみ)。 |
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第1180回(2007年02月20日(火)) 「今すぐ帰る!今すぐ帰るからちょっと待って!」 未だに胸にそこはかとない乳房の重みと水着で締め付けられる感覚が残っている。 ともかく「女の子のあゆみの家に行く」ことは何としても阻止しなくてはならない。 |