おかしなふたり 連載1481〜1500

第1481回(2008年03月03日(月))
 しかし、女の格好でスカートでない格好って何があるんだろう?
「じゃあ…体操服とか」
 言った瞬間だった。
 ぶわっ!と何かが躍動した感覚があったかと思うと、また身体が開放感にさらされる。
 物凄く生地が覆い衣装と、それほどでも無い衣装を行ったり来たりしているので変化が極端から極端である。


第1482回(2008年03月04日(火))
『…どお?変わった』
「…ああ」
 何故か、あれほど暑苦しかった首の後ろもすっきりと涼しい。
 ふと見ると三つ編みで二本にまとめられた髪がぶら下がっている。
 そして…。
「…これはこれで恥ずかしいな」
『あ、ブルマなんだ』
「…そうだよ!」
 かつて聡(さとり)の部屋で着せ替え人形にさせられていた時にも何度も着せられた「体操服&ブルマ」の格好だった。


第1483回(2008年03月05日(水))
 パンティと殆ど変わらない範囲しかカバーしていない「ブルマ」は脚の殆どを露出しており、ミニスカートと脚の露出度では変わらない。
 だが、ちょっと強めに下腹部をカバーしてくれているので一応男の子である歩(あゆみ)には、それこそ「長いスカート」よりも落ち着くものがある。

 足元を見るとご丁寧に運動靴になっている。ゼッケンには「城嶋」とあり、本当に無駄に芸が細かい能力だ。


第1484回(2008年03月06日(木))
 もったりとしたメイクの感覚もなくなっており、実に清清(すがすが)しい。
 鏡を観て「メイク前」と「メイク後」を行ったり来たりするところを視覚で確認していないからかも知れないが、何だかメイクなんて面倒くさい上に何とも気持ちが悪くていらいらするんだが…女の人は大変だ。
「…ま、とりあえずこれでいい」


第1485回(2008年03月07日(金))
 その場で、軽くトントンとジャンプしてみる歩(あゆみ)。
 三つ編みの髪が楽しそうに踊り、そして…ブラジャーの中の乳房が分かりやすく弾んだ。
 …聡(さとり)の野郎…高校二年生にしちゃあ大きすぎるんじゃないか?

 …ま、いいけど。
『これで確実だね。この部屋にいると声とかイメージだけで変化しちゃうよ』


第1486回(2008年03月08日(土))
「その様だな」
『じゃあちょっとイメージしてみるね。声じゃなくて強く思い込むだけでも変わるのかどうか』
「ちょっと待った!」
 ブルマ少女が制止するリアクションを取りながら言う。


第1487回(2008年03月09日(日))
『…何?』
「何でもいいけど、出来たら余りぞろっとした格好は無しな。こっちは狭いんで動きにくいんだ」
「大丈夫だよ。動きにくい格好なんてそれこそ…」
 一拍間があって、
「あれくらいしかないじゃない」

 …どうやら直前で言葉を飲み込んだらしい。
 そう、うっかり口にしてしまえばそれを変化が拾ってしまう可能性があるのだ。


第1488回(2008年03月10日(月))
『よし…じゃあちょっと待ってね』
 受話器の向こうでしばしの沈黙。
『じゃあ…思い切ってこんなんでどうだ!』
 そういうが早いが変化が始まった。
 凄い勢いで白くて野暮ったい分厚い生地の「体操服」は見る見る喪失してへっこんだお腹が露出していく。


第1489回(2008年03月11日(火))
 体操服の内側には白いブラジャーがあるのだが、それが派手派手しい原色となって露出する。
「うわわわわっ!」
 ブルマもビキニパンツになり、同じく派手派手しい原色となり、更にキンキラの装飾が施されていく。
 良く観るとブラジャーも同じだった。


第1490回(2008年03月12日(水))
 ちょっと気付きにくかったが、お尻側はロクに生地も無い状態になっている。
 所謂(いわゆる)「ひもパン」状態だ。
 「Tバック」という奴である。
 こういう下着はチャイナドレスを着せられた時にも付けたことあるけど…あの時は大胆なスリットは入っているとはいえちゃんとスカートに隠されていた。
 今度はもうモロ出しである。
 流石にマズイんじゃないか。


