おかしなふたり 連載471〜480

第471回(2004年01月06日(木))
「だってさあ・・・だって・・・」
 ひーひー言いながら顔を真っ赤にして笑っている妹。何故か休日なのに制服姿なのは前にも書いた通り。
「お兄ちゃん、ちょっと想像してごらんよ」
 はあ、はあ、と呼吸が落ち着くのをこらえている聡(さとり)。
「だってさあ、身体そのまんまで服だけ女ものに変えるんでしょ?」
「・・・あっ!」
 しまった!こりゃ大失敗だ!身体が性転換するのが嫌なばっかりに墓穴を掘ってしまった!
「お兄ちゃん、そのまんま“女装”状態になるよ?いいのそれで?あたしはいいけど・・・」
 といってこちらを見ながらニコニコ状態になる。
 その瞬間、服に違和感が・・・。
「ま、待てえええええっ!」
 歩(あゆみ)の絶叫が鳴り響く。


第472回(2004年01月07日(金))
 流石に聡(さとり)もそこまで鬼では無いらしい。すぐに変化し始めていた服が元に戻っていく。
 ・・・やっぱりピンポイントでズボンをスカートにすべく狙っていたみたいだ・・・。他にも色々あるだろうに的確にスカートを狙ってくるとは・・・流石は性転換スナイパー(?)である。
「分かったよ・・・」
 結局いつも通りということだった。
 何と言うか身体が女になろうが結局女装させられるのだから余り変わらない・・・というか性転換させられる分そっちの方がタチが悪い気がするのだが・・・どうにも価値観が狂ってきてしまっている。
「で、あたしもちゃんと全身・・・というか下着から何から男の子にしてよね」
「どうして?」


第473回(2004年01月08日(土))
「だってさあ、お兄ちゃんは、下着にブラジャーとかした弟が欲しい?」
「・・・そうか」
 身体と下着以外を男にするってことになると、当然「下着だけ女物のまま」の少年が出来上がることになる。
 ん?ちょっと待てよ。しかしそもそも聡(さとり)は最初から女であって、別に女物の下着でも可笑しくないんじゃないか?
 これはややこしいことになった。
 身体のみならず服まで変えることの出来るこの兄妹ならではの悩み、というか問題である。
 しかも“可能かどうか”と言うような話ではなく、あくまでも“倫理的な”問題であるのが面白い。
 身体も女になってから女物を着るべきか、それとも“どうせ女物を着る”という事実そのものは変わらないのであるから身体は別に男のままでもいいではないか???

「じゃあ、いつもの通りでいいね」
 返事もしないうちにまた胸の先がうずいてきた。


第474回(2004年01月09日(日))
「・・・っ!・・」
 今度はさっきの反省が活きたのか身体の方が先に細くなっている。
 服の中で身体の周りに大きくスペースが開いているのが感じられ、その空間を形よく盛り上がる乳房が押し広げる。先端が服の内側に押し付けられる。
「・・・あ・・・」
 一瞬の早業に構える隙もなかった歩(あゆみ)は不意を衝かれて声を出してしまった。
「ごめんごめん。ちゃっちゃと済ませるから」
 まるで食べ終わった食事の食器を片付けるみたいに気軽に言い放つ聡(さとり)。
 その声と同時に“ぶわっ!”と音がするかのように髪が伸びる。
 そしてため息の出そうな艶やかな黒髪がさらさらと流れ落ちる。
「ふうっ!」
 期せずして振り回した首につられて大きく広がる髪。歩(あゆみ)がどれ位意識出来ているか分からないが、その美しさはまるでシャンプーのCMの様だった。


第475回(2004年01月10日(月))
「むふーん、今日も調子がいいわ」
 訳の分からない擬音を口に出して言う妹。
「でもって・・・とりゃっ!」
 全く何の意味も無いポーズを取って身体を半回転させて歩(あゆみ)を指差す聡(さとり)。またも彼女の制服の短いスカートが翻る。
 それと同時に歩(あゆみ)のウェストがきゅうっ!と引き締まるのと同時に、ヒップが“むくむくっ!”と豊かに膨れ上がる。
「・・・っ!!」
 今度はこらえる歩(あゆみ)。
 感覚としては蜂の腰みたいに細くなった胴。それによって抜け落ちそうになったズボンが大きなお尻に引っかかる形になる。この時点で背丈もかなり縮んでいることが実感出来る。
 こころもち、“お尻”の身体の比率に占める全体的な“位置”も上昇し、本当に「体型」そのものが変わっているのだなあ、と思われる。
 ・・・どうやら同時に男性の一番大事なところも消失しているらしい。
 一瞬にして気づかせずにここまで行ってしまうとは・・・なるほどかなり上達したもんだ。
「はい、出来上がり!」
「・・・てゆーかそのポーズは一体何なんだよ・・・」
 呆れた表情で言う歩(あゆみ)。もうすっかり声も可愛らしい女の子になっている兄。いや、元・兄。


