おかしなふたり 連載1281〜1300 |
第1281回(2007年06月01日(金)) 「あの…僕らのこと分かってますよね?」 『うん…まあね』 「いつまでこの状態が続くかも分からないし」 これは一時的に変えられた肉体が戻るという意味ではなく、兄妹がお互いを性転換&異性装させられる体質を保ち続けられるかどうか、という意味である。 第1282回(2007年06月02日(土)) 『うん…まあそれはそうなんだけどさ…考えたってしょーがないじゃない。その時はその時よ!思い切ってやってみよう!』 この人は絶対長生きするなぁ…と思った。 |
![]() |
第1283回(2007年06月03日(日)) 『あんたがたもうすぐ夏休みでしょ?時期的にはぴったりなのよね』 …痛いところを衝かれた。実はそうなのである。 ウチの公立高校は別に何の変哲も無いごく普通の高校である。学生にタレント活動を許すかどうかなんて考えたことも無いだろう。 ただ、夏休みの間ということになればそんなことは考える必要も無い訳だ。 第1284回(2007年06月04日(月)) 「あの…でも僕ら何をどうしたらいいのかも分からないし…」 『まーその辺はあたしに任せてちょーだいよ。そもそも未成年なんだからちゃんと親の許可も取らなきゃ成らないし。そんなに無茶しないから』 未成年じゃなきゃ無茶するんだ…と心の中でツッコんだ。 |
![]() |
第1285回(2007年06月05日(火)) 「でも…いいんですか?僕らみたいなのにボイストレーニングだなんだって資産掛けちゃって」 歩(あゆみ)としても無碍(むげ)にばっくれる気は無いのだが、何だか申し訳ない気がする。 第1286回(2007年06月12日(火)) 『まーそりゃ100パーセント確実じゃあないよ。でもそんなこと言ってたら何にも出来ないよ。思い切ってやってみるしかないじゃん』 何か段々歩(あゆみ)の意識も変わってきた…様な気がする。 そういう風に言われるとそんな気もするし…実際やっていけるかどうかなんて分からないけど。 |
![]() |
第1287回(2007年06月13日(水)) 「でも…僕は人前に出て歌うとか勘弁ですからね」 『まーまー、とりあえずあゆみちゃんは安心して身を任せときなさいって。あたしが何とかしてあげるから!』 「はあ…」 段々めぐみさんのペースに巻き込まれつつある。 第1288回(2007年06月14日(木)) この短い間に歩(あゆみ)は脳をフル回転させた。 正直分からないことだらけである。もしもこのまんま話が進んでいけば、暗闇の中で手を引かれながら歩いているみたいなものだ。めぐみさんに全面的に生殺与奪の権利を委(ゆだ)ねる形だ。 |
![]() |
第1289回(2007年06月15日(金)) 悪人ではない…とは思う。 まだ何度も会った訳でもないし、それこそ契約を交わしたりしている訳でもないけど、信頼したい。 しかし、このままこの人に全面的に依存せざるをえない関係を延々続けさせられた挙句に無茶な要求を突きつけられた場合、拒否出来るんだろうか? 何だかトンでもないことに巻き込まれつつあるんじゃないだろうか? …ここまで具体的に脳内で明文化出来たわけじゃないけど、動物的なカンでそう思った。 第1290回(2007年06月16日(土)) 『あゆみちゃん心配してるでしょ?』 「…っ!?」 一瞬言葉に詰まった。 そんな分かりやすい反応をする気はなかったのだが、不意を衝かれてしまうとどうしようもない。 |
![]() |
第1291回(2007年06月17日(日)) 『ま、心配なのは分かるよ。うん』 全く変わらない口調で言う恵。 『しかもあゆみちゃんの場合は事情が特殊だからなあ』 そんなレベルじゃないだろうに。 言ってみれば突発的な性転換現象に見舞われる男が女の状態で一種の芸能活動をしようというのだ。こちとらウルトラマンみたいな変身ヒーローではないのである。そんな便利な体質には出来ていない。 第1292回(2007年06月18日(月)) …いや、実際にはかなり自在に色々出来るんだけど、そのコントロール権はよりによって我が妹に握られているのである。 『ま、あたしも色々考えてるからさ。色んな秘策もあるのよ。任せて』 ウィンクしている恵(めぐみ)が見える。 |
![]() |
第1293回(2007年06月19日(火)) 『あゆみちゃん、今表だね?』 外を歩いているか?という意味だろう。 「そうですけど」 『あたしも携帯に掛けといてたいがいだけど、どっか落ち着いたところでじっくり話さない?』 第1294回(2007年06月20日(水)) 今はそれどころではない。何とかしなくては…。 「めぐみさん、じゃあちょっとお願いがあるんですが」 悪魔と手を結ぶことになるかも知れないが、緊急の場合なので思い切って持ちかけてみる。 歩(あゆみ)は一応あたりを見渡した。 |
![]() |
第1295回(2007年06月21日(木)) 閑静な住宅街なのでそれほど人通りは多くない。 しかも、高校生が期末試験終わりで午前中で帰宅した時間帯である。 会社帰りのサラリーマンが出歩いている時間帯でもなく、専業主婦が夜のおかずの買出しに出る時間帯でもない。 ま、駅前のファーストフード店みたいなところは常に賑わっているが、そこに到達するまでは余り誰ともすれ違わない。 「実はですね…」 第1296回(2007年06月22日(金)) ややこしい上に緊急を要している。どう切り出していいのかも分かりにくいが、この人は本当に理解が早い。その上我々兄妹以外では唯一変身体質を知る人間である。 「この声でお分かりでしょうけど、今変身させられてるんです」 『みたいね。どんな格好なの?』 「普通の格好ですよ。今はそれはいいんです!」 本当はスクール水着姿だったんだが、着替えた経緯がややこしいのでそれで押し通す。 |
![]() |
第1297回(2007年06月23日(土)) 「あの…細かい事情ははしょりますけど、今はすぐに元に戻りたいんです」 『あっそ…じゃ戻れば?』 あっさりしている。それはそう言うだろう。 「それがその…今僕は外にいるんですよ」 『女の子の声で『ボク』とかそそるなあ…』 「めぐみさん!」 第1298回(2007年06月24日(日)) 「とにかく、今男になった状態で外から部屋に戻らなくちゃいけないんです」 『分からないなあ。直接頼めばいいじゃない。ケンカしたの?』 「いや、そうじゃなくて今ちょっと直接話せないんです。でもって、あいつがいつこちらを戻すか分からないんです」 とか何とか話しつつ、もしも本気で聡(さとり)と喧嘩したらどうなるだろう…と思いが及んでゾッとした。 |
![]() |
第1299回(2007年06月25日(月)) 今ですら嫌がらせ状態なのだから、もう一分ごとに早変わりのコスプレ状態になってしまうだろう。…一応こっちもやりかえせるんだが…。 いや、今はそれはいい。 『あ、分かった。誰か別の人が来てるんでしょ』 「そ、そうです!」 悟ってもらって助かった。 第1300回(2007年06月26日(火)) 『はっは〜ん、そういうことか。歩(あゆみ)ちゃんはその子には今の状態を秘密にしときたいのね』 「…はい」 察しが早くて助かるんだが…これをネタにゆすられるんじゃなかろうか。 |