第1491回(2008年03月13日(木))
 とか何とか思っている内に変化は終了していた。
「…」
 水着のビキニ以下の露出度で、大事なところ以外は全裸みたいな有様だ。
 真夏なので寒くは無いが、日陰ではあるのでひんやりする。
 それでいて湿度はみっしりあるのだから肌の一部には玉の様な汗が浮かんでいるという最悪な状態だ。
 そして…良く見るとごく普通だった肌の色も健康的に黒々と日焼けした状態になっている。


第1492回(2008年03月14日(金))
 かるく“ゆさっ”と身体を揺らしてみた。
 頭の上に乗っているオブジェのみならず、背中からも大きく感触が伝わってきた。
 大きすぎるそれはトイレの両方の壁に当たり、つっかえている。
 脚には膝までのブーツが金色に輝いている。
 良く見ると原色だった水着は粒々の装飾品にびっしり覆われて銀色になっている。
『ど、どうかな…』


第1493回(2008年03月15日(土))
「成功なんじゃねーの?」
 妹に「変身」させられる度に二回に一度はさせられるメイクとイヤリングの感触が再びまとわりついていた。
 この公衆トイレの中には鏡は無いのだが、確認しなくても分かる。
 歩(あゆみ)はサンバカーニバルで踊っているダンサーみたいな格好になっていたのだ!

イラスト:おおゆきさん


第1494回(2008年03月16日(日))
「あのさあ…これ、動きにくいだろ」
『…ごめん。やってみたかったから』
 もう怒らないことに決めた。やっぱギスギスするのは嫌だしね。
「もういいよ。自分でやるから」
『ごめんね』
「ちょっと待てよ…」
『どうしたの?』


第1495回(2008年03月17日(月))
「冷静に考えればこうやって電話が通じてるんだから普通に変身させて戻ればいんじゃねえの?」
『…そっか』
「何とか男でも女でも関係ない格好があればいいんだがなあ…」
『ちょっと待って。遠隔操作そのものは可能なんだよね?』
「そのはずだ。学校でもやったろ?」
『じゃあお兄ちゃんは動かないで。今この部屋にいたら些細な一言で変身しちゃうのは分かった。でも別の部屋に行けば大丈夫だと思う』


第1496回(2008年03月18日(火))
「といっても別の部屋でこんな会話を聞かれる訳にはいかないな」
『そろそろ下に戻らないと怪しまれる』
「じゃあ俺の部屋に行け。あそこで内側から鍵を掛ければいい」
 公衆トイレの男子の中で「俺」とか言っているサンバカーニバルのダンサーというのもシュール過ぎる絵面である。
『用心深いなあ』
「いいから早く移動しろ…ちょっと待った」


第1497回(2008年03月19日(水)

『何?』
「とりあえず今の格好はまずい。じゃあOLのスーツで」
 言うと同時にサンバカーニバルの巨大な羽根飾りがしゅるしゅると消失して行き、お尻が殆ど丸出しになっていたものが常識的な生地のパンティへと変化し、そして女物の肌着と服に覆われていく。
 …あくまでも女物なのがポイントだ。
『…どう?』

第1498回(2008年03月20日(木))
「…いい感じだ」
 華奢な歩(あゆみ)の女体は、シックな黒いスーツになっていた。
 見下ろす形でしか確認出来ないのが残念だが、まさに「綺麗なお姉さん」という風情だ。
 実はこの間のスチュワーデスの制服のときもそうだったが、歩(あゆみ)はこういう姿は結構好きだった。
 …勿論、自分がそうなるのではなくてなんだが…。
「でも、スカートはやっぱ抵抗がある。パンツスーツで頼む」
 というと今度はスカートが枝分かれし、瞬時にパンツスーツに変化した。
 便利なものだ。


第1499回(2008年03月21日(金))
『どうだった?』
「上手く行った。とりあえずお前は余計なことは言わずに部屋を出てくれ。不用意な一言でまたおかしな格好にされたんじゃ適わない」
『分かった。ちょっと待ってね。その前に実験したいことが』


第1500回(2008年03月22日(土))
「…もう服を変えるのは無しな。すぐに戻せるとはいえ」
『じゃなくて…こんな事なんだけど』
 と、言うが早いが歩(あゆみ)の左手が勝手に動いて自分の胸を鷲掴みにした。
「うわわわわっ!」

  



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