第476回(2004年01月11日(火))
「ん?いや、折角だから」
「何が“折角”なんだよ一体・・・」
 よく分からん理屈だが、まあ楽しんでもらえているのでいいことにしよう。諦める美少女・歩(あゆみ)。客観的にはぶかぶかの男装姿が余計に愛らしい。
「どうかな?今度は意表をつく感じっていうか、よりエンターテイメントを追求してみたんだけど」
「はあ・・・」
 少なくともそれは変身させる側の“エンターテインメント”だろうな・・・と歩(あゆみ)は思うのだった。だってこっちは面白くも何とも無いし。
 ああ、また女になっちゃったなあ・・・と、胸の先に感じるかすかに鋭敏な感覚を感じながら思う歩(あゆみ)。
 実の妹が目の前にいる現状ではおおっぴらにおっぱいもみもみとか出来ないし・・・って何を考えているのか!


第477回(2004年01月12日(水))
「ところでさあ」
 カラオケの際には観客を魅了するその声で言うロングヘアの美少女。
「こんなに胸大きくする必要ないんじゃ?」
 ちなみに我が妹のバストサイズはは「BとCの間」らしい。聞いてもいないのにこの間教えてくれた。
 ・・・まあ、歩(あゆみ)の見た目からは我が妹の“天然の”バストサイズは「B」というところだ・・・が「自称C」ってことでいいだろう。咎める理由も無いし。

 だが、毎度毎度変えてもらえる女の状態・・・勿論歩(あゆみ)の・・・はどう見ても「Dカップ」はありそうな豊かな乳房をしている。聡(さとり)の密かな願望なのだろうか?
「そうかなあ?だってあんまり小さな胸ってかえってマニアックだし」
 どこからそんな知識を仕入れるのか。
「いやその・・・別に巨乳マニアとかじゃないから普通でいいよ。お前くらいで」
「とりゃっ!」
 突然また訳の分からないポーズを付けながら歩(あゆみ)を指差す聡(さとり)。くるりと回転した関係で短いスカートが翻り、下着が見えそうになる。
 それと同時だった。

第478回(2004年01月13日(木))
 生まれたばかりの歩(あゆみ)の乳房が“むぎゅっ!”と締め付けられる。
「・・っ!!」
 乳房そのものよりも胃の上の辺りというか、背中側にキツい「ブラジャー」の出現だった。
「まーいいじゃん細かいことは」
 にこにこしている聡(さとり)。
「てゆーかお兄ちゃん出かけるんでしょ?急がなきゃ・・・とりゃっ!」
 またまた妙なアクションを取る妹。
 今度は全身を包み込む様な感触が襲ってきた!
 奇妙に拘束・束縛とそして開放が入り混じる複雑な感覚・・・思わず目をつぶってしまう歩(あゆみ)。
「はい、でーきたっと!」

 ・・・ゆっくり目を開ける歩(あゆみ)。


第479回(2004年01月14日(金))
 と、思ったけどやっぱり少し感触を確かめてみようかな、とちょっぴり脚を動かしてみる。
 ・・・やっぱり裸だ。というかパンティ一丁だ。やっぱスカートらしい。
 軽く動かした脚が空気を掻く。
 無駄毛一つ無い、“むき立ての卵の表面”みたいな太ももだった。
 その大部分が惜しげもなく空気に晒されている・・・。
 ドキドキした。
 短いスカートが、ももの皮膚の表面にちりちりと触れる。
 当たり前だが、スカートはその構造上、よほどタイトに作られてでもいない限り脚には全く触れることが無い。
 であるから極論すると“感触”で言えばどれだけ長くても全く変わらないのだ。
 恥ずかしながら歩(あゆみ)は小学生の頃、男子はどれほど寒かろうが必ず“半ズボン”を履かされていたのに対して、女子は風邪気味であれば長いスカートを許可されていたことに対して「不公平だ」と思っていた。
 こうして毎日の様にスカートを履く生活(?)を送ってみると、その認識が大間違いであることがわかる。スカートの丈の長さなんぞ、脚の防寒という意味では大差なんぞありはしないのだ。


第480回(2004年01月15日(土))
 内もも同士を摺(す)り合わせてその感触を・・・ってのは毎回やってるからそろそろいいか。
 歩(あゆみ)には誰にも言えない感慨があった。
 実は・・・。
 そろそろ“スカート”に免疫が付いてきちゃったんだよね・・・。
 これは妹には絶対に言えない。
 ほんの一瞬だけ「いや、もうスカートとかには慣れたからいちいち履かせてリアクション確かめようとしても面白いものなんか見れないぞ」とアピールしようと考えたことはあることはある。